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月刊 経団連  巻頭言 多様化時代の産業連携と価値創造

佐藤 恒治 (さとう こうじ) 経団連副会長/トヨタ自動車副会長

近年「多様性」という言葉が世の中に浸透している。それは単なる理念やスローガンではなく、実際に人々の価値観やニーズが多岐にわたっていることの表れである。同時に、それに応える技術のあり方も大きく変化している。単一技術を延長線上で進化させるだけではなく、複数の要素技術を結び付け、全体として最適化することで初めて新たな価値が創出される。

自動車産業は、エネルギーの未来に寄り添った多様なモビリティの選択肢を追求している。しかしながら、車両技術の進化だけでは、電動車や水素モビリティは普及しない。充電・充填インフラ網の整備も含め、安価な電力や水素を安定的に供給するサプライチェーンの構築が不可欠だ。

また、高齢者や地方居住者、トラックの長距離移動など多様な移動ニーズに応えるため、自動運転をはじめとする新技術の開発も進んでいる。しかし、車両技術のみならず、通信、データ基盤、地図情報、法制度、都市設計まで含めた総合的な取り組みがなければ、社会実装には至らない。モビリティに加え、インフラ、エネルギー、デジタルといった関連産業が融合してこそ、新たな価値が生まれ、持続可能な移動社会の実現につながる。

その際に重要なのは、「何のために」というパーパス、「どのような社会を実現したいのか」というビジョンを共有することである。ナラティブなゴールへの共感は、異なる分野や立場の人々の連携を生み出し、それぞれの強みを活かしたアジャイルな挑戦を加速させる。その多様性が力になり、結果として、日本全体の産業競争力を高めることにもつながっていくと考える。

産業の垣根を越えて世の中を変える構想を描き、具体的に落とし込み、社会実装までやり抜くこと。それこそが日本の未来を切り拓く鍵であり、国際競争力の向上にもつながる。皆さまとともに力を結集し、新たな価値創造への歩みを加速させていきたい。

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