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月刊 経団連 座談会・対談 新たなエネルギー政策の評価と今後の産業界の取り組み

椋田哲史
司会:経団連常務理事

林田晃雄
読売新聞論説委員

澤 昭裕
21世紀政策研究所研究主幹

崎田裕子
ジャーナリスト、環境カウンセラー/持続可能な社会をつくる元気ネット理事長

西田厚聰
経団連副会長
東芝会長

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西田厚聰 (経団連副会長/東芝会長)
今回のエネルギー政策の検討過程では、経団連も三度にわたり提言を取りまとめ、政府や与党に説明してきたが、十分意見をくみ取ってもらえなかった。「革新的エネルギー・環境戦略」については、原発の再稼働が明記されたことは評価できるが、政府の成長戦略との整合性が取れていないなど、多くの矛盾・問題があり、抜本的に見直すべきだ。産業界としては、今後も、安全確保を含む原発技術の向上、再生可能エネルギーの技術革新、省エネ、温暖化対策に取り組んでいきたい。

崎田裕子 (ジャーナリスト、環境カウンセラー/持続可能な社会をつくる元気ネット理事長)
今回の検討は、国民が直接議論に参加する場を設けたことなど、これまでになくオープンに行われた点は評価できる。しかし、短い期間で意見を集約したこと、国民生活、経済に与える影響を十分に説明しきれなかったこと、事故による国民の不安感に結論が引きずられてしまったこと等、問題もある。エネルギー源の変革や電力システム改革の実行に当たっては、政府・産業界はもちろん、国民も当事者としての自覚を持って取り組まなければならない。

澤 昭裕 (21世紀政策研究所研究主幹)
今回の検討過程で、政府は選択肢だけを国民に示して、その選択の判断を丸投げしたことは残念。自らの案を示し、説明したうえで議論を進めるべきであった。エネルギーは国民生活、経済を支えるインフラである。持続可能な経済成長と国民生活の安定をもたらすことがエネルギー政策の目的であり、そのための手段としてどのようなエネルギーミックスを構成するべきかを考えることが筋。原子力をどの程度にすべきかは、そうした観点から検討すべきであり、原子力ゼロのように手段を目的化するような議論の仕方はおかしい。

林田晃雄 (読売新聞論説委員)
「2030年代に原発稼働ゼロ」という方針が、最終段階で急遽盛り込まれたのは問題だ。原発の安全性に対する「国民の不安」を利用し、選挙に有利になるよう結論をねじ曲げたのではないか。国民生活や経済への影響や対応策について、具体的に触れていない点にも違和感を覚える。直ちに、現実的なエネルギー戦略につくり直すべきだ。産業界は、国民にきちんと意見を聞いてもらえるよう、信頼回復に努めてほしい。

椋田哲史 (司会:経団連常務理事)

  • ●「革新的エネルギー・環境戦略」の検討過程に対する評価
  • 判断を国民に丸投げしたかたちになったことは問題
  • 議論をオープンにしたことは評価
  • 尊重されなかった産業界の意見
  • 選挙のために「国民の不安」を利用してはならない
  • ●「革新的エネルギー・環境戦略」の内容に対する評価
  • 「戦略」はさまざまな矛盾、問題を抱えている
  • 国民は原発ゼロに伴うコストを自覚すべき
  • 国民生活と経済を持続可能にすることを目的に
  • 政府は責任の所在をあいまいにしてはいけない
  • ●政府への要望
  • 「戦略」の抜本的な見直しを
  • 国民に省エネに対するインセンティブを
  • 原子力のバックエンド問題は早急に結論を
  • 固定価格買取制度は種々問題あり
  • ●今後の産業界の取り組み、産業界への期待
  • 原子力コミュニティーはオープンなシステムの構築を
  • 大企業には国民の信頼を回復する努力を
  • 電力システム改革のなかで積極的な取り組みを

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