内野氏
経団連は7月16日、東京・大手町の経団連会館で、通商政策委員会企画部会(寺内幹人部会長)を開催した。経済産業省通商政策局国際経済部の内野宏人経済連携課長(当時)から、経済連携協定の現状と今後について説明を聴き、意見交換した。説明の概要は次のとおり。
ウクライナ情勢や中東情勢の不安定化を背景に、地政学リスクは高止まりしている。こうしたなか、経済成長や人口増加が続く新興国の需要を取り込むことは、需要サイドの多角化に資するのみならず、重要鉱物等の調達先の多角化にもつながる。
日本から新興国への直接投資はストックでは大きいものの、フローでは中国に逆転されており、日本の存在感低下が懸念される。
こうした状況を踏まえ、経産省は「信頼できる経済圏の構築」に向けた重要な政策手段として、経済連携協定(EPA)を位置付けている。
EPAは、モノやサービスの自由な貿易を目的とする自由貿易協定(FTA)の範囲に加え、投資ルールやビジネス環境の整備など、幅広い分野での経済関係を強化するものだ。
世界貿易機関(WTO)の多国間交渉が停滞するなか、日本は51カ国と22のEPA・FTAを発効済みであり、貿易総額の約8割をカバーしている。
他方、中国、韓国、EU、南米南部共同市場(メルコスール)などもEPA交渉や、締結済みのEPAのアップグレードを進めている。
わが国の通商政策の重要な柱が、環太平洋パートナーシップに関する包括的及び先進的な協定(CPTPP)だ。CPTPPは幅広い分野で高水準のルールを定めている。
現在は第一に、協定の見直しに取り組んでいる。貿易円滑化、電子商取引、サプライチェーン強靭化などのルールの更新に加え、経済的威圧・市場歪曲的慣行への対応などについて対話を続けている。
第二に、参加国の拡大を進めている。英国は2024年12月に加入し、26年5月にはコスタリカと交渉が妥結した。現在はウルグアイの加入作業部会が設置され、6月にはアラブ首長国連邦(UAE)、フィリピン、インドネシアに関する予備的議論の開始が決まった。
第三に、EU、ASEANとの対話にも取り組んでいる。
日本企業が輸出で最も多く活用しているのは、中国も参加する地域的な包括的経済連携(RCEP)協定だ。RCEPは最速で27年から見直しが可能となり、東アジアの課題に対応するルール作りが期待される。
この他、バングラデシュとは26年2月に署名し、UAEとは3月に交渉が妥結した。交渉を再開した湾岸協力会議(GCC)や、長年交渉しているトルコとも、交渉を加速する。重要鉱物、エネルギー、穀物で潜在力を持つメルコスールとは26年6月30日に交渉開始が決まった。
海外法人の設立・運営や投資資産の保護に関する投資協定も重要だ。日本は85カ国・地域との間で54の協定を発効済みだ。
EPAは企業に活用されることが重要であり、経産省は日本貿易振興機構(ジェトロ)と連携し、情報提供や相談対応、原産地証明書の電子化などを通じて、企業の利便性向上と利用拡大を図っている。
新たなEPA交渉には産業界の意見が重要であり、引き続き声を寄せてほしい。
【国際経済本部】
