
米国では、世界有数のバイオエコシステムを擁するボストンとサンディエゴにおいて、バイオ分野で世界最大級のビジネスイベント「BIO International Convention」が開催されている。
2025年は6月16日から19日にかけてボストンで開催された。72カ国から、大企業・スタートアップ、投資家、政府、学界等の関係者約2万人が参加した。経団連からは事務局が視察した。
経団連は、これまでも23年にボストン、24年にサンディエゴにバイオエコノミー委員会のミッションを派遣し、経団連提言に関する意見交換や国際的なネットワークの構築を行ってきた。
「BIO International Convention 2025」(BIO2025)の概要は次のとおり。
■ トランプ政権のバイオ政策の影響
BIO2025では、幅広い議論を行うセッション、各国政府・企業等がブースを出展するEXPO、独自のパートナリングシステムによる個別面談、スタートアップピッチ等が実施された。このうちセッションでは、米国バイオ政策の変化や加速する技術革新への対応が焦点の一つとなった。
主催団体であるバイオテクノロジー・イノベーション協会のジョン・クラウリーCEOは、連邦政府の研究助成金削減や国立衛生研究所(NIH)、食品医薬品局(FDA)における政府職員の削減等によって、ボストンの「イノベーションと経済成長のエンジンが脅威にさらされている」と警鐘を鳴らした。
国際連携に関するセッションでは、医薬品製造のサプライチェーンはグローバルに広がっており、関税導入により医薬品開発のコストは増加し、速度は低下するとの指摘があった。
関係者の懸念が高まるなか、「BIOガバナー・オブ・ザ・イヤー」を受賞したマサチューセッツ州のモーラ・ヒーリー知事は、「連邦レベルで何が起ころうとも、州はライフサイエンス産業への支援を維持する」と強調した。
■ 期待される領域
期待される分野もある。FDAのマーティン・マカリー長官は、特定企業を対象にした優先審査制度や組織内でのAI活用により、医薬品等の審査プロセスが迅速化・効率化すると説明した。
AIに特化したセッションでは、AIは今や創薬の前提であり、「科学者の役割さえ変え始めている」との指摘があった。その他、臨床段階でのAIの効果的導入に向けた議論が行われた。
「バイオ×防衛」に関するセッションでは、新興バイオテクノロジーに関する国家安全保障委員会(NSCEB)が産学官の協調を訴えたほか、「防衛向けに開発されている多くのバイオテクノロジーには商業化の可能性がある」と述べた。
■ 日本のプレゼンス
日本政府は24年以来、創薬力強化を掲げ、医薬品産業の成長に注力してきた。BIO2025のEXPO会場では、富士フイルム等の大企業ブースに加えて、日本貿易振興機構(ジェトロ)のジャパンパビリオンにスタートアップや中小企業24社・団体が出展し、個別面談を実施した。
9拠点の大学発スタートアップ支援プラットフォームの連携による「NINEJP」も初出展した。
この他、ジェトロやライフサイエンス・イノベーション・ネットワーク・ジャパン(LINK-J)がそれぞれBIO2025と並行してサイドイベントを主催。日本政府、大学等の取り組みを紹介するとともに、スタートアップピッチやネットワーキングを行った。
参加したスタートアップからは、「米国市場に最も期待しており、政策支援によって市場獲得機会を得られることはありがたい」との声が寄せられた。
【米国事務所】