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月刊 経団連

月刊 経団連2014年3月号

特集 2014年春季労使交渉・協議に向けて

巻頭言

環境、切迫感はプロセスイノベーションの母

友野 宏 (経団連副会長/新日鐵住金社長)

戦後、日本の鉄鋼業は積極果敢にプロセスイノベーションに取り組み、30年ほどで、技術で世界をリードするようになった。これは多くの先人の努力のたまものではあるが、切迫した日本の経済環境がそうさせたということも忘れてはならない。

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特集

2014年春季労使交渉・協議に向けて

安倍政権の経済政策により、日本企業を取り巻く経営環境は大幅に改善された。一方で、円安による原材料価格やエネルギー価格の上昇で収益を圧迫されている業種もある。こうしたなか、政府は昨年、企業収益の向上を賃金上昇や雇用拡大につなげ、消費を押し上げるべく、「経済の好循環実現に向けた政労使会議」を開催し、共通認識の取りまとめがなされた。デフレからの脱却と持続的な成長の実現に向け、今こそ労使はより幅広い視野に立って議論を深めていかなければならない。

座談会:2014年春季労使交渉・協議に向けて

  • 宮原耕治 (経団連副会長・経営労働政策委員長/日本郵船会長)
  • 篠田和久 (経団連副会長・雇用委員長/王子ホールディングス会長)
  • 古賀信行 (経団連審議員会副議長/野村證券会長)
  • 伊丹敬之 (東京理科大学大学院イノベーション研究科長/経営労働政策委員会アドバイザー)
  • 川本裕康 (司会:経団連常務理事)

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宮原耕治 (経団連副会長・経営労働政策委員長/日本郵船会長)
安倍総理が掲げる「世界で一番企業が活躍しやすい国」の実現に向けて、法人実効税率やエネルギーコストの引き下げを図る必要がある。経済の好循環実現を目指した政労使会議は、デフレ脱却を図るために特別の意義があった。賃金などの労働条件は自社の経営状況に即して労使が徹底的に議論し決定するとの原則のもと、業績が好調な企業は、賞与・一時金への反映や特定層の賃金水準の引き上げ、諸手当の改定など、さまざまな方策を検討するだろう。

篠田和久 (経団連副会長・雇用委員長/王子ホールディングス会長)
失業なき労働移動を実現するためには、持続的な経済成長と新たな雇用の受け皿となる成長産業の育成が何よりも必要である。そのうえで、非正規雇用を含めて、社会全体として労働者の能力開発とキャリア形成の機会を増やしていくことが重要だ。最近の労働法制の動きに対しては、議論を重ねてバランスのとれた政策となることを期待したい。今回の労働者派遣制度の見直しは関係者にとってわかりやすい制度を目指しており、その方向性を高く評価している。

古賀信行 (経団連審議員会副議長/野村證券会長)
企業のグローバル化に伴い、年功的な賃金カーブや旧来型ベースアップを採用しない企業が現れるなど、日本企業の賃金体系や決定方法は大きく変わってきているが、業績が良くなれば従業員にも報いることは、引き続き、経営者の務めだ。また、労使コミュニケーションの重要性も変わらない。労使交渉は、経営環境や経営方針を組合員に正しく理解してもらう場であり、職場環境や人材育成などの現場の声を組合から経営側に伝える場でもある。

伊丹敬之 (東京理科大学大学院イノベーション研究科長/経営労働政策委員会アドバイザー)
異次元の金融緩和により、行き過ぎた円高は是正された。もう一つの課題である電力問題を解決するには、40年前のオイルショックのときに日本の産業が見せた、エネルギー消費を減らして成長するという離れ業を実現すべきである。今はアベノミクスの成否がかかるターニングポイントにあり、経営者が思い切った判断をすることが、本格的な景気回復につながることになるだろう。

川本裕康 (司会:経団連常務理事)

  • ●日本企業を取り巻く経営環境と経済成長に向けた課題
  • 産業構造を変えなければ成長できない
  • 経済成長と整合性のあるエネルギー政策が不可欠
  • 国内産業の空洞化を食い止める施策が必要
  • 本格的な景気回復のカギは成長戦略の着実な実行
  • ●多様な人材の活用
  • 雇用維持型から労働移動支援型への転換が必要
  • グローバル化・ダイバーシティー化を積極的に推進
  • 企業理念や価値観を共有するための「DNA研修」
  • 若い世代にグローバルな現場で成功体験を積ませる
  • ●労使間におけるコミュニケーションのあり方
  • 多様なチャネルによるコミュニケーションの強化が必要
  • 労使が真剣に議論して、コンセンサスを得ることが大切
  • 「より良い職場にしたい」という思いを労使で共有する
  • ●今次労使交渉・協議に向けた基本的な考え方
  • 政労使会議の議論と今次労使交渉・協議における経営側のスタンス
  • 労使自治を前提に、より柔軟な働き方を許容していくべき
  • 個別の企業によって対応は異ならざるを得ない
  • アベノミクスは成否のターニングポイントを迎えている

2014春季生活闘争の役割
 古賀伸明 (日本労働組合総連合会会長)

  • 人への投資を
  • 月例賃金にこだわる
  • すべての働く者に対して賃上げの成果を

今、経営者が取り組むべきこと
 西村和義 (埼玉県経営者協会会長/日本信号会長)

  • 高齢化に備えた諸制度の改革
  • 女性の活躍の場の提供を積極的に
  • 悲観主義から脱却を
  • 懐が深く鋭敏な組織への変革

女性の活躍推進からワーク・ライフ・バランスへ
 上村博美 (大和証券執行役員)

  • 女性の登用は複数名で
  • 女性活躍支援からワーク・ライフ・バランスへ

「実力主義」を具現化する役割給制度
 福井啓貴 (キヤノン人事企画部長)

  • 導入の背景
  • 「役割」と「成果」に基づいた役割給制度
  • 制度運用の充実に向けて

日本企業のグローバル市場での飛躍に向けて
 安渕聖司 (GEキャピタル社長兼最高経営責任者)

  • グローバルの本質とは
  • ローカライゼーションが究極のグローバル化

組合員層の再雇用制度の改定
 松本啓二 (三菱レイヨン人事部人事労制グループリーダー)

  • 再雇用者の労働時間と職務
  • 再雇用者の賃金制度の見直し

より効率的な働き方の実現
~朝型勤務へのシフトに向けて
 垣見俊之 (伊藤忠商事人事・総務部企画統轄室長)

  • 具体的な取り組みの内容
    ~朝型勤務へのシフト
  • 朝型勤務を会社全体で推進

改正労働契約法と非正社員の正社員転換の円滑化の課題
 佐藤博樹 (東京大学大学院情報学環教授)

  • 社員区分の多元化が進展
  • 業務、配属先や労働時間の限定で多様な正社員の創出を

「介護と仕事の両立」で崩壊する企業と勝ち続ける企業の違い
 小室淑恵 (ワーク・ライフバランス社長)

  • 育児で休む女性より介護で休む男性が多い企業も
  • 介護離職を防ぐ二つの対策

2014年版経営労働政策委員会報告を公表
~デフレからの脱却と持続的な成長の実現に向けて
 (経団連労働政策本部)

  • 好転する経営環境と今後の政策課題
  • 多様な人材の活用
  • 2014年春季労使交渉・協議に対する経営側の基本姿勢
  • 労働側スタンスへの見解
  • 経営側のスタンス

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一般記事

【提言】
日本経済の発展の道筋を確立する

~国民生活の豊かさを実現するために
http://www.keidanren.or.jp/policy/2014/006.html
 岡本圀衞 (経団連審議員会副議長・経済政策委員長/日本生命保険会長)
 上釜健宏 (経団連経済政策委員会共同委員長/TDK社長)

  • 今こそ企業・経済界の出番
  • 目指すべき国・経済の姿
  • 成長を牽引する「六つのエンジン」
  • 2030年度には名目GDP850兆円規模を実現

【提言】
イノベーション創出に向けた国立大学改革

http://www.keidanren.or.jp/policy/2013/112.html
 内山田竹志 (経団連産業技術委員会委員長/トヨタ自動車会長)
 小野寺正 (経団連産業技術委員会共同委員長/KDDI会長)

  • 国立大学改革をめぐる現状
  • 改革の視点と具体策

福島復興・世界初浮体式洋上ウィンドファームへの挑戦
 福田知史 (丸紅国内電力プロジェクト部長)

  • 「洋上風力発電」の意義と可能性
  • 福島洋上風力のチャレンジ
  • 事業化を視野に入れた開発上の工夫
  • 事業化への課題

連載

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