三柴氏
経団連は8月19日、東京・大手町の経団連会館で労働法規委員会労働安全衛生部会(赤瀬裕部会長)と同部会の3ワーキンググループによる合同会合を開催した。
近畿大学法学部の三柴丈典教授から、判例を踏まえた職場における実効性のあるメンタルヘルス対策と、同氏が提唱する「予防構築学」について、説明を聴くとともに意見交換した。説明の概要は次のとおり。
■ メンタルヘルス対策
少子高齢化や個人を尊重する意識の高まりなどの社会変化は、労働者の健康を巡る行政施策や裁判所の判断にも反映され、私傷病者の就労を支援する方向に移行している。
こうしたなか企業には、職場におけるメンタルヘルス問題への対応として、疾病を持つ労働者に必要な配慮や支援を行い就労を支えるという視点と、就業規則などのルールに基づき必要な場合に適切な人事措置を講じるという視点の双方が求められている。
日本ヒューレット・パッカード(休職期間満了)事件(東京高裁平成28年2月25日判決)などでの裁判所の判断を見ると、メンタル不調者への対応について、(1)専門医受診の勧奨(2)適材適所の配置(3)休職措置などによる経過観察――などを正しく行うことを企業に求めていることが分かる。
企業がこれらの配慮や支援を尽くしてもなお就労が困難である場合には、休職・退職といった人事措置を講じ得ることが示唆されている。
休職措置からの復帰を巡る他の裁判例では、企業側が講じた手続きの合理性に加え、休職者本人の疾病の重さや快復可能性、従前の就労意欲、快復に向けた自助努力、周囲にかかる負荷なども要素とされ、事案の経過を総合して判断していることが読み取れる。
これらを踏まえれば、企業は対象者への働きかけや本人の対応など、一連の経過を記録として残しておくことが重要となる。
メンタルヘルスの問題は、本人と仕事、本人と周囲の人との相性が原因で生じることもあることから、企業はその相性合わせをできる限り行い、前述(2)のように適材適所の配置に努めることが求められる。
■ 予防構築学
疾病、災害、紛争、倒産など、社会的に重い結果をもたらすリスクが複雑化している。企業にとって、リスクを未然に防止する重要性は増しているものの、そうした専門性を持つ人材は不足している。
そのため、医学、工学、法学、経営学などの専門知・実践知を統合し、失敗事例から共通点を抽出して実装可能な予防策を体系化するなど、リスクの設計・管理プロセスの構築と実装を目指す学問体系として「予防構築学」を提唱した。
新たに開設した「予防構築学アカデミー」を通じて、予防の専門性を持つ実践的な人材の育成を目指している。
【労働法制本部】
