経団連(中西宏明会長)では6月28~29日のG20大阪サミットに先立ち、今年3月14~15日にB20東京サミットを開催した(3月21日号・28日号既報)。そこで、G20議長である安倍晋三総理大臣に建議した共同提言の実現に向けて、閣僚会合をはじめさまざまな場で働きかけを行っている。
こうした取り組みの一環として、5月23日、パリの経済協力開発機構(OECD)本部で、OECDやOECDに対する民間経済界の諮問機関であるBusiness at OECD(BIAC)とともに合同会議を開催した。各国首脳を補佐するシェルパ等の政府関係者や企業関係者など100名以上が参加した。経団連からは片野坂真哉副会長が開会および閉会セッションに登壇し、B20東京サミット共同提言「Society 5.0 for SDGs」等について基調講演を行った。基調講演ならびに会合の概要は次のとおり。
■ 片野坂副会長基調講演概要
深刻化する貿易の対立や地政学的な緊張の高まりは、既存のガバナンス構造に重大な挑戦を突きつけている。また、中長期的な根本課題への対処や持続的かつ包摂的な発展の実現に取り組む必要がある。こうした課題を克服するためには、ルールに基づく、自由、公正で開かれた国際経済秩序の強化が必要であるとともに、B20東京サミットの全体テーマである「Society 5.0 for SDGs」がカギとなる。
共同提言では、「デジタル革新」「貿易・投資」「エネルギー・環境」「質の高いインフラ」「雇用・労働」「健康・福祉」「清廉性」といった政策課題について具体的に要望している。
他方、われわれ企業も、Society 5.0 for SDGsの実現に向けた「B20企業自主行動計画」を掲げるとともに、企業の取り組み事例を具体的に示している。例えば、ANAでは最新のロボティクス、センシング通信、ハプティクス(感触の疑似的な伝達)等の技術を結集し、物理的に離れた場所におけるコミュニケーションやロボットの遠隔操作による技術を可能にするAvatarプログラムに取り組んでいる。
■ 合同会議概要
3つのパネルディスカッションが行われ、政府、OECD、そして企業を代表するスピーカーの参加のもと、B20東京サミット共同提言の内容やG20大阪サミットに向けた優先事項について活発な議論が展開された。
閉会セッションには、河野太郎外務大臣が登壇し、「多国間主義に基づく世界の秩序が深刻な課題に直面するなか、自由で開かれた国際秩序の維持が最優先事項」と述べたほか、G20大阪サミットに向けてビジネスとの協力・協業を進めるとした。同じく出席したアンヘル・グリアOECD事務総長は、「各国が直面する問題は、二国間での交渉よりも、国際的な議論の場でこそ共有されやすい」と多国間の枠組みの重要性を強調した。
多国間での合意形成が難しい現状に鑑み、片野坂副会長は閉会あいさつで、事業の成功を通じて経済社会の発展に貢献する企業の役割を踏まえ、「ボトムラインを同じくするビジネスは、いわば共通言語での対話が可能。こうした連携のしやすさはB20の強み」と締めくくった。
経団連では、今後ともG20閣僚会合での意見陳述等を通じて、G20首脳への働きかけをさらに強化していく。
【国際経済本部】