フィールドワークの模様
経団連は2021年11月に公表した「地域協創アクションプログラム」に基づき、政府、自治体、大学、スポーツ・文化団体等と連携し、会員企業による地域課題の解決と新たな価値の創出を後押ししている。
その一環として、25年度に続き、同プログラムの連携先である慶應義塾大学SFC研究所「地域おこし研究機構」と協働で、26年5~7月、北海道東川町で、「『地域協創アクション』現場視察・体験プログラム」を実施した。
この取り組みは、企業との連携に意欲的に取り組み、まちづくりを進めながら地域協創の兆しを育んできた先駆的な自治体である東川町と、玉村雅敏慶應義塾大学教授を中心とする同大学SFC研究所、プログラムを提供する日本郵便が協働で推進する実践型プログラム「東川町リビングラボ」の枠組みを活用したもの。
地域協創に関心の高い会員企業の社員と経団連事務局が参加した。地域の現場で、町職員、住民、事業者との対話を通じて課題を探究した。東川町をテーマとしつつも、同町にとどまらず幅広く官民共創による事業や仕組みを構想した。
全3回にわたる現場視察・体験プログラムの概要は次のとおり。
■ 現場を知る
第1回(5月19、20日)では、東川町内の各所で展開される地域協創の実践を視察した。
東川町における写真文化、農業、家具、教育、健康づくりなどの地域資源や取り組みを学ぶとともに、そうした取り組みと連動する各種の地域協創の事例から、企業と地域との接点づくりや、アイデアの事業化までの試行錯誤への理解を深めた。
玉村氏は、地域協創においては、「地域『と』協創する」といった地域を支援対象として捉える発想ではなく、自らも地域の当事者となって「地域『で』協創する」という観点が重要と指摘した。
■ 問いを深める
第2回(6月12日)では、企業からの参加者が主体的に住民、事業者、行政職員らに詳細なインタビュー調査を実施。統計や資料だけでは把握できない現場の実感や制約を踏まえ、仮説を見直しながら課題を整理した。
参加者は住民らとの対話を通じ、表面的な「困りごと」を探すだけでなく、「地域にとってどのような意味があるか」「自社・自分はなぜ関わるのか」を問い直し、自社の理念や強みと地域の価値観が重なる接点を見いだすことの重要性を学んだ。
■ 地域で共有価値創造
第3回(7月3日)の成果報告会では、現地視察とインタビューを基にした参加者各自の検討を踏まえ、参加者から、高齢者の見守りや子どもの地域参画、家具・写真文化の価値向上、地域通貨や郵便局を活用した地域のつながりづくりなど、多様な「地域協創アクション」の構想が発表された。
いずれも、完成したサービスをそのまま持ち込むのではなく、地域の既存の取り組みや人とのつながりに、企業の技術やネットワーク、事業ノウハウを掛け合わせ、地域と共に育てていく視点に立った内容だった。
各提案に対し菊地伸東川町長からは、町の政策との整合性や、実装に向けた課題などについてフィードバックがあり、具体化に向けた意見交換を行った。
玉村氏は「地域協創とは、企業が外部から課題を定義するものではなく、地域の当事者と問いを深めながら、双方にとって意味のある価値を共創する営みだ」とコメントした。
地域協創は、地域課題の解決だけでなく、企業が現場の多様な価値観に触れ、自社のパーパスや強み、事業の社会的意義を見つめ直す機会にもなる。
地域との対話を通じて新たな事業の種を見いだし、CSV(共通価値の創造)経営や新規事業の創出につなげる実践的なアプローチとして、企業にとっても大きな可能性を有する。
経団連は今後も、会員企業による地域課題の解決と新たな価値創出に向け、地域協創の取り組みを後押ししていく。今後も慶應義塾大学SFC研究所「地域おこし研究機構」などとの連携プログラムも引き続き展開していく予定だ。関心のある会員企業は問い合わせいただきたい。
【産業政策本部】
