佐伯氏
経団連は7月7日、東京・大手町の経団連会館で宇宙開発利用推進委員会(漆間啓委員長)の2026年度総会を開催した。25年度活動報告・収支決算および26年度活動計画・収支予算について報告した。
総会議件に先立ち、立命館大学の佐伯和人総合科学技術研究機構教授・宇宙地球探査研究センター長から、宇宙資源から見るわが国の産業振興について説明を聴いた。概要は次のとおり。
■ 月資源の活用
現在の宇宙開発は、大航海時代や産業革命に匹敵する転換期にある。今後は月資源の活用を基盤とした経済活動が本格化する時代が到来する。
月に焦点が当たる理由としては、時間的な要因が大きい。月には地球からわずか3~4日で到達できる一方、火星までには半年以上かかり、到達の機会も2年2カ月に1度の「大接近」に限られる。
このため、将来、火星探査などを進めるに当たっても、まずは月で技術や運用経験を蓄積することが重要となる。
地球から月へ物資を輸送するには、1キログラム当たり1億~2億円ものコストがかかる。このため、水、酸素、鉄、アルミニウムなどの資源を月面で調達できれば、大きな経済的価値が生じる。月資源は地球へ持ち帰るよりも、宇宙空間でそのまま活用する方が合理的だ。
とりわけ、月の南極にある永久影(太陽光が届かない領域)には氷資源が存在するとみられている。その水を電気分解することでロケット燃料を生産できるため、将来の宇宙活動を支える重要な資源として注目されている。
■ 日本の強み
宇宙資源開発における日本の強みとして、4点が挙げられる。
第一に、南極隕石研究などを通じて培われた世界トップレベルの宇宙資源学と、南極での極限環境における越冬基地運用のノウハウを活用できる点だ。
第二は、中国やインドが物量を背景に宇宙分野で国際競争力を高めようとする動きがあるなか、日本は世界で初めて月面へのピンポイント着陸に成功した。研究者が宇宙機開発に深く関与する体制を有していることも強みだ。
第三は、21年に制定された宇宙資源の探査及び開発に関する事業活動の促進に関する法律(宇宙資源法)など、世界に先駆けて、月資源の商取引に関する法制度が整備されている点だ。
第四に、アルテミス計画で、日本企業が有人与圧ローバーの開発を担っていることだ。これは単なる移動手段ではなく、居住機能も備えた大型システムであり、月面の工業規格を日本から提案する大きなチャンスにもなり得る。
こうした強みを生かすべく、現在、国を挙げて、宇宙航空研究開発機構(JAXA)が培ってきた宇宙開発の知見と、総額1兆円規模の宇宙戦略基金を通じ、宇宙市場の拡大、社会課題の解決、フロンティアの開拓が進められている。一方で、残念ながら、足元では人的基盤が非常に心もとない。
今後、宇宙の産業化への道を着実に進めるためには、人材こそが最大の資源だ。アカデミアが挑戦的なテーマに果敢に取り組むことで、若者が宇宙を志す場をつくり、次代の宇宙開発・宇宙産業を牽引する人材を継続的に育成し、産業界へと送り出していきたい。
【産業技術本部】
