[ 日本経団連の概要 | 業務・財務等に関する資料 ]
2002年度事業報告

I.事業活動の概要

2002年度事業計画の概要と主な活動


1.政策全般

(1) 総会決議の取りまとめ

日本経団連の活動指針となる総会決議を取りまとめ(5月)。

(2) 新ビジョンの取りまとめ

“多様な価値観が生むダイナミズムと創造”、そしてそれを支える“共感と信頼”を基本理念として、2025年度の日本の姿を念頭に置いた新ビジョン「活力と魅力溢れる日本をめざして」を取りまとめ、日本再生のために必要な改革提案と、それらを実現するための行動指針を提示(2003年1月)。

2.経済・法制関係

(1) 適切なマクロ経済政策運営の実現

  1. 経済活性化・国際競争力強化の観点から、「産業再生に向けて」(10月)において、当面の政策に反映させるべき事項を提言するとともに、「産業力強化の課題と展望」に関する提言を取りまとめるべく、検討。
  2. 内閣府、日本銀行等とマクロ経済全般にわたって意見交換。
  3. 経済運営と経済情勢に関するアンケート調査を実施し(8月、2003年1月)、公表。
  4. 官庁統計における報告者負担の軽減を図るとともに、統計行政および経済統計の改善に向け、関係方面と意見交換。

(2) 税制抜本改革の推進

  1. 政府・与党で年初より進められた税制抜本改革の検討に対応し、「経済活力再生に向けた税制改革を求める」(5月)、「税制抜本改革の断行を求める」(6月)、「平成15年度税制改正に関する提言」(9月)を取りまとめ、経済活性化に向けて大規模な減税を実現するよう強力に働きかけ。その結果、平成15年度税制改正において2兆円規模の先行減税枠が確保され、その中で研究開発・IT投資促進税制が要望通り実現。
  2. 産業活力再生特別措置法の延長・拡充に向け、経済産業省と意見交換を行うとともに、改正法に盛り込むべき事項を検討。その結果、経済界の主張が概ね反映された。
  3. 税体系全体について、将来のあるべき姿を提言すべく、検討を開始し、その一環として、欧州の消費税の実態に関する調査を実施。

(3) 財政構造改革の推進

  1. 中期的に財政運営の安定化を確保する観点から、国債管理政策のあり方について、財務省、日本銀行、格付け機関、機関投資家、市場関係者と意見交換を行うとともに、国債市場改革に関する提言の取りまとめに向け、検討。
  2. 当面の財政運営について、政府の財政制度等審議会において、経済界の意見を表明。

(4) 持続可能な社会保障制度の再構築

  1. 公的年金制度の今後のあり方について検討を重ね、「公的年金制度改革に関する基本的考え方」(10月)を取りまとめ、政府・与党に働きかけ。その後、厚生労働省が年金改革の骨格に関する方向性と論点を公表したことを受け、年金改革に対する見解として「厚生労働省『方向性と論点』について」(2003年3月)を取りまとめ。
  2. 「企業年金制度に関する規制改革要望」(11月)を取りまとめ、厚生労働省に働きかけた結果、経済界の意見を反映した形で、関係政省令の見直しが実現。
  3. 医療保険制度の体系のあり方、新しい高齢者医療制度の創設、診療報酬体系の見直しについて、「医療制度の抜本改革に関する基本的考え方と『厚生労働省試案』に関する見解」(2003年1月)を取りまとめ。坂口厚生労働大臣、与党との意見交換を通じ、経済界の意見の反映に努力。

(5) 金融システムの構造改革の推進

  1. 政府の「金融再生プログラム」の取りまとめに向けて、「金融システム安定化とデフレ対応策の早期実施を要望する」(10月)を取りまとめ、不良債権処理の加速とともに、産業再編、資産デフレ対策、雇用のセーフティネットの整備等を提言。
  2. 「証券市場の活性化を求めて」(5月)を取りまとめ、市場行政と業者行政の分離、市場の投資家からの信頼回復等を要望。
  3. 証券市場改革等について、金融庁、東京証券取引所、証券保管振替機構と意見交換。

(6) 経済法制のさらなる整備

  1. 5月、日本経団連の要望が反映された形で、会社機関、株式制度等の多岐にわたる商法改正が実現。そのフォローアップとして、改正商法の解説セミナーを開催するとともに、商法施行規則改正案に対するコメントを取りまとめ。また、改正商法の残された課題について、森山法務大臣と懇談。
  2. 司法制度改革推進本部等を通じて、法曹人口の拡大、裁判の迅速化等、経済界要望の実現を働きかけ。
  3. 企業会計審議会での減損会計、企業結合会計の基準策定等や、金融審議会での公認会計士法改正、ディスクロージャー制度の充実等の課題に対して、意見を取りまとめ、その実現を働きかけ。また、米国企業改革法に対して、わが国経済界の意見を取りまとめ、要望
  4. 法制審議会における担保・執行制度の見直しについて経済界の要望を取りまとめ。また、国民生活審議会での検討において、消費者、事業者行政の責務や公益通報者保護制度等について基本的考え方を提示。
  5. 大規模会社による株式保有規制撤廃に伴うガイドライン改正、下請法改正、企業結合規制について、それぞれ意見を取りまとめ。

3.行革・産業・国土関係

(1) 行政改革・規制改革の推進

  1. 会員からの要望を集めた「経済活性化に向けた規制改革緊急要望」(5月)、「2002年度規制改革要望」(10月)を取りまとめ、総合規制改革会議等に対して、その実現を働きかけ。総合規制改革会議の活動を全面的に支援するとともに、経済財政諮問会議等へも働きかけた結果、政府で取りまとめた「規制改革の早期実現、前倒し等にかかわる措置状況について」(9月)、「規制改革の推進に関する第2次答申」(12月)、「規制改革推進3か年計画(再改定)」(2003年3月)に日本経団連の要望が数多く盛り込まれた。
  2. 政府の地方分権改革推進会議において、規制改革の推進による国・地方が一体となった行財政改革の必要性、内政構造改革推進の観点からの地方自治体の再編・効率化等を意見表明。また、市町村合併の推進に向け、民間経済団体の立場から、広報活動をはじめ国民意識の醸成に努力。
  3. 郵政事業への民間参入を推進すべく、引き続き検討。

(2) 新たな成長基盤の確立、産業空洞化の回避

  1. 「新たな成長基盤の構築に向けた提言」(4月)を取りまとめ、わが国が直面する産業空洞化等の課題を克服し、新たな成長基盤を確立するための需要・供給両面からの総合的な政策を提案し、その実現を働きかけ。
  2. 総合規制改革会議での意見表明や鴻池構造改革特区担当大臣との意見交換を通じて、構造改革特別区域制度の創設、推進に努力。

(3) 新産業・新事業の創出

  1. 「新産業・新事業創出に関する提言」(4月)を取りまとめ、ベンチャー・創業支援税制の実現等に向けて、関係委員会と連携して働きかけ。また、提言のフォローアップの一環として、会員企業とベンチャー企業との情報・意見交換、人的交流を通じて、起業家精神の涵養と企業間連携の推進を図るべく、「起業フォーラム」を開催。
  2. 起業家と日本経団連首脳が、新規事業の創出や経済活性化のための方策等を意見交換する場として「起業家懇談会」を開催。

(4) 世界最先端のIT国家の実現

  1. 政府の「e-Japan重点計画」に、効率的で質の高い電子政府の実現方策、高度道路交通システムの利用促進策等を盛り込むべく、内閣の IT 戦略本部で意見表明。e-Japan戦略のあり方に関するアンケート調査を実施するとともに、ITユーザー企業からのヒアリング等を行い、「新IT戦略に関する提言」(2003年3月)を取りまとめ。
  2. 情報通信法制の再構築に向け、情報通信審議会等を通じて、電気通信事業法の競争促進法体系への転換を働きかけた結果、一種・二種事業区分の撤廃等を内容とする事業法の改正法案が2003年3月、国会に提出された。
  3. 電波の利用効率の向上と新規需要への対応のあり方について検討を重ね、報告書「電波の有効利用に向けて」(12月)を取りまとめ。
  4. 電気通信機器の基準認証制度への自己適合宣言方式の導入について、総務省の研究会で意見陳述するとともに、意見を提出。
  5. 著作権処理を迅速・簡易に行えるような環境の整備に向け検討を重ね、中間取りまとめ(2003年3月)。

(5) 都市再生の実現と土地政策の推進

  1. 都市再生特別措置法の一層の活用による、都市の活性化を図るべく、都市再生本部、東京都と意見交換を行うとともに、シンポジウムを開催。また、平成15年度税制改正に向け関係方面に働きかけた結果、都市再生特別措置法に関連した税の特例措置が講じられるとともに、不動産流通課税の軽減が実現。
  2. 「PFI事業の推進に関する第二次提言」(6月)を取りまとめ、政府・与党にその実現を働きかけるともに、PFI事業者の選定手続を改善すべく、財務省等関係省庁と意見交換。その結果、経済界の要望趣旨が反映された形で方針が示された。
  3. 「21世紀のわが国観光のあり方に関する提言」(2000年10月)のフォローアップとして、農林水産省、国土交通省および関係団体等と意見交換。

(6) 良好な居住環境の整備

  1. 経済社会の変化に対応した住宅政策のあり方について検討し、国土交通省、東京都、住宅金融公庫、都市基盤整備公団、学識経験者と意見交換。
  2. 住宅・土地税制改正に向け、政府・与党に働きかけた結果、新しい住宅贈与に係る特例制度が導入されたほか、土地の流通課税が大幅に軽減された。

(7) 物流効率化の推進、社会資本の効率的・重点的整備

  1. 輸出入・港湾諸手続きの業務改革を進めるべく、関係各省と意見交換するとともに、釜山港(韓国)・高雄港(台湾)における現状を調査。
  2. 空港整備に関する政府の交通政策審議会での議論に経済界の意見を反映させるべく、検討を重ね、「今後の空港整備と国際拠点空港の民営化問題について」(11月)を取りまとめ。その結果、政府は、成田、関空、中部3空港の個別民営化を決定。
  3. 政府の道路関係四公団民営化推進委員会での検討に対応し、学識経験者からのヒアリング等を通じ、「高速道路整備および道路関係四公団民営化に関する意見」(11月)を取りまとめ、関係方面に働きかけ。
  4. 運輸分野の規制改革を働きかけた結果、トラック事業の営業区域規制撤廃や車高規制緩和に向けた検討開始等が実現。

(8) 流通分野の規制改革、農政改革の実現

  1. 流通分野における高コスト構造の是正や物流の効率化に求められる環境整備等について、関係業界からヒアリングを行うとともに、提言作成に向け論点を整理。
  2. 流通分野における規制改革要望を取りまとめ、その実現を関係方面に働きかけ。
  3. 貿易自由化の潮流に耐え得るわが国農業の構造改革の加速化に向け、武部農林水産大臣をはじめ農林水産省幹部、学識経験者、農業従事者等と意見交換を行うとともに、経済界の意見を取りまとめるべく、検討。

4.技術・環境・エネルギー関係

(1) 競争力を有する科学・技術基盤の整備と産業技術力の強化

  1. 戦略的かつ総合的な科学技術政策の推進に向け、総合科学技術会議の活動を支援するとともに、内閣府、経済産業省、文部科学省と意見交換。
  2. 内閣府・日本学術会議との共催で「第1回産学官連携推進会議(6月)」