経団連は10月15日、東京・大手町の経団連会館でカナダ委員会(鳥取三津子委員長、藤本昌義委員長)を開催した。外務省の熊谷直樹北米局長、経済産業省の服部桂治審議官(通商政策局担当)から、日カナダ関係の現状や米国・メキシコ・カナダ協定(USMCA)の見直しを巡る動向、今後の経済連携の可能性について、それぞれ説明を聴いた。概要は次のとおり。
■ 外務省
熊谷氏
カナダは、G7などで基本的価値を共有するとともに、自由で開かれたインド太平洋(FOIP)の実現や、経済・エネルギー・食料安全保障の観点から、日本にとって重要な戦略的パートナーだ。
2026年3月にマーク・カーニー首相が訪日した際には、日カナダ関係を「包括的戦略的パートナーシップ」に格上げし、「日本・カナダ包括的戦略的ロードマップ」の策定に合意した。首脳会談では、液化天然ガス(LNG)や原油、小型モジュール炉(SMR)、重要鉱物のサプライチェーンについて議論が行われた。
一方、トランプ米政権による関税措置などを背景に米カナダ関係は厳しさを増している。カナダは米国への依存を見直し、欧州やアジアの同志国との関係強化を目指している。カーニー氏は26年1月のダボス会議で、ルールに基づく国際秩序の機能不全を指摘し、ミドルパワーの連携の必要性を訴えた。
米国では、11月の中間選挙を控え、物価高などを背景に民主党に追い風が吹く一方、共和党は政治資金力に優位性があるほか、自党が有利になるよう選挙区割りを変更した。
国際環境が変化するなか、日カナダ両国が協力を深める意義は一層大きくなっている。25年12月の経団連カナダミッションでは、官民の連携によりカーニー氏との面会が実現した。今後も官民が一体となって両国関係を発展させていくことが重要だ。
■ 経産省
服部氏
米国とカナダの市場は、一つの生産ネットワークとして密接に結び付いている。両国間では素材や部品が複数回国境を越えて移動することもあり、関税、原産地規則や国境措置の変更が日本企業の事業にも連鎖的に影響する。
USMCAは26年7月の共同レビューで延長の合意に至らず、今後は毎年レビューが行われる。協定が直ちに失効するわけではないが、制度の予見可能性が低下する。
米カナダ間では追加関税と対抗措置の応酬が続いており、これらが長期的な投資判断に大きな影響を及ぼす。経団連が26年2月に公表したUSMCAの見直しに関する意見書の問題意識は、経産省も共有している。
他方、日カナダ間では、LNG、重要鉱物、蓄電池、SMR、AI・量子技術など、幅広い分野で協力の可能性が広がっている。カナダの豊富な資源や研究人材と、日本の製造技術や資金を組み合わせることで、強靭なサプライチェーンの構築や新たな事業機会の創出につながることが期待される。
経団連には、企業が直面する通商上の課題を政府と共有するとともに、日カナダ協力を具体的な投資・事業案件へと発展させる役割を期待する。28年の日カナダ外交関係樹立100周年も見据え、官民が連携して経済関係を一層深化させていきたい。
【国際経済本部】
