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  5. 全米各州探訪(4)~コロンビア特別区、メリーランド州、ペンシルベニア州

Action(活動) 週刊 経団連タイムス 2021年8月5日 No.3510 全米各州探訪(4)~コロンビア特別区、メリーランド州、ペンシルベニア州 -新・ワシントンレポート<4>

本連載では、米国をより深く知るため、広大な米国を構成する50州+1特別区の情報を順次ご紹介します。

10.コロンビア特別区

米国の首都の慣例表記「ワシントンDC」は、「コロンビア特別区(District of Columbia)のワシントン市」を意味する。連邦首都を置くために10マイル四方(約260平方キロメートル)以下の連邦直轄地を確保すると定めた合衆国憲法第1条の規定に基づき、1801年、メリーランド州とバージニア州の州境に計画都市として設置された(その後、南西部はバージニア州に返還)。

1792年時点のコロンビア特別区(図中の正方形)を描いた地図。中央を流れるポトマック川以西はバージニア州に返還されたが、区全体のつくりは今日まで概ね引き継がれている

現在は約180平方キロメートルの域内に70万人が居住しており、その規模は東京都八王子市(190平方キロメートル・60万人)に近い。人種構成で黒人(45%)が白人(43%)を上回る点が特徴的だが、再開発が進むなかで両者の差は縮小傾向にある。1人当たりの平均所得は約8万7000ドルと、他の50州を上回る。

政治面では、特別区は州ではないため、20世紀半ばまで連邦に代表を送ることは認められていなかった。1961年に大統領選挙人、70年に投票権を持たない下院議員の選出が認められたが、上院議員(各州2名)の選出を含む完全な国政参加や自治権の拡大を求め、州昇格運動が展開されている。ワシントンDCの車のナンバープレートには、独立戦争のスローガンを皮肉った「代表なき課税」の文言が記されている。しかし、憲法解釈等の論点に加え、リベラルな同区の州昇格は民主党議員の増加に直結することもあり、政治的に難しい問題となっている。4月に民主党が掌握する下院が州昇格法案を可決したが、民主・共和の勢力が拮抗する現上院では討論終結に必要な60票を確保できないため、法案が成立する見通しは立っていない。

11.メリーランド州

17世紀はじめ、英国王チャールズ一世がセシル・カルバート(第二代ボルチモア男爵)に勅許状を与えたことで州の基礎が築かれた。州名「メリーランド」は時の英国王妃ヘンリエッタ・マリアの名前にちなんだもの。

州内には新型コロナウイルスに関する情報発信で知名度を一層増したジョンズ・ホプキンス大学や国立衛生研究所が立地し、バイオテクノロジーの先進地域となっている。ロッキード・マーチンに代表される航空宇宙・防衛産業も経済を支える。また、ワシントンDCの周辺地域は首都で働く連邦政府職員等のベッドタウンという性質もあわせ持つ。

最大都市ボルチモアは、巨大なチェサピーク湾に面する港湾都市である。同時に米国北東部を貫くメガロポリスの一角として人口密集地へのアクセスにも優れており、貿易・物流の一大拠点となっている。ちなみに、米国の国歌「星条旗」の歌詞は、19世紀初頭の米英戦争時、ボルチモアのマックヘンリー要塞が英国艦隊の夜間砲撃を耐え抜いた翌朝、同要塞に米国旗が燦然と翻るさまを称えたものである。

12.ペンシルベニア州

独立13州(1776年に独立宣言を公表してアメリカ合衆国を構成した13州)のほぼ中央に位置し、最大都市フィラデルフィアは大陸会議の開催、合衆国憲法の起草といった建国の重要な役割を担った。ここから、同州は「キーストーン・ステート」の愛称を持つ。州政府は、キーストーン(アーチ状構造物の中央・頂点部分に位置し、全体の構造を支える要石)を州のシンボルとして政府機関や州道のロゴ等に活用している。

州西部には、西部開拓の拠点、鉄鋼の町として知られたピッツバーグがある。国内外での競争により1980年代に屋台骨の鉄鋼業が衰退し、いわゆるラストベルト(錆びた工業地帯)の典型例となっていた同市だが、近年はカーネギーメロン大学との連携でヘルスケアやAIを含む先進的技術産業が新たな推進力となりつつある。

政治的には、東西の大都市が民主党の牙城であり、中央部が共和党支持であることから、「フィラデルフィアとピッツバーグの間にアラバマ州があるようなもの」といわれている。

【米国事務所】

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