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Action(活動) 週刊 経団連タイムス 2026年10月29日 No.3749 欧州の対中政策、ニッセイ基礎研から聴く -競争力危機とチャイナショック2.0/中国委員会企画部会

伊藤氏

経団連は9月29日、東京・大手町の経団連会館で中国委員会企画部会(鈴木健史部会長)を開催した。ニッセイ基礎研究所の伊藤さゆり経済研究部専務理事から、欧州の対中認識を踏まえた経済・産業政策の動向について説明を聴くとともに意見交換した。説明の概要は次のとおり。

■ 欧州の競争力危機

近年、欧州では競争力低下への危機感が急速に高まっている。その背景には、中国との競争激化に加え、コロナ禍によるサプライチェーンの混乱やウクライナ侵攻に伴うエネルギー危機がある。

特に、経済面での中国との相互依存そのものが安全保障上のリスクとなり得るとの認識が広がり、EUでは経済安全保障が政策の重要課題となった。

こうしたなか、EUは産業政策の促進、域内産業の保護、パートナー国との連携強化を柱とする経済安全保障政策を推進してきた。2023年のG7広島サミットで合意された「デリスキング(リスク軽減)」の考え方もEUが提起したものであり、中国との関係を維持しつつ、戦略的依存の低減を目指している。

■ 対中政策の強化

EUは近年、中国を強く意識した法制度の整備を進めている。対内直接投資審査規則や輸出管理規則の強化に加え、外国補助金規則(FSR)や反威圧対抗措置(ACI)規則など新たな法制度も導入した。

中国の「一帯一路」構想に対抗する形で、グローバルサウスなどへのインフラ投資を進める「グローバル・ゲートウェー」も推進している。

一方、第2次トランプ政権発足後の米欧関係の変化も欧州に影響を与えている。EUでは、防衛・安全保障の自立性強化と並び、競争力強化が最優先課題に位置付けられている。

欧州委員会がまとめた、EUの競争力強化を目指す提言書「競争力コンパス」では、米中とのイノベーション格差の是正や経済安全保障の強化が重要目標に掲げられている。

■ 中国への警戒の高まり

中国からEUへの輸出が増加する一方、EUから中国への輸出は伸び悩み、貿易不均衡が拡大している。その要因には、米国の対中関税強化に加え、中国企業の競争力向上や輸入代替の進展、国家支援を背景とした過剰生産能力などがある。これらを背景に、欧州では「チャイナショック2.0」が問題視されている。

特に自動車やクリーンテック分野では、中国企業の存在感が急速に高まっている。EUは中国製電気自動車(EV)への追加関税を導入したものの、中国製EVの市場シェア拡大に十分な歯止めはかかっていない。

欧州では、太陽光パネル産業に続き、自動車や風力発電分野でも産業空洞化が進むことへの懸念が強まっている。

こうした状況を受け、EUでは製造業の競争力強化を図る産業促進法(IAA)の検討が進められている。同法は域内生産や雇用創出を重視しており、主に中国を念頭に置いているものの、日本企業のサプライチェーンにも影響が及ぶ可能性がある。

■ 中国への警戒と期待

EUは保護措置を強化する一方、中国との対話も継続している。26年にはEU中国貿易投資協議(TIC)を立ち上げ、不均衡是正や競争条件の公平化などを巡る協議を進めている。

多くの欧州企業にとって、中国市場は依然として重要な収益源だ。企業は撤退ではなく、中国事業を他の地域から分離し、中国国内で完結させる「サイロ化」や、サプライチェーンの多元化によってリスク管理を図っている。

欧州では中国との競争激化に対する警戒感が強まる一方、中国市場への期待も根強い。こうした警戒と依存の併存こそが、現在の欧州の対中姿勢を特徴付けている。日本企業も今後の欧中関係の展開を注視することが重要だ。

【国際協力本部】

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