経団連と経団連事業サービス(筒井義信会長)は、経営法曹会議の協賛を得て7月9、10の両日、「第128回経団連労働法フォーラム」を開催した。
今号では、2日目のワークショップから、弁護士による基調説明と参加者からの主な質問を紹介する。各ワークショップのテーマとファシリテーターは下図のとおり。
■ ワークショップ(1)
指導担当の先輩による新入社員への注意指導が、パワーハラスメントに該当するかが問題となることがある。裁判例を踏まえると、こうしたケースでは、社会経験や就労経験が十分でなく、上司からの叱責に慣れていないという新入社員特有の事情を考慮して指導していたかが、判断要素の一つとなる。
注意指導がハラスメントと認定される場合、会社には、指導担当者に対する注意指導・教育に加え、指導担当者の異動や変更等の措置が求められる場合がある。
他方、ハラスメントとは認定し難い場合であっても、注意指導の態様が適切でないと考えられる場合には、指導担当者の変更等の措置は、新入社員の心身の状況や指導担当者との信頼関係、周囲への影響を踏まえて検討される。
参加者からは、意に沿わないことをハラスメントと繰り返し主張する社員を解雇した場合の公益通報者保護法との関係、ハラスメント事案の調査において被害者からのヒアリングが困難な場合の対応などについて質問が寄せられた。
■ ワークショップ(2)
カスタマーハラスメント(カスハラ)への対策では、顧客からの要求を不適切に拒絶した場合、事業者側の違法行為と評価されるリスクがある点に留意する必要がある。
一方で社員が個別の場面で臨機応変に判断するには限界があるため、要求に対応する際の判断基準をマニュアル化しておくことが不可欠だ。
カスハラの行為者は社外の者であるため、発生を防止するには、事業者としての対応方針を対外的に明示することに加え、業界全体でカスハラの撲滅に向けた機運を醸成していくことも求められる。
求職活動等におけるセクシュアルハラスメントについては、OB・OG訪問やインターンシップ中の被害を防止するため、厚生労働省のQ&Aや企業事例集も参考にしながら、具体的な対応策を講じることが重要だ。
例えば、面接の時間、場所、実施体制(人数)、求職者とのやり取りに用いるSNSを、規程で明確に定めることが考えられる。対応マニュアルの作成、全社員を対象とした研修の実施なども有効だ。
参加者からは、ハラスメントを調査する際の他の事業主への協力の求め方などに関する質問が寄せられた。
■ ワークショップ(3)
異動の事例として、親の介護を抱える社員から、転居を伴う配置転換をしないよう配慮を求められた場面を検討した。
対応の検討に当たっては、配転命令の有効性に関する最高裁判所の判断枠組みや、育児・介護休業法26条を踏まえつつ、就業規則などの規定を確認することが必要だ。労働契約書や労働協約も併せて確認し、規定相互の優劣関係や整合性にも留意する必要がある。
社員の介護の状況を具体的に把握するため、例えば診断書などの資料提出を求めることが考えられるが、プライバシー上の懸念から提出を拒否される場合もある。そのため、社員本人へのヒアリングを通じて必要な情報を確認する方法も検討すべきだ。
参加者からは、配慮の対象となる社員のプライバシーと、周囲の社員への納得感のある説明との両立などに関する質問が寄せられた。
【労働法制本部】
