日本経団連の活動の指針となる総会決議「民主導・自律型の経済社会の実現に向け改革を進める」を取りまとめた(4月の総合政策委員会で審議し、5月27日の定時総会で採択)。
同決議は、前文で、官民が総力をあげて資産デフレの克服や国際競争力の強化に向けて行動すると同時に、新たな時代にふさわしい日本独自の経済社会モデルを確立しなければならないと指摘した。そして、日本経団連が、政治との新たな関係を構築しながら、「新ビジョンで描いた、民主導・自律型の成長メカニズムが機能する経済社会の早期実現を目指し、下記の重要課題に全力をあげて取り組む」旨の決意を表明した。
産業競争力強化や企業戦略のあり方に関する検討、経済情勢の把握、官庁統計における報告者負担の軽減を中心に、以下の活動を行った。
提言「産業力強化の課題と展望」(2003年4月)を公表し、企業の収益環境改善に向けた法制・税制・金融システムなどの環境整備を提言した。
これに引き続き、企業自らの戦略のあり方について検討を行った。9月には、東京大学の藤本隆宏教授を招いて委員会を開催し、わが国製造業の特色や強みについて説明を聞くとともに意見交換した。具体的な検討は、企画部会(部会長:中村正人UFJ銀行常務執行役員)を中心に行った。10月以降には、計10回の会合を開催し、優れた業績を上げている企業ならびに有識者から説明を聞いた。その成果を踏まえて、2004年5月に報告書「これからの企業戦略−『守りの経営再構築』から『攻めの経営再構築』へ−」を公表することにした。
月1回開催し、内閣府および日本銀行からマクロ経済全般にわたって説明を聞くとともに、意見交換した。また、その時々のトピックについて、会員企業および各界有識者から広く説明を聞いた。
8月と2004年2月に、常任理事(団体会員などを除く)および会長・副会長を対象に、経済運営と経済情勢に関するアンケート調査を実施した。調査内容は、経済成長率や物価の見通し、経済構造改革の進展状況、各社の企業戦略などである。
統計部会(部会長:飯島英胤東レ特別顧問)では、6月に、関係各府省が合同で取りまとめた「統計行政の新たな展開方向」について、総務省から説明を聞いた。
また、12月には、「企業活動基本調査」の概要と調査のオンライン化について、経済産業省から説明を聞くとともに、企業側の意見を経済産業省に伝えた。
2004年2月には、新たに開設された「統計データ・ポータルサイト」の活用方法について、総務省から説明を聞いた。
政府の統計審議会(総務大臣の諮問機関)には、飯島統計部会長が委員として参画し、経済界の視点から、適宜意見を表明している。
2003年度は、経済産業省「経済産業省企業活動基本調査」や総務省「平成16年全国消費実態調査」などについて意見表明を行った。
当委員会は、統計報告調整法に基づき官庁が実施する承認統計のうち、企業・事業所を対象とした調査について、総務省から意見照会を受け、報告者・利用者の観点から個別に検討し、意見を提出している(レポート・コントロール制度)。2003年度は約50件の意見照会を受け、関係企業・団体の要望を踏まえて、調査の統合・見直しなどについて意見を提出し、改善を図った。
景気を着実な回復軌道にのせるために必要な税制を実現するための活動を展開した。また、税財政、社会保障の一体改革、国・地方財政の三位一体改革の推進に向けて、政府・与党に対し働きかけを行なった。
政府税制調査会において、3年に1度となる「中期答申」が取りまとめられることを念頭に、中長期的な税制改革に関する経済界としての考え方を示すため、「近い将来の税制改革についての意見」(2003年5月)を公表した。
同意見は、国民負担率の上昇の抑制を図るため、社会保障制度改革、国・地方の「三位一体改革」と税制改革を一体的に取り組むべきことを求めたが、とくに、2003年1月に公表した新ビジョンを踏まえ、今後の社会保障負担や国・地方の税源の見直し、さらに将来的な財政健全化などを見通しつつ、消費税率を07年までに10%まで引き上げ、25年までには18%以下とすることを明確に打ち出した。
一方、政府税制調査会が6月に公表した中期答申「少子・高齢社会における税制のあり方」においても、消費税率を将来「二桁の税率に引き上げる」ことが必要である旨明記された。
「平成16年度税制改正に関する提言」(2003年9月)を取りまとめ、公表した。同提言では、従来の政府・与党における税制改正作業が、単年度の改正が中心でかつ社会保障など他の制度との整合性も不十分であったことに鑑み、第一に、税・財政、社会保障の一体改革の必要性を改めて訴えた。その中で、企業の公的負担の現状について、全会員を対象とするアンケート調査をもとに分析を行い、租税負担に比べ社会保障費の負担が企業活動、とりわけ雇用の維持・拡大に重大な悪影響を与えていることを明らかにした。
第二に、2003年度の日本経済が企業収益の改善などをきっかけに立ち直りの傾向を示し始めたことを踏まえつつ、平成16年度税制改正においては、景気を着実な回復軌道にのせるために必要な税制改正を行うよう提言した。とくに、住宅ローン減税の拡充・延長については、住宅政策委員会と連携しつつ、強力な働きかけを行った。
その結果、まず、12月に示された平成16年度与党税制改正大綱では、平成18年度までに地方への税源移譲を含めた所得税の改革を行った上で、平成19年度を目途に「社会保障給付全般に要する費用の見通し等を踏まえつつ、消費税を含む抜本的税制改革を実現」することが明記され、経済界が求める税財政・社会保障の一体改革に向けて、一定の方針が示されることとなった。
一方、住宅ローン減税が延長されるとともに、住宅の買換えに係る税制措置の拡充や、土地譲渡益課税の軽減などが図られた。また、企業活力の強化に向けては、欠損金の繰越控除期間の延長、連結納税制度に係る付加税の撤廃、エンジェル・中小企業税制の拡充などが実現した。さらに、年金税制についても適正化が図られるなど、相当の成果があった。
日本経団連ではかねてより、事業再構築の加速、新規事業の創出などの観点から、税制上の導管性(パススルー課税)を備えた新たな法人類型であるいわゆる「日本版LLC」の導入を訴えてきたが、政府における検討がようやく本格化してきたことから、税制委員会及び経済法規委員会の下部機構としてLLC等研究会を設置し、実務的な検討を重ねた。
その一環として、政府の法制審議会で続けられている会社法制の現代化の検討及び、経済産業省の検討作業に対し、経済界の考え方を伝えた。
日米政府が11月に署名した日米新租税条約は、親子間配当やロイヤリティについての源泉地国免税が盛り込まれるなど画期的な内容となり、新条約の早期発効に向けて日米経済界の期待が高まった。
そこで、アメリカ委員会と連携しつつ、政府・与党に対し国会における早期批准を強く働きかけた。その結果、2004年3月までに日米両議会で改正条約が承認され、これにより、当初05年1月と見込まれていた新条約の発効は04年7月へ繰り上がり、日米企業が新条約の恩典を早期に受けられることとなった。
持続可能な財政制度の確立に向け、以下の活動を実施した。
今後も国債発行額の増加が見込まれる中、長期金利の急激な上昇などのリスクを回避するためには、財政改革そのものの推進に加え、国債市場の魅力を高めておくことが求められる。そこで、「魅力的で信頼される国債市場の発展に向けて」(2003年5月)を取りまとめ、市場参加者のニーズに応じたメニューの拡大、プライマリー・ディーラー制の導入など、国債引受制度の見直しを提言した。その結果、市場参加者からの要望が強い長期債・超長期債の拡充に加え、財務省が12月に発表した「国債管理政策の新たな展開」では、プライマリー・ディーラー制度にあたる「国債市場特別参加者」の導入などが盛り込まれた。
4月に委員会を開催し、財務省の林事務次官から、わが国財政運営の課題と展望について説明をきくとともに懇談した。
11月には、谷垣財務大臣ほか財務省幹部と、奥田会長をはじめとする日本経団連幹部との意見交換会を開催し、財政改革、税制改革などについて懇談した。
財政をめぐる諸問題について、有識者からの説明聴取および意見交換を実施した。経済見通しへの財政の影響(鈴木準大和総研シニアエコノミスト)、三位一体改革(深谷昌弘慶應義塾大学教授、土居丈朗慶應義塾大学客員助教授)、公会計制度の充実(土居上記助教授)、海外における経済・財政構造改革(平田準みずほ総合研究所主席研究員)などについて、説明をきくとともに懇談した。
年金、医療、介護など個別制度改革への取り組みとともに、社会保障制度全体を一体的に検討した。
年金改革部会(部会長:岡本康男住友化学工業取締役)では、各論の議論、総括的議論を経て、「今次年金制度改革についての意見」(2003年9月)を取りまとめた。社会保障審議会の年金部会に意見を反映させるとともに、政府・与党など関係方面に働きかけた。
意見書では、現在の年金制度が抱える大きな問題は、(1)現役世代の負担の増大、(2)世代間の不公平の拡大、(3)国民年金の空洞化(世代内の負担の不公平)であるとして、制度改革の目指すべき方向を保険料率の増加抑制、既裁定者も含めた給付の抑制、基礎年金の間接税方式化に基づく三位一体の改革に求めた。
保険料率の増加抑制については、高齢者を含む国民全体で年金制度を支え合うことにより、また、積立金の水準を給付費の1年分程度とすることにより、現役世代の負担増加の抑制を図っていくべきであるとしている。
世代間の不公平の拡大については、既裁定者も含めた給付の徹底的な見直しを行うべきであり、物価スライドの完全実施など、過去の制度改正などで決められた施策を優先すべきこと、また、給付水準については、低所得者層には配慮しつつ、一定の所得を有する高齢者については、支給停止又は減額を行うべきであることを提案している。
そして、高齢者も含め国民全体が広く公正な負担を行うためには、現行の保険料を中心とする方式から消費税を活用した間接税方式へ移行すべきである旨を主張し、これによって、未納・未加入による国民年金の空洞化の問題、第3号被保険者制度に伴う問題、無年金障害者の問題も解決することができるとしている。当面の対策として、消費税活用を前提とした基礎年金の国庫負担割合2分の1への引上げ、及び国民年金保険料の徴収強化を図ることなどを求めている。
12月には、158団体(現在、161団体)の賛同を得て、「年金保険料引上げ反対協議会」を設置し、緊急集会を開催した。緊急集会では、(1)年金給付抑制及び基礎年金の税方式化などの抜本改革の展望がないまま、保険料率引上げの法定化に反対する、(2)当面の改革として、基礎年金の国庫負担割合を2分の1にするための道筋を明確にする、(3)税・財政・社会保障の一体的改革案を国民に示し、結論を得るを内容とする「抜本改革なき厚生年金保険料率の引上げに反対する」決議を採択し、政府・与党などに働きかけた。
しかし、政府・与党は、12月に協議会を開き、(1)基礎年金の国庫負担割合については、税制の抜本改革を行った上で2009年度までに2分の1に引き上げる、(2)給付水準については、現役世代の平均的収入の50%以上を確保する、(3)厚生年金の保険料は、当面の上限を18.35%(法案では18.30%)とするを骨格とする与党合意書を了承したことで、合意内容に基づき、年金制度改革関連法案が作成されることとなった。
年金改革部会では、2004年2月に、厚生労働省より法案概要の説明を聴取する一方で、(1)国民的合意を得るために協議の場を設けて抜本改革論議を早急に行い、保険料率の見直しを図る、(2)そのためには具体的な運動を展開する必要がある旨を確認した。
企業年金制度については、自己責任、自助努力による老後の生活保障の確保を支援するために、柔軟な制度設計が容認される必要があるという考え方から、意見書の中で要望を取りまとめて、厚生労働省に働きかけた。
意見書では、確定拠出年金制度について、拠出限度額の大幅な引上げ、マッチング拠出、脱退一時金の受給要件の緩和を含め中途引出しの容認など、柔軟な運用を図ることを求めている。また、厚生年金基金の免除保険料率の上下限の撤廃・個別化、ポータビリティーの拡充、給付減額の合意手続き要件緩和などについても柔軟な対応を求めている。
その結果、改正法案では、確定拠出年金の拠出限度額引上げ・中途引出しの要件緩和、厚生年金基金の免除保険料の凍結解除・解散時の特例措置、また、厚生年金基金と確定給付企業年金間や確定拠出年金などへの年金原資の移換取扱いが拡充されることとなった。
2003年3月に閣議決定された「基本方針」に示されている、(1)保険者の統合及び再編を含む医療保険制度の体系の在り方、(2)新しい高齢者医療制度の創設、(3)診療報酬の体系の見直しに関して、医療改革部会(部会長:上野昭二東京海上火災保険副社長)など関係会合でそれぞれ検討を行った。
保険者の再編・統合については、保険料の適正化や効率的な保険サービスの提供などに資するように保険者機能を強化するという視点から、また、高齢者医療制度の創設については、(1)高齢者医療費の抑制策を明確化する、(2)保険者の保険料引下げへの努力を阻害するおそれのある「社会連帯的な保険料」には慎重な対応で臨む、(3)保険者間の負担の公平化を実現するなどの視点から、それぞれ検討を行い、社会保障審議会の医療保険部会に意見を反映させた。
また、「経済財政運営と構造改革に関する基本方針2003」(2003年6月閣議決定)により、株式会社等は、構造改革特区において、自由診療の分野で、高度な医療の提供を目的とする医療機関を開設することが認められた。
2004年度の診療報酬の改定については、支払側として、(1)国民皆保険制度を持続可能なものとする、(2)患者中心の質がよく安心できる効率的な医療を確立するなどの観点から、医療改革打合せ会などで議論し、厳しい経済社会情勢を十分に反映できるようにマイナス改定を主張することとした。しかし、中央社会保険医療協議会(中医協)では、支払側、診療側双方が譲らず、その結果、診療報酬本体はプラスマイナス・ゼロ、薬価・保険医療材料価格はマイナス1.0%、医療費全体ではマイナス1.0%で合意した。
改定内容では、特定機能病院で実施されているDPC(急性期入院医療の診断群分類に基づく包括評価)について民間病院への適用拡大を主張し、2年間の試行期間が認められた。また、小児医療や精神医療などが重点的に評価された。
介護WGでは、委員の拡充を行い、介護保険制度の施行後5年を目途に行われる全般的な見直しに向けて検討を行った。軽度の要介護者を中心に利用者が急増しており、また、施設志向が依然として強く、社会的入院・入所の是正が進まないなど、介護費用の増加に伴い制度の持続可能性が懸念されている。過去3年間の検証作業を踏まえて、(1)必要な人へ適切な給付の重点化、(2)負担の公平・公正化の実現、(3)保険者・被保険者双方への効率化促進を改革の基本的方向に据えて取り組み、社会保障審議会の介護保険部会に意見を反映させた。
制度全体の一体的な取り組みについては、新ビジョンで示されている社会保障と税制改革の方向についての深堀を行うために設置された、プロジェクトチームで検討を行っており、当委員会の審議を経て、「社会保障制度の改革について―給付と負担のあり方―」(2003年7月)を取りまとめた。
不良債権問題の処理が進むとともに、長期停滞傾向にあった株価もようやく上昇基調に転じている。しかし、金融・資本市場をめぐっては、金融仲介機能の回復、使い勝手が良く国際競争力のある資本市場の整備など残された課題が多い。
9月に金融庁の増井総務企画局長より、金融庁が展開している各種施策などについて説明を聞くとともに、意見交換を行った。また、12月に神田秀樹東京大学教授より、資本市場の活性化と今後の証券関連法制について説明を聞くとともに、意見交換を行った。
「2003年度規制改革要望」(2003年10月)において、金融機関などのビジネスモデルの再構築および資本市場の制度整備の観点から33項目を要望した。要望項目の多くは、実現されるか、「規制改革・民間開放推進3ヵ年計画」(2004年3月)に盛り込まれた。
金融審議会第一部会では、2002年9月より証取法改正について検討を開始した。日本経団連では、金融庁と意見交換を行うとともに、不公正取引に対する課徴金導入に伴う刑事罰との調整、目論見書制度・公開買付制度の合理化などを求めた。また、インサイダー取引規制については、資本市場部会(部会長:島崎憲明住友商事専務執行役員)の下に設置したWGでの検討を踏まえ、日本経団連意見書「インサイダー取引規制の明確化に関する提言」(2003年12月)を取りまとめ、金融審議会などに働きかけを行った。さらに、7月には、自民党の個人株主拡大推進議員連盟と意見交換を行った。
東証は、2003年1月四半期財務情報に関して検討会を設置した。日本経団連では、同検討会に参加し、開示の充実を図るのであれば、現状の半期報告との調整など実務の負担を軽減するとともに、法的裏付けのある信頼に足る制度とすべき旨訴えた。また、東証の上場会社コーポレート・ガバナンス原則策定(2004年3月)に際し、特定のモデルや施策を強制・誘導するものとしないよう求めた。
金融審議会第二部会は、2002年6月より信託業のあり方に関する検討を開始した。日本経団連では、同検討に参画するとともに、「信託業法改正に関する打合会」を開催し、資本市場部会に報告した上で信託業法改正に関する部会意見「ニーズに応じた信託業法等について(メモ)」(2003年5月)を公表し、金融庁にその実現を働きかけた。7月に第二部会が、日本経団連が要望した信託業の担い手の拡大、受託可能財産の範囲の拡大などを容れた報告書を取りまとめると、直ちに同報告書に関する説明会を開催し、法案に盛り込むべき細目などを金融庁に伝えた。さらに法案提出前の2004年2月に、資本市場部会において、金融庁から法案の概要について説明を聞き、日本経団連要望事項の反映状況を確認した。
2004年1月に一般事業会社および関連団体で構成する「外為法に基づく事後報告制度の見直しに関する打合会」を開催するとともに、アンケート調査を実施し、財務省に対し、報告を要する取引類型の明確化などを求めた。
金融仲介機能の低下や郵政民営化などについて、一般事業会社の認識を深めるため、会合を計3回開催し、金融庁、総務省、日本銀行と意見交換を行った。
企業が経済環境の変化に機動的かつ柔軟に対応できるよう、2003年度も制度インフラである企業法制の見直しを求めた。
企画部会(部会長:西川元啓新日本製鐵常任顧問)を中心に議員立法を働きかけていた定款授権による自己株式取得等に関する改正が6月に実現した。電子公告制度、株券不発行制度の導入については2004年通常国会で実現するよう政府与党に働きかけた。
2005年通常国会提出予定の会社法制の現代化に関する法案に関しては、全ての取締役の責任の原則過失責任化、株主代表訴訟制度の見直し、LLC制度の導入などの要望を反映させるべく、(1)「会社法改正への提言」(2003年10月)を公表するとともに、(2)法制審議会会社法(現代化関係)部会が12月に公表した「要綱試案」について意見照会に応じ、また、(3)2004年2月の野沢太三法務大臣との懇談会において申し入れを行ったほか、(4)12月の法制審議会会社法(現代化関係)部会において、株主代表訴訟制度の見直しについて日本経団連の考え方を説明するとともに、委員会に同部会の江頭憲治郎部会長、落合誠一委員を招き、意見交換を行った。
また、「商法施行規則による株式会社の各種書類のひな型」 <PDF> を取りまとめるべく、検討を行った。
コーポレート・ガバナンス部会(部会長:立石忠雄オムロン専務取締役)では、内部統制に関するヒアリングを行ったほか、2004年2月、OECDコーポレート・ガバナンス原則の改訂に際し、コメントを提出した。
2月、ドイツのコーポレート・ガバナンス規範を策定したクロンメ政府委員会委員長と世界におけるコーポレート・ガバナンスの動向について意見交換を行った。
また、東証上場会社コーポレート・ガバナンス委員会によるコーポレート・ガバナンス原則策定の際に、各企業の自主的で多様な取り組みを尊重するよう働きかけた。
司法制度改革推進本部の顧問会議や各検討会を通じて、裁判の迅速化など司法制度改革に関する経済界要望の実現を働きかけた。
民事基本法についても、破産法・倒産実体法・民事訴訟法・民事執行法・公示催告手続に関する法案・不動産登記法の改正案について、法制審議会での審議やパブリック・コメントへの対応を通じて経済界の考え方を反映させた。動産・債権担保法制、保証制度の改正にも取り組んだ。
消費者法部会(部会長:宮部義一三菱樹脂相談役)では、国民生活審議会などでの審議を通じて、公益通報者保護法案については、企業のコンプライアンスへの自主的な取り組みを尊重し、濫用を防止しうる制度とすべく、また消費者保護基本法案については、消費者の自立を促すものとすべく働きかけを行った。
国際会計基準に関連して、「会計基準に関する国際的協調を求める」(2003年10月)を提言し、日米欧の会計基準の相互承認実現に向けて働きかけた。とりわけ、EUと英国に対し、日本基準による開示書類を受理するよう金融庁などとともに働きかけを行った。
2005年に向けて基準策定を急ぐ国際会計基準審議会(IASB)に対しては、基準諮問会議に八木良樹企業会計部会長ほかが参画し、過度な時価主義と拙速な基準策定に警鐘をならした。また、その運営機関であるトラスティー会合には橋本徹ドイツ証券会長が参加して、ガバナンスの改善に努めるとともに、資金面で積極的に貢献した。
金融庁ならびに企業会計審議会での企業結合会計の基準策定、金融審議会での公認会計士法改正やディスクロージャー制度の充実といった課題に対して、企業会計部会(部会長:八木良樹日立製作所副社長)で意見を取りまとめ、その実現に努めた。
また、企業会計基準委員会とその運営母体である(財)財務会計基準機構(理事長:小林正夫当委員会共同委員長)の活動を支援した。
競争法部会(部会長:諸石光熙住友化学専務取締役)を中心に、措置体系ならびに独占・寡占規制見直しに関する独占禁止法改正について、経済界の意見を反映させるべく精力的な検討を行った。具体的には、(1)提言「独占禁止法の措置体系見直しについて」(2003年9月)を公表し、21世紀にふさわしい競争世策を構築するために、欧米には見られない刑事罰と課徴金の併科制度のあり方についての検討を含む独禁法の実効性の向上、審査・審判手続の適正性・透明性の確保、公取委の能力・体制の整備、官製談合への対応といった抜本的な検討を行うべきである旨を提言し、(2)11月には公取委の独占禁止法研究会が公表した「報告書」に対する意見を提出し法的問題点などを指摘した上、(3)政府与党をはじめ関係各方面に対して、拙速な独占禁止法改正に反対すべく働きかけを行った。その結果、2004年通常国会への法案提出は、先送りとなる見通しとなったが、引き続き公取委との議論を進めた。
また、11月には、欧州委員会のマリオ・モンティ競争政策担当委員を招き、EUの競争政策の現状およびわが国の独禁法改正の動向に関する懇談会を開催し、12月には、EU弁護士による欧米の競争政策の現状に関するセミナーを開催した。さらに、下請法改正に係る公正取引委員会規則及び運用基準の改正に際し、実態に即した運用を行うべく、意見照会を取りまとめ、申し入れた。
規制改革の推進を「民主導・自律型」の経済社会システムを実現するための中核的課題と位置付け、関係各委員会と連携し、その実現に向けた活動を行った。
規制改革推進部会(部会長:鈴木祥弘日本電気顧問)が中心となって取りまとめた「『民主導・自律型システム』の確立に向けた新たな規制改革の推進方策について―日本経団連新ビジョンに基づく規制改革プログラム―」(2003年5月)を公表し、小泉総理をはじめ、政府・与党などへ建議した。
同プログラムでは、(1)全国規模の集中的な規制改革要望の受付の実施、(2)参入、退出、価格、設備など民間事業活動に係る規制の分野横断的な見直し、(3)規制の新設審査並びに第三者評価の実施、(4)2004年度以降の新たな規制改革推進計画の策定、(5)パブリックコメント手続の法制化、日本版ノーアクションレター制度の改善、行政手続法の見直し、などを求めるとともに、2004年3月末に設置期限を迎える内閣府の総合規制改革会議について、引き続き、民間人を主体とする後継組織を設置するよう要望した。
さらに、全会員企業・団体を対象に実施したアンケートをもとに、ビジネスの現場における実需に基づく「2003年度規制改革要望」(全16分野306項目)(2003年10月)を取りまとめ、総合規制改革会議などの関係先へ建議した。
総合規制改革会議では、構造改革特区における規制の特例措置の募集と併せ、全国規模の規制改革要望を年2回、集中的に受け付ける仕組みを6月より導入した。
当委員会では、第1回目の募集(6月)に対して2002年度の規制改革要望のうち積み残された重要課題を中心に69項目の提案を行い、9月の閣議報告により、そのうちの22項目が2003年度あるいは2004年度に措置されることとなった。
また第2回目の募集(11月)では、2003年度の規制改革要望をもとに298項目の提案を行い、2004年2月の閣議報告により、そのうちの50項目が2004年度中に措置されることが決定された。
なお、残る2003年度の規制改革要望については、3月に閣議決定された「規制改革・民間開放推進3か年計画」に、その多くが盛り込まれている。
大胆かつスピーディーな規制改革を実現するためには、政治のリーダーシップの発揮と企業経営者の知見の活用が不可欠である。かかる観点から、民間人主体の後継機関の設置に向けて、奥田会長が経済財政諮問会議において問題提起を行うとともに、金子規制改革担当大臣へ働きかけるなど、政府における新たな規制改革推進体制の整備を図るため、精力的な活動を展開した。
こうした取り組みの成果として、2004年4月以降、民間人主体の規制改革・民間開放推進会議が、引き続き設置されるとともに、総理を本部長、関係閣僚を本部員とする規制改革・民営化推進本部が新設され、政府と民間が協働して、規制改革を推進していくための体制整備が図られることとなった。
経済再生の主役である企業の自助努力を促す諸施策について検討を進め、製造業の活性化の観点から、9月、経済産業省の北村製造産業局長と「製造基盤白書」を中心に意見交換を行った。また、エンターテインメント・コンテンツ産業の振興に向けた取り組みを進めたほか、外国人の受け入れ問題につき検討を進めた。
今後のわが国経済の一翼を担うことが期待されるコンテンツ産業を振興するため、エンターテインメント・コンテンツ産業部会(部会長:依田巽エイベックス会長兼社長)を8月に設置し、本格的な検討を開始した。9月に知的財産戦略推進事務局の荒井事務局長と政府のコンテンツ政策をめぐり意見交換を行うなど、検討を重ね、提言「エンターテインメント・コンテンツ産業の振興に向けて」(2003年11月)を取りまとめ、コンテンツ振興に向けた国家的取り組みの必要性を指摘した。これを受け、自民党を中心に与党においてコンテンツ産業等の振興に向けた法律制定の機運が高まり、2004年3月に「コンテンツの創造、保護及び活用の促進に関する法律案」が議員立法で国会に提出された。また、上記の提言後、さらに8つの分科会で検討を進め、その成果を産業技術委員会と共同で取りまとめた提言「知的財産推進計画の改訂に向けて」(2004年3月)に盛り込んだ。
日本経団連では、2003年1月に公表した新ビジョンにおいて、「多様性のダイナミズムによって日本の社会・経済に再び活力を取り戻す」という観点から、外国人も活躍できる環境の整備を提案した。そのフォローアップとして、外国人の受け入れに関し、経済面のみならず、社会・文化面にわたり幅広く検討を行うこととし、6月に産業問題委員会と雇用委員会のもとにワーキンググループを設置し、企業関係者、関係省庁、有識者、地方自治体関係者などからのヒアリングを開始した。また8月には、会員企業並びに各地の経営者協会の会員企業約8,100社を対象にアンケート調査を行った。
その成果を、雇用委員会と共同で報告書「外国人受け入れ問題に関する中間とりまとめ」(2003年11月)として公表し、各方面に対して問題提起を行った。その後、政治、行政(国、地方自治体)の関係者、大学などの研究者、NPO、NGOの実務者などから寄せられた意見を参考にしつつ、委員会及びワーキンググループにおいてさらに検討を深め、2004年4月、「外国人受け入れ問題に関する提言」を公表することとなった。
提言では、「国民一人ひとりの付加価値創造力を高める観点から、外国人のもつ力を活用する」という考え方のもと、(1)質、量両面で十分にコントロールされた秩序ある受け入れを行うこと、(2)受け入れる外国人の人権や尊厳を損ねるものではあってはならないこと、(3)送り出し国にとってもメリットのあるものであることの「3つの原則」を明記することとしている。その上で、「日本企業における雇用契約、人事制度の改革」「国と地方自治体が一体となった整合性ある施策の推進」「専門的・技術的分野における受け入れの円滑化」「留学生の質的向上と日本国内における就職の促進」「将来的に労働力の不足が予想される分野での受け入れ」「外国人研修・技能実習制度の改善」「外国人の生活環境の整備」「日系人の入国、就労に伴う課題の解決」「受け入れ施策と整合性のとれた不法滞在者・治安対策」の9項目にわたり具体的な提案を行うこととしている。
以下は、ワーキンググループ及び委員会において行ったヒアリングのテーマと講師である。
企画部会(部会長:鳴戸道郎富士通特命顧問)において、次代のコアとなるような企業内の新事業推進に向けて、会員企業に対するアンケート調査を実施した後、各企業の取り組みや現状を把握し、新事業推進のための課題や改善策について検討を加えた上で、委員会報告書「次代のコア事業育成のために」(2004年3月)を取りまとめた。
日本経団連会員企業とベンチャー企業との情報・意見交換、人的交流を行う「起業フォーラム」を前年度に引き続き4回開催した。
第4回を5月に開催し、会員企業2社から新事業への取り組みについて説明を聞くとともに、分科会に分かれてベンチャー企業8社の事業紹介を行った。
第5回を7月に開催し、東京大学と早稲田大学から大学の役割、創業支援活動などについて説明を聞くとともに、分科会に分かれてそれぞれの大学発ベンチャー企業8社の事業紹介を行った。
第6回を9月に開催し、日本ベンチャーキャピタル協会から業界の取り組みについて説明を聞くとともに、大手ベンチャーキャピタル5社から推薦されたベンチャー企業10社の事業紹介を行った。
第7回を12月に開催し、会員企業1社から新事業への取り組みについて説明を聞くとともに、中部と東北地方のベンチャー企業4社の事業紹介を行った。
起業家と日本経団連首脳が、新事業の創出や経済活性化のための方策などを意見交換する場である「起業家懇談会」の第7回を、12月に開催した。
「新IT戦略に関する提言」(2003年3月)が「e-Japan戦略II」、「e-Japan重点計画-2003」ならびに「電子政府構築計画」に反映されるよう、情報化部会(部会長:棚橋康郎新日鉄ソリューションズ会長)で意見を取りまとめ(6月、7月、7月)、働きかけた結果、その多くが電子政府に係る政府の施策に反映されることになった。また、税務書類の電子保存範囲の拡大や輸出入・港湾手続のワンストップ化の推進などを内閣のIT戦略本部会合で働きかけた結果、「e-Japan戦略II加速化パッケージ」にそれら施策が盛り込まれた。
事業区分の廃止を含む電気通信事業法改正法が7月に成立し、施行に関する省令案が公表されたのを受け、通信・放送政策部会(部会長:〜2003年9月潮田壽彌味の素専務取締役、9月〜前田忠昭東京ガス常務執行役員)で意見を取りまとめた(2004年1月)。また、通信分野の競争評価手法に関する総務省研究会報告書案や競争状況の評価に関する基本方針案に対し、情報通信ワーキンググループや通信放送政策部会で意見を取りまとめた(6月、11月)。さらに、企業ユーザーの通信サービスニーズを把握し改善策などを提案すべくアンケートを実施した。
総務省研究会が電波利用料制度のあり方に関する論点を整理し意見募集したのを受け、通信放送政策部会で見解を取りまとめ提出した(2004年1月)。
ブロードバンドコンテンツ流通研究会における1年余の検討の結果、著作権の利用許諾を迅速・簡易に行える環境整備に向けた取り組みの必要性など、著作権に係る利用者・権利者団体双方の共通認識を取りまとめ公表した(6月)。
ハイテク犯罪に係る刑事法の整備に関し情報化部会で意見を取りまとめ(8月)、働きかけた結果、通信履歴の保全要請対象などに関する考え方が法制審議会答申に反映された。
5月に個人情報保護法が成立したのを受け、7月に説明会を開催した。また、同法施行令案の概要に関し情報化部会で意見を取りまとめた(10月)。さらに、個人情報の保護に関する基本方針に係る国民生活審議会の審議に経済界の意見が反映されるよう努めた。
民間に保存を義務付けている書類の電子保存を認めるための要件などを2003年度末までに明確化することが「e-Japan戦略II」や「e-Japan重点計画-2003」で決定され、また、「e-Japan戦略II加速化パッケージ」に「e-文書法」の制定などの施策が盛り込まれたのを機に、税務書類の電子保存範囲の拡大を実現すべく、「税務書類の電子保存範囲の拡大を改めて要望する」(2004年3月)を取りまとめ公表した。
25項目の規制改革要望を取りまとめた。そのうち、電気通信機器の基準認証制度について、改正省令案に対し情報通信ワーキンググループで意見を取りまとめた(9月、10月)。また、東経110度CSへの電気通信役務利用放送法の適用について総合規制改革会議で意見陳述するなど要望の実現に努めた。
WSIS(12月にジュネーブで開催)で採択する宣言・行動計画に関し、国際問題部会(部会長:島田精一日本ユニシス社長)で意見を取りまとめ公表した(11月)。
流通の概念を広く産業界全般に係る商流・物流システムとして捉え、その効率化やサービスの高度化を図るための諸課題や解決方策について提言を取りまとめるとともに、その実現に向けた働きかけを行った。
企画部会(部会長:小林栄三伊藤忠商事常務取締役)が中心となって取りまとめた「商流・物流システムの効率化に関する提言」(2003年10月)を公表し、政府へ建議した。
同提言では、高コスト構造の是正など、わが国流通システムが直面する課題を抽出し、最適なサプライチェーンを構築するためには、日本的な商慣行の見直しや企業間協働の促進が不可欠であるとして、課題解決に向けた企業トップの主体的な取り組みを求めた。その上で、商流・物流分野における規制改革や物流の効率化に不可欠な社会資本整備の拡充などを政府に要望した。
消費者利便の向上や選択肢の拡大を図る観点から、事業者の自由な事業展開や創意工夫の発揮を妨げている薬事法、大店立地法、酒税法、食品衛生法等に基づく流通分野の諸規制についての規制改革要望20項目を取りまとめ、10月に政府・与党に建議するとともに、総合規制改革会議が実施した規制改革集中受付月間(2003年11月)を通じて、その実現方を働きかけた。
農業団体と首脳レベルの懇談会を1991年5月以来12年ぶりに開催した(12月)。日本経団連からは奥田会長をはじめ関係副会長、委員長などが、農業団体側は、宮田全国農業協同組合中央会(全中)会長、木下全国農業協同組合連合会(全農)会長をはじめ全国農業会議所、農林中央金庫、全国共済農業共同組合連合会の幹部が参加し、農業の構造改革、食料自給率の向上などをめぐり意見交換を行い、わが国農業の抱える課題の解決に一致して取り組んでいくことで認識の一致をみた。今後も、時宜に応じて、農業団体との意見交換を行うこととした。
農林水産省と首脳レベルの懇談会を開催した(5月)。日本経団連からは奥田会長をはじめ関係副会長、委員長ほかが、農林水産省側は亀井農林水産大臣をはじめとする幹部が参加し、農林水産政策の改革、WTO農業交渉やFTAの状況などを中心に意見交換を行った。
また、委員会を開催し(10月、2004年2月)、農林水産省の村上大臣官房総括審議官及び皆川企画評価課長から、政府の国内農業構造改革に向けた取り組み、WTO及びFTA交渉の動向について聴取した。
関係委員会の横断的組織である経済連携協定(EPA)推進合同タスクフォースの見解に盛り込むべく、農業分野に関する考え方を検討した(2004年2月)。(参照:「経済連携の強化に向けた緊急提言」(2004年3月))
5月、委員会を開催し、都市・地域の魅力向上を図る上で、都市エンターテインメント機能を高めていくことが重要であるという認識の下、自由民主党「国際観光産業としてのカジノを考える議員連盟」の野田聖子会長、岩屋毅事務局長ほかを招き、わが国におけるカジノ導入への考え方などについて説明を聞いた。
また12月にも、委員会を開催し、内閣官房地域再生推進室の滑川雅士室長より、政府の地域再生本部の活動方針等について説明を聞いた。
5月、日本PFI協会との共催により、「PFIセミナー」を開催し、実施方針の策定や入札制度などをめぐる問題点について討議を行った。なお、当日は建築家の黒川紀章氏が基調講演を行った。
7月、PFI推進部会(部会長:小倉勝彦大成建設常務)を開催し、内閣府PFI推進室の有木久和参事官よりPFIの推進に関する政府の取り組みについて、財務省理財局の豊岡俊彦国有財産業務課長より公有地の民間への払い下げについて、それぞれ説明を聞いた。
政府が2004年中に「民間資金等の活用による公共施設等の整備等の促進に関する法律」(通称PFI法)の見直しを行うことを踏まえ、PFI推進部会で検討の上、「PFIの推進に関する第三次提言」(2004年1月)を取りまとめ、関係各方面に建議した。そのフォローアップとして、2004年1月に「官民交流PFIシンポジウム」(地域総合整備財団との共催、総務省後援)を開催し、その中で、地方自治体関係者に対して提言に関する説明を行った。また、2004年2月、内閣府PFI推進委員会総合部会ならびに自民党PFI推進調査会において、同提言の実現につき働きかけた。
12月、「ツーリズム・サミット2003」を開催した(日本ツーリズム産業団体連合会との共催)。当日は、奥田会長の開会挨拶、石原国土交通大臣(観光立国担当大臣)による来賓挨拶に引続き、シアゾン駐日フィリピン大使による基調講演が行われ、その後、ASEAN諸国の政府観光局、観光業界関係者をパネリストとして、訪日外国人観光客の増大に向けた方策について意見交換がなされた。
また、6月ならびに2004年2月、自民党観光特別委員会の関連小委員会において、観光インフラの整備、訪日外国人観光客の増大などに関する日本経団連の意見を陳述した。
沖縄振興特別措置法に基づいて設置された「金融特区」(名護市)を視察すると共に、本件に関する沖縄県・名護市の取り組みを調査する目的で、現地に実務レベルのミッションを派遣した(6月19日〜20日)。
また、内閣府の要請に基づき、宮原副会長を団長とする「日本経団連・沖縄現地視察ミッション」を派遣し、稲嶺知事ほか同県の政界・経済界幹部と懇談した(2004年2月4日〜5日)。
6月に野呂田芳成衆議院議員を招き、委員会を開催し、今後の住宅政策のあり方について説明を聞くとともに意見交換を行った。2004年3月には企画部会を開催し、日経BP社の細野透主任編集委員を招き、わが国の住宅市場の状況についての説明を聞き、意見交換を行った。
住宅および住環境の社会インフラとしての機能の高まりから住宅政策を国家戦略として位置付け、「住宅・街づくり基本法」の制定を呼びかけるとともに、住宅・住環境の質の向上に向けた政策提言「住みやすさで世界に誇れる国づくり」(2003年6月)を取りまとめた。5月、6月にそれぞれ企画部会を開催し、提言について審議を行い、委員会(6月)を経て関係各方面に建議した。
企画部会長(部会長:立花貞司トヨタ自動車常務役員)を団長とした調査団が9月22日から一週間、ドイツ、イタリア、フランスを訪問し、各国の関係省庁から住宅政策についてヒアリングを行うとともに、ベルリン、ミラノ、パリの都市・住宅事情を視察し、調査報告書をまとめた。
住宅・土地政策に関する打合せ会を開催し(7月、8月)、住宅・土地税制改正に関する具体的な考え方を取りまとめ、日本経団連税制改正要望(2003年9月)に盛り込んだ。11月に企画部会を開催し、住宅税制への取り組みについて意見交換を行った。また、自民党国土交通部会住宅・土地ワーキングチーム(9月)ならびに公明党国土交通部会(11月)において、経済活性化やデフレ脱却に資する住宅・土地税制の改正実現方につき積極的に働きかけた。こうした活動の結果、平成16年度税制改正において、住宅ローン減税の現行規模での1年延長、特定の居住用財産の買換えの場合の譲渡損失の繰越控除制度の拡充・延長など、大きな成果を得た。さらに企画部会(2004年3月)において、住宅投資減税に関する意見交換を行った。
産業界の長年の要望であった輸出入・港湾諸手続のワンストップサービスについては、2003年7月に、輸出入・港湾諸手続のシングルウィンドウシステムが稼動を開始したものの、各種申請の見直しや現行の申請書類の徹底した簡素化など、電子化に先立って行うべき輸出入・港湾諸手続全般の業務改革(BPR)に関しては、まだ改善の余地がある。そこで、「輸出入・港湾諸手続のワンストップサービス打合せ会」(実務家レベルの専門家で構成)では、民間事業者の意見を施策に反映させるべく、関係府省(内閣官房、財務省、国土交通省、厚生労働省、農林水産省、法務省、経済産業省)と意見交換を行い、2003年3月に実施した韓国・台湾における実態調査を踏まえ、BPR促進を強く働きかけた(6月)。加えて、自民党政務調査会e-Japan特命委員会において、「輸出入・港湾諸手続のワンストップ化」に向けた課題などを説明した(2004年3月)。
こうした取り組みの一環として、国土交通省の金澤寛港湾局長より「新しい港湾政策の展開」について(6月)、国土交通省港湾局の梅山港湾情報化推進室長より「港湾の情報化の現状と課題」について(2004年3月)、それぞれ説明を聞いた。また、わが国の港湾施設整備や各種施策の推進に資するため、国土交通省港湾局の中尾計画課長を招き、国際海上コンテナの輸送需要動向について意見交換を行った(12月)。
さらに、米国の積荷情報24時間前申告ルールやC-TPAT(Customs-Trade Partnership Against Terrorism)などのセキュリティ関連諸施策に関して、セキュリティ確保と物流効率化をともに促進する観点から、米国税関国境保護局およびわが国財務省関税局に対して要望書を提出した(7月、8月)。
大型車両の重大事故が社会的な問題となっていることを踏まえ、車両総重量および車高の規制緩和の機会に、運送事業者に限らず、荷主としても安全運送に取り組んでいく必要があるとの認識のもと、「安全運送に関する荷主としての行動指針」(2003年10月)を策定し、広く経済界に浸透するよう努めた。
国土交通省航空局の玉木新東京国際空港課長を招き、2004年4月から民営化をされる新東京国際空港公団の取り組み状況について、説明を聞いた(10月)。
道路関係四公団民営化と今後の高速道路整備のあり方に関して、物流効率化の観点から産業界の意見を反映させるため、国土交通省佐藤道路局長より「道路行政をめぐる最近の話題」について(10月)、また、国土交通省道路局榊次長より「道路関係四公団民営化の方向」について(12月)、それぞれ説明を聞いた。
国土交通省鉄道局の高田業務課長を招き、総合規制改革会議において、都市再生の観点から論議されていた「通勤鉄道における時間差料金制」に関し意見交換を行った(11月)。
運輸分野の規制改革については、国際競争力の強化ならびに地球環境問題への対応などの観点から、車両諸元に係る規制をはじめ、合計21項目に及ぶ規制改革要望を取りまとめ、政府に建議した。こうした働きかけの結果、内航タンカーの20海里航行規制の緩和や保税舶用重油の積込承認申請に関する規制緩和に向けた検討が開始されるなど、着実な成果があがった。
本委員会は、地域振興政策課題に取り組んでいる。
今年度、新たに地域政策専門部会(部会長:岡崎尋幸近畿日本鉄道東京支社長)を設け、部会に3つのワーキング・チームを展開し、活動の充実を図った。(1)ライフサイクルに適合する住宅政策の検討、(2)地域産業振興のための資金調達の検討、(3)ツーリズム産業活性化などである。
委員会では、地域振興に係る課題を正しく認識することを重視し、今年も埼玉県本庄市にある通信・放送機構本庄情報通信研究開発支援センターのほか埼玉県行田市ものつくり大学を視察した。特に、大学では野村東太学長をはじめ大学の幹部と人材育成についての意見交換を行った。また、埼玉県経営者協会野上武利専務理事より「地域振興への地方経済団体の役割」と題して基調報告が行われた。
専門部会は、委員会事業の審議のほか、経済産業省三木統括地域活性化企画官ならびに総務省財政課前田企画官と意見交換を行った。
住宅政策に係るワーキングでは、「子供を育むのに理想的な環境を持つ市場形成が可能な街づくり」をテーマに専門家を交えた討議を重ね、候補地の視察、地方自治体からの聴取など7回の会合を開催した。
資金調達に係るワーキングでは、東京都、東京商工会議所、中小企業総合事業団などの政策金融を担う機関と、TKC東京中央会、東京青年会議所、日興コーディアル証券、日本エンジェルズ・フォーラムなど需要側・供給側の双方が同じテーブルで討議し、課題を共有するとともに連携できることを検討した。(7回)
ツーリズムに係るワーキングは、JATAを中心に観光事業の精査と新たな観光政策への展望を踏まえ、現状の課題を検討し、提言の作成を準備した。(7回)
戦略的かつ総合的な科学技術政策の推進を支援するため、わが国の科学技術政策の司令塔である総合科学技術会議の活動に積極的に協力した。
5月には、研究開発プロジェクトや産学官連携をめぐり細田博之科学技術政策担当大臣との懇談会を開催するとともに、12月には、内閣府の大熊健司政策統括官(科学技術担当)と、科学技術政策全般をめぐり、意見交換を行った。
また、2004年1月には経済産業省産業技術環境局の塩沢審議官と「わが国の産業技術の現状と課題」について、意見交換を行った。
重点化戦略部会(部会長:中村道治日立製作所副社長)では、4月に「重点分野における科学技術投資のあり方」について、5月に「新産業の創出と産業の基盤づくりに向けた競争的資金の活用など、民間企業の研究開発への支援」について、種々意見交換を行った。8月には、科学技術政策部会(部会長:溝口哲也東芝顧問)と重点化戦略部会の合同会合を開催し、内閣府の中原参事官(資源配分担当)と「平成16年度科学技術予算の予算編成」について、意見交換を行った。
科学技術創造立国の実現の重要な鍵として、産学官連携を掲げ、産学官連携推進部会(部会長:山野井昭雄味の素技術特別顧問)を中心として、積極的な活動を推進した。まず、今後の産学官連携に不可欠な非公務員型による国立大学法人化に関しては、5月に、山野井部会長が衆議院文部科学委員会で参考人として産業界意見の実現を強く求めた。
また、6月には、京都で、産学官の第一線のリーダーや実務者4000人による、第2回産学官連携推進会議を内閣府、日本学術会議ほかとともに開催し、優れた連携事例に対し新たに日本経団連会長賞を創設し、授与した。11月には、東京で、第3回産学官連携サミットを開催し、産学官のトップの一層の相互理解を深めた。
さらに、わが国産業の国際競争力強化の観点から産学連携による優れた技術系人材の育成のあり方について、意見集約及びアンケート調査を実施し、総合科学技術会議科学技術関係人材専門調査会において産業界の要望を反映すべく活動を行った。
科学技術投資の戦略的重点化を進める観点から、重要分野について、以下のような活動を行った。
ナノテクノロジーWG(主査:石原直NTTアドバンステクノロジ理事)において、9月に、鈴木信邦内閣府主任科学技術官から、総合科学技術会議が取りまとめた「『ナノテクノロジー・材料分野の産業発掘の推進について−府省「連携プロジェクト」等による推進−』」について説明を聴くとともに意見交換を行った。10月には、経済産業省製造産業局の青山ナノテクノロジー・材料戦略室長から「ナノテクノロジーに関する経済産業省の施策等」について説明を聞くとともに懇談した。
政府のBT戦略会議に、庄山委員長が委員として参加し、9月に開催されたBT戦略会議有識者会合ならびに2004年1月のBT戦略会議において、これまでのバイオテクノロジー政策が、経済や社会にどのように役に立ったのかを検証すべきなど、産業界の立場から意見を表明した。
バイオ・ナノシミュレーションWGにおいて、意見書「産業競争力の強化に向けたバイオ・ナノシミュレーション技術に活用について」(2003年2月)を踏まえ、わが国の産業が国際競争力を高める上でのシミュレーションの重要性について理解増進に努める観点から、7月に大阪大学サイバーメディアセンター副センター長の下條教授、坂田教授から「バイオグリッド・プロジェクト」について説明を聞くとともに意見交換を行った。
政府において2003年3月に設置された知的財産戦略本部は、7月に知的財産推進計画を策定したが、これに先立ち、知的財産部会(部会長:石田正泰凸版印刷専務)では、提言「知的財産推進計画への意見」(2003年4月)を取りまとめ、関係方面に建議した。
また、2004年3月には、知的財産戦略本部による知的財産推進計画の改訂の検討に先立ち、提言「知的財産推進計画の改訂に向けて」(2004年3月)を取りまとめ、関係方面に建議した。
この間、7月には、委員会を開催し、内閣官房知的財産戦略推進事務局の荒井事務局長と「知的財産の創造、保護および活用に関する推進計画」について、2004年3月には、産業問題委員会との合同会合を開催し、同じく、知的財産戦略推進事務局の荒井事務局長と「知的財産戦略の進展」について意見交換を行った。
その他、知的財産部会では、以下の取り組みを行った。
産業構造審議会における職務発明制度のあり方の検討に対し、対価の額の決定は、企業において合理的なプロセスのもとで定められた取り決めに委ねるべきであると主張した。
また、知的財産訴訟への対応強化に向けて、司法制度改革推進本部知的財産訴訟検討会において、意見を表明したほか、知的財産高等裁判所の創設を要望した。
著作権関係では、レコード輸入権について、最低限の措置はやむを得ないとの立場を明らかにし、創設への道筋をつけた。中古ゲームソフトの流通問題に関する検討を開始した。
わが国の製品やサービスが、グローバル市場において競争力を持つためには、企業として国際標準化に戦略的に取り組むことが不可欠になっているとの認識のもと、4月には経済産業省産業技術環境局の佐藤審議官ならびにISOの田中理事と産業競争力強化のための国際標準の活用を巡り意見交換するとともに、7月には、産業技術委員会のもとに国際標準化戦略部会(部会長:尾形三菱電機上席常務執行役)を設置した。
その後、特に、産業競争力の強化の観点から、わが国の産業の国際標準化戦略のあり方や政府、大学・公的研究機関、国際標準化機関への期待について検討を行い、「戦略的な国際標準化の推進に関する提言」(2004年1月)を取りまとめた。
自民党科学技術創造立国・情報通信研究開発推進調査会において、産学官連携による、海洋科学技術の推進について、説明を行った。
国連海洋法条約に基づき、大陸棚の地形、地殻構造、地質に関する詳細な調査を実施し、2009年5月までに調査結果を国連に申請し、その国の大陸棚として認定を受ければ、資源開発など経済上の権利を確保できる。今回の調査は政府のみでは限界があるため、民間を含め、国をあげた取り組みが不可欠な状況にある。
そこで、7月に、総合部会(部会長:鈴木賢一日本水産相談役)を開催し、海上保安庁の谷伸海洋情報部大陸棚調査室長を招き、わが国の大陸棚調査の現状について、説明を受け、意見交換を行った。10月には、委員会を開催し、海洋科学技術センターの平朝彦地球深部探査センター長より、大陸棚調査の意義と政府における検討状況について、説明を受け、意見交換を行った。その結果、民間としても本調査に対して、横断的な対応を行うこととなった。
それを受け、11月に、海洋関連団体からなる「大陸棚画定調査連絡会」を設置し、本調査に関する民間としての対応のあり方について検討を行い、民間横断的な対応が図られることとなった。
一方、政府に対して、本調査に対する民間の考え方を伝えるため、11月、政府関係者に対して、政府の一体的取り組み、予算措置、官民の連携強化などを求める要望を行った。
11月に小池環境大臣との懇談会を開催し、奥田会長はじめ関係副会長、委員長、部会長から、温暖化問題、廃棄物・リサイクル問題などに関する産業界の取り組み状況と、これらの分野における政策のあり方、さらに中央環境審議会の委員見直しの必要性について産業界の意見を述べるとともに懇談した。
2003年1月に発表した新ビジョンにおいて提唱した「環境立国」の実現に向け、「環境立国のための3つの取り組み」(2004年1月)を公表し、産業界として環境自主行動計画の着実な推進・達成、環境技術の開発や環境保全活動の促進に取り組む姿勢を示すとともに、環境報告書をはじめとする積極的な情報発信への取り組みを会員企業・団体に求めた。
2004年の地球温暖化対策推進大綱の見直しに向けて、いわゆる環境税導入の論議が政府部内で進みつつあるため、経済と環境の両立を実現するためには、産業分野の温暖化対策は、規制的措置ではなく自主的取り組みを中心とすべきとの趣旨の意見書「環境税の導入に反対する」(2003年11月)を取りまとめ、政府・与党幹部ほかに建議した。
環境自主行動計画2003年度フォローアップを実施し、11月に結果を公表した。フォローアップには、産業・エネルギー転換部門35業種を含む58業種・企業が参加した。2002年度の産業・エネルギー転換部門からのCO2排出量は、4億8,964万t-CO2で、90年度比1.9%減であったことが明らかとなった。過去5年間の平均値でも同0.9%減であり、「2010年度のCO2排出量を90年度レベル以下に抑制する」という統一目標を着実に達成しつつある。
また、同フォローアップの透明性・信頼性向上のため設置された第三者評価委員会(委員長:山口光恒慶應義塾大学教授)は、9月に訪欧調査を行うとともに、11月〜3月に計5回会合を開催し、前年度指摘事項を踏まえた改善点の評価ならびに今後の課題について2003年度評価報告書を取りまとめた。
国連気候変動枠組条約補助機関会合(SB18、6月4日〜13日、於ボン)の開催を機に、国際環境戦略WGは調査団を派遣し、米欧経済団体(米国国際ビジネス協議会(USCIB)、ドイツ産業連盟(BDI)、英国産業連盟(CBI)、欧州産業連盟(UNICE))と、各国産業界が直面する温暖化対策の課題と展望などにつき意見交換を行った。
また、6月には、平沼経済産業大臣の来席を得て「エネルギーと気候変動 〜産業界の役割〜」と題するセミナーを、持続可能な発展のための世界経済人会議(WBCSD)との共催により開催し、温暖化防止に向けた産業界の役割について、ワッツ会長ら各国企業トップと議論を行った。
国連気候変動枠組条約第9回締約国会議(COP9、12月1日〜12日、於ミラノ)期間中、国際商業会議所(ICC)およびWBCSDと、それぞれセミナーを共催し、海外の関係者に日本の産業界の取り組みを紹介するとともに、2013年以降の国際的な枠組みのあり方について議論した。
廃棄物処理法の改正にあたり、意見書「合理的かつ効果的な廃棄物処理法の改正を望む」(2003年2月)の内容が盛り込まれるよう、庄子幹雄廃棄物・リサイクル部会長(鹿島建設副社長)が参議院環境委員会で意見陳述を行う(6月)など、政府など関係方面に積極的に働きかけた。その結果、6月成立の改正廃棄物処理法に、広域的なリサイクル推進のための環境大臣認定特例制度など、日本経団連の考え方が全面的に取り入れられた。
上記に伴う政省令の改正については、廃棄物・リサイクルWGを中心に対応した。
本年度も、41業種の協力を得て、業種毎の廃棄物対策ならびに産業廃棄物最終処分量の削減目標の達成状況などを調査し、2004年3月に公表した。2002年度における産業界全体の産業廃棄物最終処分量は1990年度比で19.5%まで削減し、「2010年度の産業界全体の産業廃棄物最終処分量を1990年度比25%に削減する」という目標を8年前倒しで達成した。
参議院自民党との懇談会環境・エネルギー分科会において、近年急増している硫酸ピッチの不法投棄問題を取り上げ、関係5省庁と意見交換を行う(2004年1月)など関係方面に改善を働きかけた結果、2004年3月に国会に提出された廃棄物処理法改正案に、硫酸ピッチの保管規制や罰則の強化が盛り込まれた。
9月に環境省の南川廃棄物・リサイクル対策部長を招いて委員会を開催し、廃棄物問題への取り組みについて懇談した。廃棄物・リサイクル部会では、7月に国土交通省総合政策局の担当課長、室長を招いて、建設リサイクル問題について意見交換を行ったほか、2004年2月には環境省南川廃棄物・リサイクル部長を再度招き、中央環境審議会廃棄物・リサイクル部会の報告書(2004年1月公表)について説明を聞いた。その際、環境省から、産業廃棄物処理業優良化推進事業の検討に対する協力要請があった。その他、廃棄物・リサイクルWGを適宜開催し、産廃税や規制改革、産廃事業者の格付け問題などにつき検討を行った。
環境保全のための新たな視点として、水生生物を保全するための環境基準設定の動きに対し、環境リスク対策部会(部会長:河内哲住友化学工業専務取締役)および部会の下に新設した環境管理WGでは、意見書「水質環境基準の拙速な設定に反対する」(2003年6月)を取りまとめた。環境省と意見交換を重ねた結果、産業界委員も参加する小委員会が中央環境審議会に新設され、環境基準値の実際の運用について引続き検討を行うこととなった。
環境省より示された揮発性有機化合物(VOC)の排出規制案に対し、環境管理WGでは産業界としての対応を検討し、「事業者の自主的取り組みによる排出削減とすべき」との意見申入れを行った。その結果、大気汚染防止法の改正にあたっては、排出削減は法規制と自主的取り組みのベストミックスにより進められることとなった。
産業事故の発生など、保安・安全をめぐる状況を踏まえ、2004年2月、安全部会(部会長:新美春之昭和シェル石油会長)を開催し、消防・防災分野における諸課題と対応策について、消防庁より説明を聞くとともに意見交換を行った。
廃棄物・環境保全分野、危険物・防災・保安分野について規制改革要望を取りまとめ、10月に政府に要望し、実現を働きかけた。
廃棄物・環境保全分野については、総合規制改革会議への要望提出に加えて、環境省の担当部局との協議を重ねた結果、廃棄物処理法に基づく申請書類の簡素化、一定の要件を満たす汚泥の脱水処理施設に対する廃棄物処理法の適用除外、分社化に対応した規制の見直しなど、日本経団連が従来から要望した諸点が規制改革・民間開放推進3か年計画に盛り込まれることになった。
危険物・防災・保安分野は、「安全」を政策目的とした分野であることから、所管省庁の対応が慎重であるが、技術開発の進展などにより対応が可能と考えられる課題や、実態を踏まえた対応が必要な点について、民間の経験、実績を踏まえた自主的な対応の推進を図る観点から要望を取りまとめた。また、保安諸規制の合理化、整合化の観点から、重複規制の抜本的な解消について引続き要望した。
2003年度は、我が国の中長期エネルギー政策の基礎となるエネルギー基本計画の策定が行われた。また、原子力発電所を巡る問題に端を発した関東地区における夏期の電力需給問題、イラク情勢、北米の大停電などにより、エネルギーの安定供給に関する社会的な関心が高まった。
夏期の電力需給問題に関しては、2回にわたり説明会を開催するとともに、会員に対して、文書により節電を呼びかけた。
一方、エネルギー基本計画の策定を進める経済産業省総合資源エネルギー調査会においては、意見書「エネルギー政策の着実な推進を求める」(2003年3月)をもとに、原子力を基幹とした確固たるエネルギー総合戦略の確立を強く求めた。さらに、8月には資源エネルギー庁の深野総合政策課長から、基本計画の検討状況の説明を聞くとともに意見交換を行った。その結果、核燃料サイクルの推進を含む原子力発電が基幹電源と位置付けられるなど、基本計画は、概ね産業界の意見を反映したものとなった。
また、2004年1月には、スペンサー・エイブラハム米国エネルギー省長官を招き、原子力の推進や水素社会の実現を目指す米国のエネルギー政策や、技術開発における日米協力の重要性について意見交換を行った。
さらに、企画部会(部会長:石井保三菱マテリアル原子力顧問)では、6月に竹内舜哉原子力発電環境整備機構理事、資源エネルギー庁の山近放射性廃棄物対策室長を招き、高レベル放射性廃棄物の最終処分のあり方について意見交換を行った。
エネルギー分野の規制改革要望については、産業界の自主的取り組みや新技術の開発・普及を阻害する規制の合理化・見直しを求める観点から37項目の要望を取りまとめ、10月、政府に建議した。要望のうち、エネルギー関連の各種資格の取扱いの見直しや分散型電源に係る規制の緩和など、多くの規制に関し政府対応方針が示されることとなった。
委員会を改組して、会長・副会長、評議員会議長・同副議長、委員長および部会長により構成することとし、経済界および日本経団連が取り組むべき重要課題の広報戦略や広報体制について、総合的な見地から検討した。
4月に広報担当者懇談会を開催したほか、12月には企画部会(部会長:桝本晃章東京電力副社長)を開催し、日本経団連が抱える主要政策課題と広報活動の現状について、経済広報センターの活動も含めて報告するとともに、今後の広報活動のあり方や広報活動への各企業・業界団体の参画のあり方などについて意見交換を行った。
日本経団連の活動に関する国内外への広報活動が、積極的かつタイムリーに行われるよう、支援を行った。
2002年10月に発表した「企業不祥事防止への取り組み強化について」では、企業行動に関する会員企業の継続的な取り組みを支援するために毎年10月を「企業倫理月間」とすることとした。その第1回月間にあたる2003年10月には、会員企業に対し企業行動の総点検を要請するとともに、セミナー、研修会などを開催した。
第1回の企業倫理月間を迎えるにあたり、奥田会長より全会員代表者あてに、「企業倫理徹底のお願い」を送付した。具体的には、(1)企業不祥事は一企業の問題にとどまらず経済界全体に対する共感と信頼を大きく損ねかねない問題であり、(2)経済界全体が社会の共感と信頼を得るためには各企業が経営トップのリーダーシップの下で常時企業行動を点検し、企業倫理の確立に努めることが必要であると訴えた上で、全会員企業に、行動指針の整備・充実、トップの基本姿勢の社内外への表明、企業倫理担当役員の任命や担当部署の設置、企業倫理ヘルプライン(相談窓口)の整備、教育・研修の実施・充実、企業倫理の浸透・定着状況チェックと評価、不祥事が起こった場合の適時適確な情報開示、原因の究明、再発防止策の実施の7項目の徹底を求めた。
10月、300名以上の参加を得て、第2回企業倫理トップセミナーを開催した。
武田副会長、久保利日比谷パーク法律事務所代表、早房地球市民ジャーナリスト工房代表、松崎森永製菓相談役によるパネルディスカッションでは、企業不祥事が絶えない中、企業倫理の一層の徹底に向けた取り組みや経営者の役割などが話し合われた。
10月30日、31日の両日ならびに2月5日、6日の両日、経団連ゲストハウスにおいて、第1回・第2回企業倫理担当者研修会をそれぞれ実施し、企業の担当者がコンプライアンスを巡る最新情勢を学ぶとともに、それぞれの経験をもとに幅広い意見交換を行い担当者間のネットワーク作りに努めた。
2002年12月から実施したアンケートの中間とりまとめ <PDF>を4月に公表した。7月末に最終集計を行った時点では、約6割の回収率となった。
会員企業が関わる不祥事を調査するとともに、会員企業からの問合せに応じてコンプライアンス体制の構築、改善に向けた助言を行った。
7月の委員会では、スコット・デイヴィス麗澤大学国際経済学部教授からCSRの変化と欧米の動向について説明を聞くとともに、日本におけるCSRのあり方について検討するため、企業行動委員会との合同部会として社会的責任経営部会(部会長:池田守男委員長)の設置を決めた。社会的責任経営部会では、谷本寛治一橋大学大学院商学研究科教授、高巖麗澤大学国際経済学部教授ほかからのヒアリングを行い、「CSR推進にあたっての基本的考え方」(2004月2日)を取りまとめた。「基本的考え方」では、(1)CSRは民間が自主的に進めるものであり規格化や法制化に反対であるとした上で、(2)日本経団連は企業行動憲章と手引きを見直し、CSRの指針とすることを表明した。
社会貢献担当者懇談会(座長:島田京子日産自動車コミュニティ・リレーションズ担当部長、共同座長:長谷川公彦味の素社会貢献担当部長)では、メンバー企業の「環境・社会報告書を読む会」やNGOとの誠実な対話が製品開発に繋がった事例を題材に、ステークホルダーとのコミュニケーションや情報開示を進める上で社会貢献活動が先駆的な役割を果たすことを確認した(4月、8月)。
社会貢献フォーラム(2004年2月20日、21日)では、「徹底討論−新たなる社会貢献の道を拓くために」をテーマに、社会貢献活動とCSRとの関係性を整理するとともに、ステークホルダーへの説明責任の向上や社員の理解・社会参加の促進について議論した。
12月の委員会では、山岡義典日本NPOセンター常務理事から、コミュニティ再生のために社会的起業家が果たす役割について説明を聞いた。また社会貢献担当者懇談会では、英国における企業財団の動向、まちづくりにおけるソーシャル・キャピタルの視点など新しい動きについて話を聞き、企業がより実質的に社会的課題の解決に寄与するには、専門性が高く、多様な組織や個人を繋げる力のあるNPOとの連携が必要であることを確認した(10月、2004年2月)。
2002年度の社会貢献活動の実績について調査し、340社(回答率:26.1%)から回答を得た。社会貢献活動支出額は、総額で1,190億円、1社あたり平均額は対前年度比9.9%増の3億7,600万円であった。今回は、各社の社会貢献活動についての基本的考え方、活動推進のための社内体制、社員のボランティア活動の支援策などとともに、具体的な活動メニューを調査し、事例調査編として取りまとめた。回答企業75.6%の257社が事例を公表している。
2004年1月に調査結果を公表し、ホームページに掲載した。
政党の政策評価に基づく企業の自発的政治寄付を、企業の社会的責任の一端としての重要な社会貢献として推進すべく、政経行動委員会と連携し、以下の活動を行った。
9月に、政策評価の尺度となる10項目の優先政策事項とその解説を発表した。優先政策事項は、民主導・自律型の経済社会を実現するため緊急かつ重要な政策を列挙したものである。
優先政策事項とあわせて、企業の政治寄付の意義に関する考え方を整理し発表した。この中では、企業の政治寄付は(1)政策本位の政治の実現への貢献、(2)議会制民主主義の健全な発展への貢献、(3)政治資金の透明性向上への貢献の3点から極めて重要であることを強調した。
12月には理事会において企業の自発的政治寄付に関する申し合わせを決定し、会員企業は、(1)政治寄付を企業の社会的責任の一端としての社会貢献と認識し、(2)日本経団連による政党の政策評価を参考に、(3)日本経団連の年会費相当額を当面の目安として、自発的に政党の政治資金団体に寄付することとした。さらに、寄付実施に当たっては、(1)民間寄付を政策立案・推進能力の強化に充当するとともに、(2)政治資金の効率化・透明性の向上に取り組むよう、政党に要望することとした。
2004年1月には、企業の政治寄付を受け入れる意思を明らかにしている自民党と民主党を対象に、日本経団連としての初の政策評価結果を発表した。この評価は、優先政策事項に照らして2003年総選挙での政権公約と年末までの取り組みを判断したものである。
2月には、全会員企業を対象とした説明会を開催し評価結果を解説するとともに、政策評価を参考に自発的かつ積極的に政治寄付を実施するよう呼びかけた。
なお、通常国会における各党の取り組みや予算や法案成立などの実績を踏まえて、年央にも第2次評価を実施することとした。
2004年3月、自発的政治寄付の実施と株主への説明責任などについて、コーポレート・ガバナンスや株主代表訴訟に詳しい鳥飼重和弁護士より説明を聞いた。
政策本位の政治に向けて企業・団体の政治寄付を促進すべく、政治・企業委員会から以下の4点に関する諮問を受け、検討を行った。
上記の内、寄付総額の目標については検討の結果、設定しないこととした(その他は「政治・企業委員会」参照)
若者の職業観・就労意識の醸成を図り、次代を担う有為の人材育成を進めることがわが国にとって喫緊の課題であることから、2002年度に設けた職業観・就労意識の形成・向上に関する研究会で種々検討を行い、その結果を、家庭や地域社会の教育力復活、企業の職業観教育への支援強化、教員のための経済・社会研究プログラムの開発・実現などを内容とした「若年者の職業観・就労意識の形成・向上のために―企業ができる具体的施策の提言―」 <PDF>(2003年10月)として公表した。
社会のダイナミズムを生むためには、均質性を重視したこれまでの教育のあり方を見直すことが必要であると指摘した「新ビジョン」のフォローアップとして、今後の教育政策のあり方を具体的に提案するため、企画部会(部会長:宇佐美聰三菱電機副社長)において、教育行政や学校の関係者からヒアリングを行うとともに、産業界が求める人材像や大胆かつスピード感ある改革の推進策について検討を重ねた。
企業が求める人材像について、教育関係者に理解を深めてもらうことを目的に、「大学の将来像」をテーマに開催されたOECD/ジャパンセミナーの場で、企業が求める人材像と大学教育への期待について樋口委員長が講演を行った(12月)。
教育分野における規制改革要望を取りまとめ、日本経団連の規制改革要望(10月)の一分野として、政府・与党、総合規制改革会議などに建議し、その実現を働きかけた。
毎春の労使交渉に際し、「経営と人」に関する基本的な考え方を総合的に検討し、全国の企業経営者の指針となる報告書として「経営労働政策委員会報告」を12月に取りまとめ、発表した。「高付加価値経営と多様性人材立国への道−いまこそ求められる経営者の高い志と使命感−」と題した本報告書は、今こそ、守りの改革から攻めの改革へのシフトの時であり、そのためには、多様な価値観や考え方を持つ異質な高度人材を活用するための新しい人材戦略を構築しなければならないと主張している。
報告書は、以下の3部から構成されている。
今次労使交渉の課題として、(1)自社の付加価値生産性に応じた総額人件費管理の徹底、(2)賃金水準の適正化と年功型賃金からの脱却、(3)仕事や役割に応じた複線的な賃金管理への転換を指摘し、合わせて今後は労使交渉が、経営環境の変化や経営課題について広範な議論を行い、企業の存続、競争力強化の方策を討議・検討していく「春討」、「春季労使協議」へと転換していくことが望ましいとの主張を展開した。
下部組織である「雇用政策検討部会」(部会長:安堂誠王子製紙執行役員人事本部長)と共に、2003年度については、(1)高年齢者の雇用対策、(2)外国人の受け入れ問題、(3)改正労働者派遣法・職業安定法の周知、(4)新卒採用問題への対応などについて論議を重ねた。委員会・部会で検討した主な内容は次の通り。
厚生労働省労働政策審議会雇用対策基本問題部会では、10月より、今後の高年齢者の雇用対策について検討を行った。部会では、雇用と年金との接続を確保し、少なくとも年金支給開始年齢となる65歳までは年齢を理由として離職させないというルールづくり(定年延長や継続雇用制度の導入義務化など)を中心に論議が行われた。雇用委員会ではアンケートなどを通じて企業の意見を集約し、日本経団連としては、(1)企業経営や労働市場に与える影響が非常に大きい、(2)一律の法制化では、各企業の経営や労使関係の実情に応じた適切な対応ができないことを理由に、義務化反対を主張し、高年齢者の雇用対策はあくまでも労使自治を原則とする考え方・施策を高年齢者雇用安定法の改正法案の策定に反映させた。
2003年1月に公表した新ビジョンにおいて取り上げた外国人の受け入れ問題について、検討を深め、産業問題委員会と共同で2003年11月に「外国人受け入れ問題に関する中間とりまとめ」を発表した。
改正労働者派遣法・職業安定法が2003年6月に成立した後、その政省令・告示の見直しにあたって雇用政策検討部会や地方経営者協会、業種団体に意見聴取を行い、政省令・告示見直しに反映させた。また業種団体と共同で改正法の手引きを作成し、周知に努めた。
雇用政策検討部会の下部組織である「採用問題アドバイザリー会議」では、「2004年度新規学卒者の採用・選考に関する企業の倫理憲章」(2003年10月)を発表した。またその順守徹底を図る観点から、「倫理憲章の趣旨実現をめざす共同宣言」(2003年12月)を発表し、644社からの賛同を得た。
厚生労働省労働政策審議会雇用均等分科会において、仕事と家庭の両立支援対策が審議されたことから、委員会と労務管理問題検討部会(部会長:子原正明日本アイ・ビー・エム人事・組織部長)で、日本経団連の対応について検討し、審議会に臨んだ。加えて、委員会委員、部会委員、地方経営者協会、業種団体などに、仕事と家庭の両立支援対策についてアンケート調査を実施し、その結果を審議会の意見に反映させた。
企業における男女共同参画について、関係委員会と連携して、意識啓発を促すパンフレット「企業における男女共同参画〜一人ひとりが生き生きと働くことのできる職場を目指して」を作成、2004年2月に発表した。
2002年秋より設置した第2次ダイバーシティ・ワーク・ルール研究会において、引き続きダイバーシティ・マネジメントの具体的な取り組みについて研究した。
厚生労働省労働政策審議会勤労者生活分科会において、財形制度の見直しに向けて検討が始まったことから、委員会委員、部会委員、福利厚生検討小委員会(座長:小澤敏三三井化学労制課長)委員にアンケート調査を実施し、日本経団連の意見として審議会に反映させた。
労働安全衛生部会(部会長:久保國興JFEスチール専務執行役員)及びその下部組織である産業保健問題小委員会、じん肺問題小委員会、労働安全衛生管理システム小委員会において下記の諸課題について検討を行い、労働政策審議会の使用者側委員と連携しながら対応した。
労働政策審議会の審議において、石綿の代替化促進、プッシュプル型換気装置の規制緩和、障害等級の見直しなどの労働安全衛生・労災保険関係法令問題に対応した。
また、企業の自主的取り組みを原則とする労働安全衛生マネジメントシステム(OSHMS)の普及促進を目的に、導入事業場の見学など、各業種・委員企業相互の情報交換を行った。
さらに、新型肺炎(SARS)問題への対応として、委員企業を対象に「各社のSARS予防対策アンケート調査」を2回(2003年3月、2004年2月)実施して、情報交換に努めた。
大規模事業場における爆発・火災事故が相次いだことから、環境安全委員会と連携し、奥田会長名の文書「安全対策の徹底について」(2003年9月)を全国の業種団体、地方経営者団体、会員企業トップ宛てに送付して、企業トップ自らが先頭に立って万全の対策を講じるよう呼びかけた。
2003年6月開催のILO総会の一般討議議題「労働安全衛生分野におけるILOの基準関連活動」について、労働安全衛生部会で検討を行うとともに、わが国使用者代表委員をILO総会に派遣して使用者側意見の反映に努め、ILO総会で各国の政労使代表が審議の結果、「労働安全衛生に関する決議」を採択した。
「非正規従業員を含めた人事賃金管理のあり方」について検討を行うために、政策部会(部会長:川合正矩日本通運副社長)を設置し、具体的な検討を行っている。
政策部会では、企業事例を聴取するとともに、パートタイム労働指針改正の動向について厚生労働省からヒアリングを行った。これらを踏まえて多様化する雇用・就労形態における人材活性化と人事・賃金管理について報告書を取りまとめるべく検討している。
労働組合の動向を把握し、健全な労使関係の維持・発展に資するために、「連合2004-2005年度政策・制度要求と提言」について、日本労働組合総連合会の草野忠義事務局長から話を聞くとともに、意見交換を行い、労組動向の実態把握に努めた。
政府・中央最低賃金審議会における、「2003年度地域別最低賃金改定の目安審議の状況」について、同審議会委員の浅澤誠夫石川島播磨重工業顧問から報告を受け、使用者側の対応について、これを了承した。
解雇法制、有期労働契約についての衆議院での修正案の是非について検討し、経営側意見を修正案に反映させた。また、改正労働基準法成立後は、政省令の検討を行った。
司法制度労働検討部会(部会長:小島浩日本アイ・ビー・エム顧問)において、労働審判制度について検討し、「同制度は調停を基礎とした制度であるべき」などの意見を政府の司法制度改革推進本部労働検討会に表明し、制度設計に経営側意見を反映させた。
この問題についても、司法制度労働検討部会(部会長:小島浩日本アイ・ビー・エム顧問)で検討し、「労働委員会の証拠提出・証人出頭命令については、不服申し立てを認める等濫用防止策が必要」などの経営側意見を政府審議会(「労働政策審議会労働委員会の審査迅速化等を図るための方策に関する部会」)に表明し、労組法改正案に反映させた。
「中小企業の経営戦略の新展開」を主なテーマとして、今後のわが国経済の発展の鍵となる「自立する中小企業」の確立のため、中小企業における経営上の課題を検討し、その克服に向けた方策を探った。
2003年度は、前年度に引き続いて中小企業金融の問題を取り扱い、中小企業の自立的な発展に向けた健全な中小企業金融市場の整備、公的な経営支援施策の問題点とその見直しの方向性、中小企業経営者に対するセーフティーネットのあり方などについて、委員会ならびに下部組織であるワーキンググループで議論を行い、諸問題に対する論点整理を行った。
さらに、新たなテーマとして「中小企業の経営革新に向けた人材確保と地域との関係における課題」への取り組みを開始した。2004年3月には委員会を開催し、学習院大学の脇坂明教授から中小企業における人材確保や人材育成における課題について説明を聞いた。本テーマは来年度も引き続き取り上げていく予定である。
企業競争力の向上を支える多様な労働力の活用、男女共同参画の推進などのためには子育て環境整備が必要であることから、提言「子育て環境整備に向けて〜仕事と家庭の両立支援・保育サービスの充実〜」(2003年7月)を取りまとめ、発表した。
また、7月、大塚国民生活委員長が同提言を坂口厚生労働大臣に直接手渡し、提言の中で社会全体で取り組むべきとしている保育サービスの充実について、速やかに実現するよう要望した。
企業における男女共同参画については、2003年7月発表の上記提言の中で、日本経団連の見解を整理した。
加えて、企業内で男女共同参画を推進していくには、社会全体のみならず職場内の意識改革も必要であることから、関係委員会と連携して、意識啓発を促すパンフレット「企業における男女共同参画〜一人ひとりが生き生きと働くことのできる職場を目指して」を作成し、2004年2月に発表した。
少子・高齢化の進行に伴う労働力減少時代において、企業の活力を維持し、生産性・競争力の向上を図るために、2004年1月より、減少していく若年者の育成や活用、職場環境の整備について検討を始めた。
6月3日から19日まで、スイスのジュネーブにおいて第91回ILO総会が開催され、立石信雄委員長を代表とする日本使用者代表団9名を派遣した。
同総会では、2001年の同時多発テロを契機とする海事分野のテロ対策強化の必要から「船員の身分証明書に関する条約」(第108号条約)が改正された。この他、職業教育訓練に関する75年の勧告を時代の変化に適合したものに改正する第一次討議、新しい働き方が増えている中で保護に欠ける労働者の発生を抑制するとの観点からの雇用関係の範囲の検討、労働安全衛生分野のこれまでのILOの労働基準関連活動のレビューに基づいた今後の活動の方向性の検討などが行われた。
当委員会では、事前に各種議題に臨む使用者側の見解について審議を行うとともに(5月)、参加した使用者側代表団から報告を聴取した(7月)。
2002年3月に各国の政治家、学者、使用者、労働組合、NGO代表からなる「グローバル化の社会的側面に関する世界委員会」が発足し、日本からは西室副会長が参加している。2004年2月「公正なグローバル化−すべての人々に機会を創り出す」と題する報告書が発表された。
この他、産業別、テーマ別に開催される各種の専門家会議やアジア地域の会議・セミナーなど5件に日本使用者側代表を派遣した。
7月に「アジア地域における労使関係−緊密なコミュニケーションこそが健全な労使関係構築の基礎である」を発表した。本報告書を通じ、アジアにおける最新の労使関係の実態を紹介するとともに、現地に進出している日系企業の紛争防止策に関する提言を行った。
経営のグローバル化に対応できる人材育成が重要課題であるとの認識のもと、9月から政策部会(部会長:立石信雄オムロン相談役)において、日本人の派遣社員・駐在員に焦点を当て、日系企業が直面している課題や研修・人事管理の取り組み事例について検討を行っている。
日本経団連としての経済連携協定(EPA)への取り組みを強化すべく、貿易投資委員会などの国際関係委員会、アジア・大洋州地域委員会などの地域別・二国間委員会、農政問題委員会などの国内関係委員会等の横断的組織として、11月に経済連携協定推進合同タスクフォース(座長:島上清明東芝常任顧問)を設置し、「経済連携の強化に向けた緊急提言」(2004年3月)を発表し、その実現方をわが国政府はじめ関係方面に働きかけた。取りまとめにあたっては、関係委員会などにおける議論も踏まえ、タスクフォースを計7回開催し、EPA推進に関する諸課題につき集中的な議論を行った。
提言「外国政府の不公正通商措置等に対する調査開始申立制度の整備を求める」(2004年2月)を取りまとめ、わが国において、外国政府の不公正な措置や慣行などによって被害を受けた企業が日本政府に対して調査開始を求めることのできる法制度を整備するよう訴えた。
わが国企業による円滑な通商活動を確保し、国際競争力の強化を図る目的で、政府に対する規制改革要望の一環として、企業内転勤の条件緩和、安全保障輸出管理制度の規制緩和などの実現を働きかけた。
米国、韓国等との二国間社会保障協定の早期締結及び発効を政府に働きかけた。
2002年6月に外務省に設置された「ODA総合戦略会議」をはじめ、ODA改革に関する政府の動向を踏まえ、わが国ODAのあり方について検討した。とりわけ、わが国ODAの基本文書である「ODA大綱」の見直しが行われることを受け、政策部会(部会長:青柳一博小松製作所専務取締役)を中心に議論を深め、意見書「ODA大綱見直しに関する意見」(2003年4月)を発表した。さらに、7月にパブリックコメントに付されたODA大綱の政府原案に対しても、8月に「『政府開発援助大綱』政府原案に対するコメント」として意見を取りまとめ、日本経団連の考えを改めて訴えた。
また、新たな大綱に基づいた理念に沿って個々のODA事業や施策が効率的・効果的に行われていく必要があるとの観点から、次年度予算、イラク復興支援などの重要課題について、2004年2月に外務省より説明を聞くとともに意見交換した。
対世銀タスクフォース(座長:吉田進住友化学技術・経営企画室国際関係参与)では、6月に世界銀行本部(ワシントンDC)で開催されたスタッフ・エクスチェンジ・プログラム総会に参加し、日本企業の活動に関するプレゼンテーションを行うとともに、世銀関係者と今後の交流のあり方について意見交換を行った。10月には、吉村幸雄世銀副総裁兼駐日特別代表を招き、世界銀行の最近の動向を聞くとともに、今後のパートナーシップのあり方について議論した。
また、世銀がアジア開発銀行(ADB)並びに国際協力銀行(JBIC)とともに、東アジアのインフラ整備に関する共同研究を開始したことを受け、9月にクリスチャン・デルヴォア世界銀行アジア・太平洋地域担当インフラ局長らと意見交換した。
9月には、政策部会を中心として、ラース・クロフバー国連プロジェクトサービス機関(UNOPS)コペンハーゲン事務局長より同機関の活動状況について説明を受けるとともに意見交換した。
また、11月には、途上国におけるエイズ、結核・マラリアなどの感染症の予防、治療、ケアなどの対策を支援するために2002年1月に設立され、日本政府も2億ドルの拠出を誓約している世界エイズ・結核・マラリア対策基金のリチャード・フィーチャム事務局長と意見交換を行った。
12月には、世銀評価局コンサルタントのベン・ローランド氏の訪問を受け、投資環境評価に関する意見交換を行った。
2004年3月には、アサド・ジャブレ国際金融公社(IFC)副総裁を招き、同公社の活動について説明を受けた後、わが国民間企業との関係強化につき、意見交換した。
国際貢献・人材派遣部会(部会長:篠原巌日本電気常任顧問)では、国際協力事業団(JICA)の独立行政法人化(国際協力機構に名称変更)に伴う諸制度の見直し状況を注視するとともに、今後の民間経済界との連携のあり方について対応策を検討した。
OECD(経済協力開発機構)は、先進30カ国が参加する国際機関として、1960年の設立以来、マクロ経済政策、貿易・投資、環境、科学技術、規制改革、情報通信などの分野を中心として研究・分析し、加盟国政府に対して政策提言を行っている。
BIAC(The Business and Industry Advisory Committee to the OECD)は、OECD各加盟国を代表する経済団体で構成される公式の諮問機関である。OECDの活動に産業界の意見を反映させるべく、17の専門委員会((1)経済政策、(2)貿易、(3)国際投資・多国籍企業、(4)非加盟国、(5)海運、(6)バイオテクノロジー、(7)環境、(8)エネルギー、(9)産業技術、(10)化学物質、(11)原料、(12)ガバナンス、(13)税制・財政、(14)競争、(15)情報・コンピュータ・通信政策、(16)教育政策、(17)雇用・労働・社会問題)において、専門的な検討を行い、様々な提言をしている。
わが国は、OECD諮問委員会を通じて上記のBIACの活動に参加している。
5月のBIAC総会(於 ローマ)にBIAC Japan 事務局員が、12月のBIAC企画会議(於 パリ)には鈴木委員長ほかが参加し、BIACの今後の活動について日本の経済界の立場から意見を述べた。
日本企業の代表を、BIACの各委員会やOECDの開催する会合に派遣した(経済政策、産業技術、情報通信、海運、税制などの分野を中心に、22会合にのべ14名が出席した)。
こうした活動に関する記事を、機関紙「BIAC NEWS」に随時掲載すると共に、12月には「BIAC産業技術委員会報告会」を開催し、関係企業に広く紹介した。
6月に、2003年度(第29回)総会を開催し、外務省の佐々江賢一郎経済局長及び加藤元彦経済局国際機関第二課長より、OECD閣僚理事会の模様ならびにエビアン・サミットの成果などについて説明を聞いた。
松尾OECD科学技術産業局長の帰国にあわせて、5月と2004年2月の2回にわたり懇談会を開催した。
また、「OECDコーポレート・ガバナンス原則」の改訂作業に日本の経済界の考えを反映させる目的で、外務省の加藤元彦経済局国際経済第二課長、法務省の濱克彦民事局付検事、小舘造樹民事局参事官室局付、金融庁の松尾直彦国際課企画官を招き、意見交換を行った(座長:鈴木委員長)。
さらには、外国公務員贈賄防止策に関し、経済産業省の小宮義則経済産業政策局知的財産政策室長(7月)や奈須野太同室課長補佐(12月)と意見交換を行った。
機関紙「BIAC NEWS」を定期的に(年4回)発行し、BIACやOECDの活動を紹介したほか、「BIACの組織と活動」を改訂し、発行した(8月)。