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月刊 経団連

月刊 経団連2016年10月号

特集 多様なニーズに応える生活サービス産業が日本社会を変える

巻頭言

女性たちの外交

吉田晴乃 (経団連審議員会副議長/BTジャパン社長)

先日の英国メイ首相とドイツ・メルケル首相の初会談をBBCはこう報じた。 「ナンセンスを許さない、現実主義的な2人の女性リーダーが欧州史上最大の危機対応にあたる」 経団連初の女性役員に就任し早くも1年がたつ。この間にいくつかの海外ミッションにも参加したが、何しろ相手国側に女性のリーダーが増えた。

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特集

多様なニーズに応える生活サービス産業が日本社会を変える

「2020年までにGDP600兆円の実現」を目標に掲げる「日本再興戦略」において、「サービス産業の活性化・生産性の向上は、日本経済の成長に不可欠である」とされている。一方、経済社会の発展に伴って、国民の生活スタイルはますます多様化している。2025年には団塊世代がすべて75歳以上となり、総人口も減少し、本格的な少子高齢社会が現実のものとなる。また、単身世帯の増加、生涯未婚率・初婚年齢の上昇を目のあたりにする。日々の生活にかかわる商品やサービスを提供する企業は、こうした環境変化を新たなビジネスチャンスととらえ、あらゆる世代の生活者が快適な生活を送るためのアイデアを提案・具体化し、生活の質の向上に向けて、より良い変化を促すよう取り組みを強めている。

座談会:多様なニーズに応える生活サービス産業が日本社会を変える

  • 石塚邦雄 (経団連副会長・生活サービス委員長/三越伊勢丹ホールディングス会長)
  • 奥山恵美子 (仙台市長)
  • 斎藤敏一 (ルネサンス会長)
  • 澤田 純 (司会:経団連生活サービス委員会企画部会長/日本電信電話副社長)

PDF形式にて全文公開中

石塚邦雄 (経団連副会長・生活サービス委員長/三越伊勢丹ホールディングス会長)
生活者の消費スタイルは、多様化を超えて「パーソナル化」しつつあり、モノよりもコトに対するニーズが高くなっている。今後は生活者と接点を持つ産業が重要となるとともに、ニーズに応えるためには大企業にもベンチャー視点が必要となる。一方、2020年までにGDP600兆円を実現するためには、個人消費を60兆円引き上げる必要がある。人口減少のなかでこれを生み出すのはサービス産業しかない。経団連では、生活サービス委員会のもとに「消費拡大プロジェクト検討チーム」を立ち上げ、業界の枠を超えた連携を模索している。

奥山恵美子 (仙台市長)
自治体と企業の連携においては、「ご縁」があること、お互いに「家風」が合うことが大切だと考えている。経団連には、自治体と企業をマッチングする「場」の構築を期待する。連携がうまくいった事例として、NTTドコモと共同で運営するコミュニティサイクル事業「DATE BIKE(ダテバイク)」や、フィンランド政府との「フィンランド健康福祉センタープロジェクト」がある。このたび、経団連との連携に取り組むことになった。どのような提案が出るか、楽しみにしている。

斎藤敏一 (ルネサンス会長)
総合スポーツクラブの運営からシニア層の健康増進や介護予防に関するビジネスへと事業を展開することで、健康産業の立場でスポーツによる国民の健康づくりに取り組んできた。個人の健康増進は、社会保障にかかわる国の財政負担を減らし、持続可能な国づくりへの貢献にもつながる。近年、サービス産業の生産性の低さが指摘されているが、海外から高く評価されている「おもてなし」の精神など、従来の生産性の指標では測れない「質」の部分にも注目すべきである。幸いその気運は高まりつつある。

澤田 純 (司会:経団連生活サービス委員会企画部会長/日本電信電話副社長)
横浜市、仙台市との具体的な意見交換、連携に取り組むなかで、自治体がハブとなって、地元企業を含めたさまざまな企業が連携していくことが肝要であると痛感した。また、サービス産業の活性化・生産性向上にはICT利活用が欠かせない。日本企業も、さまざまな垣根を越えてサービスを提供するようなビジネスモデル、システムを海外展開していくことが求められていると考えている。

  • ● 生活サービス産業の重要性
  • パーソナル化する生活者のニーズにいかに応えるか
  • 国民の健康づくりで、持続可能な国づくりに貢献
  • 変化する地方都市住民のニーズと行政サービス
  • ● 生活者のニーズに対応する異業種・行政との連携
  • 「DATE BIKE」とフィンランドプロジェクト
  • 地域における健康社会実現をビジネスにつなげる
  • ビジネスアイデアコンテストで地方創成に貢献
  • ● 生活サービス産業の活性化に向けた方向性
  • サービス産業が先頭に立って海外進出する時代が来た
  • サービス産業が地域の人口を支える
  • GDP600兆円に向けて個人消費引き上げの鍵はサービス業

生活サービス産業から基礎自治体への提案
― 連携による地域課題の解決の試み
 高原豪久 (経団連生活サービス委員長/ユニ・チャーム社長)

  • 生活サービス委員会の活動方針と具体的なアウトプット
  • 横浜市・仙台市への協力
  • 横浜市への企業提案の概要

消費マインドの活性化に向けた業界横断的な取り組みについて
 杉江俊彦 (経団連生活サービス委員会消費拡大プロジェクト検討チーム座長/三越伊勢丹ホールディングス取締役専務執行役員)

  • 厳しさが続く個人消費
  • 小売各社は創意工夫を凝らした消費喚起の取り組みを展開
  • 経団連に「消費拡大プロジェクト検討チーム」を発足
  • 「個人消費の喚起に向けた取り組み方針」を策定

横浜市の“共創”の取り組みと企業連携への期待
 林 文子 (横浜市長)

  • 公民の力を結集し、さらなる成長・発展を
  • 横浜市の「共創」
  • 対話の仕組みとしての「共創フロント」
  • 企業との絆を深め、社会にイノベーションを生み出す

生活者のライフスタイルの変化に対応した花王のモノづくり
 吉田勝彦 (花王専務執行役員コンシューマープロダクツ統括)

  • 新たな価値観形成~複数のスモールマスに対応した商品づくり
  • 高齢化にあわせたユニバーサルデザイン視点の必要性

京王電鉄の沿線サービスの展開と地域との協働
 横山敏之 (京王電鉄戦略推進本部沿線価値創造部長)

  • 当社と沿線地域との関係
  • 多様な世代やライフステージに対応したサービス
  • 世代の好循環を促進
  • 街を知ってもらい、来て体感する機会を提供
  • 沿線自治体、企業・団体等との協働

セコムの地域包括による超高齢社会の対応
 安田 稔 (セコム理事・コーポレート広報部長)

  • 超高齢社会で多様なニーズに応える生活インフラサービスの実現に向けて
  • 高齢者の「安全・安心」の質を高める2つの新しい高齢者向けサービス事例

未来誘発アプローチで考える「2025年の街・人・暮らし」
 石寺修三 (博報堂生活総合研究所所長)

  • 2025年以降の厳しい社会環境
  • 街の未来の2本の軸と4つのシナリオ
  • 「鍵のないまち」と「住所のないまち」
  • 「壁のないまち」と「窓のないまち」
  • 生活者が選択したシナリオ

価値共創の仕組みを生み出すサービスデザイン
 武山政直 (慶應義塾大学経済学部教授)

  • 顧客アウトカム起点の新たな価値共創
  • 部門をまたがる相互作用で価値共創を
  • 新たなサービス連携のネットワーク化が鍵

2030年の日本のライフスタイルを考える
 古川柳蔵 (東北大学大学院環境科学研究科准教授)

  • バックキャスティング
  • 制約のなかの心の豊かさ
  • 未来の暮らし方が湧き出る泉をつくる
  • 企業の役割

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一般記事

TICAD Ⅵ(第6回アフリカ開発会議)に参加して
―世界の希望を担うアフリカへの期待
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  • TICAD Ⅵの模様
  • アフリカとの経済交流とビジネス拡大への期待

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連載

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    キノコパワーに魅せられて
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