西川氏
日本各地で災害が激甚化・頻発化するなか、政府は企業による事業継続計画(BCP)の策定・改善を促すため、「事業継続ガイドライン」を2026年度内に改定する予定だ。
こうした状況を踏まえ経団連は9月30日、東京・大手町の経団連会館で危機管理・社会基盤強化委員会企画部会(堀幸子部会長)を開催した。
BCPの策定や、防災・減災対策を通じた企業価値の向上について検討を深めるため、東北大学災害科学国際研究所の西川智特任教授から説明を聴き、意見交換した。説明の概要は次のとおり。
■ 広域災害への備え
日本が近い将来に直面する恐れのある大規模災害として、首都直下地震、南海トラフ地震、富士山噴火が挙げられる。
なかでも南海トラフ地震では、日本の人口の約半数に当たる約6125万人が何らかの形で被災すると想定されている。被災人口が被災地外の人口を上回るため、「非被災地域が被災地を支援する」という従来の構図は成り立たなくなる。
その結果、電力や水道をはじめとする基幹インフラの復旧に必要な人員、車両、重機などの資源が圧倒的に不足する。
こうした状況に備え、企業には「自助」と「共助」の両面からの取り組みが欠かせない。
自助の取り組みとして、電気・燃料・食料などの備蓄、情報通信手段の確保、施設の耐震化などを進める必要がある。
共助では、遠方の同業者や近隣の異業種と平時から連携し、人員や資機材などを相互に融通できる体制を整えるなど、双方の企業が危機を乗り越えられる仕組みづくりが求められる。
■ 経営戦略とBCP
BCPは、策定すること自体が目的ではない。災害や感染症などによって、経営資源であるヒト・モノ・カネ・情報が失われた場合でも、一定期間内に事業を再開し、企業が存続するための戦略だ。
すなわち、経営者自らが関与し、BCPに基づく訓練や演習を重ねながら、限られた資源をどの事業に優先して配分するかを判断することが重要となる。この過程を通じて、事業継続上の潜在的なリスクや弱点を明らかにし、経営改善のきっかけとすることができる。
内閣府が05年にBCPガイドラインを策定した当時は、各社のBCPは社内限りのものとされ、好事例を他社に展開することは難しかった。
しかし、産業界全体でBCPの実効性を高めるには、他社の参考となる実例を共有するとともに、優れた事業継続の取り組みを積極的に公表する風土を日本の企業社会に根付かせる必要がある。
こうした考えのもと、事業継続推進機構(BCAO)は「BCAOアワード」を創設し、事業継続の観点から優れた企業を表彰するとともに、その取り組みを広く紹介している。
例えば、コンビニチェーンのセイコーマートは、全店舗に電源キットと液化石油(LP)ガスを配備し、有事にも発光ダイオード(LED)ライトやPOS(販売時点情報管理)レジを稼働できる体制を整えている。18年の北海道胆振東部地震では、北海道全域が停電するなかでも、各店舗で温かい食事を提供した。
こうした好事例を共有することは、各社が自社に適した備えを検討し、企業社会全体の事業継続力を高めるきっかけとなる。BCPを起点に他社との連携や新たな工夫を生み出すことは、企業価値の向上にもつながる。
【ソーシャル・コミュニケーション本部】
