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Action(活動) 週刊 経団連タイムス 2025年6月26日 No.3688 CBAMを巡る動向 -環境委員会地球環境部会

経団連は6月3日、東京・大手町の経団連会館で環境委員会地球環境部会(船越弘文部会長)を開催した。通商政策委員会企画部会、ヨーロッパ地域委員会企画部会の委員も参加した。

経済産業省GXグループの前田洋志地球環境対策室長、同省国際経済部の尾坂北斗通商政策企画調整官から、炭素国境調整措置(CBAM)を取り巻く現状・課題や日本政府の対応について、それぞれ説明を聴くとともに意見交換した。概要は次のとおり。

■ 前田氏

1.EU-CBAMの概要と背景

EUが導入を決めたCBAMは、域内に対象物品を輸入する事業者に対して、対象物品の製品当たり炭素排出量の算定を求め、EUの炭素価格水準に基づいた課金を行う措置である。対象は、セメント、アルミ、肥料、電力、水素、鉄鋼の6品目。化学品等、下流製品への対象拡大も年内に検討される予定。2023年10月から排出量等の報告が義務化されており、26年から課金が始まる予定である。

EU-CBAM導入の背景として、鉄鋼などの温室効果ガス排出が多い産業の無償割り当ての削減を通じた、排出削減努力の強化が挙げられる。これにより、対象業界の競争力低下が懸念されるため、CBAMによって輸入品にもEU並みの炭素コスト負担を求めるものである。

2.今後動向を注視する必要がある事項

対象品目の輸出入に関わる日本企業は次の事項に関する動向を注視していく必要がある。

まず、課金の基礎として製品当たり排出量を求める必要があるが、EUは現段階で26年1月以降の本格施行時に適用される算定方法の詳細を公表していない。

算定作業は、サプライチェーン中流に多く存在する中小企業に特に負担となる。EU側は排出量算定に当たってデフォルト値の利用を認めており、これによって実測値の算定作業の負荷を回避することは可能だが、その値は今後、欧州委員会の共同研究センター(JRC)レポートに基づいて決定される予定である。他にも、企業機密を含む排出量データを事業者間で流通させる仕組みについても対応が必要である。

CBAM課金額から控除できるとされている日本で支払われた炭素価格については、炭素排出と直接的な関係がある明示的な炭素価格のみが認められる方針である。今後の交渉次第ではあるが、これには排出枠購入費や化石燃料賦課金などが含まれる可能性がある。

さらに、課金の前提となる排出量の第三者検証に関し、EUの認定機関によって認定された検証機関しか活用できないとされており、日本企業の負荷となる懸念がある。

第三国との協調を図りつつ、EU等との交渉を続けていきたい。

■ 尾坂氏~WTOにおける取り組み

EU-CBAMについては、インドをはじめ途上国を中心に、世界貿易機関(WTO)の場でもWTO協定整合性への疑義や、その保護主義性が強く批判されている。

CBAMのあり方に特化した国際合意は存在しないなか、導入・検討を進める国は増加しており、措置のフラグメント化に伴う企業負担の増加が懸念される。

日本政府は24年10月、WTOの「貿易と環境委員会」で体化(炭素)排出量の計測手法に関する国際的なガイダンスの策定を提案した。製品当たり排出量の計測手法に関し、国際基準を活用し、必要以上に貿易制限的でなく、内外無差別に適用されることなどを確保すべきとした。今後は合意に向けて取り組み、将来的な規律への基盤としていきたい。

◇◇◇

意見交換では、(1)わが国のカーボンリーケージ対策を、輸出の比重が大きい経済構造を踏まえて検討することの必要性(2)輸出企業の支援について検討を明言するなど鮮明化するEUの産業政策シフト――などを巡って議論が交わされた。

あわせて、スタンスペーパー「EU-CBAMに対する懸念」を取りまとめた。

【環境エネルギー本部】

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