経団連は7月21日、東京・大手町の経団連会館で労働法規委員会(冨田哲郎委員長、小路明善委員長、芳井敬一委員長)を開催した。中外製薬の髙田雄介人事部長、同委員会労働法企画部会長を務めるTOPPANホールディングスの奥村英雄執行役員・人事労政本部長が裁量労働制の運用事例をそれぞれ紹介した。概要は次のとおり。
■ 中外製薬
髙田氏
当社は2005年から、研究職を対象に専門業務型裁量労働制を導入しており、現在約500人の研究員に適用している。
グローバルに成果を競うなか、主体性や専門性を最大限に発揮できる環境が競争力の源泉になる。創薬研究の成果は、労働時間の長さではなく、発想や試行錯誤から生まれる。「時間ではなく成果で働く」ことが不可欠であり、裁量労働制を研究開発の基盤と位置付けている。
一方で、健康管理時間を厳格に把握し、長時間労働が確認された場合には、産業医との面談を推奨するほか、上長への助言などを通じて健康確保に取り組んでいる。
24年には、制度適用に同意しない社員がフレックスタイム制を選択できるようにした。労使双方から制度を説明し、制度の理解促進に努めた。
裁量労働制は、業務遂行の方法や時間配分を完全に本人の裁量に委ねる制度で、労働時間を意識せず、主体的に探究に没頭できる。これに対し、フレックスタイム制は、労働時間の厳密な管理が求められ、労働時間を基軸として金銭報酬に置き換えるものだ。
こうした根本的な違いを踏まえて制度を選択できるようにすることで、社員が自らの働き方を見つめ直す機会にもなった。
フレックスタイムとの選択制を導入した結果、対象研究者の99%が裁量労働制を選択した。
革新的な医薬品は管理された「労働時間」からは生まれにくく、研究者の「熱量」や「想い」がイノベーションの源泉だ。時間ではなく成果や価値を重視する裁量労働制が研究開発に適していると言える。
主体性と健康確保を両立させながら、イノベーション創出を支える制度運用を進めている。
■ TOPPAN HD
奥村部会長
裁量労働制を「成果を重視した働き方」を実現するための制度と位置付け、企画業務型約1400人、専門業務型約400人の計約1800人に適用している。
対象者は高度な裁量を持って働ける職種と人財層に限定し、成果とエンゲージメント向上につなげるとともに、健康確保と納得感のある処遇を重視している。
パソコンの利用状況や入退館記録などを活用して労働時間の実態を把握し、一定時間を超過した時は産業医との面談を実施するなど、長時間労働の抑制を徹底している。年2回の労使委員会で課題を確認し、運用改善につなげている。
裁量制の導入後、残業に相当する時間が半減するなど、生産性は向上している。手当の水準を維持し、成果や貢献に応じて奨励金を支給することで、処遇への納得感を高めている。
適用者へのアンケートでは、「働く時間を自分で調整できる」「メリハリのある働き方ができる」「育児・介護との両立がしやすい」といった点が高く評価された。裁量と管理の両輪で、成果評価、健康確保、労使対話を組み合わせた運用に努めている。
【労働法制本部】
