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月刊 経団連 巻頭言 気象予測と地域の取り組みにより防災でも世界のフロントランナーへ

石原邦夫 (いしはら くにお) 経団連副会長/東京海上日動火災保険相談役

美しい国土と四季に恵まれた日本は、宿命的に自然災害大国でもある。東日本大震災のような地震はもとより、特に近年は、記録的な集中豪雨や大規模な土砂災害が発生し、昨年フィリピンを襲った最大風速80mに達するような「スーパー台風」が日本を直撃する恐れさえ指摘されている。IPCC(気候変動に関する政府間パネル)は、世界的な平均気温の上昇で、今後、大気中の水蒸気量が平均で5~25%増加し、多くの中緯度地域で極端な降水が頻繁に起こる可能性が高いことを予測している。こうした異常気象による災害に日本はどう備えたらよいのか。

損保業界では、これまで自然災害の変化に対応した商品開発や防災活動に積極的に取り組んできた。大学と連携して気候変動・自然災害リスクのモデル化を進め、台風、集中豪雨、ゲリラ豪雨(局地的集中豪雨)がもたらす洪水について適切な対策が立てられるよう、気候モデルにより影響評価を行い、河川流量を正確に算出する研究なども進めている。

一方、災害の被害軽減のためには、こうした学術知見に基づく地域ごとのリスクをわかりやすく住民に伝え、日ごろから防災教育を行き渡らせ、緊急時の正しい行動につなげることが大切である。こうしたソフト面での防災対策についてもアベノミクスの地方創生の取り組みのなかにしっかりと位置付け、浸透を図っていく必要がある。また、国や地方の財政が逼迫するなか、ハード面の整備では、PFIといった民間参加の事業手法を最大限活用することで、民間の資本・アイデアを引き出し、可能な限り行政コストを引き下げていく工夫も必要だろう。

折しも、来年3月には、仙台市において第三回国連防災世界会議が開催される。わが国がこれまで培ってきた経験やノウハウを広く共有することで、この分野でも世界に貢献するフロントランナーであることを内外に発信する絶好の機会である。“防災先進国日本”をアピールできるよう、知恵と技術を結集したい。

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