安藤大使
経団連のOECD諮問委員会(稲垣精二委員長)は7月30日、東京・大手町の経団連会館で2026年度総会を開催した。
安藤俊英OECD日本政府代表部特命全権大使がフランス・パリからオンラインで出席し、近年の国際情勢の変化を踏まえた経済協力開発機構(OECD)の役割や、日本がOECDとの間で進める経済安全保障分野の取り組みについて説明した。その後、出席者との間で意見交換した。安藤大使の説明の概要は次のとおり。
■ 日本のイニシアティブ
OECDは、かつて「先進国クラブ」と称された。現在では加盟国が中南米や東欧を含む38カ国に広がるなど、その性格を変えつつある。
一方で、OECDの特質は今も変わらない。(1)最先端の専門家を擁する世界最大級のシンクタンクであること(2)贈賄防止、租税、投資、多国籍企業行動、AIなどに関する国際ルール形成を担うこと(3)非加盟国へのアウトリーチを通じてルールの普及を図ること――だ。
一方、国際情勢が変動するなか、日本がOECDの新たな役割として重視して協力を進めているのが経済安全保障だ。
重要鉱物資源や鉄鋼、造船、AIなどを巡る経済安全保障は、目下の日本の最重要課題であり、二国間・複数国間の協力を強化している。加えて、多国間の枠組みをいかに活用するかという視点も重要だ。
OECDの比較優位は、データ分析能力、高度な専門性、ルール形成の知見、G7やG20との連携、東南アジアなどへのアウトリーチにある。OECDはまさに、これらの強みを生かして経済安全保障に貢献できる国際機関だ。
こうした認識のもと、26年5月にマティアス・コーマンOECD事務総長が訪日した際、日本政府はOECDと共に「日本とOECDとの間の経済安全保障に関する協力プラン」を発表した。
この協力プランは、OECDにとっても前例のない経済安全保障分野での包括的な協力枠組みだ。不公正な市場歪曲的慣行、不透明な産業補助金、重要サプライチェーンの集中といった問題に対処するため、12の重点分野を定めた。
具体的には、重要鉱物や半導体などのサプライチェーンの強靭化、量子技術を含む新興技術に関わるリスクを管理するエコシステムの構築、OECDのAI原則を基礎とした信頼できるAIの推進、日本が提唱する信頼性のある自由なデータ流通(DFFT)の推進、東南アジアとの経済安全保障に関する政策対話の実施などを盛り込んだ。
協力プランは、同様の課題を抱える東南アジア諸国との経済安全保障分野での協力にも重点を置く。これは日本がこれまで注力してきた東南アジア諸国との連携をさらに強化し、拡大するものだ。
6月のOECD閣僚理事会では、産業政策をテーマに議論が行われた。
日本政府は、地政学的な環境の変化、AI、デジタル、量子技術の発展を指摘したうえで、経済安全保障に関する協力プランに基づく取り組みを推進する考えを表明した。米国をはじめとする参加国から、支持や高い関心が示された。
■ 今後の課題
中東情勢の不安定化を受け、日本は、国際エネルギー機関(IEA)による石油備蓄の共同放出を主導している。
アジア諸国のエネルギー供給源多角化や備蓄制度の強化を支援するため、アジア・エネルギー・資源供給力強靭化パートナーシップ(パワー・アジア)を通じ、IEAと連携しながらエネルギー安全保障の確保にも貢献している。
重要鉱物資源の分野では、OECDやIEAにおいて日本の経験を共有しつつ、サプライチェーンやトレーサビリティの確保などの面でも協力している。G7をはじめとする関心国の備蓄制度創設を支援することにより、経済安全保障の確保にも貢献している。
今後は、OECDやIEAと緊密に連携しながら、経済安全保障とエネルギー安全保障の両面での具体的な協力を進めるとともに、国際的なルール形成を主導していくことが課題となる。
もう一つの課題は、グローバルサウス、とりわけ東南アジア諸国への関与を一層強めることだ。BRICSをはじめ新たな国際的枠組みが広がるなか、グローバルサウスとの関係を強化し、OECDのルールを拡大していくことが重要だ。
特に、日本がこれまで注力してきた東南アジア地域プログラム(SEARP)やラテンアメリカ・カリブ地域(LAC)プログラムなどの拡充を通じ、今後はAI、デジタル、重要鉱物資源などの先端的な課題に関する原則や価値観をグローバルサウスと共有していく必要がある。
これらの課題に取り組む際に重要なのは、ビジネスの視点だ。今後重点的に取り組むべき課題について、企業からの意見を取り入れていく。
【国際経済本部】
