田中氏
経団連は9月4日、東京・大手町の経団連会館で通商政策委員会企画部会(寺内幹人部会長)を開催した。経済産業省通商政策局の田中将吾通商戦略課長から、同省が取りまとめた「通商戦略2026」について説明を聴くとともに意見交換した。説明の概要は次のとおり。
国際経済秩序は歴史的な転換期にある。格差やグローバルインバランスの拡大に対する不満、サプライチェーンリスクが顕在化するなか、保護主義・経済ナショナリズムの時代へと進みつつある。米国をはじめとする各国の関税措置などは、大きな潮流のなかで表面化した事例と捉える必要がある。
米国は自国第一主義を継続している。これまで自由主義的な国際秩序を主導してきた欧州も保護主義的な姿勢を見せている。中国は自由貿易を標榜しつつ、輸出管理を強化するとともに、非市場的な措置を駆使して影響力を行使している。
こうしたなかで日本は、さまざまな国・地域とコミュニケーションを取ることができる存在である点を重視すべきだ。
米国との関係は、わが国にとって最も重要だ。同盟関係を基軸としつつ、関税交渉や戦略投資イニシアティブなどを通じ、投資・金融・保険を含む政策手段を総動員することが求められる。
中国については、関係を悪化させることは得策ではない。必要な物資の供給に支障が生じないよう、対話を続ける努力が不可欠だ。
こうしたなかで、欧州をはじめとするミドルパワーと連携し、ルールベースの国際経済秩序を支える仲間を広げていくことが望ましい。しかしEUは、域内経済の停滞や政治的な不安定化を背景に、保護主義的な動きを強めつつある。官民を挙げて自由で公正な貿易投資体制の価値を訴える必要がある。
グローバルサウスとは、相手国の経済成長に資するようなウィンウィンの関係を構築することが、日本の成長戦略にも資する。
具体的には「信頼できる経済圏」を広げていく必要がある。重要なのは、透明性とルールに基づく持続可能な経済関係を構築していくことであり、その典型が環太平洋パートナーシップに関する包括的及び先進的な協定(CPTPP)だ。CPTPPは関税削減にとどまらず、ルールを議論する場として重要だ。
アジア諸国との連携を強化するうえでは、アジア・ゼロエミッション共同体(AZEC)が重要だ。
具体的な投資につなげることも求められる。アジアのサプライチェーン強靭化や重要鉱物のサプライチェーン強靭化にも取り組む必要がある。
これらを行う際は、日本成長戦略との連携を考慮すべきだ。信頼できる経済圏を構築することは、国内への危機管理投資で生じた財・サービスの輸出増につながる。
対外直接投資は、かつて国内には利益が還流せず、国内経済に十分な効果をもたらさないとの議論があった。しかし今は、直接投資収益が20兆円を超えており、国内経済に還流している。対外投資を日本経済の「稼ぐ力」を支える重要な成長戦略と位置付けるべきだ。
【国際経済本部】
