伊藤氏
経団連は9月15日、東京・大手町の経団連会館で経済財政委員会統計部会(松村圭一部会長)を開催した。公的統計における行政データの利活用について、中央大学経済学部の伊藤伸介教授から説明を聴くとともに意見交換した。説明の概要は次のとおり。
■ 先行する海外の事例
日本では「公的統計の整備に関する基本的な計画」によって行政データ活用の方針が示されているが、実際の利活用は海外が先行している。
例えばデンマークでは、届け出がなされる行政データをデータベース(レジスター)に反映し、各個人・企業等に個体識別番号(共通ID)を付して各種行政データをひも付け、統計作成にも活用している。これにより、国勢調査を行うことなく人口統計を作成することが可能になっている。
このように行政データ上で共通IDが整備され、レジスターのデータがひも付けられていれば、統計調査の実施コストは大幅に削減できる。データに欠損があったとしても、欠損がある属性値の補完を行うだけで解決できる場合が多い。
こうした利点に鑑みれば共通IDの整備が望ましいが、共通IDが整備されていない場合でも、データをひも付けることは可能だ。
共通IDがない英国では、氏名や住所などを基に、個人を識別できないよう仮名化したうえで、異なる統計のミクロデータや行政データの間でひも付けが行われている。
英国では、このような形でひも付けられたデータを学術研究目的で安全に提供するための仕組みが整備されている。
英国国家統計局(ONS)は、データのひも付けを行う機能を備えている。ONSでは、仮名化を担当する部門と、異なる統計データのひも付け作業を担当する部門を分離することで、個人情報の安全性を担保している。
この他、法整備の進展や資金面での助成を行う機関の存在を背景に、ひも付けた行政データを用いた証拠に基づく政策立案(EBPM)に資する研究が広範に展開されている。
■ 日本の現状と今後
日本の企業・事業所では、事業所母集団データベースなどの共通IDの整備が進んでいる。一方で共通IDの活用による異なる統計間でのデータ利用は、十分には進んでいないのが現状だ。
個人・世帯については、国勢調査などで統計が作られているが、共通IDが付与されていないことから、共通IDを用いた他の統計とひも付けられていない。
国勢調査の回答率低下も問題視されており、今後は行政データの利活用の重要性は増すだろう。
その取り組みを加速させるためには、情報保護の観点も十分に踏まえつつ、個人・世帯の共通IDとして何を利用するのか、ひも付けられたデータをどのように安全に管理し、誰がどのような形で利用することができるようにするのか、といった視点が不可欠だ。
行政データを活用した分析や政策立案、さらには行政データに基づく政策評価が、社会全体の利益に資すると発信していくことも、国民理解を醸成するうえで重要だ。
【経済政策本部】
