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月刊 経団連

月刊 経団連2019年2月号

特集 投資家との建設的対話促進とコーポレート・ガバナンスの強化

巻頭言

きれいな海を未来に残したい

小堀秀毅 (経団連審議員会副議長/旭化成社長)

毎年1月に北陸でお取引先をお招きしてごあいさつ会を行っている。皆様とお会いできることに加えて、新鮮な魚を食べるのも大きな楽しみである。冬の北陸の魚はことさらにおいしい。これはきれいな海がもたらす宝物である。 昨今、海洋プラスチックごみの問題が深刻になってきている。

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特集

投資家との建設的対話促進とコーポレート・ガバナンスの強化

Society 5.0の実現、SDGsの達成に向けイノベーションを推進していくうえで、世界からわが国の資本市場に資金を呼び込むことが重要である。投資先としての日本企業の魅力を高めるためには、トップの経営力に加え、実効あるコーポレート・ガバナンスの実現や、投資家との建設的対話の促進など、中長期的な企業価値向上に向けた取り組みとその対外発信が求められる。本座談会では、わが国のコーポレート・ガバナンス改革、企業と投資家との建設的対話促進に向けた取り組みについて、各主体による評価、日本的ガバナンスのあり方や今後の課題、経団連への期待などを議論する。

座談会:投資家との建設的対話促進とコーポレート・ガバナンスの強化

  • 遠藤信博 (経団連審議員会副議長/日本電気会長)
  • 武井一浩 (西村あさひ法律事務所パートナー弁護士)
  • 日比野隆司 (経団連金融・資本市場委員長/大和証券グループ本社会長)
  • 井澤吉幸 (ブラックロック・ジャパン会長)

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遠藤信博(経団連審議員会副議長/日本電気会長)
コーポレートガバナンス・コードは、日本の企業統治のあり方に1つの方向感をつくったという意味で非常に評価できる。ただし、コードが自由闊達な企業活動を抑えるものであってはならない。当社は、社会価値の継続的な創出と企業価値の最大化を図るためには、コーポレート・ガバナンスの強化が重要であると考え、執行役員制度の導入、取締役会のスリム化、指名・報酬委員会の設置などに取り組んできた。また、2020中期経営計画の策定にあたり、従来のESG視点での非財務の取り組みを、より一層事業戦略と結び付ける「マテリアリティ」の特定にも取り組んでいる。

武井一浩(西村あさひ法律事務所パートナー弁護士)
「建設的対話」は、日本が世界に先駆けてコードに取り入れた概念である。ステークホルダーとの協働なくして中長期的な企業価値向上、持続的成長の実現はないという考え方のもと、稼ぐ力の強化という「攻め」の観点から策定され、グローバルに通用している。建設的対話を促進するうえで、機関投資家のパッシブ化の進展とそれに伴う形式主義的対応、社外役員に対する過重な独立性要件などは、今後の課題であると認識している。

日比野隆司(経団連金融・資本市場委員長/大和証券グループ本社会長)
日本企業が、国際的な機関投資家から求められる水準を満たすガバナンスを短期間で実現できたのは、政府のダブル・コード施策の成果といえる。ただし、今回のコード改訂で社外取締役に期待される役割が拡大する一方で、その独立性が形式的に厳格化される流れがあり、本当に必要な議論ができる人材が排除される可能性が増大するなどガバナンス上の課題もある。自社の経営で何を価値として創造するかといった本質的な議論を踏まえて、ガバナンスを構築していく必要がある。

井澤吉幸(ブラックロック・ジャパン会長)
日本は企業の「稼ぐ力」の強化のため、欧米は経営者の暴走を監督するため、というように、それぞれコーポレートガバナンス・コードの策定目的は異なる。今後、日本的ガバナンス実現に向けて、企業は表面的な形式主義に陥らず、真に腹落ちするまで検討を重ね理解し納得することが重要だ。日本の経営者には、これまでの経営に自信を持って、ガバナンス改革に取り組んでほしい。経団連には、政府にも「言うべきことは言う」という姿勢で、日本的経営に最適なかたちとなるようコードの実効性の担保に向けた取り組みを期待したい。

井上 隆(司会:経団連常務理事)

  • ■ わが国のコーポレート・ガバナンス改革、企業と投資家の対話促進に向けた取り組みへの評価
  • 「稼ぐ力」を強化するためのダブル・コード施策
  • コードが1つのモデルを提示した意義は大きい
  • 1つの方向感をつくったことは評価できる
  • 表面的に、かたちだけ整えても意味がない
  • 「三方よし」はグローバルに通用する価値観
  • 海外の機関投資家は中長期のバリュークリエーションを重視する
  • 「独立性」だけで社外取締役を選んではいけない
  • 社外取締役数が2~3名の場合は事業経験者であることが望ましい
  • ■ コーポレート・ガバナンス改革への取り組みと課題
  • 独立社外取締役の深刻な人材不足
  • 取締役会をスリムにしたことで議論が活性化
  • 形式主義に振り回されず対話重視の姿勢で
  • 機関投資家のパッシブ化が「対話」を困難にしている
  • ■ ESG投資など建設的対話の促進に向けた取り組みと課題
  • ESGにフォーカスした投資家ミーティングを開催
  • ESG視点の経営優先テーマを特定
  • ESG投資では企業との対話が不可欠
  • 非財務情報のKPI化が課題
  • ■ 今後の経団連の活動への期待
  • 経団連はコードの実効性向上にさらなる貢献ができる
  • ベストプラクティスの発信を期待する
  • 「企業行動憲章」を浸透させ企業を活性化する
  • 日本的経営の良さを海外の投資家に発信する
  • サステナビリティをめぐる課題と企業が果たすべき役割

実効あるコーポレート・ガバナンスの実現と投資家との建設的対話の促進に向けて
 國部 毅(経団連副会長/三井住友フィナンシャルグループ社長)

  • 金融・資本市場委員会における新たな活動の展開
  • これまでの主な取り組み状況
  • 今後の活動の方向性

独立性・多様性の確保による取締役会の実効性の向上と経団連への期待
 ケリー・ワリング(International Corporate Governance Network (ICGN) CEO)

  • ICGNにとっての日本の重要性
  • 日本のコーポレート・ガバナンス改革について
  • 独立性の確保
  • 多様性の確保

GPIFのESG投資に関する取り組みと建設的対話の促進に向けた経済界への期待
 髙橋則広(年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)理事長)

  • ESG投資に注力する理由
  • ESG指数の仕組み
  • 運用会社と投資先企業との建設的な対話促進を支援
  • ESGをめぐる取り組みのカギは経営トップの意志

中長期的な企業価値向上に向けたエンゲージメントの推進
 岡本圀衞(経団連副会長/日本生命保険相談役)

  • 投資家と企業の掘り下げた対話を活性化させる原動力
    ~スチュワードシップ・コードとコーポレートガバナンス・コードの策定効果
  • 双方向でコミュニケーションを深める基盤をつくり上げることが重要

わが社のコーポレート・ガバナンス、株主・投資家との対話
 岡本 毅(経団連副会長/東京ガス相談役)

  • コーポレート・ガバナンスの強化
  • 株主・投資家との対話の充実

実効あるコーポレート・ガバナンスの確立に向けて
 佐藤康博(経団連審議員会副議長/みずほフィナンシャルグループ会長)

  • コーポレート・ガバナンス改革が求められる背景
  • 当社のコーポレート・ガバナンス体制
  • 実効あるコーポレート・ガバナンスに向けた取り組み
  • 成長戦略としてのコーポレート・ガバナンスの強化

投資家との建設的対話における実務課題
 澤口 実(森・濱田松本法律事務所弁護士)

  • 対話の共通言語
  • 短期志向の回避
  • パッシブ投資家との対話
  • 企業から投資家への質問

気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD)提言について
 マーク・カーニー(金融安定理事会(FSB)前議長/イングランド銀行総裁)

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一般記事

【特別寄稿】
テクノロジーの信頼性・透明性と真の問題解決に向けて

 ジニー・ロメッティ(IBM会長・社長兼CEO)

  • デジタル経済を取り巻く現状
  • IBMの取り組み
  • 政府の関与
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COP24を振り返って
―パリ協定下での実効性と公平性ある地球温暖化対策の実現に向けて
 杉森 務(経団連副会長、環境安全委員長/JXTGホールディングス社長)

  • 実施指針交渉の鍵を握る重要分野での合意
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日露ウィン・ウィンビジネスの拡大と深化に向けて
―日本で6年ぶりとなる日本ロシア経済合同会議を開催
 朝田照男(経団連日本ロシア経済委員長/丸紅会長)

  • ロシアのビジネス環境の現状を把握
  • 日露デジタル協力のポテンシャルを展望
  • ロシアの多様な地域の魅力を発見
  • 主な成果と今後の取り組み

CBD─COP14に参加して
 二宮雅也(経団連自然保護協議会会長/損害保険ジャパン日本興亜会長)

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「経団連生物多様性宣言・行動指針」の改定
http://www.keidanren.or.jp/policy/2018/084.html
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連載

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    イタリアより、歴史と郷土と時空を超えて
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