経団連は7月22日、東京・大手町の経団連会館で米国・シアトルのスタートアップ関係者との懇談会を開催した。
ワシントン州政府商務省日本代表の江藤哲郎氏から、シアトルにおけるスタートアップエコシステムの最新動向などを聴いた。
シアトルを本拠地とするAI関連スタートアップであるArtly AIのアレクサンダー・メクルCOOからは米国と日本の相違点について、同じくDataMeshの武村禎一カントリーマネージャーからは自社のビジネスモデルについて説明を聴いた。
概要は次のとおり。
■ 江藤氏
シアトルは、地理的特性を背景に物流・貿易の拠点として発展してきた。加えて、ボーイングを中心とする航空宇宙産業を基盤に、アマゾン、マイクロソフト、コストコ、スターバックスなどの世界的企業を生み出してきた。
近年は、クラウドやAIを支える大手企業の存在を背景に、シリコンバレーとは異なるイノベーション拠点として注目を集めている。
AI分野では、マイクロソフトやアマゾンが資金と技術の両面で大きな役割を担い、人材や企業の集積が進展している。
ワシントン大学は、重要な人材供給源として州経済に大きな効果をもたらすとともに、AIを活用した先端研究でも成果を上げている。
こうした環境のもと、シアトル近郊には23社のユニコーンが存在し、特にエネルギー分野で有望なスタートアップが育成されている。
日本との関係では、航空機産業に加え、近年は医療・バイオ、情報サービス分野でも日本企業の進出が見られる。
ワシントン州政府などが主催するイベント「ジャパン・シアトルAIミートアップ」では、スタートアップによるピッチ、大企業によるリバースピッチ(注)、日本人研究者コミュニティとの交流が行われている。
このようにシアトルでは、クラウドやAIを支える企業群を核として、大学の先端研究、成長分野のスタートアップ、行政による支援が結び付き、AI時代の実践的なイノベーションエコシステムが形成されている。
■ メクル氏
シリコンバレーのエコシステムの特徴と、そこから見える日本の優位性を説明する。
シリコンバレーの成功要因は、世界最高水準の大学、リスクマネー、人材の流動性、失敗を許容してリスクを取る文化、成功人材が次の挑戦を支えるフライホイール(弾み車)が機能してきた点にある。
日本には、優れた大企業や世界最高水準の研究力を持つ大学などの強みがある。大学と産業界をつなぐとともに、大企業がリスクを取って投資家としての役割を発揮し、日米の懸け橋として人材と資本の往来を促すことが重要となる。
日本が世界の人材を引き寄せる磁石となることができれば、独自のイノベーションエコシステムを構築し得る。
■ 武村氏
当社は、デジタルツインとフィジカルAIに特化したITベンダーであり、米国、日本、シンガポール、東南アジア、中国などで事業を展開している。
基盤製品「ファクトバース」は、ノーコードでデジタルツイン環境を構築する「3Dツインエンジン」と、産業データを基に予測・分析・提案を行う「AIエージェントエンジン」で構成されている。
現場のデータを仮想空間に統合し、意思決定やロボティクスへの応用を支援することで、現場主義に強みを持つ日本企業との連携も期待される。
(注)通常のピッチとは逆に、自治体や企業などが課題を提示し、スタートアップなどから解決策を募る取り組み
【産業技術本部】
