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Action(活動) 週刊 経団連タイムス 2026年2月19日 No.3718 労災保険制度の見直しに関する報告案 -労働政策審議会の検討状況/労働法規委員会労働安全衛生部会・3WG

宮下氏

経団連は1月9日、東京・大手町の経団連会館で、労働法規委員会労働安全衛生部会(赤瀬裕部会長)と関係する3ワーキンググループによる合同会合を開催した。厚生労働省労働基準局の宮下雅行労災管理課長から、労働政策審議会で検討中の労働者災害補償保険(労災保険)制度の見直しに関する報告案について説明を聴いた後、その対応方針を審議した。宮下氏の説明の概要は次のとおり。

■ 検討の経緯

有識者による「労災保険制度の在り方に関する研究会中間報告書」(2025年9月11日号既報)を踏まえ、25年9月から26年1月にかけて労働政策審議会労働条件分科会労災保険部会を8回開催し、就業構造の変化や働き方の多様化等を踏まえて議論を重ねた。次回の同部会で報告案の審議を予定している。

■ 審議会での労使の主張と報告案の結論

報告案は「消滅時効」「メリット制」「事業主への情報提供」等(注1)について、法的整備を含む措置を講じるよう提言している。労使の主張と報告案の結論は次のとおり。

1.消滅時効

労災保険給付請求権のうち、療養補償給付や休業補償給付等の消滅時効期間(2年)の延長については、労働者側が、一般債権の消滅時効に合わせて5年への延長を求める一方、使用者側は、時効期間の周知徹底や延長の根拠としてデータの裏付けの必要性を強調した。

結論として、脳・心臓疾患、精神疾患、石綿関連疾病など、発症後の迅速な保険給付請求が困難な場合があると考えられる疾病を原因として請求する場合、消滅時効を5年に延長する。

2.メリット制

労働災害の発生状況に応じて労災保険率を増減させるメリット制については、労働者側が、制度自体が「労災かくし」等につながるとの懸念を提起した一方、使用者側は、災害防止効果等を踏まえて制度の維持を求めた。

結論として、メリット制を存続させて適切に運用するとともに、継続的に効果検証を行う。併せて、労働者側の懸念に関する実態を把握し、その結果に基づき必要な検討を行う。

3.事業主への情報提供

現行では、労災保険給付の支給決定等の事実等の情報は、事業主には提供されていない。労働者側が、被災労働者等に対する報復行為や不利益取り扱いの懸念から、事業主への情報提供に全面的に反対した。

使用者側は、支給決定とその理由を知り、労使一体で早期の労災防止対策を行うことが重要と主張した。

保険料を全額負担して災害補償責任を負う事業主の役割に鑑み、支給等を受けた労働者へと同様に同じ情報を提供すべきこと、これにより、メリット制を通じて労働保険料が増大する事業主に対し、保険料決定の取消訴訟等で、その労災支給決定が要件を満たさない旨を主張する手続きを実質的に保障すべきことを訴えた。

結論として、被災労働者等へ通知されている項目のうち、(1)支給決定等の有無(2)処分決定年月日(3)処分者名(4)処分名(給付種別)(5)被災労働者名(支給決定金額、算定基礎、減額理由等を除く)――について、同一災害に対する給付種別ごとの初回の支給決定等に限り、労働保険の年度更新手続きを電子申請で行う事業主に情報提供する。

メリット制への懸念に関する実態把握の結果に基づき、事業主に対する情報提供のあり方について必要な検討を行う。

本項目については、労働者側が情報提供自体に反対する意見、使用者側が情報提供の範囲が不十分とする意見を付している。

■ 今後の見通し

報告案に基づいて労働政策審議会の建議がなされれば、これを踏まえ、所要の措置を講ずるための改正法案を次期通常国会に提出する(注2)

◇◇◇

質疑では、事業主への情報提供開始に期待する発言や、情報提供範囲の拡大に向けて議論の早期再開を求める発言があった。

続く内部討議では、労働政策審議会で使用者代表委員が前述の要望を表明することを前提に、労働安全衛生部会として報告案を了承した。

(注1)その他、暫定任意適用事業、特別加入制度、家事使用人、遺族(補償)等年金、社会復帰促進等事業、遅発性疾病に係る労災保険給付の給付基礎日額についても提言

(注2)1月14日の労災保険部会の審議を経て、同日、報告案のとおり、労働政策審議会長から厚労大臣に「労災保険制度の見直しについて(報告)」の建議がなされた

【労働法制本部】

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