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月刊 経団連 座談会・対談 Society 5.0時代の災害対策のあり方

家田 仁
政策研究大学院大学教授

鈴木 英敬
三重県知事

柄澤 康喜
経団連審議員会副議長
三井住友海上火災保険会長

山内 隆司
経団連副会長、社会基盤強化委員長
大成建設会長

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山内 隆司(経団連副会長、社会基盤強化委員長/大成建設会長)
国土交通省では、明らかに雨の降り方が変化していることなどを「新たなステージ」ととらえ、これに対応した防災・減災のあり方を検討している。私たちも、今までとは次元の異なる状況であることを認識し、既存の災害対策を検証・更新する必要がある。国土を捨てて逃げ出すわけにはいかない。可能な限り防災・減災に努め、安心・安全な生活ができるよう、対策を講じていく。東日本大震災をはじめとする大災害の教訓を活かすとともに、先人の知恵や経験から学ぶことを忘れてはならない。

柄澤 康喜(経団連審議員会副議長/三井住友海上火災保険会長)
自然災害が激甚化、頻発化し、被害が広範囲に発生するようになるなか、損害保険の保険金支払額も過去に例がない水準にまで増加している。損害保険会社として、新しいテクノロジーも活用し、速やかに保険金をお届けすることで、被災地の復旧復興を後押しすることは使命である。また、災害から得られた教訓を社会に還元し、社会の防災・減災を推進することも当社の存在意義だと考え、グループ内のリスクコンサルティング会社に蓄積した知見やノウハウを広く提供している。災害対策は、日本が抱えるさまざまな課題に真剣に向き合うことでもあり、産学官が連携し、協調して進めていく必要がある。

鈴木 英敬(三重県知事)
自治体による防災・減災において、過去の教訓を活かし、備えにつなげることが大切だと考えている。昨年、伊勢湾台風から60年を迎えるにあたり、追悼式典とともに、教訓を学ぶ集い、シンポジウムを開催した。「防災の日常化」の定着、SNSやAIを活用した避難システムの構築にも取り組んでいる。自治体職員の減少が深刻化するなか、国、他県、市町村との枠組みを超えた連携も推進している。経済界には、三重県が企業との連携において「戦略的不平等」という方針を採っていることを知っていただき、積極的にコミットしていただきたい。

家田 仁(政策研究大学院大学教授)
日本政府の災害対策は、過去の災害における経験を踏まえ、着実に進化している。現行のハザードマップは、100年に1度レベルの大洪水を想定しており、避難のためには有用であるものの、メリハリの利いた事前対策や保険料設定のためには役に立たない。土木学会が提案する「多段階リスク明示型浸水想定図」などは活用できる。インフラの更新やメンテナンスには、新たなテクノロジーの導入が不可欠だが、従来型の公共事業のあり方がそれを妨げている。日本が転換期にあるという認識のもと、行政の意識改革が求められる。

井上 隆(司会:経団連常務理事)

  • ■ 自然災害の規模・頻度の増加を踏まえた対応
  • 人間、社会の変化にあわせて災害対策を更新せよ
  • 伊勢湾台風から60年
    ─教訓を活かし「防災の日常化」を進めたい
  • 激甚化した自然災害が頻発し保険金支払額が急増
  • 「新たなステージ」に対応した防災・減災が必要
  • ■ 災害対策の強化と経済性の両立の重要性
  • 人口動態を踏まえた適切なインフラの整備が必要
  • 転換期の災害対策、課題を克服するために
  • お客様の防災・減災を促進する知見・ノウハウ提供も存在意義の1つ
  • 「命を守ること」と経済性の両立を実現するために
  • ■ 企業・自治体に求められる役割
  • テクノロジーを活用した防災・減災システム
  • 地方の中小企業の防災・減災をサポートしたい
  • 公共事業のやり方を変えなければイノベーションは生まれない
  • 建物の耐震化を促進するための工夫が必要
  • ■ 今後の経団連の活動への期待
  • 地方のリーダーたちと連携を
  • 三重県は「戦略的不平等」で官民連携を進める
  • 災害対策は競争領域ではなく協調領域である
  • 先人の知恵や経験から学ぶことを忘れるな

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