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2007年度事業報告

III.委員会等の活動
【政策委員会】


1.政策全般

(1)総合政策委員会

(御手洗冨士夫 委員長)

1.総会決議の取りまとめ

日本経団連の活動の指針となる総会決議「創造的改革を推進し、社会と未来への責任を果たす」を取りまとめた(4月の当委員会において審議を行い、5月23日の定時総会において採択)。
同決議では、グローバル競争の激化や人口減少社会の到来といった大きな変化に対応し、経団連ビジョンで掲げた「希望の国、日本」を実現していくには、民間や地域の活力を最大限に引き出す以外に選択肢はないとの認識を示した。
そして、企業が、雇用の維持・創出、安全・安心で夢のある製品やサービスの提供を通じて国民生活に豊かさをもたらし、イノベーションによって競争力強化の主体となり、自らが成長の牽引役を担う気概をもって事業を展開することで、日本経済のさらなる発展は十分可能であると訴えた。また、強い倫理観に基づく活動によって、積極的に社会的責任を果たす決意を示した。

2.「成長創造」の取りまとめ

2008年頭に際し、持続的成長の実現を通じて日本経済を「飛躍の10年」に導くべく、「成長創造」と題する意見書を取りまとめ、1月1日、公表した。
同意見書では、まず、国民の間に広がる閉塞感を打ち破り、「希望の国」を築いていくために、国全体で共有できる明確な目標として、10年以内に世界最高の所得水準を実現することを掲げた。
そのための政策手段として、イノベーションの加速による成長力強化、EPA・FTA締結促進、道州制の導入、法人税改革などの事業環境整備、財政・社会保障など公的部門の改革の五つの柱を掲げた。
その上で、諸改革を加速度的に進めていくための起爆剤として、世界最先端の電子政府・電子社会の構築、低炭素社会確立に向けたイニシアチブの発揮、道州制につながる広域経済圏の形成の三つの先行プロジェクトを打ち出し、今後5年を目途に実現することを訴えた。

(2)国の基本問題検討委員会

(5月23日〜 草刈隆郎 委員長)
(〜5月23日 三木繁光 委員長)

4月に開催された自民党の「新憲法制定の集い」のパネルディスカッションに、三木委員長がパネラーとして参加した。また、5月に国民投票法が成立したことから、2010年度以降に実施される憲法改正において経済界の意見を反映できるよう、憲法改正をめぐる動向の把握に努めた。
1月に武貞秀士防衛省防衛研究所統括研究官より、北東アジアの安全保障情勢に関する講演を聞いた。

2.経済・法制関係

(1)経済政策委員会

(奥田 務 共同委員長)
(5月23日〜 畔柳信雄 共同委員長)
(〜5月23日 森田富治郎 共同委員長)

1.豊かな生活の実現に向けた経済運営のあり方の検討

日本経団連ビジョンで掲げた、真に豊かな国民生活の実現に向けて、企画部会(部会長:築舘勝利 東京電力副社長(〜2007年7月))において検討を進め、提言「豊かな国民生活の実現に向けた経済政策のあり方」(2007年6月19日)を取りまとめた。同提言では、国民全体の生活水準を向上させ、また経済的格差の固定化を防ぐ上で、持続的な経済成長の実現と、社会保障制度等のセーフティネットの安定的維持が重要であることを強く訴えた。

2.イノベーションの加速による成長促進に関する分析

平成20年度の税制改正ならびに予算編成に際し、経済界が主張する研究開発税制の強化、政府研究開発投資の拡充の必要性を明らかにするため、報告書「イノベーションの加速による成長促進について」(2007年11月20日)を公表し、研究開発投資の拡充が経済成長に大きなプラスの影響を与えるとの分析結果を広く訴えた。

3.経済・金融情勢の把握

経済情勢専門部会(月1回)では、内閣府および日本銀行からマクロ経済全般について、また、金融情勢懇談会(四半期に1回)では、日本銀行から金融市場情勢について、それぞれ説明を聞くとともに、意見交換を行った。

4.経済統計の改善に向けた検討、官庁統計における報告者負担の軽減

統計部会(部会長:佐々木常夫 東レ経営研究所社長)において、総務省から、新しい統計法のもとでの公的統計の整備状況や、2009年から実施される「経済センサス」について説明を聞くとともに、意見交換した。
また、佐々木部会長が政府の統計委員会に参画し、経済界の視点から意見を表明するとともに、企業対象の調査に係る統計報告調整法にもとづく総務省からの意見照会(約60件)に対して、企業の意見を踏まえ、記入者負担の軽減や調査内容の改善に努めた(レポート・コントロール制度)。

(2)税制委員会

(張 富士夫 委員長)
(大橋光夫 共同委員長)

本年度においては、税制抜本改革とその第一歩となる平成20年度税制改正の実現に向けて取組んだ。

1.税制抜本改革に向けた取組み

グローバル化の進展や本格的な少子・高齢化、人口減少を迎え、消費税を含む税体系の抜本改革が急務となっている。そこで、日本経団連では、抜本改革に向けた国民的な議論を深めるため、21世紀政策研究所と経済広報センターの協力をえてシンポジウム「今後のわが国税制のあり方〜国際的な税制改革の潮流〜」(11月27日)の開催やパンフレットの配布などを通じて、世論喚起に努めた。
7月の参議院選挙の結果を受け、平成20年度税制改正では、抜本改革は先送りされることになったが、政府税調答申、与党税制改正大綱、民主党税制改革大綱とも、社会保障費用の安定的な財源として、消費税の重要性が強く打ち出された。

2.平成20年度税制改正に際しての取組み

税制抜本改革に向けた考え方とともに、平成20年度改正で措置すべき事項を取りまとめるべく、企画部会(部会長:田中稔三 キヤノン副社長)を2007年2月から9回開催し、各税目について有識者からのヒアリングなどを交え、精力的な検討を行った。9月18日には、「今後のわが国税制のあり方と平成20年度税制改正に関する提言」を取りまとめ、平成20年度税制改正において、その実現を図るため政府・与野党への積極的な働きかけを行った。
同提言では、第一に、国際的に見てわが国の法人実効税率が高止まりの状況にある中、産業競争力強化の観点から、研究開発促進税制の維持・拡充を求めた。第二に、2008年12月の公益法人制度改革に対応する税制措置や寄付金税制の拡充を求めた。また、企業年金の運用資産に対する特別法人税の廃止、証券税制の優遇措置の維持、さらに、土地・住宅税制では、省エネ改修促進税制の創設、登録免許税の特例の延長などを要望した。
その結果、12月の与党税制改正大綱では、研究開発促進税制の税額控除限度額の引き上げ、公益法人関係税制および寄附金税制については、ほぼ日本経団連の要望通りの内容となった。
また、金融証券税制については、上場株式等の配当および譲渡益に係る軽減税率が、一定の上限を設けて、平成20年、21年の2年間、延長されることとなったほか、金融所得の一元的課税に向けて、上場株式等の配当と譲渡損失の通算制度が導入された。
土地・住宅税制については、登録免許税の特例措置の延長、住宅に係る省エネ改修促進税制の創設などが措置された。
さらに、企業年金の運用資産に対する特別法人税については、3年間の延長が図られた。

3.租税条約ネットワーク拡充や移転価格事務運営要領の改定への取組み

二国間の経済取引の一層の円滑化を図るため、オーストラリア、クウェート、パキスタン、カザフスタン、ブルネイ、UAE等、わが国にとって重要な貿易相手国との租税条約の交渉・締結に際し、経済界の意見を取りまとめ、その反映に取組んだ。
また、移転価格税制に関し、巨額の更正が相次いだことから、執行上のガイドラインである国税庁の移転価格事務運営要領を、より明確なものとするよう、経済界の意見を取りまとめ、その反映に努めた。

(3)財政制度委員会

(氏家純一 委員長)

1.財政の持続可能性確保に向けた検討

日本経団連ビジョン「希望の国、日本」(2007年1月1日)の具体化に向けた取組みの一環として、国・地方を通じた財政の中長期的な持続可能性を確立するための方策について検討を行った。
まず、5月以降、企画部会(部会長:大内俊昭 みずほ総合研究所社長(〜2008年1月))を中心に有識者との意見交換を進め、提言「国・地方を通じた財政改革に向けて」(2007年9月18日)を取りまとめた。同提言では、(1)基礎的財政収支黒字化後の財政健全化目標として、債務残高対GDP比の安定的低下を目指すべきこと、(2)最大限の歳出改革を前提に、なお必要な社会保障負担の増大に要する財源については、歳入改革により対応すべきこと、(3)道州制の導入を念頭に、国・地方の役割分担を踏まえて税・財政制度を再設計すべきこと、を訴えた。
さらに、10月以降、立法府および行政府における予算制度のあり方について検討を行った。

2.今後の財政運営のあり方をめぐる意見交換

9月に、津田廣喜財務事務次官を招いて委員会を開催し、財政の現状と課題、歳出・歳入一体改革について説明を聞くとともに、意見交換を行った。
また11月には、額賀福志郎財務大臣ほか財務省幹部と、御手洗会長をはじめとする日本経団連幹部との意見交換会を開催し、平成20年度予算編成および税制改正の検討状況や、今後の財政運営のあり方について種々懇談した。
2008年3月には、自民党の与謝野馨財政改革研究会会長を招いて委員会を開催し、財政改革に向けた課題について説明を聞くとともに、意見交換を行った。

3.財政制度等審議会への参画

財政制度等審議会(財務大臣の諮問機関)に経済界からの委員が参画し、建議書の取りまとめにあたり意見表明を行った。

(4)社会保障委員会

(5月23日〜 森田富治郎 委員長)
(〜5月23日 西室泰三 委員長)
(井手明彦 共同委員長)

1.安心で持続可能な社会保障制度の方向性に関する検討

「希望の国、日本−ビジョン2007」の具体化に向けた取組みを展開する一方、中長期的な観点から、安心で持続可能な社会保障制度の方向性について検討を深めた。
特に、社会保障制度改革の今後の方向性ということでは、企画部会(部会長:渡邉光一郎 第一生命保険取締役常務執行役員)を新たに設置して検討し、持続可能な制度の構築にあたって、給付と負担の一体的改革の推進、ライフステージに応じた制度横断的な見直しが不可欠といった基本的な考え方を中間的に整理した。
医療改革部会(部会長:齊藤正憲 三菱電機取締役専務執行役)では、2006年度に公表した意見書を踏まえ、給付の重点化や効率的な医療提供体制構築に向けた具体策を検討し、主に2008年度診療報酬改定審議に反映させた。
年金改革部会(部会長:岡本康男 大日本住友製薬会長)では、持続可能性を高める給付と負担のあり方を検討する一環として、基礎年金の税方式化について議論を深め、主な論点、課題等を整理した。

2.各種審議会等への対応と規制改革の推進

「社会保障国民会議」や社会保障審議会等の審議会、各種研究会等において、公的給付の増加の抑制、自助努力を支援する観点からの企業年金二法の改革、療養病床再編の着実な実施、介護保険事業運営の適正化、社会保障制度のICT化による効率化などを訴えた。社会保険庁改革にも協力し、年金記録問題に関する会員向けの説明会を開催した。また、6・11月には、医療、年金、社会保険分野における規制改革要望を取りまとめ、関係省庁に実現を働きかけた。

(5)金融制度委員会

(勝俣恒久 委員長)
(5月23日〜 奥 正之 共同委員長)
(〜5月23日 前田晃伸 共同委員長)

1.資本市場をめぐる課題への取組み

委員会では、金融商品取引法制の施行を前に同法の政令案・内閣府令案について、金融庁の細溝清史審議官を招いて説明を聞き(5月15日)、パブリックコメントに対応した。また、国際通貨基金の加藤隆俊副専務理事と世界経済情勢について懇談した(5月8日)。
資本市場部会(部会長:島崎憲明 住友商事副社長)では、「東証上場制度総合整備プログラム2007」を受けて、東京証券取引所の静正樹執行役員を招いて説明を聞くとともに(7月19日)、種類株式の発行等について意見を提出した(7月24日)。大阪証券取引所の上場制度案についても同趣旨の意見を提出した。さらに、東証での売買単位の集約に関するワーキング・グループおよび種類株式の上場制度整備に向けた実務者懇談会での検討に際して、売買単位の集約について株券電子化のスケジュールも踏まえ、混乱の小さい形での実施を求め、一定の複数議決権の種類株式について既上場企業による発行の可能性を否定することのないよう働きかけた。
また、企画部会(部会長:山崎敏邦 JFEホールディングス副社長)では、政府の金融・資本市場の競争力強化プラン策定に向けた取組みについて金融庁三井秀範市場課長から説明を招いて意見交換(6月15日)するとともに、政府がプランを発表した後、そこに盛り込まれたイスラム金融の解禁について国際協力銀行の前田匡史資源金融部長を招いて意見交換を行った(3月5日)。
2009年1月からの株券電子化制度に関して、発行会社も電子化のメリットを享受できるように意見の集約を行い(7月27日)、新たに費用負担となる証券保管振替機構の手数料を低廉なものとするよう求めた。

2.規制改革要望と金融審議会法制ワーキング・グループでの取組み

会員アンケート調査の結果をもとに、6月に日本経団連としての規制改革要望を取りまとめ、8月に再意見を提出するなど、その実現を働きかけた。
また、金融審議会金融分科会第一部会に設置された法制ワーキング・グループにおいて、広範なインサイダー取引規制の問題を指摘し、軽微基準を設けるように働きかけ等を行い、その結果を踏まえ、3月に金融商品取引法の改正法案が国会に提出された。

(6)経済法規委員会

(5月23日〜 勝俣恒久 委員長)
(〜5月23日 中村邦夫 委員長)
(萩原敏孝 共同委員長)

1.保険法改正、ウィーン売買条約批准に関する取組み

企画部会(部会長:八丁地隆 日立製作所顧問)では、2006年11月以来、法制審議会保険法部会において検討されている保険法の改正に向けて、法務省民事局の萩本修参事官から改正の動向について説明を聞くとともに、関係業界との意見交換を行った。これらの検討を踏まえ、保険ユーザーの立場からの考え方を取りまとめ、「『保険法の見直しに関する中間試案』に対するコメント」(2007年9月14日)を提出するとともに、保険法部会での意見反映に努めた。その結果、経済界の考え方を反映した保険法改正案が2008年通常国会に提出された。
2008年の通常国会での批准、加入を目指している国際物品売買契約に関する国際連合条約(ウィーン売買条約)について、外務省・法務省で設置した「ウィーン売買条約研究会」(2007年9月〜12月)に参加し、実務上の課題を議論した。

2.M&A法制の円滑な整備

M&Aに関する懇談会(座長:島崎憲明 住友商事副社長)と企画部会では、2006年12月の提言「M&A法制の一層の整備を求める」の実現に努めた。特に、合併等対価の柔軟化(いわゆる三角合併)について、「合併等対価の柔軟化の施行に伴う『会社法施行規則の一部を改正する省令案』に関する意見」(4月11日・企画部会)を取りまとめ、少数株主の保護や技術流出防止の観点からの規律を求め、2007年5月の制度解禁の際に、合併に係る詳細な開示の義務付けを実現した。また、「外国為替及び外国貿易法に基づく対内直接投資規制に関する政省令告示改正案に対するコメント」(7月27日・M&Aに関する懇談会)を公表し、先進諸国に準じた国の安全に係る分野での対内直接投資規制の整備を実現した。
また、企画部会では、ブルドック・ソース事件の最高裁決定を受けて、今後のM&A法制の課題について、西村あさひ法律事務所の武井一浩弁護士と意見交換を行った(8月31日)。

3.コーポレート・ガバナンス

コーポレート・ガバナンス部会(部会長:立石忠雄 オムロン副社長)では、東京証券取引所の長友英資常務取締役を招き、上場企業に期待されるコーポレート・ガバナンスについて意見交換を行った(6月1日)。これをもって意見書「我が国におけるコーポレート・ガバナンス制度のあり方について」(2006年6月)の趣旨の実現作業に区切りをつけ、部会としての活動を終了した。

4.消費者問題への対応

消費者法部会(部会長:渡邉光一郎 第一生命保険取締役常務執行役員)では、消費者契約法の見直しや国民生活センターのADR機能整備、特定商取引法の見直しなどについて、「『産業構造審議会消費経済部会特定商取引小委員会の議論の中間とりまとめ』に対するコメント」(2007年7月31日)、「『消費者契約法の評価及び論点の検討等について』に対するコメント」(2007年9月25日)などを取りまとめ、これらの法改正が企業の健全な事業活動を不当に制限することのないよう国民生活センターのあり方に関する検討委員会、国民生活審議会消費者政策部会、産業構造審議会消費経済部会特定商取引法小委員会等において積極的に意見反映に努め、与党に対する働きかけを行った。
その結果、経済界の意見を反映した特定商取引法改正案、国民生活センター法改正案が今次通常国会に提出されることになり、消費者法部会(3月11日開催)において、これらの法案について関係省庁から説明を聞くとともに、意見交換を行った。

5.独占禁止法改正への取組み

競争法部会(部会長代行:齋藤憲道 松下電器産業法務本部理事)では、内閣府独占禁止法基本問題懇談会報告書において公正取引委員会の審判制度廃止の方針が明確に打ち出されなかったことから、改めて審判廃止と審査手続きの適正化を求めるために、欧州競争法実態調査団(9月17〜21日、主査:村上政博 一橋大学大学院国際企業戦略研究科教授)をイギリス・フランス・ドイツに派遣し、各国競争当局や法曹実務家等から行政調査や適正手続きの保障の実態についてヒアリングや意見交換を行い、その成果を報告書として取りまとめた。
さらに、これらの調査・検討結果を踏まえ、「独占禁止法の抜本改正に向けた提言−審査・不服申立ての国際的イコールフッティングの実現を−」(2007年11月20日)を取りまとめ、政府部内だけでなく、自民党独禁法調査会をはじめとする与野党の関係者に対して積極的な働きかけを行った。
その結果、3月11日に国会に提出された独禁法改正法案の附則において「政府は、私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律の審判手続に係る規定について、全面にわたって見直すものとし、平成20年度中に検討を加え、その結果に基づいて所要の措置を講ずるものとする」と規定されるに至り、2009年通常国会における審判制度の見直しおよび審査手続きの改善を内容とする独禁法改正の実現に向けた道筋がつけられた。
また、景品表示法ならびに特定商取引法への消費者団体訴訟制度の導入については、消費者契約法における同制度との調整を行うことにより濫訴を防止するよう、「『独占禁止法・景品表示法における団体訴訟制度の在り方について』に対するコメント」(2007年8月13日)を取りまとめ、公正取引委員会団体訴訟制度に関する研究会や国民生活審議会消費者政策部会消費者契約法検討委員会等において働きかけた。その結果、経済界の意見を反映した特定商取引法改正案、景品表示法改正案、消費者契約法改正案が2008年通常国会に提出された。

6.司法制度改革への協力

司法制度改革に協力し、法務省からの聴取に応じ、裁判員休暇制度の導入検討状況、法令外国語訳の活用状況を報告した。また、2008年3月には、法曹養成・法曹人口問題について、第一東京弁護士会と意見交換を行うとともに、自民党司法制度調査会法曹養成・法曹教育及び資格試験のあり方に関する小委員会のヒアリングにおいて、企業内弁護士の増加に向けた課題について意見陳述を行った。

7.会計基準のコンバージェンス

企業会計部会(部会長:八木良樹 日立製作所取締役監査委員長)では、日本の会計基準が、国際的な会計基準と同等と認められるよう、コンバージェンス(収斂)の加速を支援している。2008年2月には、八木部会長を団長とする国際会計基準に関する欧州調査団を派遣するなど、国内外の関係方面へ積極的な働きかけや意見交換を行った。また、国際会計基準の最新動向を周知するよう、定期的な説明会を開催した。
2008年4月から導入される財務報告に係る内部統制報告制度に関し、効率的かつ有効な制度の実施を求める観点から「財務報告に係る内部統制報告制度に関する調査」をはじめ、会員の準備状況を踏まえつつ要望を取りまとめ、その実現に向けた働きかけを行った。
また、公認会計士制度見直しに向けた議論、四半期業績の開示制度導入に関連した検討に際し、アンケート調査などを実施の上、関係方面へ意見を発信した。
企業会計基準委員会における新会計基準等の審議に対しては、税制委員会と連携を図りつつ、経済界委員が積極的に参画し活発な議論を行うとともに、公開草案へのコメントを提出するなど、経済界の意見反映に努めた。

3.行革・産業・国土関係

(1)行政改革推進委員会

(5月23日〜 前田晃伸 委員長)
(〜5月23日 出井伸之 委員長)
(大久保尚武 共同委員長)

1.規制改革の推進

  1. (1) 提言「規制改革の意義と今後の重点分野・課題」の取りまとめ
    2007年1月に政府の規制改革会議(議長:草刈隆郎 日本郵船会長)が発足したことを受け、これまでの規制改革の取組みを総括するとともに、規制改革の今日的な意義や重点課題をまとめた提言「規制改革の意義と今後の重点分野・課題」(2007年5月15日)を発表し、政府・与党などに建議した。

  2. (2) 個別の規制改革要望の取りまとめ
    全会員企業・団体を対象にアンケート調査を実施して企業活動の現場から寄せられる要望を把握し、関係委員会の協力をえて、15分野205項目からなる「2007年度日本経団連規制改革要望」を取りまとめた。これを6月の政府の集中受付月間に提出するとともに、政府・与党関係先に建議した。また、新たな要望を含む8分野54項目の規制改革要望を、11月の政府の集中受付月間に提出した。

  3. (3) 委員会、規制改革推進部会の開催
    4月19日、規制改革担当の林芳正内閣府副大臣(当時)から「今後の規制改革の方向性について」と題する説明を聞くとともに、意見交換を行い、規制改革の推進に向けた政治主導の取組みを求めた。また、11月12日、規制改革会議の草刈隆郎議長から「規制改革会議がめざすもの」について説明を聞くとともに、意見交換を行った。さらに、規制改革推進部会(部会長:山岸隆 帝人専務取締役)では4回の会合を開催し、規制改革をめぐる課題や規制政策を改善するための取組みなどについて、それぞれ説明を聞くとともに、意見交換を行った。

2.行政改革の推進

  1. (1) 行政改革担当大臣との懇談会の開催
    10月31日、渡辺喜美行政改革担当大臣との懇談会を開催して、独立行政法人整理合理化計画の策定に向けた政府の取組みについて説明を聞くとともに、意見交換を行った。

  2. (2) 公務員制度改革に向けた取組み
    国家公務員法の改正にあたり、5月29日衆議院内閣委員会において、また6月18日参議院内閣委員会において、それぞれ日本経団連が2005年4月に取りまとめた提言をもとに、政府提案に賛成する立場から意見陳述を行った。また、各府省による再就職の斡旋にかわり、これを一元化するために法律で設置が決まった官民人材交流センターの制度設計に積極的に関与した。

  3. (3) 官民人事交流の促進に向けた取組み
    公務員制度改革の一環である官民間の人事交流拡大を推進するため、総務省の「官民人事交流推進会議」および同会議の専門部会を通じて日本経団連の意見を表明し、反映に努めた。また、総務省と人事院による「官民人事交流制度のさらなる活用に関する説明会」の開催(10月17日、於:東京 10月26日、於:大阪)に協力した。

3.その他

4月9日、政府の道州制ビジョン懇談会で、出井伸之委員長が「道州制の導入に向けた第1次提言」(2007年3月20日)の内容を説明し、道州制に対する日本経団連の考えについて理解を求めた。

(2)道州制推進委員会

(5月23日〜 中村邦夫 委員長)
(7月9日〜 池田弘一 共同委員長)

1.道州制導入の推進方策、道州制の制度設計に関する検討

当委員会は、2007年5月23日の定時総会において新たに設置され、9月11日に第1回会合を開催した。当日は、自民党道州制調査会長(当時)の杉浦正健衆議院議員から道州制の導入に向けた自民党の取組みについて説明を聞くとともに、企画部会(部会長:神尾隆 トヨタ自動車相談役)の設置と、2008年秋を目途に道州制の導入に向けた第2次提言を取りまとめるべく、具体的な検討を開始することを決めた。
企画部会では10月から2008年2月まで9回の会合を開催し、道州制のもとでの国と地方の役割分担や道州制の実現に向けて必要とされる当面の改革について有識者からヒアリングを重ねた。その成果は、「道州制の導入に向けた第2次提言−中間取りまとめ−」(2008年3月18日)として公表した。
なお、委員会では、2月8日に西尾勝東京市政調査会理事長を、また3月5日には京都府の山田啓二知事をそれぞれ招いて会合を開催し、道州制の導入に向けた課題や、第二期地方分権改革と道州制について説明を聞くとともに、意見交換を行った。

2.道州制導入の推進に向けた働きかけ

2008年3月18日、政府の地方分権改革推進委員会で中村委員長が日本経団連を代表して意見陳述を行い、道州制導入を前提に、国から地方への大幅な権限・財源の移譲と、地方支分部局の整理・統合、地方交付税の改革などを進めるべきと訴えた。
また、道州制担当大臣のもとに設置された道州制ビジョン懇談会に対しても、日本経団連の考え方が反映されるよう働きかけた。
さらに、自民党や、公明党、民主党と日本経団連の懇談会においては、それぞれ、道州制や広域経済圏の確立をテーマの1つにとりあげ、日本経団連の考え方に対する理解を求めた。

3.道州制シンポジウムの開催

  1. (1) シンポジウムの開催
    道州制導入の意義などに関する国民の理解を促進するため、9月18日には東京、11月7日には名古屋、2008年2月21日には大分において、それぞれシンポジウム「道州制で日本を変える」を開催した。各回のシンポジウムでは、御手洗会長が挨拶もしくは講演を行ったほか、日本経団連や各地方の経済団体の代表、知事、有識者などがパネルディスカッションに参加し、道州制導入の意義や道州制導入による効果などについて討議した。各回とも400名から500名以上の参加をえた。

  2. (2) 各地経済懇談会等における理解促進
    日本経団連と各地方の経済団体との間で開催される経済懇談会の場などを通じて、日本経団連の取組みや考え方を紹介し、道州制に対する理解をえるよう努めた。

(3)産業問題委員会

(齋藤 宏 共同委員長)
(5月23日〜 西田厚聰 共同委員長)
(〜5月23日 岡村 正 委員長)

1.企画部会の設置ならびに地域活性化策の検討

当委員会は、わが国の産業競争力の強化策について分野横断的に検討している。特に、現在、内閣の重要課題として地域経済の建て直しに向けた諸施策が検討されており、また、分権型国家の基盤として、活力ある地域の自立が不可欠であることから、経済界の視点から、地域経済再興や立地競争力の強化に向けた課題や望ましい施策について検討を開始している。具体的には、委員会において、12月に内閣官房地域活性化統合事務局の黒岩進次長より、政府の地域活性化に向けた諸施策について説明を聞くとともに、意見交換を行った。また、新たに設置した企画部会(部会長:廣瀬博 住友化学代表取締役専務執行役員)で、12月から3月にかけて、経済産業省、国土交通省、農林水産省より地域活性化に向けた各省の施策について、日本立地センターより地方自治体の企業誘致の取組み事例について、また、日本政策投資銀行より地域活性化に向けた同行の活動について説明を聞いた。さらに、企業より拠点戦略や立地決定要因、国内拠点に求める機能、地方自治体への期待などについて聞いた(2008年2月〜3月)。

2.エンターテインメント・コンテンツ産業の振興

エンターテインメント・コンテンツ産業部会(部会長:依田巽 ギャガ・コミュニケーションズ会長)では、「知的財産推進計画2007の策定に向けて」(2007年3月20日)で掲げた諸課題の実現を政府に働きかけ、知的財産戦略本部の「知的財産推進計画2007」に反映させた。また、盛り込まれた施策の実現に向け、映像産業振興機構およびコンテンツ・ポータルサイト運営協議会の運営、JAPAN国際コンテンツフェスティバルの開催(9〜10月)等に協力した。加えて、2006年度に引き続き映像コンテンツ大国を実現するための検討委員会(座長:久保利英明 エンターテインメント・ロイヤーズ・ネットワーク理事長)の運営に協力した。
また、知的財産委員会とともに、「知的財産推進計画2008の策定に向けて」(2008年3月18日)の取りまとめを行い、関係方面にその実現を働きかけた。

3.外国人材受入問題への取組み

「外国人材受入問題に関する第二次提言」(2007年3月20日)の実現を関係方面に働きかけるとともに、「規制改革・民間開放の推進に関する第3次答申」を受けた関係各省における外国人研修・技能実習制度の見直しの動きに対応し、「外国人材受入問題に関する部会」(部会長:島上清明 東芝常任顧問(〜11月30日))において「外国人研修・技能実習制度の見直しに関する提言」を取りまとめ(9月17日)、自民党外国人労働者等特別委員会(委員長:木村義雄 衆議院議員)へその実現を働きかけた。

(4)起業創造委員会

(高原慶一朗 共同委員長)
(原 良也 共同委員長)

1.企業発ベンチャーを通じた企業の創造力強化に向けた検討

次代のわが国経済・産業を担う新産業や新事業の創出に向けた検討を深めるべく、委員会において、5月にデフタ・パートナーズの原丈人会長、9月に経済産業省の吾郷進平新規産業室長より説明を聞くとともに、意見交換を行った。
また、企画部会(部会長:鳴戸道郎 富士通顧問)においては、企業の有する技術・アイデア等の資源を活用した起業創出(「企業発ベンチャー」)の機運の維持・向上および各社における企業発ベンチャーに向けた具体的取組みの高度化を推進すべく、10月から2008年3月にかけて、先進的な取組みを行っている企業(6社)より、新会社・新事業創出にむけた各社の取組みについてヒアリングを行った。

2.ヘルスケア産業の振興・発展に向けた検討

新産業として今後、成長が期待されるヘルスケア産業の振興・発展を図るべく、ヘルスケア産業部会(部会長:赤星慶一郎 オムロンヘルスケア社長)において、政府や有識者から説明を聞くとともに、意見交換を行った。(5月:千葉商科大学の島田晴雄学長およびエイジング・スペシャリストの朝倉匠子氏、6月:経済産業省、10月:日本総研の高橋克己上席主任研究員)また、2008年1月には、新潟県における「健康ビジネス連峰構想」の取組みについて、新潟県の河合雅樹新産業企画監より説明を聞くとともに、意見交換を行った。
ヘルスケア産業に係る規制改革についてアンケート調査を実施し、その結果にもとづき、11月の規制改革要望集中受付月間において、健康食品の表示に関する規制改革要望を提出した。
また、ヘルスケア産業に求められていることを探るべく、10月から2008年3月にかけて、健康投資と企業経営に関する分科会(座長:田中敦 JTB事業開発室長)において、従業員の健康増進に向けて先進的な取組みを行っている企業(10社)より事情を聞いた。

(5)情報通信委員会

(石原邦夫 共同委員長)
(5月23日〜 渡辺捷昭 共同委員長)
(〜5月23日 榊原定征 共同委員長)

1.電子行政の実現

IT新改革戦略推進ワーキング・グループおよび情報化部会(部会長:遠藤紘一 リコー専務取締役)での検討を踏まえ、「世界最先端の電子行政実現に向けた提言」(2007年4月17日)を公表し、電子行政推進会議の設置、モデル地域の創設など、政府に対し具体的な提案を行った。これを受け、政府は9月に「次世代電子行政サービス基盤等検討プロジェクトチーム」を立ち上げ、電子行政の実現に向けた本格的な検討をはじめた。また、5月にはIT新改革戦略評価専門調査会と合同で欧州電子行政調査ミッションを派遣し、欧州における電子行政の先進事例を調査した。

2.新たな通信・放送の制度的枠組みの検討

IP化などの技術革新により、通信と放送の融合が進む中、新たな通信・放送の制度的枠組みのあり方について、次世代情報産業ワーキング・グループ(25回開催)および2回の通信・放送政策部会(部会長:前田忠昭 東京ガス副社長)において検討し、提言「通信・放送融合時代における新たな情報通信法制のあり方」(2008年2月19日)を公表した。
また、総務省「通信・放送の総合的な法体系に関する研究会」中間取りまとめに対して意見を提出する(7月)とともに、同研究会において説明を行った(8月)。その他、7月に「ネットワークの中立性に関する懇談会」、11月に「ユニバーサルサービス制度の将来像に関する研究会」の報告書に対して意見を提出した。

3.インターネットガバナンスのあり方の検討

インターネット社会に関する諸課題を議論する国連主催の「第2回インターネット・ガバナンス・フォーラム(IGF)」(2007年11月、於:ブラジル・リオデジャネイロ)に向け、提言「官民連携による健全なインターネット社会の発展に向けて」(2007年9月18日)を取りまとめ、IGF事務局に提出した。その結果、IGF事務局が取りまとめた統合ペーパーに、日本経団連からの意見が数多く採用された。また、IGFではミッション(団長:加藤幹之 国際問題部会長(富士通経営執行役法務・知的財産権本部長))の派遣、2つのワークショップ主催を通じ、日本の経済界の意見表明などを行った。

4.高度情報通信人材の育成

2007年4月から、筑波大学・九州大学の大学院修士課程において、経済界の要望に応える高度ICT教育の新コースを開講している。開講後も、日本経団連は引き続き新コースの企画・運営に参画し、常勤・非常勤講師の派遣、インターンシップの実施などの支援を行い、経済界の期待に応える学生の育成を軌道に乗せることに貢献した。
一方、高度情報通信人材育成部会(部会長:山下徹 NTTデータ社長(〜2008年2月5日)、重木昭信 NTTデータ副社長(2008年2月5日〜))を中心に、提言「高度情報通信人材育成の加速化に向けて」(2007年12月18日)を取りまとめ、ナショナルセンター構想を提案した。同月に「第3回高度情報通信人材育成に関する産学官連携会議」を開催し、高度ICT教育を全国の大学に普及・拡大するに当たり、ナショナルセンターの必要性を産学官の関係者に訴えた。

5.企業の情報セキュリティ対策

「セキュア・ジャパン2007」(2007年5月23日)、「重点計画-2007」(2007年6月29日)、「個人情報の保護に関する基本方針の一部改正」(2008年2月18日)に関する意見を提出した他、内閣府の「第2回基本計画検討委員会」(2008年2月14日)において「第2次情報セキュリティ基本計画」に関する経済界の意見を表明した。

(6)運輸・流通委員会

(岡部正彦 共同委員長)
(亀井 淳 共同委員長)

1.「貿易諸制度の抜本的な改革を求める」提言の実現に向けた取組み

当委員会では、わが国産業の国際競争力強化の観点から取りまとめた「貿易諸制度の抜本的な改革を求める」提言(2006年11月21日)の趣旨を実現すべく、政府・与党など各方面に働きかけを行った。

  1. (1) アジア・ゲートウェイ戦略会議「物流に関する検討会」への参画
    アジア・ゲートウェイ戦略会議の「物流に関する検討会」に渡副会長が参画した。同検討会で取りまとめられた「貿易手続改革プログラム」の策定にあたっては、関係団体と連携して日本経団連の意見を反映させた(5月16日)。また、本プログラムに則って、「国際物流競争力パートナーシップ会議」幹事会、各省との官民協議会などに参画し(2007年6月〜2008年2月)、貿易手続き改革を実現させた。

  2. (2) 北東アジアの国際物流に関する調査団派遣
    韓国の釜山・ソウル、中国の吉林省に、丸山和博物流部会長(東レ常務取締役)を団長とする調査団を派遣し、北東アジアにおける国際物流の現状と韓国政府の取組みぶりを調査した。

  3. (3) 交通政策審議会港湾分科会でのプレゼンテーション
    交通政策審議会港湾分科会に丸山物流部会長が出席し、港湾行政の改革に関する日本経団連の考え方を説明した(5月24日)。

  4. (4) 財務省関税局への働きかけ
    関税・外国為替等審議会・関税分科会企画部会において日本経団連の考え方を意見陳述(10月19日)するとともに、「わが国におけるAEO制度の構築等に向けた保税・通関制度」に関するパブリック・コメントを提出した(2007年11月15日)。財務省関税局と意見交換を開催し(11月19日、20日、27日)、再三にわたる働きかけの結果、関税・外国為替等審議会の答申に経済界の考え方が反映された(12月13日)。

  5. (5) 規制改革会議との意見交換会
    規制改革会議(議長:草刈隆郎 日本郵船会長)の貿易タスクフォース(有富主査)において、日本経団連の貿易手続き改革に向けた取組み状況について説明するとともに意見交換を行った(4月12日、4月26日、10月25日)。

  6. (6) 自民党への働きかけ
    中川秀直自民党幹事長、菅義偉総務大臣(当時)を渡副会長が訪問し、上記提言を説明するとともに意見交換を行った(5月7日)。また、参議院自民党との意見交換会の行革・規制改革・都市地域政策分科会において、貿易諸制度の抜本的な改革をテーマに意見交換を行った(12月7日)。

2.わが国の物流・流通における課題への取組み

  1. (1) 流通部会(部会長:渡邉康平 伊藤忠商事副社長)において、流通経済大学の原田英生経済学部教授を招き、わが国におけるまちづくりと流通政策の課題について説明を聞くとともに、意見交換を行った(5月11日)。

  2. (2) 物流部会において、国土交通省の林田博大臣官房技術参事官を招き、アジア・ゲートウェイ構想実現に向けた国土交通省の取組みについて説明を聞くとともに、意見交換を行った(5月29日)。

  3. (3) 運輸・流通・貿易諸制度分野における規制改革要望を取りまとめた(6月)。

3.運輸業界の燃料費高騰問題への対応

委員会を開催し、国土交通省の春田謙審議官から原油価格高騰問題をはじめ、物流をめぐる諸課題への国土交通省の取組みについて説明を聞くとともに、意見交換を行った(12月12日)。その際、冬柴鐵三国土交通大臣から、書面で下請・荷主適正取引の推進のための緊急協力要請を受けた。こうした状況を踏まえ、下請・荷主の適正取引推進ガイドライン検討委員会に日本経団連も参画した(2007年11月〜2008年3月)。

(7)農政問題委員会

(荒蒔康一郎 共同委員長)
(5月23日〜 小林栄三 共同委員長)
(〜5月23日 大橋信夫 共同委員長)

1.農業構造改革の推進

農業構造改革の推進に向けて、政府・与党、農業関連団体、有識者との意見交換・交流を行った。6月と8月に委員会を開催し、それぞれ、農林水産省の高橋博経営局長と谷津義男衆議院議員と意見交換を行った。また、7月から9月にかけて、企画部会(部会長:松崎昭雄 森永製菓相談役)と食の産業部会(部会長:西野伊史 アサヒビール専務取締役専務執行役員)の合同部会を開催し、東京大学の生源寺眞一教授や日本農業法人協会と意見交換を行うなど、農業構造改革の推進に関係して、特に、農地制度のあり方に関する検討を行うとともに、その一環として、9月に茨城県への現地視察を実施した。
新たに設置した農政問題懇話会では、4月、8月、11月、2008年2月に会合を開催し、「農業構造改革」「食料自給率」「WTO農業交渉及びEPA交渉への対応」「穀物価格の高騰や世界的な食糧需給の変化がもたらすわが国食料供給への影響」「表示など食に係る安全・安心への対応」などをテーマに意見交換を行った。
6月、11月には、政府の規制改革要望集中受付月間において、農業への新規参入の促進等に向けた規制改革要望を提出した。

2.経済界と農業界との連携・協力の促進

7月から9月にかけて、経済界による農業界との連携・協力を促進すべく、委員企業における農業界との連携・協力の実例を調査した。また、農林水産省と経済産業省の両省より「農商工連携の促進等による地域経済活性化のための取り組について」が発表されたことを受け、食の産業部会を開催し(11月)、経済界と農業界との連携促進に向けた日本経団連としての具体的協力方策について意見交換を行った。

(8)都市・地域政策委員会

(岩沙弘道 委員長)
(5月23日〜 山口昌紀 共同委員長)
(〜5月23日 辻井昭雄 委員長)
(〜5月23日 平島 治 共同委員長)

1.提言「PFIの拡大に向け抜本的な改革を求める」の取りまとめとその実現に向けた取組み

  1. (1) 内閣府のPFI推進委員会総合部会における意見陳述
    内閣府より、PFI推進委員会総合部会における意見陳述の要請があったことから、日本経団連PFI推進部会(部会長:小倉勝彦 大成建設専務)を開催し、PFIの発展に向けた当面の課題に関して中間的に取りまとめた(2007年9月3日)。これを踏まえ、小倉PFI推進部会長が内閣府のPFI推進委員会総合部会において意見陳述を行うとともに、同部会委員との意見交換を行った(2007年9月11日)。

  2. (2) PFI提言の取りまとめ
    2007年9月の中間取りまとめや内閣府のPFI推進委員会総合部会での意見交換なども踏まえ、ガイドラインの改定や関係省庁の申し合わせだけではなく、関係法制度の見直しを求める提言「PFIの拡大に向け抜本的な改革を求める」を取りまとめ、政府・与党に建議を行った(2007年12月18日)。

  3. (3) 自民党への働きかけ
    渡副会長が、自民党PFI推進調査会の小杉隆会長、木村義雄会長代理、佐田玄一郎事務局長を訪問し、上記提言を説明するともに、その実現を働きかけた(2008年1月23日)。

2.国土形成計画首都圏広域地方計画の策定に向けた対応

国土交通省関東地方整備局が進めている国土形成計画の首都圏広域地方計画の策定に関して、経済界としての課題・要望を反映させるべく、関東地方整備局幹部との意見交換を行った(2007年6月12日)。

3.都市・地域の再生に向けた対応

  1. (1) 政府の地域活性化統合本部の山本繁太郎事務局長より、政府の都市再生・地域活性化事業の推進状況と今後の取組みについて説明を聞くとともに、意見交換を行った(2007年10月11日)。

  2. (2) 慶應義塾大学の上山信一総合政策学部教授より、魅力的な都市づくりによる地域活性化に関して説明を聞くとともに、意見交換を行った(2007年12月6日)。

  3. (3) 土地・住宅分野における規制改革要望を取りまとめた(2007年6月)。

(9)観光委員会

(7月9日〜 大塚陸毅 委員長)
(〜7月9日 江頭邦雄 委員長)

1.観光立国推進基本計画の策定に向けた働きかけ

観光立国推進基本法(2007年1月施行)にもとづき観光立国推進基本計画の策定作業が開始されたことを受けて、4月5日に当委員会企画部会(部会長:宇佐美皓司 日本郵船顧問)で「観光立国推進基本計画に関する意見」を取りまとめた。同意見は、その緊急性に鑑み取りまとめと同時に発表し、政府にその実現を働きかけた(当委員会では5月に事後承認)。その結果、6月に閣議決定された観光立国推進基本計画に日本経団連の考え方が反映された。また、2008年度には、日本経団連が同意見で求めていた国際観光プロモーション体制の一本化が実現する見通しとなった。
なお5月の委員会会合では、国際観光振興機構(JNTO)の間宮忠敏理事長およびビジット・ジャパン・キャンペーン実施本部の森山明事務局長を招き、国際観光プロモーション体制の整備に関する考えについて説明を聞くとともに、訪日韓国人旅行者の増大に向けた官民合同プロモーションの方策を探った。

2.第2回日韓観光協力会議

  1. (1) 日韓観光協力会議の開催
    当委員会では10月15日、東京において韓国の全国経済人連合会観光産業特別委員会との間で「第2回日韓観光協力会議」を開催し、北東アジアにおける観光ゾーン形成に向けた方策や、2008年の北京オリンピックや2010年の上海万博に向けた関係業界の取組みを中心に意見交換を行い、今後の協力に関する覚書を採択した。

  2. (2) 報告書の取りまとめ
    日韓観光協力会議の模様については、「第2回日韓観光協力会議報告書」を取りまとめ、12月13日に開催した当委員会で報告した。なお当日は、「くつろぎ宿」の深田智之社長を招き、福島県会津若松市の東山温泉における観光振興に関する講演を聞いた。

  3. (3) 会議のフォローアップ
    2008年2月に、企画部会のもとに「第2回日韓観光協力会議」フォローアップ会議を設置し、覚書に盛り込まれた事項の実現方策や中国との協力に関する検討を開始した。

(10)住宅政策委員会

(5月23日〜 渡 文明 委員長)
(〜5月23日 和田紀夫 委員長)

1.良質な住宅ストック形成の実現に向けた取組み

  1. (1) 参議院選挙の与党マニフェストへの対応
    2007年5月に「住宅政策に関する要望事項」を取りまとめ、2007年7月に行われた参議院選挙の与党マニフェストに反映されるよう、働きかけを行った。こうした活動の結果、住宅の耐震、バリアフリー、省エネルギー化の推進が明記された。

  2. (2) 自民党「200年住宅ビジョン」への対応
    2007年6月に公表された自民党「200年ビジョン」の実現に向けた住宅政策のあり方に関して、自民党住宅土地調査会の福田康夫会長や金子一義小委員長、渡海紀三朗小委員長、宮澤洋一小委員長(当時)より、説明を聞くとともに、意見交換を行った(2007年7月6日)。

2.住宅・土地税制改正に向けた取組み

  1. (1) 2008年度住宅・土地税制改正に向けた経済界の要望を取りまとめ(2007年8月)、日本経団連の「今後のわが国税制のあり方と平成20年度税制改正に関する提言」(2007年9月18日)に盛り込んだ。また、国土交通省や住宅・不動産業界をはじめとする関係業界などとも連携し、自民党国土交通部会住宅・土地ワーキングチームにおける意見発表(2007年10月)や与党幹部への説明など、経済界の要望実現に向けた働きかけを行った。

  2. (2) こうした活動の結果、2008年度税制改正において、地球温暖化防止に資する住宅の省エネルギー改修促進減税制度の創設や、住宅取得資金の確保に資する相続時精算課税制度の住宅資金贈与に関する特例の2年間延長、登録免許税の所有権移転登記に関する特例の3年間延長など、概ね日本経団連の要望が実現した。

4.技術・環境・エネルギー

(1)産業技術委員会

(5月23日〜 榊原定征 委員長)
(5月23日〜 中鉢良治 共同委員長)
(〜5月23日 庄山悦彦 委員長)
(〜4月24日 桜井正光 共同委員長)

1.イノベーションの創出を可能とする環境整備に向けた活動

  1. (1) 第3期科学技術基本計画のフォローアップ
    政府の第3期科学技術基本計画の進捗や今後の課題について、渡海紀三朗文部科学大臣と懇談した。
    また、科学技術政策部会(部会長:笠見昭信 東芝顧問)を中心に、総合科学技術会議の奥村直樹議員、内閣府の大江田憲治大臣官房審議官はじめ関係府省との会合を開催し、科学技術政策をめぐる最新の動向を聞き意見交換を行うとともに、第3期科学技術基本計画の中間評価に向けた検討を行った。
    さらに、笠見部会長が、総合科学技術会議有識者議員会合において研究開発独立行政法人についての意見陳述を行ったほか、自民党政務調査会科学技術創造立国推進調査会研究開発力小委員会において研究開発力強化法策定に向けた意見陳述を行った。
    重点化戦略部会(部会長:中村道治 日立製作所フェロー)では、政府の重点推進4分野(ライフサイエンス、情報通信、環境、ナノテク/材料)における政府研究開発の評価に向けた検討を行った。

  2. (2) イノベーション25への協力
    2006年10月に岡村副会長(当時)が「イノベーション25戦略会議」の委員に就任し、経済界の立場から、「イノベーション25」の策定に参加した(閣議決定6月1日)。また、「イノベーション25」に掲げられた社会還元加速プロジェクトの推進にあたり、内閣府との意見交換や検討組織への委員の推薦などの協力を行った。

2.産学官連携の推進

6月に京都で第6回産学官連携推進会議を、11月に東京で第7回産学官連携サミットを、内閣府、日本学術会議などと共催した。
また、提言「イノベーション創出を担う理工系博士人材の育成と活用を目指して」(2007年3月20日)のフォローアップとして、「大学・大学院生への企業の奨学金」の調査、「採用選考に関する企業の倫理憲章」の改訂、「博士セミナー」の開催、「大学と企業との人事交流」の検討などを行うとともに、教育改革や産学連携を積極的に進めている大学等関係者からのヒアリングを実施し、報告をまとめた。

(2)海洋開発推進委員会

(伊藤源嗣 委員長)

当委員会より、これまで累次の提言において一元的な体制整備の必要性を繰り返し指摘してきたところ、わが国の海洋行政のあり方を見直し、一元的な海洋政策推進体制を構築することを目的として4月に海洋基本法が制定された。その後、7月に内閣に総合海洋政策本部が設置され、海洋基本計画策定に向けた検討を開始した。
それに合わせ、当委員会では5月に石破茂衆議院議員より海洋基本法の概要について、8月に大庭靖雄総合海洋政策本部事務局長より今後のスケジュール等について、10月に東海大学の武見敬三教授より海洋基本法制定の軌跡と海洋基本法の意義について説明を聞くとともに、総合部会(部会長:鈴木賢一 日本水産相談役)を中心に海洋基本計画に対する経済界の考え方を検討し、提言「今後の海洋政策のあり方と海洋基本計画策定へ向けて」(2007年10月16日)を取りまとめた。
また、10月に海洋基本法制定記念大会で、11月に自民・公明・民主の関係議員と有識者で構成する海洋基本法フォローアップ研究会で、12月に自民党海洋政策特別委員会で、伊藤委員長より今後の海洋政策に対する経済界の意見を表明した。
そのほか、6月には伊藤委員長がジョー・ボルジ欧州委員会委員(漁業・海事担当)の表敬訪問を受けた。

(3)環境安全委員会

(新美春之 共同委員長)
(鮫島章男 共同委員長)

1.環境問題全般

  1. (1) 環境大臣との懇談会の開催
    12月10日、鴨下一郎環境大臣との懇談会を開催し、地球温暖化問題を中心に意見交換を行った。

  2. (2) 委員会の開催
    10月2日に、経済産業省の伊藤元大臣官房審議官より、温暖化対策をめぐる諸課題について、11月7日に東京電力環境部より企業におけるオフィスならびに家庭における温暖化対策について、それぞれ説明を聞くとともに、意見交換を行った。

2.地球温暖化問題への対応

  1. (1) 意見書の建議
    地球環境部会(部会長:猪野博行 東京電力常務取締役)が中心となって、2013年以降の国際枠組について、「京都議定書後の地球温暖化問題に関する国際枠組構築に向けて」(2007年4月17日)、「ポスト京都議定書における地球温暖化防止のための国際枠組に関する提言」(2007年10月16日)をそれぞれ取りまとめるとともに、国連気候変動枠組条約締約国会議(COP13)等の場において、ワークショップを開催し、わが国経済界の取組みや考え方を紹介した。

  2. (2) 環境自主行動計画(温暖化対策編)の着実な推進
    環境自主行動計画2007年度フォローアップを実施し、11月に結果を公表した。調査には産業・エネルギー転換部門35業種を含む60業種・企業が参加した。産業・エネルギー転換部門については、CO2排出量が90年度比1.5%減となり、7年連続で「2010年度のCO2排出量を90年度レベル以下に抑制する」との統一目標を達成した。また、外部有識者で構成する第三者評価委員会を11月〜3月に計5回開催し、透明性・信頼性向上のための課題等につき評価報告書を取りまとめた。

  3. (3) 京都議定書目標達成計画見直しへの対応
    鮫島共同委員長が産業構造審議会地球環境小委員会、猪野部会長が中央環境審議会地球環境部会の委員として京都議定書目標達成計画の評価・見直しに携わった。また、これに関連し、「京都議定書目標達成計画の評価・見直しに関する最終報告(案)に対する意見」を政府に提出した(2008年1月25日)。

  4. (4) 「東京都気候変動対策方針」への対応
    本年6月発表の「東京都気候変動対策方針」において導入が検討されている大規模排出事業所への削減義務ならびに排出量取引制度について、業界団体と連携の上、反対意見を提出した(12月21日)。

  5. (5) 温暖化対策の強化・拡充に向けた働きかけ
    6月に会員企業・団体に対し、環境自主行動計画への取組ならびに政府が進める国民運動への協力を要請するとともに、日本経団連においても軽装運動等を実施した。また、8月には、省エネの観点から日本経団連事務局において試行的に1時間のくり上げ勤務を実施した。さらに、「地球温暖化防止のためのオフィスや家庭部門での取組みフォローアップ調査」を行い、対応の着実な進捗を確認した(10月)。

3.循環型社会形成に向けた取組み

  1. (1) 環境自主行動計画〔循環型社会形成編〕フォローアップ調査の実施等
    本年度も昨年度同様、40業種が参加し、業種ごとの3Rの取組み状況等を調査し、2008年3月に公表した。2006年度の経済界全体の産業廃棄物最終処分量は、90年度比85.2%減(2005年度実績の2.0%減)であった。

  2. (2) 循環型社会形成推進基本計画や資源有効利用促進法の見直し等への対応
    中央環境審議会循環型社会計画部会における循環基本計画の見直し作業において、7月に吉川廣和 廃棄物・リサイクル部会長(DOWAホールディングス会長)が意見陳述するなど同部会の検討に参画するとともに、環境省大臣官房廃棄物・リサイクル対策部の紀村英俊企画課長を招いて4回ほど廃棄物・リサイクルワーキング・グループ(座長:志村明彦 JFEスチール資源循環推進部総括室長)等を開催し、経済界の意見反映を図った。3月6日には廃棄物・リサイクル部会を開催し、環境省の由田秀人廃棄物・リサイクル対策部長等を招き、本問題をはじめ循環型社会形成に向けた当面の重要課題について懇談した。
    資源有効利用促進法の見直しについて、産業構造審議会における検討に参画し、経済界の意見反映を図った。その他バーゼル条約に係るトータルBAN条約改正問題について、経済産業省等から説明を聞くとともに、意見交換を行った。

  3. (3) 低濃度PCB汚染重電機器の安全かつ合理的な処理方法の検討
    低濃度PCB対策ワーキング・グループ(座長:影山嘉宏 東京電力環境部長)のもとに設けた世話役会を中心に、低濃度PCB機器の合理的な処理方法等について検討を行い、中央環境審議会微量PCB混入廃重電機器処理専門委員会における検討に経済界の意見反映を図った。8月、同ワーキング・グループを開催し、環境省廃棄物・リサイクル対策部の木村祐二産業廃棄物課長と懇談した。

  4. (4) 廃棄物・リサイクル分野に係る規制改革の推進
    廃棄物処理法の欠格要件や特例制度の見直しなどの規制改革要望をまとめた。また、環境省の欠格要件のあり方検討会に参画し、経済界の意見反映を図った。

  5. (5) 容器包装リサイクル法に関する提言(2005年10月)のフォローアップ
    12月に懇談会を開催し、経済産業省の安藤晴彦リサイクル推進課長から容リ法をめぐる諸課題について説明を聞くとともに、3R推進団体連絡会より「容器包装の3R推進に係る自主行動計画フォローアップ調査結果」の報告を受けた。

  6. (6) 不法投棄原状回復基金への協力
    2007年3月の環境省との共通理解にもとづき本年度も本基金への拠出に協力した。協力にあたり11月に説明会を開催し、環境省から不法投棄対策等の説明を聞いた。

4.環境規制制度の改善に向けた動き

  1. (1) 土壌環境政策への対応
    6月に環境省が「土壌環境施策に関するあり方懇談会」(環境省水・大気環境局長の諮問機関)を設置し、施行後5年となる土壌汚染対策法の見直しに向け検討を開始したことに対応し、環境管理ワーキング・グループ(座長:奥村彰 住友化学リスポンシブルケア室主幹)では、有識者との意見交換等を踏まえ、経済界の意見を適宜取りまとめた。環境省の懇談会では、奥村座長をはじめとする経済界の委員から、法律の対象範囲外で広く実施されている企業の自主的な土壌汚染調査、対策は、法の趣旨である国民の健康被害の防止に有効な対策となっていることや、安易な対象範囲の拡大には反対であるなど、経済界の意見反映に努めた。

  2. (2) 化学物質政策への対応
    化学物質管理制度(化管法)は、施行後7年を経過したため、産業構造審議会、中央環境審議会において施行状況に対する評価や、国際的な整合性に配慮した今後の方向性に関する中間まとめが行われた。化学物質の自主管理の有効性が改めて明示されるなど、概ね経済界の意見を反映したものとなった。
    続いて、化学物質審査規制法(化審法)は、産業構造審議会、中央環境審議会、厚生科学審議会において化管法との一体的な運用の可能性等について検討が開始された。

5.危険物・防災・保安分野に係る規制改革要望の取りまとめ

危険物・防災・保安分野に係る規制改革要望を2006年6月に取りまとめ、実現を働きかけた。具体的には、技術開発の進展等に伴い、より柔軟な対応が可能と考えられる分野や、実態を踏まえた対応をすることで、一層の安全確保に資する事項等について要望を取りまとめた。また、保安諸規制の合理化、整合化の観点から重複規制の抜本的な解消について昨年度に引続き要望を行った。

(4)資源・エネルギー対策委員

(柴田昌治 共同委員長)
(5月23日〜 岡 素之 共同委員長)

1.エネルギー戦略に係る提言(2006年5月9日)の長期エネルギー需給見通しへの反映

総合資源エネルギー調査会需給部会では、「新・国家エネルギー戦略」(2006年5月策定)や「エネルギー基本計画」(2007年4月閣議決定)などの政府のエネルギー戦略を踏まえ、2010年および2030年を展望したエネルギー需給見通しに係る検討が進められた。本部会における検討に、柴田共同委員長が委員として参加し、提言「わが国を支えるエネルギー戦略の確立に向けて」(2006年5月9日)に沿って、原子力推進の重要性など、経済界の意見反映に努めた。

2.省エネルギー対策への対応

上記2010年のエネルギー需給見通しについては、政府の「京都議定書目標達成計画」の改定状況を踏まえて検討が行われたことから、新たな温暖化対策については、環境安全委員会と適宜連携しながら経済界の意見反映に努めた。また、追加的な省エネ対策を検討すべく政府が設置した省エネ部会政策小委員会に参加し、経済界への過大な負担を回避し、自主的な省エネ活動が適切に評価される制度が構築されるよう、働きかけを行った。9月11日には、企画部会(部会長:佐藤順一 IHI取締役兼常務執行役員)と地球環境部会を合同で開催し、資源エネルギー庁の三木健省エネルギー対策課長から「今後の省エネルギー政策の方向性」について説明を聞くとともに、経済界の意見反映に努めた。
そのほか、9月にIEA(国際エネルギー機関)が実施したわが国エネルギー政策に係る対日詳細審査に協力した。

3.資源・エネルギー分野に係る規制改革への取組み

6月に資源・エネルギー分野に係る規制改革要望を取りまとめた。具体的には、必要不可欠な安全水準の確保を前提に、コスト削減や新たな技術やサービスの提供、効率的な資源開発などに向けた経済界の取組みを支援し、多様なエネルギー需要に応えられるよう、規制の合理化や見直しを求めた。

(5)知的財産委員会

(野間口有 委員長)

1.イノベーションの促進に向けた知的財産政策の推進

当委員会では、世界特許の実現、模倣品・海賊版対策の強化など、「希望の国、日本」で提言した事項を中心に取組み、イノベーションの促進に向けた知的財産政策の推進に努めた。

  1. (1) 知的財産推進計画2007の提言のフォローアップと、提言「知的財産推進計画2008の策定に向けて」の取りまとめ
    2007年12月、岸田文雄内閣府知的財産戦略担当大臣と日本経団連の知的財産関係幹部との懇談会を開催し、わが国の知的財産政策のあり方について意見交換を行った。また、7月には、小川洋知的財産戦略推進事務局長、中嶋誠特許庁長官、12月には、肥塚雅博特許庁長官、3月には、松村博史知的財産戦略推進事務局次長との意見交換を行った。さらには、知的財産政策の評価に関するアンケート調査を行うとともに、「知的財産推進計画2008」(2008年3月19日)の策定に向けて、産業問題委員会エンターテインメント・コンテンツ産業部会と連携して経済界の意見を取りまとめ、提言を行った。

  2. (2) 諸外国との連携と海外の要人との意見交換
    2007年4月、G8ビジネス・サミット(ベルリン)において、御手洗会長より、模倣品・海賊版の撲滅に向けた各国の連携を呼びかけ、賛同をえた。また、8月には、ドイツBDIとの共同声明を発表し、知的財産の保護の強化について、日・EU間の協力を強化していくことで合意した。
    また、2007年5月、ジェフリー・オニアマ世界知的所有権機関事務局次長、11月、李東生中国国家工商行政管理総局副局長、ランドール R.レーダー米国巡回控訴裁判所判事、12月、マーシャル C.フェルプスマイクロソフト副社長、2008年1月、G.シバンダアフリカ広域知的財産機関長官、P.エドゥ・エドゥアフリカ知的財産権機構長官と意見交換を行った。

2.技術の国際標準化に関するアクションプランの策定・実行

国際標準化戦略部会では、技術の国際標準化に関し当面取組む主な事項を、「技術の国際標準化に関するアクションプラン」(2007年5月15日)として取りまとめ、それにもとづく活動を実施した。
具体的には、国際標準化に関する「経済Trend」の特集、経済広報センターとの共催のEU規制・標準セミナーの開催、経済界における国際標準化への取組み状況に関するアンケート調査の実施、21世紀政策研究所と連携した海外における国際標準化戦略の調査・分析、国際標準化の観点から取組みを強化すべき研究開発課題抽出のためのアンケート調査の実施、「経済Trend」誌上の国際標準化機関で活躍する企業人のインタビュー記事の連載等を行った。

3.デジタル化・ネットワーク化時代における著作権法制の中長期的なあり方に関する検討

昨年度取りまとめた「中間取りまとめ」の内容を、「知的財産推進計画2008の策定に向けて」に盛り込むとともに、2007年11月には、文化審議会著作権分科会法制問題小委員会「中間まとめ」および私的録音録画小委員会「中間整理」に対する意見を提出した。

4.その他

6月には、公正取引委員会「知的財産の利用に関する独占禁止法上の指針(案)」に対する意見、8月には、知的財産戦略本部「分野別知的財産戦略の策定にあたって検討すべき課題」に対する意見、11月には、産業構造審議会「通常実施権等登録制度ワーキンググループ報告書(案)」に対する意見、2008年2月には、特許庁「イノベーションと知財政策に関する研究会の検討課題」に対する意見を提出するとともに、企画部会(部会長:加藤幹之 富士通経営執行役)で、経済産業省、特許庁との意見交換を行った。

5.社会関係

(1)広報委員会

(5月23日〜 古川一夫 委員長)
(〜5月23日 渡 文明 委員長)

日本経団連活動に関する広報を、国内外に対して、積極的かつタイムリーに行った。

(2)企業行動委員会

(5月23日〜 草刈隆郎 委員長)
(大歳卓麻 共同委員長)
(〜5月23日 武田國男 委員長)

1.「企業行動憲章の実行の手引き」の改訂

2004年の「企業行動憲章」改定から3年の間に、会社法、金融商品取引法、独占禁止法、消費生活用製品安全法など、企業経営に大きな影響を及ぼす法令が数多く制定、改正されたのを踏まえて、「実行の手引き」を改訂し、2007年4月17日に公表した。

2.企業倫理月間の実施

2003年以来、毎年10月を「企業倫理月間」と定め、全会員企業・団体に企業倫理の徹底をすることとした。2006年10月も、会員に企業行動の総点検を要請するとともに、セミナー、研修会等を開催した。

  1. (1) 「企業倫理徹底のお願い」の送付
    経営トップが率先して法令の遵守、企業倫理の確立、CSRへの積極的な取組み、社会からの批判に対する真摯な対応をすることが組織存続と企業価値向上の基本であるとして、御手洗会長から全会員代表者あてに、「企業倫理徹底のお願い」を送付し、事業活動を含む企業行動全般の総点検を求めた。

  2. (2) 企業倫理トップセミナーの開催
    約400名の参加をえて、第6回企業倫理トップセミナーを開催した。内部統制システムの構築に関する鳥飼重和弁護士(鳥飼総合法律事務所代表)の講演に続き、パネル討議を実施した。パネル討議では「安心・安全を重視した経営」をテーマに、草刈委員長のコーディネートで、パネリストとしてアサヒビールの池田弘一会長、ローソンの新浪剛史社長、日本消費生活アドバイザー・コンサルタント協会の古谷由紀子常任理事、桐蔭横浜大学の郷原信郎コンプライアンス研究センター長が討議を行った。企業が消費者とのコミュニケーションを十分に行った上で、消費者の視点に立った安全、品質の確保のための行動を取ることが重要であることを、再認識する機会となった。

  3. (3) 関西企業倫理セミナーの開催
    初めて東京以外の地域で企業倫理セミナーを関西で開催し、約300名が参加した。中島茂弁護士(中島経営法律事務所代表)からの「企業不祥事は、なぜなくならないのか」と題する講演と併せて、立石忠雄企画部会長(オムロン副社長)、廣瀬博社会的責任経営部会長(住友化学専務執行役員)から、企業行動憲章実行の手引きの改訂などについて報告した。

3.企業倫理アンケート調査の実施

企業倫理月間に「企業倫理への取組みに関するアンケート調査」を実施したところ、593社(回答率:44.35%)から回答をえた。
アンケート結果を通じて、自社の姿勢や行動原則を示した「行動憲章」を制定している企業が、2003年の79%から98%に増えたほか、社内横断的取組体制の整備、企業倫理ヘルプラインの設置、教育・研修制度の構築も含め、企業倫理に取組むための体制整備が進展していることが明らかとなった。その他、企業倫理の浸透・徹底のため、多くの企業が経営トップによる定期的なメッセージの発信や教育・研修の強化とその浸透度合いを測るための評価に取組んでいることが明らかとなった。これらの結果を企業倫理徹底の参考として会員企業に配布した。

4.消費者との関係強化に関する取組み

企業行動憲章の第1条「社会的に有用な製品・サービスを安全性や個人情報・顧客情報の保護に十分配慮して開発、提供し、消費者・顧客の満足と信頼を獲得する」という精神の実現を、トップセミナーや企業倫理アンケート調査などを通じて会員企業に働きかけた。
また、消費者・顧客から寄せられたニーズや苦情を製品やサービスの改善に活かしている企業の実態を踏まえ、国民生活審議会などにおける消費者行政のあり方に関する検討に対して、関連委員会と連携して対応した。

5.ISOにおける社会的責任の規格化に向けた動き

社会的責任経営部会(部会長:廣瀬博 住友化学専務執行役員)では、ISOの社会的責任規格(ISO26000)の起草作業に対して、日本産業界エキスパートを通じて建設的な提案を行った。11月にウィーンで開催された第5回のSR規格に関するワーキング・グループでは、経済界グループ内の連携を強化しながら対応を行った。

6.企業不祥事への対応

日本経団連の会員に関わる不祥事を調査するとともに、会員からの問い合わせに応じてコンプライアンス体制の構築・改善に向けた助言を行った。

(3)社会貢献推進委員会

(池田弘一 委員長)
(5月23日〜 古賀信行 共同委員長)

1.企業の社会的責任(CSR)の観点から社会貢献活動のあり方を検討

CSRの課題でもある持続可能な社会を実現するために、企業の社会貢献活動が果たすべき役割や可能性、今後重要となる活動領域や推進方法について検討を行い、中間報告「CSR時代の社会貢献活動」(2007年12月18日)を取りまとめた。さらに、同報告をもとに、先進的な事例などを含む、より詳細な資料を「CSR時代の社会貢献活動〜企業の現場から」として2008年6月発行予定で執筆作業を行った。

2.社会的課題の解決に寄与する社会貢献活動のあり方の検討

7月の委員会では、「持続可能な社会の実現に向けたNGOと企業の協働」をテーマに、2008年G8サミットNGOフォーラムの星野昌子代表から、洞爺湖G8サミットに向けてのNGOの動きについて説明を聞いた。
12月の委員会では、早稲田大学商学学術院の恩蔵直人教授から、社会的課題や主張に主眼を置いた「社会的責任のマーケティング」について講演を受け、事業の成功とCSRを両立させていくための戦略的対応について意見交換した。
92年から毎年、経団連ゲストハウスで開催している「社会貢献フォーラム」では、「社会貢献活動の効果をより高めるために」をテーマに、活動評価、社会と会社を繋ぐコーディネーターとしての担当部署の役割など実践面に焦点をあてて討議を行った(2008年2月22日、23日)。
社会貢献担当者懇談会(座長:嶋田実名子 花王社会貢献部長)では、中間報告やハンドブック取りまとめ作業のほか、CSRと社会貢献の関係性、社会貢献活動のグローバルな展開、災害被災地支援のあり方などをテーマに、実務担当者の会合を6回開催した。

3.2006年度社会貢献活動実績調査

2006年度の社会貢献活動の実績について調査し、435社(回答率:31.0%)から回答をえた。社会貢献活動支出額は、1社平均では4億5,400万円と前年度に比べて1億円増加し、91年度(5億2,500万円)に次ぐ歴代2番目の額となった。これは、計上利益額の1社平均が最高額となったことだけでなく、企業の社会的責任の一環として社会貢献活動を位置づけ、積極的に展開しようとする企業の姿勢が数字として表れた結果である。

(4)政治対策委員会 (6月14日付で政治・企業委員会より名称変更)

(5月23日〜 大橋光夫 委員長)
(〜5月23日 宮原賢次 委員長)

1.政党の政策評価にもとづく政治寄付の促進

政策本位の政治の実現に向け、11月に政党の政策評価を発表するとともに、会員企業に対して、企業の重要な社会貢献として自発的な政治寄付を実施するよう呼びかけた。
また、12月には、2008年の評価の尺度となる「優先政策事項」を公表した。

2.政党との政策対話

政党幹部との間で各種会合を開催し、重要政策課題をめぐり意見交換を行った。

  1. (1) 自由民主党首脳との懇談会(9月、10月、2008年1月)
  2. (2) 参議院自民党幹部との懇談会(全体会は12月、2008年2月。分科会は計4回開催)
  3. (3) 公明党首脳との懇談会(10月)
  4. (4) 民主党幹部との懇談会(2008年2月)
  5. (5) 政党と政策を語る会(全会員案内、自民党:5月、民主党:6月)

3.政治に関する諸制度についての情報収集

政治団体の支出の透明性向上を図るための政治資金規正法改正(2007年6月成立)をはじめ、政治寄付や選挙制度をめぐる各種制度について情報収集を行った。

(5)教育問題委員会

(5月23日〜 三村明夫 委員長)
(蛭田史郎 共同委員長)
(〜5月23日 草刈隆郎 委員長)

1.「教育と企業の連携推進に向けて−教育と企業の連携推進ワーキング・グループ中間まとめ」を公表

教育と企業の連携推進ワーキング・グループ(座長:小西ゆかり 松下電器産業理事)において、教育と企業の連携促進に向けた課題の検討結果を取りまとめた。この中で、当委員会や学校が企業との連携に積極的に取組むよう意識改革を求めるとともに、企業自らも教育支援活動の拡充に取組む方針を明らかにした。また、企業の教育支援事業リスト(194社405件)をホームページで公表した。さらに、教育と企業との連携促進の重要性とその促進にあたっての課題について、教育再生会議会合(5月)や渡海紀三朗文部科学大臣との懇談(1月)の場で説明し理解をえた。

2.「日本経団連学校支援プロジェクト(仮称)」立上げに向けた検討

教育と企業の連携推進ワーキング・グループにおいて、企業の学校支援プログラムの周知と学校活動や教員研修などへの導入事例の拡大に向けて、当委員会や教育支援NPOと協業する「日本経団連学校支援プロジェクト(仮称)」の実現に向けて検討を重ねた。

3.教育再生に向けた働きかけ

渡海紀三朗文部科学大臣との懇談(1月)、局長クラスとの意見交換、中央教育審議会での意見陳述などを通じ、教育振興基本計画、学習指導要領、学校評価や教員評価のあり方、大学教育の質の向上に向けた施策などをめぐり意見交換を行い、経済界の意見反映に努めた。三村委員長、宇佐美企画部会長(三菱電機顧問)が、中央教育審議会委員として、経済界の意見反映に努めた。
教育再生会議会合(4月)において意見陳述し、学校選択制の全国的導入と児童・生徒の選択結果を踏まえた学校予算の導入を働きかけ、教育再生会議第3次報告(12月)に盛り込まれた。

4.その他

大学改革の現状について知見を深めるべく、各大学の教育の充実に向けた取組みについてヒアリングを行うとともに、同志社大学(12月)、国際基督教大学(2月)の講義を視察した。

(6)防災に関する委員会

(數土文夫 共同委員長)
(5月23日〜 木村惠司 共同委員長)

2007年5月に軍事アナリストの小川和久氏から国際水準から見たわが国政府や企業の危機管理のあり方について、10月に東京都の中村晶晴危機管理監から首都直下型地震を想定した東京都の取組みについてそれぞれ説明を聞くとともに、意見交換を行った。
また、経済界における防災対策の進捗状況を把握するために、2007年5月から6月にかけて、委員会加盟315企業・団体を対象にアンケート調査を実施し、10月に調査結果の概要を公表した。
委員会では、上記会合での議論やアンケート調査結果を踏まえて、ワーキング・グループを設置し、首都直下型地震という具体的な災害を想定して、企業・団体の取組みの現状を再確認し、各社の対策の見直すべき事項、経済団体に期待される役割、行政やNPOへの要請事項などの整理を行うこととした。
ワーキング・グループでは、年度内に3回の会合を開催し、今後の検討の前提となる首都直下型地震の被害想定や行政の防災計画について、内閣府防災担当をはじめ関係各省庁や東京都の担当者から説明を聞くとともに、種々意見交換を行った。

6.経営労働関係

(1)経営労働政策委員会

(御手洗冨士夫 議長)
(5月23日〜7月9日 江頭邦雄 委員長)
(7月9日〜 草刈隆郎 委員長)
(〜5月23日 岡村 正 委員長)

毎春の労使交渉・協議に際し、「経営と人」に関する基本的な考え方を総合的に検討し、全国の企業経営者の指針となる報告として「2008年版経営労働政策委員会報告」(2007年12月19日)を取りまとめ、発表した。「日本型雇用システムの新展開と課題」と題する本報告では、グローバル化の進展や人口減少下における少子・高齢化の進行という環境変化の中で、わが国経済が経済の活力を維持していくためには、生産性の向上による国際競争力の強化とともに、全ての人々の力を最大限に引き出すことのできる全員参加型社会の構築が必要であると指摘し、そのためには、こうした経営環境の変化に対応すべく日本型経営も「守るべきものは堅持し、改めるべきものは変革していく」ことが求められていると主張した。
また、今次労使交渉における経営側の基本スタンスについては、まず、特に念頭に置くべき視点として、(1)グローバル競争、(2)総額人件費管理、(3)わが国経済の安定成長の確保――の3点を指摘した。この3つの視点を踏まえたうえで、賃金をはじめとする総額人件費の決定に際しては、引き続き自社の支払能力が基準であり、総額人件費の増加額は、あくまで自社の付加価値額の増加額の範囲内で、利払い費、配当、内部留保なども考慮し、個別企業ごとの交渉で決定すべきであること、恒常的な生産性の向上に裏付けられた付加価値額の増加額の一部は、人材確保なども含め総額人件費改定の原資とする一方、需給の短期的な変動などによる一時的な業績改善は賞与・一時金に反映させることが基本であることを主張した。また、個別企業の支払能力を無視して横並びで賃金を引き上げていく市場横断的なベースアップは、すでに過去のものとなっており、もはやありえないこと、さらに、いかなる総額人件費の決定を行うかは、あくまで個別労使の協議によるものとしたうえで、全規模・全産業ベースでは増収増益基調にあるとはいえ、企業規模別・業種別・地域別に相当バラツキがみられる現状において、賃上げは困難と判断する企業数も少なくないと予測されることを指摘した。

(2)雇用委員会

(鈴木正一郎 委員長)

円滑な労働移動と雇用機会の創出に向けた労働市場の改革を実現するために、雇用政策検討部会(部会長:橋本浩樹 王子製紙取締役常務執行役員)とともに、以下の活動を行った。

1.提言「官民協力による若年者雇用対策の充実について」の取りまとめ

有効求人倍率、完全失業率とも高水準となっている若年層の労働力需給ミスマッチの解消に向け、「官民協力による若年者雇用対策の充実について−労働市場のマッチング機能強化に向けて−」(2007年4月17日)を取りまとめ、若年者への就労機会提供、ジョブ・カード制度への協力などを会員企業に呼びかけるとともに、政府に対して、さまざまな職業能力開発機会の提供などを要望した。

2.障害者雇用促進法改正への対応

労働政策審議会障害者雇用分科会での、短時間労働における障害者雇用の義務化を内容とする障害者雇用促進法改正の検討にあたり、雇用政策検討部会での検討を踏まえ、義務化は、十分な準備期間を置くことを求めた。

3.労働者派遣制度見直しへの対応

労働政策審議会労働力需給制度部会において、常用型の派遣労働の規制撤廃、紹介予定派遣の柔軟化などを主張した。また、同審議会での日雇い派遣に関する省令および指針の策定にあたり、雇用政策検討部会で対応を検討し、日本経団連の考え方を主張した。

4.新卒採用問題の検討

新卒採用検討ワーキング・グループ(座長:橋本浩樹 王子製紙取締役常務執行役員)での検討を踏まえ、「大学・大学院新規学卒者等の採用選考に関する企業の倫理憲章」(2007年10月16日)を公表した。また、「倫理憲章の趣旨実現を図る共同宣言」を11月に発表し、賛同を会員企業に呼びかけた。

(3)労使関係委員会

(加藤丈夫 委員長)

1.提言「今後の賃金制度における基本的な考え方」の取りまとめ

政策部会(部会長:村井良行 日本たばこ産業常務執行役員(6月1日〜)、横山敬一郎 日本通運執行役員総務・労働部長(〜6月1日))での検討を踏まえ、「今後の賃金制度における基本的な考え方 ―従業員のモチベーションを高める賃金制度の構築に向けて―」(2007年5月15日)を取りまとめた。同提言では、従業員のモチベーション向上や再チャレンジ促進の視点も入れつつ、企業が激変する経営環境に対応するためには、年功型賃金から仕事・役割・貢献度を基軸とした賃金へと改革していく必要があることを提唱した。

2.改正最低賃金法に関する対応

労働政策審議会労働条件分科会最低賃金部会で審議された改正最低賃金法関連政省令案要綱につき、使用者側の考えを主張した。

3.地域別最低賃金審議に関する対応

中央最低賃金審議会での「2007年度地域別最低賃金額改定の目安審議の状況」に関して、同審議会使用者側委員からの説明を聞くとともに、本年度の目安答申に向けた使用者側の対応について了承した。

(4)労働法規委員会

(藤田弘道 共同委員長)
(5月23日〜 市野紀生 共同委員長)
(〜5月23日 安西邦夫 委員長)

1.労働基準法改正に備えた取組み

労働法企画部会(部会長:上坂清 日本電信電話取締役総務部門長)のもとに労働時間制度検討ワーキング・グループ(座長:秋田進 日本通運労働専任部長(当時))を設置し、新たな労働時間等規制の適用除外制度について、2005年提言を再検証し、その後の経緯等を踏まえ論点を整理した。

2.仕事と生活の調和憲章・行動指針の策定に関わる取組み

内閣府での仕事と生活の調和憲章と行動指針の策定作業に際し、労働時間制度検討ワーキング・グループと労務管理問題検討ワーキング・グループが、少子化委員会の働き方ワーキング・グループとも連携して、合同で検討し、規制強化につながらないよう求めた。また、憲章と行動指針の策定を受けた「労働時間等設定改善指針」の改正にあたり、労働法企画部会で意見集約を行い、企業実務の実態に配慮するよう、意見反映に努めた。

3.労働契約法の制定に関わる取組み

労働法企画部会において、新法制定の意義や企業実務への影響等について経営法曹会議弁護士から解説を聞いた。

4.労働審判制度の運用に関わる取組み

地方経営者協会を対象として、労働審判制度の運用状況や推薦母体としての課題についてアンケート調査を実施し、回答結果をもとに制度の運用改善について最高裁と協議を行った。さらに、第2期労働審判員候補者を最高裁へ一括推薦するとともに、候補者の研修内容の検討や周知等、制度施行や紛争抑止に関わる協力を行った。

5.パートタイム労働法改正への対応

パートタイム労働法改正に伴う省令および指針の見直しについて、政府の労働政策審議会雇用均等分科会で審議が行われた際に、労務管理問題検討部会(部会長:坂田甲一 凸版印刷人事労政本部人事部長)で意見集約を行い、使用者側委員を通じ意見の反映に努めた。また、2008年4月の施行に向けて改正内容や労務管理上の留意点を整理し、会員に周知した。

6.男女雇用機会均等対策基本方針の改定への対応

男女雇用機会均等対策基本方針の改定に向けた雇用均等分科会での審議では、当委員会と雇用政策検討部会(部会長:橋本浩樹 王子製紙取締役常務理事執行役員)の検討結果の反映に努めた。

7.安全衛生・労災保険法令改令への対応

労働安全衛生部会(部会長:清川浩男 三菱マテリアル副社長)とその下部組織である産業保健問題ワーキング・グループ、高年齢労働者の安全衛生対策ワーキング・グループ、じん肺問題ワーキング・グループ、労働安全衛生管理システムワーキング・グループにおいて、2008年4月1日施行の労働安全衛生法にもとづく定期健康診断項目の改正、高齢者医療確保法にもとづく特定健康診査・特定保健指導の円滑な実施に向けた事業者の対応のあり方をはじめ、第11次労働災害防止計画(2008〜2012年度)、家族の介護等を行う労働者の通勤災害保護制度の改正問題について検討を行い、労働政策審議会の安全衛生分科会および労災保険部会において、経済界の意見反映に努めた。
特に、「高年齢労働者の安全衛生対策の充実の必要性」について、労働安全衛生部会意見書を厚生労働省に提出するなどして、事業主側の意見を「第11次労働災害防止計画」に反映した。

(5)中小企業委員会

(指田禎一 委員長)

日本経済を下支えする国際競争力・雇用創出力のある強い中小企業の育成を図るために、政府・自治体の中小企業施策や学識者、企業経営者の講演等を聞き、以下の通り報告書を取りまとめた。

1.報告「ものづくり中小企業のイノベーションと現場力の強化」の取りまとめ

本年度前半は、前年度に引き続き、日本のものづくり産業を支えている中小製造業の特徴を分析し、これを基にイノベーションの現状や方向性と現場力の実態について検討し、報告書「ものづくり中小企業のイノベーションと現場力の強化」(2007年10月16日)を取りまとめた。同報告書は、中小製造業が、厳しい経営環境を打開していくためには、イノベーションの推進が不可欠であり、そのための現場力の強化が重要であると結論づけた。

2.サービス産業における中小企業の発展に向けた調査・研究

10月から、「サービス産業における中小企業のイノベーションと生産性向上の方向性」をテーマに、2008年度の報告書の作成を目指し、サービス産業の現状と課題を分析し、中小企業の生産性と知的生産力の向上に必要な施策や、高付加価値創出の先進的な取組みに関する情報収集を行ってきた。

(6)国民生活委員会

(大塚陸毅 委員長)

政府の男女共同参画会議仕事と生活の調和に関する専門調査会の議論に参加し、少子化対策委員会や労働法規委員会と連携して、「仕事と生活の調和」実現度指標の策定に向けて、経済界の意見反映に努めた。

(7)少子化対策委員会

(池田守男 共同委員長)
(5月23日〜 鈴木茂晴 共同委員長)
(〜5月23日 茂木賢三郎 共同委員長)

1.子育て環境整備に関する検討

企画部会(部会長:福島伸一 松下電器産業常務取締役)を中心に、企業の自主的な取組みによる事業所内保育所の設置や仕事と子育ての両立支援の推進など子育て環境整備の方向性と、政府による多様で柔軟な保育・子育て支援サービスの具体策のあり方を検討し、提言「子育てに優しい社会づくりに向けて」(2007年11月13日)を取りまとめた。
また、政府が2007年12月に策定した「仕事と生活の調和憲章」ならびに「仕事と生活の調和推進のための行動指針」の検討過程において、とりわけ数値目標の位置付けに関して、労働法規委員会と連携して、企業労使による自主的な取組みを尊重する観点から、個々の企業に課されるものではなく社会全体の目標とし、企業に対する規制強化に結び付けないことなど経済界の意見反映に努めた。

2.次世代育成支援対策推進法改正への対応

次世代法の改正について、行動計画の公表方法ならびに従業員への周知方法に関して、画一的ではなく、企業の実情に即した形で柔軟に行えるよう、厚生労働省に働きかけた。また、中小企業に対する行動計画の策定・届出に関して、中小企業の置かれた環境を考慮して、周知期間を十分確保し、段階的に進めることを求めた。

3.少子化問題に関する外部機関の活動への参画

  1. (1) 「子どもと家族を応援する日本」重点戦略検討会議や社会保障審議会少子化対策特別部会に、経済界委員が参加し、少子化対策の重点戦略の取りまとめや具体策の策定に対して経済界の意見反映に努めた。

  2. (2) 経済広報センターと協力して、仕事と子育ての両立に取組む会員企業の取組みを対外的にアピールするため、2007年11月にパンフレット「人にやさしい社会」を作成した。

  3. (3) 政府・経済団体・地方関係団体などで構成する「官民連携子育て支援推進フォーラム」が行う地方シンポジウムの運営に協力した。

(8)国際労働委員会

(立石信雄 委員長)

1.国際労働機関(ILO)への対応

  1. (1) ILO総会
    5月30日から6月15日まで、スイスのジュネーブにおける第96回ILO総会に、御手洗会長を代表とする日本使用者代表団7名を派遣した。
    同総会は、漁業の国際労働基準に関する既存条約を勧告と統合、改正し、小規模漁業を含む多くの漁船員の労働条件改善につながる内容にまとめ、ほぼ全会一致で採択した。この他、グローバル化の進む中でILOが果たすべき役割や、成長と雇用の拡大に寄与しうる公正で持続的企業のあり方に関する討議を行った。
    当委員会では、事前に各種議題に臨む使用者側の見解を取りまとめるとともに(5月)、懇談会後、参加した使用者側代表団から報告を聞いた(6月)。

  2. (2) その他
    5月、ILOのドミニク・ミシェル多国籍企業プログラム長を講師として招き、「社会と企業の関係」をテーマに講演会を開催した。
    この他、ILOの各種テーマ毎の専門家会議やアジア地域の会議・セミナー2件に日本より使用者側代表を派遣した。

2.(財)日本経団連国際協力センター(NICC)招聘研修員との懇談会

NICCの短期招聘プログラムの機会をとらえ、参加しているアジア諸国の人事労務管理者と委員との懇談会を開催し、アジア諸国における日本企業の事業活動に関する情報提供に努めた。10月は、インド企業から参加した研修員と、1月は中国・韓国・シンガポールの経営者団体から参加した研修員と懇談した。

3.アジアの日本企業の人事労務管理における好事例の検討

2006年11月から政策部会(部会長:立石信雄 オムロン相談役)で、アジア地域に進出している日本企業に求められる行動について、特に従業員との関係に焦点を当てて、検討を行った。

7.国際関係

(1)貿易投資委員会

(佐々木幹夫 委員長)
(秋草直之 共同委員長)

1.対外経済戦略に関する提言の取りまとめ

わが国の対外経済戦略およびその推進のあり方について、グローバルな企業活動の現状と直面する課題に即して検討するため、企画部会(部会長:桑田芳郎 日立製作所顧問)を計12回開催した。その成果として、提言「対外経済戦略の構築と推進を求める」(2007年10月16日)を取りまとめ、WTOドーハ・ラウンドの早期妥結、東アジア(経済)共同体の構築の検討、日米・日EUEPA等の推進、不公正貿易措置の是正および貿易救済措置に関する国内制度整備などの推進と、対外経済戦略を一体となって推進するためのわが国の対外交渉・国内調整権限の一本化などを求めた。

2.WTOドーハ・ラウンド交渉の推進およびWTO協定の履行確保

6月、御手洗会長がジュネーブを訪問してパスカル・ラミーWTO事務局長と懇談し、早期の大枠合意実現と2007年中の妥結を訴えた。また9月および11月に、当委員会企画部会委員など関係者によるミッションを、諸外国の経済団体とともにジュネーブに派遣し、WTO事務局幹部、各国政府関係者および経済団体と意見交換を行うとともに、わが国経済界の要望の実現を訴えた。
また、交渉の節目をとらえて、委員会あるいは企画部会を開催し、農業、非農産品市場アクセス、サービス貿易、アンチ・ダンピング協定などについて、政府関係者より交渉の進展状況について説明を聞くとともに、意見交換を行った。また、WTOサービス貿易自由化交渉に関する懇談会(座長:長谷川公敏 第一生命経済研究所専務取締役)を開催し、政府関係者と意見交換を行った。
そのほか、EUに対し、WTOの情報技術協定(ITA)に反する課税措置および恣意的なアンチ・ダンピング調査につき、佐々木委員長より、ピター・マンデルソン欧州委員に対し2回書簡を送付するなどして是正を求めた。

3.安全保障貿易管理制度の改正に向けた働きかけ

提言「実効ある安全保障貿易管理に向けて制度の再構築を求める」(2007年3月20日)の実現に向け、産業構造審議会における安全保障貿易管理制度の改正審議の議論に経済界の意見が反映されるよう、働きかけを行った。その一環として、2008年2月には、上記審議会安全保障貿易管理小委員会制度改正ワーキンググループ「最終取りまとめ(案)」などがパブリックコメントに付されたのを受け、輸出管理タスクフォースとして意見を提出した。

4.社会保障協定の締結促進

日本貿易会、日本在外企業協会と連名で取りまとめた「社会保障協定の一層の締結促進を求める」(2006年10月)で要望した、同協定の迅速かつ機動的な実施を可能とする包括特例法案「社会保障協定の実施に伴う厚生年金保険法等の特例等に関する法律案」の成立に向け、上記2団体とともに関係方面に働きかけを行った。同法案は6月に可決成立、2008年3月に施行された。

(2)国際協力委員会

(5月23日〜 槍田松瑩 委員長)
(5月23日〜 矢野 薫 共同委員長)
(〜5月23日 西岡 喬 委員長)
(〜5月23日 辻 亨 共同委員長)

1.わが国の国際協力政策に関する提言取りまとめ

当委員会では、5月に「わが国国際協力に対する提言と新JICAへの期待」(2007年5月15日)を取りまとめた。同提言では、経済成長に資する援助と担い手としての民間企業の重要性を強調し、資源・エネルギー確保、環境問題、経済連携協定(EPA)促進などの重要政策課題の解決に向けてODAを戦略的に活用すべきとした。加えて、2008年10月に国際協力銀行(JBIC)の国際金融部門と統合して発足する新しい国際協力機構(JICA)に関して、円借款の迅速化や多様化、官民パートナーシップ(PPP)の推進など、具体的な制度改革を提言した。
これに続き、2008年に開催される主要国首脳会議(G8サミット)や第4回アフリカ開発会議(TICAD IV)などを控えて、改めて国際協力の重要性を強調すべく、2008年1月以降、政策部会(部会長:江川豪雄 三菱重工業副社長)を中心に検討を進め、その成果を踏まえて4月に新たな提言を公表することとした。

2.わが国の今後の経済協力のあり方につき検討

6月と12月、外務省の別所浩郎国際協力局長より、わが国ODAをとりまく現状と今後の課題について説明を聞くとともに懇談した。

3.「国際協力に関する有識者会議」への協力

外務大臣の諮問により2007年3月に発足した「国際協力に関する有識者会議」における経済界委員(米倉副会長、辻前共同委員長)の活動を支援した。同会議の「中間報告」(2008年1月)取りまとめにあたり、官民連携の重要性など日本経団連の主張が反映されるよう働きかけ、その多くを盛り込むことができた。

4.サブサハラ地域における国際協力への取組み

9月に発足したサブサハラ地域委員会企画部会(部会長:茅田泰三 小松製作所常務執行役員)への参加、10月のアンゴラ・南アフリカ経済調査ミッションへの参加、「サブサハラ・アフリカの開発に関する意見」(2007年12月18日)作成への貢献等、2008年5月のTICAD IVに向けたサブサハラ地域委員会の諸活動に、積極的に協力した。

(3)OECD諮問委員会

(本田敬吉 委員長)

経済協力開発機構(OECD)は、先進30か国が参加する国際機関として、経済政策、税制、貿易・投資、環境、科学技術、情報通信、雇用・労働などに関する研究・分析や加盟国間討議をもとに勧告、指針の策定などを行っている。OECD諮問委員会は、OECD加盟国経済団体で構成される民間諮問機関であるBIAC(The Business and Industry Advisory Committee to the OECD、本部パリ)を通じて、わが国経済界の意見をOECDの取組みに反映させるべく、働きかけを行っている。

1.BIAC活動の企画・運営への参画

6月のBIAC総会、11月のBIAC理事会に本田委員長が参加し、BIACの活動についてわが国経済界の立場から意見を述べた。

2.BIAC・OECD会合への参加、提言の作成

わが国企業関係者が、40回を超えるBIACの各専門委員会やOECDの会合に参加するとともに、OECDに対する提言案にわが国経済界の意見が反映されるよう努めた。

3.会合の開催

以下の会合を通じて、BIAC、OECDにおける検討状況の国内議論への還元を図るとともに、最新情報の把握に努めた。

  1. (1) 田中伸男OECD科学技術産業政策局長〔国際エネルギー機関(IEA)次期事務局長)と懇談(4月)
  2. (2) サルバトーレ・ロッシイタリア中央銀行理事と懇談(7月)
  3. (3) 外務省の草賀純男経済局審議官と懇談(7月)
  4. (4) アンヘル・グリアOECD事務総長と懇談(12月)
  5. (5) BIAC日本代表委員活動報告会(2007年3月)

4.広報活動

BIACおよびOECDの活動をわが国経済界に広く紹介すべく、機関誌(「BIAC NEWS」)、小冊子(「BACの組織と活動」)を発行した。

(4)経済連携推進委員会

(米倉弘昌 委員長)
(大橋洋治 共同委員長)

1.提言「経済連携協定の『拡大』と『深化』を求める」(2006年10月17日)の実現のための活動

  1. (1) 原産地証明制度の見直し
    二国間・多国間の経済連携協定(EPA)の締結を推進し、経済連携のネットワークを拡大していく上で、利便性の高い原産地証明制度の構築が不可欠であることから、2006年10月に取りまとめた提言「経済連携協定の『拡大』と『深化』を求める」の趣旨の実現の一環として、運輸・流通委員会と連携して検討を行い、運輸・流通委員会物流部会(部会長:丸山和博 東レ常務取締役)、経済連携推進委員会企画部会(部会長:島上清明 東芝常任顧問(当時))の報告書「利便性の高い原産地証明制度の確立を求める」を取りまとめた(4月)。

  2. (2) 中長期的なEPA戦略に関する検討
    経済財政諮問会議において、「グローバル化改革」の一環として、中長期的なEPA戦略の検討が開始されたのを受け、貿易投資委員会、アジア・大洋州地域委員会など関係の地域・二国間委員会などと連携して検討を行い、その成果が諮問会議の議論に反映されるよう努めた。

  3. (3) EPAシンポジウムの開催(12月)
    EPAを一層推進、加速化する観点から、甘利明経済産業大臣やマイケル・グリーン米国戦略国際問題研究所上級顧問・日本部長など国内外の産学官の有識者を招き、シンポジウム「グローバル化のもとでのわが国のEPA戦略を探る」を開催し、わが国のEPA戦略のあり方について議論を行った。

2.有識者・関係省庁との懇談

  1. (1) 伊藤隆敏東京大学大学院教授との懇談(5月)
    経済財政諮問会議の「グローバル化改革専門調査会」会長として、EPAの加速と農業改革の強化等を内容とする第一次報告取りまとめの任にあたった東京大学大学院の伊藤隆敏教授より、報告取りまとめに至るまでの議論や報告のポイントなどにつき、説明を聞くとともに懇談した。

  2. (2) 外務省・経済産業省幹部との懇談(9月)
    外務省の横田淳特命全権大使と経済産業省の佐々木伸彦通商政策局通商交渉官より、日ASEAN包括的経済連携(AJCEP)協定交渉大筋合意の概要や今後の見通しにつき、説明を聞くとともに懇談した。

3.要人との懇談

  1. (1) オン・ケン・ヨンASEAN事務総長との意見交換会(6月)
  2. (2) スリン・ピッスワン次期ASEAN事務総長と米倉副会長ほかとの懇談(9月)
  3. (3) スリン・ピッスワンASEAN事務総長の御手洗会長表敬(2008年3月)

III.委員会等の活動【地域別・国別委員会等】


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