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Action(活動) 週刊 経団連タイムス 2025年11月27日 No.3707 ロボット戦略策定に向けた政府の取り組み -産業競争力強化委員会

奥家氏

経団連が2024年4月に公表した提言「日本産業の再飛躍へ」では、わが国の長期産業戦略で定めるべき戦略分野の最優先候補として「AI・ロボット」を提示した。

こうしたなか、25年6月に閣議決定された「経済財政運営と改革の基本方針2025」(骨太方針2025)には「AIや先端半導体の実装先となるロボットについて、25年度中に、実装拡大・競争力強化に関する戦略を策定する」と明記された。

経団連はこの戦略策定の進捗を注視しつつ、今後は「ロボット(AI+)」に関する検討を深めていく。

10月24日には、東京・大手町の経団連会館で産業競争力強化委員会(澤田純委員長、橋本英二委員長、手代木功委員長)を開催し、経済産業省商務情報政策局の奥家敏和審議官から、ロボット戦略策定に係る取り組み等について説明を聴くとともに意見交換した。説明の概要は次のとおり。

■ AIロボティクスの市場動向

産業用ロボットは久しくわが国のお家芸とされてきたが、世界市場における日本のシェアは低下傾向にある。

今後大きな市場の成長が見込まれるサービスロボット(例=配膳・配送、清掃、警備)も、米中が7割のシェアを占めるなど、日本は少量多品種市場(例=製造、建築、医療・介護、小売、物流、農業等)で後れを取っている。特に低価格戦略で市場を拡大する中国の配送・清掃・警備ロボットは優勢である。

人手不足が深刻化するなか、現場の多様なニーズに柔軟に対応できる多用途ロボットの開発に取り組む必要がある。

AIの急速な進歩に伴って多用途ロボットの市場投入が早まり、50年には7兆ドル市場になるとの予測もあり、米中は巨額の投資を進めている。日本企業から資金調達への不安の声が聞かれる一方、中国では自動運転からヒューマノイド分野への資金移動が顕著である。

■ 政府取り組みの現状

世界的にハードウエアの量産と価格低下が急速に進むなか、日本の強みであった精密な擦り合わせによる設計も優位性を失いつつある。今後は、ハードウエアとソフトウエアの「密結合」から「疎結合」に移行するとともに、AIを搭載することで自律的に判断し、動作することが可能なロボットの研究開発が求められる。

令和6年度補正予算では、多用途ロボットの機能に不可欠なモジュール等の標準化に向けて約100億円を充当した。ロボティクス分野の生成AI基盤モデルの開発に有効なデータプラットフォームの研究開発事業では、24年12月に設立したAIロボット協会(AIRoA)を採択した。

このように「大脳・小脳」的機能を備えたヒューマノイドの開発に向け、中長期的な視点からAI・データの活用に取り組んでいる。

■ 新たなロボット戦略策定に向けた取り組み

骨太方針2025で25年度内にロボット戦略を策定する方針が明記されたことを受け、経産省は「AIロボティクス検討会」を立ち上げた。集中的に検討を重ね、10月8日、戦略の方向性の骨子をまとめた。

AIの高度化に伴い、SDR(Software Defined Robot)(注)の競争が激化すれば、ロボット産業の裾野全体、ひいては安全保障にも影響しかねない。

今後政府が策定する戦略で肝となるのは、(1)モジュール化とソフトウエアベース構造への転換(2)AIによる自律性強化――である。

供給側でSDR時代に備え、水平分業型産業構造やサプライチェーン再構築が必要となる一方、需要側ではドメイン別にロードマップを策定すべく、SIer(システムインテグレーター=システム開発を請け負う企業)のコンサルティング能力強化が不可欠である。

スタートアップ育成と産学官連携も重要である。世界からトップ人材を集積すべく、物理的実証空間と大規模データ処理環境を備えた研究・人材の国際拠点としてCoE(Center of Excellence)を設立したい。

(注)ロボットの機能をハードウエアと分離し、ソフトウエアで定義・更新する設計・運用モデル

【産業政策本部】

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