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2004年度事業報告
III．委員会等の活動

１．政策全般

（１）総合政策委員会

（奥田　碩　委員長）

日本経団連の活動の指針となる総会決議「企業のダイナミズムを引き出し新たな未来を切り拓く」を取りまとめた（４月の総合政策委員会において審議を行い、５月27日の定時総会において採択）。
同決議では、まず海外経済の回復に加え、企業の構造改革努力が実を結んだことにより、日本経済の先行きは次第に明るさを増しつつあるという認識を示した。そのうえで企業には、攻めの経営戦略を強化し、自律的な景気回復を確実なものにすること、様々なステークホルダーの声に耳を傾けながら企業倫理を確立すると同時に、社会的責任への取り組みを強化することを求めた。一方、政府には、企業の付加価値創造力の向上に資する制度環境を整備することに加え、個人、地域の活力を高め、民主導・自律型経済社会への転換を加速させる責務があると指摘した。そして、日本経団連は、企業の社会貢献の一環として政治寄付を促進し、政治との透明な関係を構築しながら、全力をあげて取り組むべき課題として、以下を掲げた。

企業の付加価値創造力を向上させる
(1) 企業法制・税制の整備と規制改革の推進
(2) 科学技術創造立国の実現と環境立国戦略の推進
(3) 対外経済政策の強化
個人の意欲、活力を引き出す
(1) 社会保障、財政、税制の一体的改革
(2) 21世紀を生き抜く次世代の人材育成
(3) 多様な働き方の実現
地域の自立を促す
(1) 地方自治体の行財政の自立
(2) 産業の集積促進と観光の振興
(3) 社会インフラの効率的整備と住環境の改善

なお、これらに加えて、わが国の国家像、国家戦略について議論を深め、意見の集約を図ることが付記された。

（２）国の基本問題検討委員会

（三木　繁光　委員長）

将来にわたるわが国の発展のためには、戦後のわが国の成長を支えてきた憲法など、国の基本的な枠組みにまで踏み込んで検討を行う必要があるとの問題意識から、日本経団連では、新たに国の基本問題検討委員会を設置し活動を開始した。７月には第一回委員会に、神戸大学五百籏頭教授を招き「日本の新たな国家目標と国際的役割」と題する講演を受け、明治維新以来のわが国の政治、国のあり方に関する考え方の変遷について意見交換を行った。
さらに、国の基本的な問題に関する数多くの論点について検討を深めるため、総合企画部会（部会長：内藤久夫東京電力副社長）を設置し、主要テーマごとに各界の有識者を招いて議論を重ねた。部会では、駒澤大学法学部の西修教授、柳井俊二前駐米大使、政策研究大学院大学の飯尾潤教授、内閣官房の柳沢協二副長官補、北海道大学大学院法学研究科の山口二郎教授、東京大学先端科学技術研究センターの御厨貴教授らを招き、各論点について説明を受けるとともに意見交換を行った。また、委員会にも岡崎研究所の岡崎久彦理事長、中曽根康弘元内閣総理大臣を招くなど、合計十数回にわたる精力的な検討を行った。
これらの検討を踏まえ、2005年１月の理事会において報告書「わが国の基本問題を考える～これからの日本を展望して～」をとりまとめ公表した。報告書では、憲法９条第２項（戦力の不保持）と第96条（憲法改正要件）の改正の必要性をはじめ、総合的な安全保障政策の強化、より民主的で効率的な統治システムの実現を目指すべきと提言した。
憲法改正については、衆参両院、与野党において検討が進められており、本報告書をもとに国のあり方について産業界の考え方を説明し、日本経団連優先政策事項として提示することで、国の基本問題の改革実現を働きかけた。

２．経済・法制関係

（１）経済政策委員会

（千速　晃　委員長）
（井口　武雄　共同委員長）

当委員会では、企業戦略のあり方に関する検討、経済情勢の把握、官庁統計における報告者負担の軽減を中心に、以下の活動を行った。

１．企業戦略に関する検討

2004年５月に報告書「これからの企業戦略－『守りの経営再構築』から『攻めの経営再構築』へ－」を公表した。同報告書では、優秀な業績を上げる製造業各社の企業戦略を調査し、その類型を整理するとともに、わが国の製造業全体への適用可能性を検証した。
これに引き続き、非製造業に焦点をあて、国際競争の進展状況や、競争力強化に向けた取り組みについて検討した。９月には、学習院大学の宮川努教授を招いて委員会を開催し、わが国非製造業の展望と課題について説明を聞いた。また11月には、内閣官房の黒田東彦参与(当時)より、わが国経済の課題について説明を聞いた。具体的な検討は、企画部会(部会長：築舘勝利東京電力副社長)を中心に行った。10月以降に、計９回の会合を開催し、積極的に海外展開を行っている国内企業、ならびに対日進出している外資系企業の経営者から企業戦略を聞いた。その成果を踏まえて、2005年４月に報告書「グローバル化が進む非製造業の新たな展開―これからの企業戦略 II―」を公表することにした。

２．経済情勢の把握

経済情勢専門部会を月１回開催し、内閣府および日本銀行からマクロ経済全般にわたって説明を聞くとともに、意見交換した。また、その時々のトピックについて、会員企業および各界有識者から広く説明を聞いた。

３．経済統計の改善に向けた検討、官庁統計における報告者負担の軽減

(1)　経済統計の改善・利用拡大策の検討

企業における景気関連統計の利用状況や、今後の利用拡大に向けた方策について調査・検討した。具体的には、会員企業を対象に、現在の利用状況をアンケート調査した上で、統計部会（部会長：飯島英胤東レ特別顧問）において、経済統計の改善すべき点を検討した。その成果を踏まえて、2004年11月に提言「統計の利用拡大に向けて」を公表した。
上記提言を踏まえて、2005年１月に、内閣府の経済社会統計整備推進委員会において、経済統計整備の方向性について意見陳述を行った。
また、３月には、統計部会において、統計の利便性向上や、今後行われるべき経済統計整備の方向性などについて、日本銀行と意見交換を行った。

(2)　統計審議会における対応（指定統計）

政府の統計審議会（総務大臣の諮問機関）に、飯島統計部会長が委員として参画し、経済界の視点から、適宜意見を表明している。2004年度は、厚生労働省「賃金構造基本統計調査」のあり方などについて意見表明を行った。

(3)　総務省意見照会への回答（承認統計）

統計報告調整法に基づき官庁が実施する承認統計のうち、企業・事業所を対象とした調査について、総務省から意見照会を受け、報告者・利用者の観点から個別に審査し、回答を行っている（レポート・コントロール制度）。2004年度は、総務省より約60件の意見照会を受け、関係企業・団体の意見を踏まえて、調査の統合、改善などについて回答を行い、改善を行った。

（２）税制委員会

（森下　洋一　委員長）
（丹羽　宇一郎　共同委員長）

2004年度においては、景気の自律的回復に資する税制を実現するとともに、中長期的な経済活力の維持を可能とする税体系を構築するための取り組みを行なった。

１．平成17年度税制改正に際しての取り組み

政府・与党における税制改正の検討作業への意見反映を図るべく、「平成17年度税制改正に関する提言」(2004年９月)を公表した。
同提言では、まず、わが国構造改革の最大のテーマとして、税・財政、社会保障制度の一体改革が急務であることを強調するとともに、社会保障を中心とする歳出増に対応するために、消費税率を平成19年度に10％まで引き上げる必要があることを主張した。この点について、12月に取りまとめられた与党税制改正大綱では、「平成19年度を目途に、消費税を含む税体系の抜本的改革を行なう」ことが明記され、今後、政府・与党において具体的検討が進められることとなった。
一方、平成17年度税制改正における経済界の具体的提言として、企業年金資産に課税する特別法人税の廃止、環境税の導入反対、住宅税制の拡充、日本型ＬＬＣ税制・ＬＬＰ制度の創設などを訴えた。
このうち、特別法人税に関しては、経済団体・業界団体計140団体の連名による決議を採択（10月）するなど、強力な働きかけを行なった結果、17年度改正においては特別法人税が３年間課税停止とされるとともに、与党税制改正大綱において、今後「年金課税について、特別法人税のあり方を含め、抜本的な検討を行なう」ことが明記された。
環境税をめぐっても、環境安全委員会と連携し、関係業界の参加による総決起大会（12月）を開くなど、働きかけを強めた結果、与党税制改正大綱において環境税は検討課題として記されるに止まり、17年度改正での導入は見送られることとなった。
その他、17年度改正においては、人材投資促進税制の創設、タックスヘイブン対策税制の改善、早期事業再生に向けた税制措置など、経済活力強化に向けた税制改正が実現した。

２．日本型ＬＬＣ税制・ＬＬＰ制度の検討

日本経団連ではかねてより、事業再構築の加速、新規事業の創出などの観点から、税制上の導管性（パススルー課税）を備えた新たな法人類型であるいわゆる「日本版ＬＬＣ」の導入を訴えてきた。その私法上の仕組みとして、平成18年度から施行される新たな会社法制において「合同会社」という法人形態が新設され、これに対する税制措置は平成18年度改正以降の課題となっている。
一方、平成17年度税制改正においては、民法組合の特例として有限責任事業組合（いわゆる日本版ＬＬＰ）を、日本版ＬＬＣの第一歩として、経済産業省と協力し創設した。

（３）財政制度委員会

（櫻井　孝頴　委員長）

当委員会では、持続可能な財政制度の確立に向け、以下の活動を実施した。

１．財政の持続可能性確保に関する検討

(1)　財務大臣との意見交換

11月には、谷垣禎一財務大臣ほか財務省幹部と、奥田会長をはじめとする日本経団連幹部との意見交換会を開催し、財政改革、税制改革等について懇談した。

(2)　財政制度委員会における検討

９月に細川興一財務相事務次官より、11月に吉川洋東京大学大学院経済学研究科教授よりそれぞれ説明を受けるとともに意見交換を行った。

(3)　企画部会における検討

村田丈二日本総合研究所主任研究員、八代尚宏日本経済研究センター理事長、岩本康志一橋大学経済学研究科教授、中島厚志みずほ総合研究所専務執行役員チーフエコノミスト、阿藤誠国立社会保障・人口問題研究所所長、岡本薫明財務省主計局調査課長から、それぞれ説明を受けるとともに懇談した。

２．財政の持続可能性確保に関する提言のとりまとめ

(1)　財政の持続可能性確保に関する提言－活力溢れる未来を育むために－

2004年12月に標記提言をとりまとめ、政府・与党関係方面に建議した。本提言では、社会保障や国と地方の問題などの歳出改革、消費税の活用等の歳入構造強化に加え、財政の基盤となる経済成長の確保を訴え、とりわけ少子化対策等の成長戦略における財政の役割を強調した。

(2)　新ビジョン・シミュレーションの再試算結果

2003年１月にとりまとめた「活力と魅力溢れる日本をめざして」で実施した経済、財政、社会保障に関する試算結果について、その後の情勢変化を踏まえて９月に再試算を行い公表した。

（４）社会保障委員会

（西室　泰三　委員長）
（福澤　武　共同委員長）

１．社会保障制度などの一体的改革への取り組み

社会保障委員会では、各部会などの議論を経て、「社会保障制度等の一体的改革に向けて」と題する報告書を取りまとめた（2004年９月）。報告書では、潜在的国民負担率50％を目指し、社会保障制度、財政・税制を一体的に改革すべきと指摘した。具体的には、(1)社会保障・福祉制度に共通する個人番号、社会保障個人別の会計の導入、ならびに(2)給付の重複排除や効率化などを提案した。また、審議会などに意見を反映させ、政府・与党、関係団体に働きかけた。

２．年金制度改革への取り組み

年金改革部会（部会長：岡本康男住友化学取締役）では、改正法案の成立後、関係政省令などについて検討して意見を反映させた。また、法施行５年後の改正に向けて、同部会の下に企業年金制度検討ワーキンググループ（座長：徳住祥蔵新日本製鐵顧問）を設置し、企業年金制度の問題点について検討を始めた。

３．医療制度改革への取り組み

医療制度改革に向けた対応を医療改革部会（部会長：齊藤正憲三菱電機取締役・常務執行役人事部長）などで、保険者機能の強化、公的医療費の抑制などの観点から、保険者の再編・統合、高齢者医療制度の創設、適正な医療提供体制の確立について検討を行い、審議会に意見を反映させた。

４．介護制度、社会福祉制度改革への取り組み

医療改革部会では、介護保険法施行５年後の全般的な見直しの中で、給付の重点化や施設入所者の食費・居住費を保険給付外にするなどを内容とする「介護保険制度の改革についての意見」（2004年４月）を取りまとめた。また、12月には、被保険者の範囲拡大反対などの共同意見を四団体長の連名で政府・与党に提出するなどして、改正法案に意見を反映させた。さらに、同部会では、社会福祉法人制度や生活保護制度などについても検討し審議会に意見反映を行った。

（５）金融制度委員会

（勝俣　恒久　委員長）
（西川　善文　共同委員長）

１．金融制度委員会の開催

経済財政諮問会議議員の本間正明大阪大学大学院教授より、同会議がまとめた「郵政民営化に関する論点整理」について（５月）、金融庁の増井喜一郎総務企画局長より、「金融改革プログラム」について（12月）、日本銀行の田辺昌徳信用機構局長より、ペイオフの全面解禁について（2005年３月）、それぞれ説明を聞くとともに、意見交換を行った。

２．金融市場をめぐる課題への取り組み

郵政民営化について、提言「郵政民営化の着実な実現を望む」（2004年12月）を公表した。信託業法の全面改正に際し、法案説明会を開催するとともに、早期成立を与野党に働きかけた。同法成立後は、関係政省令等の整備に関してパブリックコメントを提出した。また、「消費者信用産業に関するシンポジウム」を開催し、消費者信用産業に対する理解の促進に努めた。さらに、一般事業会社による会合を開催し、金融各業界の現状と政策課題について各社より説明を聞くとともに、意見交換を行った。

３．資本市場をめぐる課題への取り組み

株券不発行制度に関する法律の早期成立を与党に働きかけ、同法成立後は、発行会社のコスト削減、利便性向上や株主状況の迅速な把握等の観点から、株券電子化の実務設計が行われるよう、関係省庁、各界関係者に働きかけを行った。また、金融審議会第一部会の検討課題である公開買付制度の見直しのあり方について、資本市場部会（部会長：島崎憲明住友商事取締役専務執行役）において、専門家の意見を聴取した。

４．「2004年度日本経団連規制改革要望」(2004年11月)(金融・保険・証券分野)

ビジネスモデルの再構築、資本市場の制度整備に向けて51項目を要望し、その多くは「規制改革・民間開放推進３ヵ年計画」(2005年３月)に盛り込まれた。

（６）経済法規委員会

（御手洗　冨士夫　委員長）
（5月27日～　萩原　敏孝　共同委員長）
（～5月27日　小林　正夫　共同委員長）

企業が経済環境の変化に機動的かつ柔軟に対応できるよう、2004年度も事業活動の制度的インフラである経済法制の見直しを求めた。

１．会社法制の現代化への取り組み

企画部会(部会長：西川元啓新日本製鐵常任顧問)では、会社法制の現代化について、2003年10月の「会社法改正への提言」および2003年12月の「「会社法制の現代化に関する要綱試案」についての意見」の内容が盛り込まれるよう働きかけを行ってきた。
具体的には、法制審議会会社法(現代化関係)部会および法制審議会総会に参画するとともに、４月14日・20日の両日には、自民党法務部会商法に関する小委員会に出席し、意見陳述を行った。
この結果、株主代表訴訟の却下制度の創設や、委員会等設置会社と監査役設置会社との整合性の確保(取締役の責任の過失化、利益処分権限(剰余金分配権限)の取締役会への委譲)等経済界の要望が法案に盛り込まれた。

２．企業買収に対する合理的な防衛策の整備

企業価値を毀損する企業買収に対する懸念が高まっていることから、企画部会の検討を踏まえ、2004年11月、「企業買収に対する合理的な防衛策の整備に関する意見」をとりまとめ、関係方面に働きかけを行った。また、企業買収防衛策を検討している経済産業省の企業価値研究会(座長：神田秀樹東京大学教授)に参画し、経済界の意見の反映に努めた。この結果、会社法制の現代化において、買収者の議決権比率を低下させる防衛策(ポイズンピル)や合併・取締役選任に関し拒否権を付した株式が導入できることが明確化された。

３．コーポレート・ガバナンス

コーポレート・ガバナンス部会(部会長：立石忠雄オムロン副社長)では、機関投資家の議決権行使が活発化していることから、８月に、第一生命経済研究所の山本祥司主任研究員より、機関投資家と議決権行使の現状と課題について説明を聴取した。また、2005年２月、今後のコーポレート・ガバナンスのあり方について、岩井克人東京大学教授から話を聞いた。

４．消費者問題への対応

消費者法部会(部会長：宮部義一三菱樹脂相談役(～６月)、渡邉光一郎第一生命常務執行役員(６月～))では、公益通報者保護法案および消費者基本法改正法案に経済界の意見を反映させるべく働きかけを行った(６月、両法案成立)。９月、12月には、公益通報者保護法に関するセミナーを開催した。さらに、国生審消費者政策部会が12月に公表した「消費者基本計画素案」について意見照会に応じた。あわせて2006年通常国会へ提出予定の「消費者団体訴訟制度」に関して、国民生活審議会等での審議や、消費者法部会において、内閣府との意見交換、有識者からのヒアリング等を踏まえて、「『消費者団体訴訟制度』の導入に関する基本的考え方に関する提言」(2005年２月)を公表し、制度の濫用・悪用等を徹底排除し、国民の信頼に足る制度設計を求め、関係各方面に働きかけを行った。

５．独占禁止法・競争政策

競争法部会(部会長：諸石光熙住友化学顧問)を中心に、課徴金の引き上げや措置減免制度の導入をはじめとする独占禁止法改正案(政府案)に対して、日本経団連としての対案「21世紀にふさわしい独占禁止法改正に向けた提言」(2004年７月)を公表し、欧米には見られない課徴金と刑事罰の併科制度の問題に加えて、公正取引委員会の審査・審判手続の抜本的見直しなどについて、幅広い視点から提言を取りまとめ、政府・与党関係各方面に精力的な働きかけを行った。その結果、法案の附則において、課徴金制度のあり方、審査・審判手続のあり方などの抜本改正に向けた検討を、法施行後２年以内に行う旨明記された。法案は、９月臨時国会に提出されたが、2005年通常国会へ継続審議となった。

６．司法制度改革

司法制度改革推進本部の顧問会議や各検討会を通じて、司法制度改革に関する経済界要望の実現を働きかけた。特に、日本法令の外国語訳については、「日本法令の外国語訳化の推進を求める提言」（2004年６月）を公表し、政府が一体となって省庁横断的に迅速な取り組みを行うよう求めた。その結果、2005年１月、内閣の下に、法令外国語訳・実施推進検討会議が設置され、具体的な検討が開始された。

７．会計制度

日本基準に準拠した開示書類が、2007年以降も欧州市場で継続承認されるよう働きかけを行ない、欧州証券規制当局委員会(ＣＥＳＲ)に対して企業会計部会(部会長：八木良樹日立製作所取締役監査委員長)からコメントを提出した。また、ＣＥＳＲが開催した公聴会に金融庁などとともに出席し、直接意見陳述を行なった。
国際会計基準審議会(ＩＡＳＢ)に対しては、基準諮問会議に八木良樹企業会計部会長が参画し、過度な時価主義に警鐘をならした。また、その運営機関である評議員会には橋本ドイツ証券東京支店会長が参加して、ガバナンスの改善を含めた定款の見直し作業を進めるとともに、資金面で積極的に貢献した。
金融庁ならびに金融審議会でのディスクロージャー制度の充実、企業会計審議会での内部統制の有効性評価基準の策定などといった課題に対して、経済界意見の反映に努めた。
また、企業会計基準委員会とその運営母体である（財）財務会計基準機構（理事長：萩原敏孝日本経団連経済法規委員会共同委員長）の活動を支援した。

３．行革・産業・国土関係

（１）行政改革推進委員会

（出井　伸之　委員長）
（5月27日～　大久保　尚武　共同委員長）
（～5月27日　草刈　隆郎　共同委員長）

１．規制改革への取り組み

行政改革推進委員会では、持続的な経済成長の実現には民需の拡大が不可欠との観点から2004年度も積極的に規制改革の推進に取り組んだ。
具体的には、例年通り、全会員企業・団体を対象に規制改革要望に関する調査を行い、2004年11月、「2004年度日本経団連規制改革要望」(全15分野、計268項目)をとりまとめ、村上誠一郎規制改革担当大臣、内閣府規制改革・民間開放推進会議など関係先へ建議した。併せて、昨年秋に実施された規制改革・民間開放集中受付月間(10月18日～11月17日)に提出し、要望の実現に向けた働きかけを行った。
この結果、2005年度までに具体的措置がとられるものとして政府決定された41項目のうち、半数以上の23項目が日本経団連要望で占められるなど、着実な規制改革の進展が図られた。

２．行政改革推進への取り組み

わが国の国際競争力の向上に資する抜本的な行政改革の在り方を検討するため、2004年９月に行政改革懇談会を設置し、2005年３月まで５回にわたる検討を重ねた。同懇談会では、わが国全体の人材資源の最適配分を目指した官民のイコールフッティングの実現や、縦割り行政の弊害排除などの観点から、国家公務員の身分保障の在り方の見直しや、幹部公務員の一括採用、一元的な人事・再就職管理、早期退職慣行の是正、官民の交流のさらなる促進など、抜本的な制度改革の必要性が提起された。こうした検討を受けて、行政改革推進委員会では、2005年４月に、具体的な提言の第一弾として、国家公務員制度改革を中心とする「さらなる行政改革の推進に向けて」を取りまとめることとなった。

（２）産業問題委員会

（齋藤　宏　共同委員長）
（5月27日～　岡村　正　共同委員長）
（～5月27日　香西　昭夫　委員長）

１．日本経済の将来を支える産業のあり方に関する検討

企業が創意工夫を重ねた経営を実践していくための諸施策の検討を行った。７月には中川昭一経済産業大臣を招き、政府の「新産業創造戦略」に基づき、日本経済の将来を支える戦略分野について意見交換を行った。
また、権利者の保護を図りつつ技術革新を進め、新たなビジネスモデルを築くことを課題として「エンターテインメント・コンテンツ関係者連携に関する懇談会」(座長：岡村共同委員長)を設け、３～５年先を目途としたエンドユーザーのニーズの変化などについて検討を行った(８月、10月)。

２．エンターテインメント・コンテンツ産業の振興

エンターテインメント・コンテンツ産業部会(部会長：依田巽ギャガ・コミュニケーションズ会長)では、2003年11月「エンターテインメント・コンテンツ産業の実現に向けて」で要望したコンテンツ振興法の制定を強力に働きかけ、５月に超党派の議員立法で実現した。また、2004年３月提言「知的財産推進計画の改訂に向けて」で掲げた諸課題について政府に働きかけ、知的財産戦略本部の「知的財産推進計画2004」に反映させた。盛り込まれた施策の実現に向け、12回の部会会合を重ね、東京国際映画祭への協力(10月)、映像産業振興機構の設立(12月、特定非営利活動法人の認可申請中)、海賊版対策等に取り組んだ。

３．外国人受け入れ問題への取り組み

産業問題委員会は雇用委員会と共同で、「外国人受け入れ問題に関する提言」（2004年４月）をとりまとめ、総合的な外国人受け入れ施策を提言した。
また、2005年３月に雇用委員会と共同で、「第３次出入国管理基本計画における主要な課題と今後の方針」に対する意見ならびに要望」を法務省に提出した。とりまとめにあたり、委員会、ワーキンググループにおいて法務省、外務省、厚生労働省、豊田市役所等より説明を聴取し、意見交換を行った。

（３）新産業・新事業委員会

（高原　慶一朗　委員長）
（原　良也　共同委員長）

１．産学連携の推進、地域産業クラスターの形成

ベンチャー企業と大企業との情報交換および人的交流を促進することにより企業間連携を推進する「起業フォーラム」を開催し(９月)、運営委員会(委員長：堀井眞一日本ベンチャーキャピタル協会会長)によって選定された大学発ベンチャー企業等と大企業との接点をもった。
「新産業フォーラム」(12月)では、ハーバード大学のマイケル・ポーター教授を招き、産業クラスターづくりに向けたポイントについて説明を聞き、各地域の産業クラスターの担当者から、それぞれの取り組みと課題について報告を行った。
企画部会(部会長：鳴戸道郎富士通顧問)では、大和総研の鈴江栄二新規産業調査本部長兼産学連携調査部長、早稲田大学野尻昭夫客員教授を招き、産学連携の課題について検討した。

２．ＩＴバブル崩壊後の米国ベンチャー事情の調査

企画部会ではＩＴバブル崩壊後の米国ベンチャー事情を調査し、わが国のベンチャー政策に役立てるため、グローバルカタリストパートナーズの大澤弘治マネージングプリンシパル兼共同創設者、前田昇大阪市立大学大学院創造都市研究科教授、田路則子明星大学情報学部経営情報学科助教授、リタ・マグラスコロンビア大学教授を招き、意見交換を行った。
これらを踏まえて新産業・新事業委員会では、訪米調査団をシアトル、シリコンバレー、ボストン、ワシントンＤＣに派遣した(2005年１月23日～２月５日)。インタビュー先は、大企業１社、ベンチャー企業８社、ベンチャーキャピタル・インキュベーター９社、ベンチャー企業支援ネットワーク２組織、大学４校、州政府機関４機関、連邦政府２機関、新聞社支局、在ボストン日本国総領事の計32カ所に及んだ。
委員会では、調査団の結果を報告書にとりまとめ、公表した。

３．大企業の新産業・新事業略戦

2004年３月の報告書「次代のコア事業育成のために」に基づいて、大企業の新産業・新事業戦略をベンチャー企業経営者らに伝える起業フォーラム(11月)を開催したほか、企画部会においてファンケルの池森賢二会長を招いて、大企業の新産業の創造に向けた取り組みについて意見交換を行った。また日本版ＬＬＰに関するニーズについての調査に協力したほか、各種ベンチャー関連イベントを支援した。

（４）情報通信委員会

（吉野　浩行　委員長）
（石原　邦夫　共同委員長）

１．ＩＴの利活用の推進

情報通信委員会では、企業ユーザーの立場からＩＴの利活用を推進する環境を整備するため、ＩＴ戦略本部及び評価専門調査会の検討に当会の考え方を反映させるとともに、情報化部会(部会長：棚橋康郎　新日鉄ソリューションズ会長)で、「e-Japan戦略II」及びその加速化パッケージ、「e-Japan重点計画―2004」等に盛り込まれた当会の要望施策の実現に向け、以下の分野で政府等に働きかけを行い、その実現をみた。

(1)　税務書類の電子保存範囲拡大の実現

2004年３月に取りまとめた提言「税務書類の電子保存範囲の拡大を要望する」に基づき、国税庁等の関係機関との交渉を継続的に行った結果、その合意内容に沿って、11月に「e-文書法」が成立した。2005年１月には、「電子計算機を使用して作成する国税関係帳簿書類の保存方法等の特例に関する法律施行規則の一部を改正する省令」（財務省令第１号）と「電子計算機を使用して作成する国税関係帳簿書類の保存方法等の特例に関する法律施行規則第３条第６項に規定する国税庁長官が定める書類」（国税庁告示第４号）が策定され、日本経団連が予ねてより要望していた税務書類の電子保存の拡大が実現した。

(2)　企業の情報セキュリティのあり方に関する検討

10月より、情報化部会の下に設置した「ＩＴガバナンスに関するワーキング・グループ」(座長：村上輝康野村総合研究所理事長)において、企業の情報セキュリティ、インターネット・ガバナンスに関する検討を始め、2005年３月に「企業の情報セキュリティのあり方に関する提言」を取りまとめた。また、情報セキュリティを企業の社会的責任と経営課題として位置づけ、企業の自主的な取組みを基本とする同提言の趣旨を踏まえ、経済産業省の「企業の情報セキュリティガバナンスのあり方に関する研究会」の報告書案に対するパブリック・コメントに意見を提出した。

(3)　個人情報保護に係る企業の体制整備支援

６月に、経済産業省より「個人情報の保護に関する経済産業分野を対象としたガイドライン(案)」に関する説明を聴取し、情報化部会としての意見をパブリック・コメントに提出した。また、１月には、厚生労働省より「雇用管理に関する個人情報の取扱いに関する指針(案)」に関する説明を聴取し、情報化部会としての意見をパブリック・コメントに提出した。

(4)　高度情報通信人材の育成

11月より、情報化部会の下に新設した「高度情報通信人材育成に関するワーキング・グループ」(座長：山下徹ＮＴＴデータ常務取締役)において、産業界が求める高度な能力を有する情報通信関係の人材育成方策について検討を始め、関係省庁への働きかけにより、「ＩＴ政策パッケージ‐2005」に「高度なＩＴ人材の育成」が重要課題として盛り込まれた。

(5)　ＩＴＳ(高度道路通信システム)の推進

情報通信委員会では、10月に名古屋で開催されたＩＴＳ世界会議に向け、e-Japan戦略等に盛り込まれているＩＴＳの関連施策や世界会議に向けた取組みについて、関係省庁との懇談会を開催（７月）するとともに、官民の代表による日本ＩＴＳ推進会議の設立と運営に協力した。

２．電気通信分野における企業ユーザーの利便性の向上

(1)　「企業の通信サービス・ニーズに関する調査報告書」の取りまとめ

通信・放送政策部会(部会長：前田忠昭東京ガス取締役常務執行役員)では、企業ユーザーの立場から、通信ニーズと現実の通信サービスのギャップを把握するために、日本経団連理事会社を対象として実施したアンケートを踏まえ、５月に「企業の通信サービス・ニーズに関する調査報告書」を取りまとめた。その結果、企業は通信ネットワークの戦略的活用を重視する一方、料金や品質が企業ユーザーの満足できる水準に達していないため、ＩＴの利活用で期待する効果が得られていないことが明らかになった。

(2)　ＩＰ化時代における情報通信のあり方について検討

日本の情報通信市場においては、ブロードバンドサービスの急速な普及を背景に、既存の固定電話からＩＰ電話への移行、企業におけるＩＰ－ＶＰＮ等によるネットワークの構築など、ＩＰ化への動きが加速しつつある。そこで、ＩＰ化時代における情報通信ネットワークの姿、競争政策のあり方、ユニバーサル・サービスの見直しに関する課題等について企業ユーザー等の考え方を提言として取りまとめるため、通信・放送政策部会では、11月に総務省総務省総合通信基盤局の吉田靖事業政策課長よりＩＰ化時代における情報通信政策の展開について説明を聞くとともに、2005年２月より情報通信ワーキング・グループにおいて、通信事業者等からIP化への取組みについてヒアリングを行った。

(3)　電波の有効利用の推進に向けた取組み

総務省電波有効利用政策研究会の最終報告書(案)「電波利用料制度の見直しのための基本的な考え方」で示された新たな電波政策の方針に関して、７月に、通信・放送政策部会で総務省より説明を聞くとともに、経済的価値を反映した電波利用料制度の導入や免許不要局からの電波利用料徴収の先送りを求める意見を取りまとめ、パブリックコメントに提出した。

(4)　電気通信市場における競争政策の推進

総務省情報通信審議会電気通信事業部会答申案「接続料算定の在り方について」に対し、８月に、通信・放送政策部会として、接続料の増加の抑制やＮＴＴの施設設置負担金の廃止を求める意見をパブリックコメントに提出した。この後、ＮＴＴは施設設置負担金を段階的に廃止することになった。

(5)　国際的な動向の把握

情報通信委員会では、５月にスティーブン・ティムズ英国貿易産業省閣外大臣との懇談会を開催し、英国の情報通信分野の競争政策と新たな独立規制機関（ＯＦＣＯＭ）の活動について説明を聞いた。また、12月に、通信・放送政策部会でＦＣＣ（米国連邦通信委員会）のロバート・ペッパー政策局長より、米国通信政策の現状について説明を聞いた。

（５）流通委員会

（平井　克彦　委員長）

流通委員会では、わが国の流通システムの効率化・合理化を喫緊の課題としてとらえ、コスト削減・競争力強化に資する最適サプライチェーンの構築や、流通分野に関する規制改革要望などについて検討した。

１．最適ＳＣＭ（サプライチェーンマネジメント）構築に向けた検討

７月に開催した委員会において、最適ＳＣＭ構築の取り組みを強化することを決め、その実現に向けた具体的な検討を企画部会（部会長：西山茂樹伊藤忠商事常務取締役）で行うこととした。
企画部会では委員の拡充を図るとともに、10月以降に４回の会合を開催し、委員企業を中心に幅広い業種から、ＳＣＭ導入の背景や、システムの特徴、主な成果などを中心に、各社の取組みについて説明を受けた。
取組事例を説明した企業・団体は以下の通り。

東レ、阪和興業（10月）
ファミリーマート、ＮＥＣパーソナルプロダクツ（12月）
大成建設、味の素ゼネラルフーヅ（2005年１月）
ジェーシー・コムサ、日本百貨店協会、三越（2005年２月）

２．規制改革要望の取りまとめ

消費者利便の向上や選択肢の拡大を図る観点から、事業者の自由な事業展開や創意工夫の発揮を妨げている大店立地法、酒税法、食品衛生法などに基づく流通分野の諸規制についての規制改革要望10項目を取りまとめ、政府が実施した規制改革集中受付月間（11月）を通じて、その実現方を働きかけた。

（６）農政問題委員会

（佐藤　安弘　共同委員長）
（大橋　信夫　共同委員長）

１．農業団体との対話の推進

2003年12月より再開された農業団体との首脳レベルの懇談会を定期的に開催した(５月、10月)。日本経団連からは奥田会長をはじめ関係副会長、委員長などが、農業団体側は宮田全国農業協同組合中央会(全中)会長、種市全国農業協同組合連合会(全農)会長をはじめ全国農業会議所、農林中央金庫、全国共済農業協同組合連合会の幹部が参加した。懇談会では経済連携協定における農業分野の取り扱い、新たな食料・農業・農村基本計画の策定等につき意見交換を行い、わが国農業の構造改革推進に協力して取り組んでいくことで認識の一致をみた。今後も時宜に応じて農業団体との意見交換を行うこととした。

２．食料・農業・農村基本計画策定への働きかけ

企画部会（部会長：松﨑昭雄森永製菓相談役）では、独立行政法人経済産業研究所の山下一仁上席研究員を招き、直接支払制度を中心に農業構造改革のあり方について意見交換を行った（５月）。農林水産省農村振興局の宮本敏久計画部長を招き、2000年度に導入された中山間地等直接支払制度の実施状況について説明を聴取し、同制度の今後のあり方につき意見交換を行った（６月）。また、成蹊大学法科大学院の宍戸善一教授を招き、日本版LLC制度の農業生産法人への採用可能性について意見交換を行った（７月）。
これらの活動をもとに、９月、委員会を開催し、新たな食料・農業・農村基本計画の策定に向けた中間論点整理について、東京大学の生源寺眞一教授より説明を聴取し、意見交換を行った。2005年２月には、「食料・農業・農村基本計画骨子（案）」に対するパブリックコメントを提出した。
また、農林水産省の食料・農業・農村政策審議会の企画部会の専門委員に代表を立て、新たな食料・農業・農村基本計画への産業界の意見反映に努めた。

（７）国土・都市政策委員会

（5月27日～　平島　治　共同委員長）
（岩沙　弘道　共同委員長）
（～5月27日　平島　治　委員長）

１．ＰＦＩ法改正に向けた取組

「ＰＦＩの推進に関する第三次提言」(2004年１月)をフォローアップし、現在政府が行っているＰＦＩ法の見直しに産業界の立場を反映すべく、以下の活動を行った。

(1)　「ＰＦＩの推進に関する第三次提言：省庁回答へのコメント」の取りまとめ

標記提言で取上げた論点に対する各所管省庁の見解に対し、ＰＦＩ推進部会（部会長：小倉勝彦大成建設常務）においてコメントならびに再反論を取りまとめた（2004年４月）。

(2)　ＰＦＩに関する海外調査ミッションの派遣

10月10日～17日の日程で標記ミッションを英国、フランス、欧州委員会(ブラッセル)に派遣し（団長：小倉勝彦ＰＦＩ推進部会長）、現地におけるＰＦＩ関連諸制度を調査の上、報告書を取りまとめた。

(3)　「ＰＦＩ法の改正について」の取りまとめ

ＰＦＩ法（ならびに関連ガイドライン）の改正に反映すべき論点について再確認すべく、ＰＦＩ推進部会において標記を取りまとめた。本件については、12月８日開催の自民党ＰＦＩ推進調査会の場でも意見陳述を行った。

２．「国土の総合的点検」に関する懇談会の開催

６月、国土・都市政策委員会を開催し、「第五次全国総合開発計画」に代わる新たな国土計画のたたき台として国土審議会がとりまとめた「国土の総合的点検」について、国土交通省の薦田隆成国土計画局長(当時)から説明を聞いた。

３．都市・農村交流に関する懇談会の開催

４月、国土・都市政策委員会を開催し、都市・農村交流のあり方についてJA、全中、連合等から説明を聞いた。

（８）観光委員会

（江頭　邦雄　委員長）

１．観光委員会の新設ならびに第1回会合の開催

10月26日、観光委員会（委員長：江頭邦雄味の素社長兼ＣＥＯ）を新設し、第１回会合を開催した。当日は、国土交通省の鷲頭誠総合観光政策審議官より観光振興に向けた政府の取組みについて説明を聞くとともに、委員会の活動方針について検討した。

２．「観光立国に関する提言」（仮称）の取りまとめ

2005年６月を目処に(1)魅力ある国づくり、(2)訪日外国人観光客の増大を主眼とした提言を取りまとめるべく、観光委員会の下に企画部会(部会長：宇佐美皓司日本郵船専務取締役)を設置して以下の活動を行った。

ちばぎん総研の額賀信社長より、観光振興に向けたわが国の課題について説明を聞いた（11月)。
国土交通省の志村格参事官より、政府の観光立国推進戦略会議が取りまとめた報告書について説明を聞いた（12月)。
茨城県庁他より、同県におけるグリーン・ツーリズムの取組みについて説明を聞いた（12月)。
東京大学の西村幸夫教授より、わが国の景観形成に向けた課題について説明を聞いた（2005年１月)。
立教大学の稲垣勉観光学部長より、観光立国に向けた人材育成のあり方等について説明を聞くとともに、提言の素案について検討を加えた（2005年３月）。

（９）住宅政策委員会

（和田　紀夫　委員長）

１．今後の住宅政策のあり方について検討

11月に山本繁太郎国土交通省住宅局長を招き、住宅政策委員会を開催し、今後の住宅政策の方向について説明を聞くとともに意見交換を行った。
９月に企画部会（部会長：立花貞司トヨタ自動車常務役員）を開催し、平成17年度の住宅関連予算概算要求、税制改正要望について国土交通省住宅局の和田専門官、宇野企画専門官より説明を聞き、日本経団連の住宅税制改正要望について審議を行った。10月の企画部会では国土交通省住宅局の上田健課長より、住宅に関する基本法の制定に向けて、住宅政策の課題について説明を聞き、税制改正への取り組みなどについて意見交換を行った。

２．住宅・土地税制改正に向けた取り組み

住宅・土地政策に関する打ち合せ会を開催し（７月、８月）、住宅税制に関する本年度の対応を取りまとめ、日本経団連税制改正要望（９月）に盛り込んだ。また、自民党国土交通部会住宅・土地ワーキングにおける意見発表（９月）や、与党幹部への説明などを通じて、住宅税制の改正実現方につき積極的に働きかけを行った。こうした活動の結果、平成17年度税制改正において、住宅ローン減税等の適用において条件となっていた中古住宅に関する築年数要件が撤廃されるなど、住宅税制の拡充が実現した。

３．「住宅・街づくり基本法」ワーキンググループの立ち上げ

一昨年の住宅政策提言「住みやすさで世界に誇れる国づくり」で提案した「住宅・街づくり基本法」の実現を図るため、企画部会のもとにワーキンググループ（座長：竹内和正旭硝子経営企画室主幹）を設置した。一昨年の提言で示した住宅政策に対する考え方をもとに、2005年前半に意見をまとめる予定である。

（10）輸送委員会

（岡部　正彦　共同委員長）
（5月27日～　井坂　榮　共同委員長）
（～5月27日　三浦　昭　共同委員長）

１．輸出入・港湾諸手続のワンストップサービス実現に向けた取り組み

2003年７月に稼動開始した「輸出入・港湾諸手続のワンストップサービス」については、各種申請の見直しや現行の申請書類の徹底した簡素化などの電子化に先立って行うべき業務改革（ＢＰＲ）が不十分であり、その改善を望む声が多かったことから、関係８業界と連名で「輸出入・港湾諸手続の効率化に関する提言」(2004年６月)を策定し、関係各方面に対し、その実現に向けた働きかけを行った。
そうした働きかけの一環として、関係7府省からなる関係府省連絡会議（内閣官房、財務省、国土交通省、厚生労働省、農林水産省、法務省、経済産業省）と関係民間業界により、現場の状況を把握するための現地視察キャラバンを実施するとともに、意見交換会を数回にわたって行った（７月～11月、計７回）。企画部会においても、関税局税関調査室の池ノ上功室長、国土交通省政策統括官付の福内直之政策調整官を招き、諸手続の簡素化・電子化に関する検討状況及び今後の取組みの方向性について、説明を聞くともに意見交換を行なった（2005年３月）。こうした一連の取組みの結果、ＦＡＬ条約（国際海上交通簡易化条約）の早期批准が決定され、2005年通常国会において、同条約批准に向けた関連法案が審議されることとなった。
また、わが国港湾の全般的な話として、国土交通省の鬼頭平蔵港湾局長から「港湾行政の現状と展開」について（６月）、さらに港湾物流に関する話として、国土交通省海事局の長田太港運課長より「最近における港湾物流の状況」について（６月）、それぞれ説明を聞いた。

２．コンプライアンスに着目した輸出制度への対応

財務省関税局から示された、コンプライアンスに着目した輸出制度について、官民の関係者を集めて意見交換を実施した（10月）。また、主にコンプライアンス要件を過重としないこと、民間サイドとの十分な協議を持つこと、といった内容のパブリックコメントを提出した（11月）。さらに、関税局の原雅彦関税課長、古井俊之業務課長、斎藤誠調査保税課長を招いて、「関税・外国為替等審議会（関税分科会）の答申」について、説明を聞くとともに意見交換を実施した（2005年１月）。2005年通常国会において、同制度の創設に係る法案が審議されることとなった。

３．内航輸送活性化に関する取り組み

内航輸送の活性化・効率化に向けた取り組みとして、自民党「産業競争力強化に向けた物流効率化研究会」において、産業界の問題意識について説明した（４月）。また、産業界の具体的な問題意識を探るべく、「内航輸送活用に関するアンケート」を実施した（2005年１月）。

４．高速道路利用に関する訴え

道路局長の諮問会議である「使えるハイウェイ推進会議」などにおいて、高速道路の利用促進に関して、産業界の立場から積極的に意見を述べた（７月～2005年２月）。その一環として、高速道路国道の料金割引に関して、ＥＴＣを活用した柔軟な料金割引を求めた意見をパブリックコメントに提出した（８月）。

５．規制改革への対応

運輸分野の規制改革については、行政手続の簡素化・効率化を求める観点から、大量車両登録変更のための特例措置など、合計24項目に及ぶ規制改革要望をとりまとめ、政府に建議した。こうした働きかけの結果、危険物積載船舶の特定港入港におけるＧＲＴ（総トン数）制限の緩和や道路占用料金の適正化に向けた検討が開始されるなど、着実な成果が挙がった。

（11）地域活性化委員会

（辻井　昭雄　委員長）

今年度は、５月と11月に開催し、地域における政策の具現化の意味から、行政や地方公共団体との交流に留意した活動を行った。
５月の委員会では、「地域再生プロジェクトの課題」をテーマとして御園慎一郎内閣官房地域再生推進副室長と特区の申請問題について意見交換を行った。
11月の委員会は、地域振興に積極的な取り組みを行っている岐阜県にて開催し、現地視察や担当者からのヒアリング、意見交換を行った。
視察は、ＩＴ及びロボットなどの先端技術のインキュベーション施設を展開する大垣市・各務原市の「ソフトピアジャパン」「テクノプラザ」を中心に行った。また、岐阜県新産業労働局から、岐阜県におけるニートなどの若者に対する研修・就職支援の取組みについて説明を聞くとともに、意見交換を行った。

４．技術・環境・エネルギー関係

（１）産業技術委員会

（庄山　悦彦　委員長）
（桜井　正光　共同委員長）

１．第３期科学技術基本計画への産業界意見の反映に向けた活動

2006～2010年度を計画期間とする第３期科学技術基本計画が2005年度末にも策定される予定である。そこで、第３期基本計画への産業界意見の反映に向けて、内閣府、文部科学省、経済産業省など関係府省からの意見聴取、産業界委員へのアンケートなどを踏まえながら、科学技術政策部会（部会長：笠見昭信東芝常勤顧問）および重点化戦略部会（部会長：中村道治日立製作所副社長）を中心に、2004年11月、提言「科学技術をベースとした産業技術力の強化に向けて」をとりまとめ、関係各方面に建議した。
とりわけ重点提言項目である(1)国や産業の持続的発展の基盤となる重要技術の選出と一貫した政策の推進、(2)先端技術融合型ＣＯＥの新設、(3)政府研究開発投資の拡充（対ＧＤＰ比１％）の実現に向けて、総合科学技術会議、経済産業省、文部科学省を中心に、日本経団連の主張を強く働きかけた。
総合科学技術会議に関しては、棚橋泰文科学技術政策担当大臣との懇談会を開催するとともに、第３期基本計画の策定を検討する「基本政策専門調査会」に庄山委員長が参加し、提言に基づいて、日本経団連の考え方を述べた。
文部科学省との間では、５月には河村文部科学大臣（当時）、2005年１月には中山成彬文部科学大臣と、科学技術政策をめぐって、日本経団連の主要メンバーと懇談会を開催した。
経済産業省との間では、科学技術政策部会において、産業技術環境局の照井恵光審議官との懇談会を二度にわたって開催した。

２．重要分野の研究開発の推進

各分野における取り組みも第３期基本計画へとつなげることが必要であることから、バイオテクノロジー部会（部会長　手柴貞夫協和発酵常務取締役）では、農林水産省より、2005年１月に、「農林水産技術基本計画」に関して説明を聞くとともに懇談した。さらに、ナノテクノロジーWG（主査：石原直ＮＴＴアドバンステクノロジ理事・先端技術事業本部ナノエレクトロニクス事業部長）においても、これまでの基本計画における戦略的重点化の現状を把握し、第３期基本計画へとつなげていく観点から、政府のナノテクノロジー政策に関してアンケートを実施し、その結果を関係方面に公表した。

３．産学官連携の推進

創造された知を社会に還元し、経済活性化や産業の国際競争力強化につなげるためには、産学官の密接な連携が不可欠である。日本経団連では、産学官連携推進部会（部会長：山野井昭雄味の素技術特別顧問）が中心となって、６月には京都で第３回産学官連携推進会議を、また、12月には東京で第４回産学官連携サミットを、内閣府、日本学術会議と共催し、産学官相互の理解を深めた。また、東京大学と産業界との連携を幅広く進めるため、東京大学産学連携協議会の設立に協力を行った。さらに、将来のわが国産業を支える技術系人材を産学連携で育成するよう、大学の単位取得につながる本格的なインターンシップの導入に向けた具体的な検討を進めた。

４．知的財産政策に関する取り組み

政府知的財産戦略本部による知的財産推進計画2005の策定に先立ち、2005年３月に、知的財産部会（部会長：石田正泰凸版印刷専務）において、産業問題委員会エンターテインメント・コンテンツ産業部会と共同して、提言「知的財産推進計画2005の策定に向けて」をとりまとめ、関係方面に建議した。
この間、７月及び2005年３月には、産業技術委員会と産業問題委員会との合同会合を開催し、知的財産戦略推進事務局の荒井寿光事務局長と「政府の知的財産戦略の取り組み」について意見交換を行なうとともに、11月には、知的財産部会において、日本弁理士会の木下實三会長ほかと懇談した。
さらには、職務発明制度についての特許法の改正に関し、衆議院などの場で、対価の額の決定は、企業において合理的なプロセスのもとで定められた取り決めに委ねるべきであると意見陳述を行うとともに、特に退職者の営業秘密の不正使用・開示に対する刑事罰について検討し、産業構造審議会の場で、悪質性の高い行為について刑事罰を導入するよう意見を表明した。

５．国際標準化推進に向けた取り組み

国際標準化戦略部会（部会長：尾形仁士三菱電機上席常務執行役）では、昨年１月に公表した「戦略的な国際標準化の推進に関する提言」に基づき、会員企業・団体に対し、国際標準化の重要性を呼びかけるとともに、標準化推進に向けた方策について、知的財産戦略推進事務局や経済産業省などと協議を行ってきた。
11月には、経済産業省の原山保人基準認証担当審議官、横田真標準企画室長らを招き、国際標準化戦略の促進に向けた経済産業省の取り組みや標準化経済性研究会などでの検討状況について説明を受けるとともに懇談を行った。
さらに、月刊経済Ｔｒｅｎｄの2004年11月号において「技術の国際標準化と企業経営」という特集テーマを組み、広く会員企業・団体や一般読者に対し、企業経営における国際標準化推進の重要性を訴えるとともに、事例紹介などを通じた啓発に努めた。
また、2005年３月には、経済産業省とともに「事業戦略と国際標準化シンポジウム」を共催し、日本経団連の標準化推進に向けた取り組みを紹介したほか、事業戦略と国際標準の有機的な結びつきの効果などについて、様々な業界の先進事例の紹介などを通じて広報・周知を行った。

（２）海洋開発推進委員会

（武井　俊文　委員長）

１．大陸棚画定調査の推進

国連海洋法条約に基づき、大陸棚の地形、地殻構造、地質に関する詳細な調査を実施し、2009年５月までに調査結果を国連に申請し認定を受けることにより、資源開発等経済上の権利が確保されることとなる。限られた期間内に精密な調査を完遂させるため、政府のみならず民間も含め、国をあげた取組みが不可欠となっている。
当委員会では、2003年度に引き続き、大陸棚画定調査が着実に実施されるよう、政府との連携、支援活動を行った。11月には、委員会を開催し、武見敬三参議院議員より、2004年６月に自民党がとりまとめた「海洋権益を守るための９つの提言」などについて説明を受け、意見交換を行った。

２．海洋研究開発機構との連携

2005年２月に委員会を開催し、わが国の海洋科学技術開発の中心的機関である海洋研究開発機構の平朝彦地球深部探査センター長を招き、わが国独自の地球深部探査船「ちきゅう」の運用など、海底地球探査の新展開について、説明を受け、意見交換を行った。

（３）環境安全委員会

（山本　一元　共同委員長）
（5月27日～　新美　春之　共同委員長）
（～5月27日　秋草　直之　委員長）

１．環境問題全般

(1)　環境大臣との懇談会の開催

10月に小池百合子環境大臣との懇談会を開催し、奥田会長はじめ関係副会長、委員長、部会長から、温暖化問題、廃棄物・リサイクル問題等に関する産業界の取り組み状況と、これらの分野における政策のあり方について産業界の意見を述べるとともに懇談した。

(2)　環境問題に関する情報発信の推進

2004年１月公表の「環境立国のための３つの取り組み」で会員企業・団体に呼びかけた、環境報告書をはじめとする積極的な情報発信について、本年度、アンケート調査を行い、2005年２月に取り組み状況を公表した。

(3)　委員会会合の開催

９月、環境安全委員会を開催し、経済産業省の深野弘行大臣官房審議官より、循環型経済社会構築に係る最近の動向や化学物質規制を巡る最近の動向について、また、2005年２月には、慶應義塾大学の山口光恒教授から、京都議定書発効後の温暖化問題について、それぞれ説明を聞くとともに意見交換を行った。

２．地球温暖化問題への対応

(1)　意見書の建議

政府における地球温暖化対策推進大綱の見直し作業をふまえ、京都議定書目標達成に向けた考え方と、産業界による温暖化対策の強化策について、2004年７月に意見書「地球温暖化対策の着実な推進に向けて」を取りまとめた。また、京都議定書発効前日の2005年２月15日には、政府が策定する京都議定書目標達成計画に関する要望と、民生・運輸部門における対策をはじめとする産業界の温暖化問題への取り組み強化について、意見書「地球温暖化防止に取り組む産業界の決意」を取りまとめ、政府・与党幹部に建議した。

(2)　環境自主行動計画フォローアップ

環境自主行動計画2004年度フォローアップを実施し、11月に結果を公表した。これには、産業・エネルギー転換部門34業種を含む57業種・企業が参加した。2003年度の産業・エネルギー転換部門からのCO2排出量は、5億239万t-CO2で、90年度比0.6％減であったことが明らかとなった。過去４年間の平均値でも同1.5％減であり、「2010年度のCO2排出量を90年度レベル以下に抑制する」という統一目標を着実に達成しつつある。
また、同フォローアップの透明性・信頼性向上のため設置された第三者評価委員会（委員長：山口光恒慶應義塾大学教授）は、９月に訪欧調査を行うとともに、11月～３月に計５回会合を開催し、前年度指摘事項をふまえた改善点の評価ならびに今後の課題について2004年度評価報告書を取りまとめた。

(3)　海外経済団体等との対話・連携促進

国際環境戦略ＷＧとして６月に調査団を派遣し、欧州産業連盟（ＵＮＩＣＥ）と、日欧産業界が直面する温暖化対策の課題と展望等につき意見交換を行った。
また、９月には、気候変動に関する政府間パネル(IPCC)幹部との懇談会を開催し、IPCC第4次報告書に向けた協力等について意見交換を行った。

(4)　ＣＯＰ10への参加

国連気候変動枠組条約第10回締約国会議（ＣＯＰ10、12月６日～17日、於ブエノスアイレス）期間中、国際商工会議所（ＩＣＣ）および持続可能な発展のための世界経済人会議（ＷＢＣＳＤ）と、それぞれセミナーを共催し、海外の関係者に日本の産業界の取り組みを紹介するとともに、2013年以降の国際的な枠組のあり方について議論した。

３．廃棄物・リサイクル問題への対応

(1)　環境自主行動計画フォローアップ

本年度は40業種の参加を得て、業種毎の廃棄物対策ならびに産業廃棄物最終処分量の削減目標の達成状況等を調査し、2005年３月に公表した。2003年度における産業界全体の産業廃棄物最終処分量は1990年度実績より82.6％削減し、「2010年度の産業界全体の産業廃棄物最終処分量を1990年度実績の75％削減する」という目標を昨年度に引き続き前倒しで達成した。
また今後の目標設定等について検討を行った。

(2)　容器包装リサイクル法の見直しへの対応

容器包装リサイクル法施行10年を来年度に控え、中央環境審議会ならびに産業構造審議会は、2004年夏から、同法の見直しについて検討を開始した。これに対応して、廃棄物・リサイクルＷＧ（座長：小倉康嗣ＪＦＥホールディングス理事）で本問題について検討を行い、審議会において適宜産業界としての意見を述べた。

(3)　その他

自民党環境部会において、４月にはバーゼル条約に係る問題について、６月には「産業界から見た廃棄物処理・リサイクルをめぐる諸課題」について、意見陳述を行った。
2005年３月には、廃棄物・リサイクル部会（部会長：庄子幹雄鹿島建設副社長）を開催し、細田衛士慶応義塾大学教授から「廃棄物・リサイクルに係る課題－とりわけ廃棄物の定義とＥＰＲについて－」説明を聞くとともに意見交換を行った。
そのほか廃棄物・リサイクルＷＧを適宜開催し、産業廃棄物処理業優良化推進事業やアジアの資源循環問題等について検討を行った。

４．環境規制制度の改善に向けた動き

(1)　水質総量規制制度への対応

閉鎖性海域(東京湾、伊勢湾、瀬戸内海)における水質総量規制について、中央環境審議会において第６次規制の検討が開始されたことにあわせ、環境リスク対策部会(部会長：河内哲住友化学副社長)を開催し、環境省の甲村謙友水環境部長より閉鎖性海域の水質環境の状況や第６次規制の検討状況について説明を聞くとともに意見交換を行った。その後、環境管理WG(座長：奥村彰住友化学レスポンシブル・ケア室部長)において検討を重ね、10月に開催された中央環境審議会の専門委員会において、産業界の排水の汚濁負荷削減対策について紹介するとともに、「従来の対策の延長ではなく、海域の汚染メカニズムを明らかにした上で長期ビジョンを持った対策を検討すべき」との意見を述べた。その後も環境省と意見交換を重ね、水質総量規制制度の抜本的な見直しに向けた議論を行った。

(2)　水生生物保全のための環境基準設定への対応

2003年９月に設定された水生生物の保全に関する環境基準の運用や環境管理等の重要施策を審議する中央環境審議会の審議にあわせ、環境管理ＷＧにおいて検討を行った。

５．規制改革要望の取りまとめ

廃棄物・環境保全分野、危険物・防災・保安分野について規制改革要望を取りまとめ、2004年10月に政府に要望し、実現を働きかけた。
廃棄物・環境保全分野については、総合規制改革会議への要望提出に加え、環境省の担当部局との協議を重ね、一定の要件を満たす汚泥の脱水処理施設に対する廃棄物処理法の適用除外、分社化に対応した規制の見直し等、多業種にわたって効果の大きい規制緩和措置が講じられた。
危険物・防災・保安分野は、「安全」を政策目的とした分野であることから、所管省庁の対応が慎重であるが、技術開発の進展等により対応が可能と考えられる課題や、実態を踏まえた対応が必要な点について、民間の経験、実績を踏まえた自主的な対応の推進をはかる観点から要望を取りまとめた。また、保安諸規制の合理化、整合化の観点から、重複規制の抜本的な解消について引続き要望した。

（４）資源・エネルギー対策委員会

（秋元　勇巳　委員長）

１．エネルギー政策に関する検討

(1)　エネルギー長期需給見通しに関する取り組み

2003年10月に策定されたエネルギー基本計画に基づき、資源エネルギー庁総合資源エネルギー調査会では、2030年を見通した長期需給見通しのとりまとめ作業が進められた。本調査会には、秋元勇巳委員長が参加し、原子力の活用の重要性など、産業界意見の反映に努めた。また、11月には資源エネルギー庁小平信因長官から、需給見通しの概要について説明を受けるとともに懇談を行った。
さらに、３月には資源エネルギー庁総合政策課と経済産業省環境経済室から、長期需給見通しを踏まえた京都議定書の目標達成に向けた取り組みの状況について説明を受け、意見交換を行った。

(2)　諸外国におけるエネルギー政策の動向

本委員会では、諸外国のエネルギー政策関係者の来日の機をとらえて委員会に招き、海外のエネルギー政策の動向について講演頂くとともに意見交換を行った。９月には、原子力や核融合の研究開発で世界的な権威であるロシアの国立クルチャトフ研究所総裁のエフゲニー・ヴェリホフ博士を招き、ＩＴＥＲ（国際核融合実験炉）プロジェクトの進行状況と将来展望について説明を受けた。また、１月には、フランス電力（EDF：Electricité De France）のタンチュリエ会長付顧問を招き、フランスの電力自由化政策の現状について説明を受け、意見交換を行った。

２．規制改革への取り組み

エネルギー分野に関する会員企業団体からの具体的な規制改革要望を踏まえ、ハイサルファーＣ重油に係る備蓄義務の緩和など18項目に亘る要望を政府に対して提出し、要望実現に向け、関係省庁との協議を重ねた。

５．社会関係

（１）広報委員会

（5月27日～　米倉　弘昌　委員長）
（～5月27日　樋口　公啓　委員長）

１．日本経団連の広報戦略に関する検討

日本経団連の重要課題に関する広報戦略や広報体制について、企画部会（部会長：神尾隆トヨタ自動車専務取締役）を中心に、総合的な見地から検討した。
９月には独禁法改正ならびに政治寄付をめぐる動き、10月には環境税をめぐる動き、さらに2005年２月には国の基本問題と教育問題、地球温暖化防止への取り組みについて、それぞれ部会で取り上げ、主要会員企業の理解を得るとともに、効果的な広報活動のあり方について意見交換した。

２．日本経団連の広報活動への支援

日本経団連の活動に関する国内外への広報活動が、積極的かつタイムリーに行われるよう、支援を行った。

（２）企業行動委員会

（武田　國男　委員長）
（大歳　卓麻　共同委員長）

１．企業倫理月間の実施

2002年10月に発表した「企業不祥事防止への取り組み強化について」では、企業行動に関する会員企業の継続的な取り組みを支援するために毎年10月を「企業倫理月間」とすることとした。2004年10月にも会員企業に対し企業行動の総点検を要請するとともに、トップセミナー、企業倫理担当者向けの研修会等を開催した。

(1)　「企業倫理徹底のお願い」の送付

企業倫理月間を迎えるにあたり、奥田会長より全会員代表者あてに、「企業倫理徹底のお願い」を送付した。具体的には、企業倫理確立は経営トップの責務であるとして、全会員企業に、コンプライアンス体制の整備と見直し（行動指針の整備・充実、企業倫理担当役員の任命や担当部署の設置、企業倫理ヘルプライン（相談窓口）の整備）、コンプライアンスの浸透と徹底（トップの基本姿勢の社内外への表明、教育・研修の実施・充実、企業倫理の浸透・定着状況チェックと評価）、そして事前の備えと不祥事が起きた場合の対応（不祥事が起こった場合の適時適確な情報開示、原因の究明、再発防止策の実施）を求めた。

(2)　第３回企業倫理トップセミナー

10月に、400名以上の参加を得て、第３回企業倫理トップセミナーを開催した。
古川洽次三菱自動車工業副会長から同社の取り組みについて報告を受けた後、武田副会長、古川洽次三菱自動車工業副会長、中島茂中島経営法律事務所代表、日和佐信子雪印乳業取締役によるパネルディスカッションで、経営トップが企業倫理徹底に果たすべき役割などが話し合われた。

(3)　企業倫理担当者研修会の開催

９月13日、14日の両日、経団連ゲストハウスにおいて、第３回企業倫理担当者研修会を実施し、企業の担当者がコンプライアンスを巡る最新情勢を学ぶとともに、それぞれの経験をもとに幅広い意見交換を行い担当者間のネットワーク作りに努めた。

２．会合の開催

(1) 企業不祥事の根本原因を探るべく、５月、６月、７月に企画部会(部会長：近藤定男三洋電機副会長)を開催し、有識者、企業関係者からのヒアリングを行った。

５月には雪印乳業の日和佐信子取締役(前全国消費者団体連合会事務局長)から「コンプライアンスの確立と日本経団連への期待」について説明を受けた。
６月には日本アイ・ビー・エムの松崎純一営業管理担当を招き、同社の企業倫理推進に向けた取り組みについて説明を受けるとともに、企業倫理月間の奥田会長メッセージ「企業倫理徹底のお願い」について検討した。
７月には日本ハムの宮地敏通企業倫理室長から2002年の不祥事以降における同社の企業倫理推進に向けた取り組みについて説明を受けるとともに、前回会合に引き続き、「企業倫理徹底のお願い」について検討した。

(2) 社会貢献推進委員会と合同で企業行動憲章を企業の社会的責任経営の観点から見直すため検討を行った（詳細は（３）社会貢献推進委員会を参照）。

(3) 企業不祥事に対する当会の考え方を整理するために、企画部会の下に臨時のワーキング・グループを設け、2005年１月と２月に会合を開催、意見交換を行った。

３．企業不祥事への対応

日本経団連会員企業が関わる不祥事を調査するとともに、会員企業からの問合せに応じてコンプライアンス体制の構築、改善に向けた助言を行った。

（３）社会貢献推進委員会

（池田　守男　委員長）

１．ＣＳＲの観点から社会貢献活動のあり方を検討

７月に、桜美林大学経営政策学部の馬越恵美子教授を招き、多様な属性や価値、発想を取り入れて企業の成長と従業員の自己実現を図るダイバーシティ・マネジメントと、その社会貢献活動への活用などについて聞いた。2005年１月には、英国の社会貢献活動の推進機構であるビジネス・イン・ザ・コミュニティのピーター・デーヴィス副理事長から、「ＣＳＲの視点からの企業とコミュニティのパートナーシップの構築」をテーマに、英国企業の取り組みについて説明を聞いた。
1992年から毎年、経団連ゲストハウスで開催している社会貢献フォーラムは、「ＣＳＲ時代の社会貢献活動を考える」をテーマに実施した（2005年２月19日、20日）。過去10年間の社会貢献活動の実績や貢献、反省点などを共有した上で、今後、世界的に重要になると思われる社会活動のテーマを探り、企業が担うべき役割や社会貢献活動のあり方について討議した。

２．社会的課題の解決に寄与する社会貢献活動のあり方の検討

社会貢献担当者懇談会(座長：長谷川公彦味の素社会貢献担当部長、嶋田実名子花王社会貢献部長)では、社会の持続可能性や人権などのヒューマン・セキュリティ、社会貢献活動のグローバルな展開などをテーマに、懇談会を８回開催した。阪神・淡路大震災から10年を迎えた2005年１月には、大阪の企業との災害支援に関するフォーラムを開催するとともに、被災地の市民活動拠点を訪問した。こうした活動を通じて、大震災がその後の災害支援活動や市民活動、企業の社会貢献活動に与えた影響を検証した。

３．2003年度社会貢献活動実績調査（12月）

2003年度の社会貢献活動の実績について調査し、388社（回答率：28.3％）から回答を得た。社会貢献活動支出額は、総額で1,219億円、１社平均では３億3,000万円であった。今回は、各社の社会貢献活動についての基本的考え方、活動推進のための社内体制、社員のボランティア活動の支援策などとともに、具体的な活動メニューを調査し、事例調査編として取りまとめた。回答企業の79.1％にあたる307社が事例を公表した。

４．企業の社会的責任（ＣＳＲ）の一層の推進

企業行動委員会との合同部会である社会的責任経営部会（部会長：池田守男委員長（～７月20日）、廣瀨博住友化学常務執行役員（７月20日～））では、５月に「企業行動憲章」、６月に「企業行動憲章実行の手引き」をＣＳＲの観点から見直し、改定した。また、憲章や実行の手引き、各種評価機関の調査項目などを踏まえて、企業がＣＳＲを実践していく上で必要と思われる項目をステークホルダー毎に例示した「ＣＳＲ主要要素のマトリックス」を作成した。そのほか、先進的事例の収集、ステークホルダーとの対話の促進、国内外の経済諸団体との連携について検討を進めるとともに、情報紙の発行、ホームページや機関誌を通じてＣＳＲに関する情報を提供した。

５．国際標準化機構（ＩＳＯ）におけるＳＲの規格化への対応

６月にスウェーデンで開催されたＩＳＯの社会的責任(ＳＲ)に関する国際会議に代表を派遣し、「企業の社会的責任(ＣＳＲ)推進にあたっての基本的考え方」(2004年２月)に沿って、第三者認証を伴う規格化には反対する旨の働きかけを行った。しかし、ＩＳＯは第三者認証を目的としないものの、開発途上国の強い要望に応じ、「ＳＲに関するガイダンス文書(国際規格)」の作成を決議した。
日本経団連は、日本企業にとって不利な規格とならないよう、規格策定作業に積極的に参画していくこととし、ＩＳＯのＳＲワーキンググループに企業からの専門家３名を推薦した。あわせて、社会的責任経営部会で規格案を作成し、日本国内の意思決定機関である「ＩＳＯ／ＳＲ国内対応委員会」に提案した。なお、同委員会で日本経団連案を基本とした日本案がまとめられ、2005年１月に提出された。
2005年３月にブラジルで開催されたＩＳＯのＳＲワーキンググループに専門家３名、オブザーバー４名を派遣し、日本提案を説明するなど働きかけを行った結果、第三者認証につながりやすい動きを抑えて、実用的なガイダンス文書作成の方向に会議の議論を向けることができた。なお、専門家の国際会議出席の機会が今後、増えることが予想されるため、派遣専門家のために経済界で募金を行った。

（４）政治・企業委員会

（宮原　賢次　委員長）

１．政党の政策評価に基く政治寄付の促進

日本経団連では、民主導・自律型社会の実現のために緊急かつ重要と思われる「優先政策事項」に基き、政党の政策やその実現に向けた取組みと実績について評価を行い、会員企業が政党へ寄付する際の参考に供している。2004年度は、前年９月の「優先政策事項」に基き、９月に自民党と民主党の第２次政策評価（同年１月の第１次評価を改定）を発表した。そして、会員企業に対して、政治寄付の意義と評価システムへの理解を求めるとともに、企業の社会的責任の一端として、自発的に政治寄付を行うよう働きかけた。さらに、2004年11月には、前年度の優先政策事項を見直し、2005年の評価の尺度となる新たな「優先政策事項」を公表した。

２．政党との政策対話

政策本位の政治の実現に向け、政党との間で、幹部レベル、政策テーマごとの実務レベルなど各種会合を開催し、重要政策課題を巡り、意見交換した。主な会合は以下のとおり。

自由民主党首脳との懇談会（10月、2005年３月）
自由民主党政務調査会幹部との懇談会（10月）
参議院自民党幹部との懇談会（11月、2005年２月）
自由民主党と政策を語る会（全会員案内）（2005年３月）
民主党幹部との懇談会（11月）
公明党幹部との懇談会（2005年３月）

３．政治寄付促進のための法制、税制の見直し

企業や個人の政治寄付を促進するため、諸外国の例を参考に、政治資金規正法や税制の問題点を検討した。この一環として、2005年２月～３月に米国、英国で実務調査を行った。

（５）政経行動委員会

（前田　又兵衞　委員長）

１．政策評価作業の実施

政治・企業委員会の諮問を受け、９月の政策評価、11月の優先政策事項の改定に向けた作業を行うとともに、2005年の評価手法について検討を行った。

２．政治寄付促進のための法制、税制の見直し

政治・企業委員会と協力して、政治寄付の促進のため、法制面、税制面からの検討作業を行った。

（６）教育問題委員会

（5月27日～　草刈　隆郎　委員長）
（～5月27日　樋口　公啓　委員長）

１．「21世紀を生き抜く次世代育成のための提言」の取りまとめ

企画部会（部会長：宇佐美聰三菱電機常任顧問）において、経済界が求める人材像と「多様性」「競争」「評価」を基本とする教育の改革案について検討し、提言を取りまとめた（2004年４月）。

２．「これからの教育の方向性に関する提言」の取りまとめ

受け手のニーズを踏まえた教育補助金の交付のあり方や国際化時代にふさわしい教育内容などを検討し、教育基本法をはじめ教育にかかわる基本的枠組みの見直しについて提言を取りまとめた(2005年１月)。

３．「企業の求める人材像についてのアンケート」の結果公表

「21世紀を生き抜く次世代育成のための提言」に基づき、産業界の求める人材像や大学教育への期待などを調査するため、日本経団連会員企業を対象にアンケート調査を実施した(７月～８月)。また、その結果を中央教育審議会大学分科会において説明し、社会のニーズを反映した大学教育が行われるよう求めた(11月)。

４．「教員のための経済・社会研究プログラム」の開催

提言「若年者の職業観・就労意識の形成・向上のために」（2003年10月）に基づき、教員の意識改革、社会的視野の拡大を図るためのプログラムを実施し、高校の教員を中心に、全国から22名が参加した(７月)。

５．「キャリア形成支援のあり方に関する研究会～多様な人材育成支援策の提供・活用～」の設置

2004年11月に研究会を設置し、社員一人ひとりの能力や適性に焦点を当てた人材育成や能力開発のあり方、具体的な方策について意見交換を行った。

６．懇談会の開催

河村建夫文部科学大臣との懇談（７月）
保利耕輔与党教育基本法改正に関する検討会座長との懇談（９月）
堀内孜京都教育大学教授との懇談（11月）
梶田叡一京都ノートルダム女子大学学長との懇談（11月）
福井秀夫政策研究大学院大学教授との懇談（11月）
横山洋吉東京都教育長との懇談（12月）
中山成彬文部科学大臣との懇談（2005年２月）

６．経営労働関係

（１）経営労働政策委員会

（奥田　碩　議長）
（柴田　昌治　委員長）

毎春の労使交渉・労使協議に際し、「経営と人」に関する基本的な考え方を総合的に検討し、全国の企業経営者の指針となる報告として「経営労働政策委員会報告」を本年も2004年12月に取りまとめ、発表した。「労使はいまこそさらなる改革を進めよう」と題した本報告で、景気が回復基調にあるいまこそ、さらなる国際競争力強化に向けて攻めの改革を行う必要があるとし、そのためには、「人材力」の育成・強化、多様な人材を活かす経営、「現場力」の復活・向上が求められると指摘した。
報告は、以下の３部から構成されている。

第１部　企業経営を取り巻く環境と課題

事業構造改革による競争力の強化
グローバル経済におけるアジアとの経済連携の推進
人口減少時代の経済運営
持続可能な社会保障制度の構築

第２部　経営と労働の課題

労使による人材力の育成こそが企業発展の源泉
企業の競争力を強化する人事戦略
多様な人材を活かすための方策
これからの人事・賃金制度
経営戦略課題としての「現場力」の復活・向上
労働法・労働行政への対応
春季労使交渉に臨む経営側の基本姿勢とこれからの労使協議のあり方

第３部　経営者が考えるべき課題

企業の社会的責任の実践
中小企業／地域経済の課題
今後の経営者のあり方

今次労使交渉における賃金決定に関しては、全体的には国際的にトップレベルにある賃金水準をこれ以上引き上げることは困難であり、その意味で、市場横断的で横並びのベースアップ要求を巡る労使交渉はその役割を終えたと強調した。企業においても、賃金管理の個別化が進む中にあっては、一律的底上げを趣旨とするベースアップが機能する余地は乏しいとして、短期的な業績の成果については、賞与・一時金に反映させ、従業員に報いることが現実的な対応であると指摘した。また春季労使交渉については、賃上げ中心の「春闘」ではなく、労働条件のみならずさまざまなテーマについて労使が討議する「春討」として、継続・発展することが望ましいとの主張を展開した。

（２）雇用委員会

（5月27日～　大橋　洋治　委員長）
（～5月27日　大國　昌彦　委員長）

下部組織である「雇用政策検討部会」（部会長：安堂誠王子製紙常務取締役）とともに、以下の点について論議を重ねた。

１．障害者雇用対策

厚生労働省労働政策審議会障害者雇用分科会は、９月から、今後の障害者雇用施策について検討が行われ、(1)精神障害者に対する雇用対策の強化、(2)多様な形態による障害者の就業機会の拡大、(3)地域での協働による障害者雇用の促進などの議論が行われた。雇用委員会では、これらの分科会での議論をふまえ、アンケートやヒアリングを通じて企業の意見を集約し、日本経団連として、特に精神障害者の雇用について、(1)企業での雇用・労務管理の実態を踏まえた対応を行うべきであること、(2)在職精神障害者に対する雇用管理プログラムが確立されることが企業における優先課題であることなどを主張した。その結果、精神障害者は企業の実雇用率のみに算定すること（法定雇用率は変更しないこと）や、在職精神障害者の職場復帰支援の充実することを趣旨とする改正障害者雇用促進法の策定につながった。

２．若年者雇用対策

７月に高梨昌信州大学名誉教授より若年者雇用を取り巻く問題について講演聴取を行った。また、政府が５府省連携で行っている「若者自立・挑戦プラン」に対して、「若者自立・挑戦プランの強化の具体化に向けて」(2004年11月)を発表し、政府が縦割りを廃し、地方においても連携して施策の実施にあたるよう求めた。

３．雇用保険制度への対応

雇用保険制度の見直しを議論し、本体事業は、本来目的に極力限定する方向で制度を見直す、雇用保険三事業は精査の上、廃止も含めた合理化・絞込みを徹底するという趣旨を2004年９月に発表した提言「社会保障制度等の一体的改革に向けて」の中に盛り込んだ。

４．外国人受け入れ問題

2004年４月、産業問題委員会と共同で「外国人受け入れ問題に関する提言」を発表した。また、2005年３月に、同じく産業問題委員会と共同で、法務省「第三次出入国管理基本計画における主要な課題と今後の方針」に対してパブリックコメントに提出する意見を取りまとめた。

５．新卒採用問題への対応

雇用政策検討部会の下部組織である「採用問題アドバイザリー会議」では、「2005年度・新規学卒者の採用選考に関する企業の倫理憲章」（2004年10月）を発表した。またその順守徹底を図る観点から、「倫理憲章の趣旨実現をめざす共同宣言」（2004年11月）を発表した。

（３）人事労務管理委員会

（安西　邦夫　委員長）

１．雇用均等政策への対応

厚生労働省労働政策審議会雇用均等分科会において審議された、仕事と家庭の両立支援対策および男女雇用機会均等対策について、委員会と労務管理問題検討部会（部会長：坂田甲一凸版印刷人事労政本部労政部長）において日本経団連の対応を検討し、審議会にその意見を反映させた。

２．ダイバーシティ・マネジメントの研究

ダイバーシティ・ワーク・ルール研究会において、ダイバーシティ意識に関するアンケートを作成し、研究会メンバー企業の従業員に実施。その結果も踏まえながら、ダイバーシティ・マネジメントの研究に取り組んだ。

３．安全衛生・労災保険法令改正問題への対応

労働安全衛生部会（部会長：久保國興ＪＦＥスチール専務執行役員）とその下部組織である産業保健問題小委員会、じん肺問題小委員会、労働安全衛生管理システム小委員会において、労働安全衛生法改正問題（製造業などで頻発した労働災害の防止措置の充実、過重労働・メンタルヘルス対策の充実など）、および労災保険法令改正問題（単身赴任者・複数就業者の通勤災害保護制度の拡充、労災保険料率の設定のあり方）について検討を行い、各業種団体・企業などの意見を踏まえて、労働政策審議会の使用者側委員と連携しながら対応した。

（４）労使関係委員会

（加藤　丈夫　共同委員長）
（5月27日～　鈴木　正一郎　共同委員長）
（～5月27日　普勝　清治　共同委員長）

１．労使協議制のあり方について検討

「多様化する経営環境や労使間の課題に対応するための労使協議制のあり方」について検討を行うため、政策部会（部会長：渡辺健二日本通運常務理事）を設置し、具体的な検討を行っている。
政策部会では、企業事例を聴取するとともに、会員企業へのアンケート調査を行った。これらを踏まえて組織活性化のための労使協議のあり方について報告書をとりまとめるべく検討している。

２．労働組合動向などの実態把握

労働組合の動向を把握し、健全な労使関係の維持・発展に資するために、日本労働組合総連合会事務局長の草野忠義氏から「2005年度連合の重点課題」について、全日本金属産業労働組合協議会議長の古賀伸明氏から「金属労協の『2005年闘争の推進』」について、話を聞くとともに、意見交換を行い、労組動向の実態把握に努めた。

３.中央最低賃金審議会への対応

政府・中央最低賃金審議会における、「2004年度地域別最低賃金改定の目安審議の状況」について、同審議会委員の杉山幸一三菱重工業特別顧問から報告を受け、使用者側の対応について、これを了承した。

（５）労働法規委員会

（藤田　弘道　委員長）

１．労働審判制度への取組み

労働審判法の成立を受け、司法制度労働検討部会(部会長：小島浩日本アイ・ビー・エム顧問)で労働審判員の推薦基準や研修のあり方など、制度施行に向けた検討を行った。

２．労働契約法制への取組み

厚生労働省の研究会での検討開始に対応し、経営法曹会議会議の弁護士からなる「労働契約法制研究プロジェクト」に本問題の検討を依頼し、報告を得た。
この報告を踏まえ、委員会下部の部会である労働法専門部会(司法制度労働検討部会を改編)においてさらに検討し、労使団体へのヒアリングにおいて、「労働契約法制は規制緩和・労使自治を尊重すべき」などの経営側意見を表明した。

３．労基法改正に備えての取組み

委員会下部に労働法企画部会を設置し、イグゼンプション制度など労働時間法制のあり方について検討を開始、学者へのヒアリング、企業へのアンケートを終え、現在、報告書の最終的とりまとめを進めている。

４．時短促進法改正への取組み

時短促進法や同法に関連する労働時間対策について検討し、「年間総実労働時間1800時間を法律の目標値とすることは不要」との経営側意見を政府審議会で表明し、改正法案に反映した。

（６）中小企業委員会

（5月27日～　指田　禎一　委員長）
（～5月27日　草刈　隆郎　委員長）

１．中小企業の人材問題などに関する検討

2004年度は「中小企業の経営革新に向けた人材確保と地域との関係における課題」を主要テーマに、特に中小企業における人材確保や人材育成、雇用面におけるミスマッチなど、人材面における諸問題への検討を行った。具体的には、中堅・中小企業５社、ならびに中小企業に対する人材支援活動を行っている経営者協会から事例の聴取を行い、中小企業における人材面での課題について探った。本テーマは、来年度も引き続き検討を行う予定である。
また前年度から検討を行ってきた中小企業金融についても論点整理を行った。

２．中小企業関連施策に関する意見交換

中小企業庁松井英生次長を招き、「平成16年度中小企業施策の概要と中小企業白書のポイント」について説明を聞くとともに意見交換を行った（５月）。また、中小企業庁の山本雅史企画課長を招き、「中小企業政策の現状と課題」について、特に平成17年度中小企業対策関連予算の重点ポイントについて説明を聞くとともに、意見交換を行った（2005年２月）。

（７）国民生活委員会

（大塚　陸毅　委員長）

少子化などの進行に伴う労働力減少時代の到来を踏まえ、若年労働力の活用策とそのための環境整備などについて引き続き検討を行った。特に入社から10年ぐらいまでの層を念頭においた人材育成のあり方などについて検討した。
また、安全・安心な社会づくりは国民生活の不安要素の解消、社会・経済活動の基本であるとの観点から、2004年7月、国民生活委員会企画部会の下部組織として、安全な社会のあり方ワーキンググループを設置し、治安・防犯対策に対する経済界の自主的な関わり方を中心に検討を重ねた。

（８）国際労働委員会

（立石　信雄　委員長）

１．国際労働機関（ＩＬＯ）への対応

(1)　ＩＬＯ総会への対応

６月１日～17日まで、スイスのジュネーブにおいて第92回ＩＬＯ総会が開催され、奥田会長を代表とする日本使用者代表団７名を派遣した。
同総会では、新しい時代に目指すべき教育訓練の姿を描いた勧告が採択されたほか、時代遅れとなっている16の勧告の撤回が了承された。また、漁業分野における国際労働基準を時代に適合したものに改正する第一次討議、グローバル化の下で増加する移民労働者保護のための行動計画に関する討議が行われた。
奥田会長は代表演説で、雇用の創出やディーセント・ワーク（働きがいのある人間的な仕事）実現の源泉として、企業の成長が重要であると指摘するとともに、ＩＬＯとしても、そのような役割を担う企業をサポートしていくという新しい発想が必要であることを強調した。
当委員会では、事前に各種議題に臨む使用者側の見解について審議を行うとともに（５月）、参加した使用者側代表から報告を聴取した（７月）。

(2)　その他のＩＬＯ会合への対応

12月に東京でＩＬＯ、厚生労働省、国連大学共催の「グローバル化と若者の未来に関するアジア・シンポジウム」が開催された。日本経団連から、西室泰三副会長、加藤丈夫労使関係委員会共同委員長が参加した。
この他、産業別、テーマ別に開催される各種の専門家会議やアジア地域の会議・セミナーなど３件に日本使用者側代表を派遣した。

２．日本人海外派遣社員の人事管理に関する報告書発行

2004年11月に「日本人社員の海外派遣をめぐる戦略的アプローチ－海外派遣成功サイクルの構築に向けて」を発表した。本報告書では、海外派遣を一過性のものとせず、企業のグローバル化進展のため、より積極的・戦略的に活用することを目指し、人選から帰任後に至るまでの体系的な人事管理が必要であることなどの提言を行った。

３．中国における人材マネジメントについての検討

日本企業の進出著しい中国におけるローカルスタッフの採用や処遇の問題などについて、12月から政策部会（部会長：立石信雄オムロン相談役）において検討を行っている。

７．国際関係

（１）経済連携の推進

東アジア諸国をはじめ、わが国にとって重要な国・地域との経済連携を強化するために、12月に、自民党ＦＴＡ・ＥＰＡに関する特命委員会の谷津義男委員長、大村秀章事務局次長と宮原副会長以下関係委員長・部会長等が、我が国の経済連携協定（ＥＰＡ）の推進戦略とそれに伴う国内の構造改革の必要性について意見交換を行った。
また、自民党ＦＴＡ・ＥＰＡに関する特命委員会（５月）、民主党経済外交プロジェクトチーム（2005年３月）、公明党ＦＴＡ推進プロジェクトチーム（４月、11月）において、それぞれ経済連携の推進に関する経済界の基本的考え方について説明を行うとともに、意見交換を行った。

（２）貿易投資委員会

（5月27日～　秋草　直之　共同委員長）
（5月27日～　佐々木　幹夫　共同委員長）
（～5月27日　槙原　稔　委員長）

１．ＷＴＯ新ラウンド交渉の推進

(1)　ミッションの派遣

團野廣一総合政策部会長（三菱総合研究所顧問、当時）を団長とするミッションをジュネーブ、ブラッセル、ワシントンＤＣに派遣（６月）し、「ＷＴＯミッションポジション・ペーパー」（2004年５月）に基づくわが国経済界の要望事項について、ＷＴＯ事務局幹部、各国政府関係者および経済団体などと意見交換を行うとともに、その実現を訴えた。

(2)　企画部会を中心とした働きかけ

企画部会（2004年７月に総合政策部会より名称変更、部会長：桑田芳郎日立製作所取締役）を中心に、以下の項目について交渉の推進を働きかけた。

サービス貿易：定期的にＷＴＯサービス貿易自由化交渉に関する懇談会（座長：長谷川公敏第一生命経済研究所専務取締役）を開催し、政府関係者と意見交換を行った。
貿易円滑化：貿易円滑化に関する専門部会（座長：松村滋弥伊藤忠ビジネス戦略研究所長）を中心に、提言「ＷＴＯ貿易円滑化ルールの早期策定を求める」（2004年４月）を取りまとめ、貿易円滑化ルール策定に向けた交渉の早期立ち上げを訴えた。
その他：貿易と投資、農業貿易、非農産品市場アクセス、アンチダンピング協定、電子商取引などについて、定期的に、政府関係者より交渉の進展状況について説明を聞いた他、有識者との懇談会を開催した。

２．通商分野の規制改革

わが国企業による円滑な通商活動を確保し、国際競争力の強化を図る目的で、政府に対する規制改革要望の一環として、企業内転勤の条件緩和、安全保障輸出管理制度の規制緩和などの実現を働きかけた。

３．社会保障協定の締結推進

フランス、ベルギーなどとの社会保障協定の早期発効を政府に働きかけた。

（３）国際協力委員会

（西岡　喬　委員長）
（辻　亨　共同委員長）

１．ＯＤＡ中期政策改定に関する取り組み

2004年８月の「政府開発援助大綱（ＯＤＡ大綱）」の改定を受け、その下部文書の「政府開発援助に関する中期政策（ＯＤＡ中期政策）」も改定されることとなった。そこで政策部会（部会長：米山正博小松製所取締役常務執行役員）では、12月にパブリックコメントに付されたＯＤＡ中期政策の政府原案に対し、2005年１月に「『政府開発援助に関する中期政策（案）』に対するコメント」をとりまとめた。同コメントの趣旨は、概ねＯＤＡ中期政策に反映された。

２．ＩＴ分野へのＯＤＡの活用に関する取り組み

高度情報通信ネットワーク社会推進本部（ＩＴ戦略本部）では、６月の会合において、夏頃を目処にアジアを念頭に置いた「ＩＴ国際政策」を策定することとし、ＯＤＡの活用についても議論することとしたことから、国際協力委員会でも、「ＩＴ分野におけるＯＤＡの活用に関する提言」(2004年８月)をとりまとめ、迅速性に欠けるＯＤＡをＩＴ分野で活用するための各種制度・運用の改善に関わる提案を行った。同提言の主要内容は、９月にＩＴ戦略本部で決定された「ＩＴ国際政策」に盛り込まれた。

３．東アジア・インフラスタディへの協力

世界銀行、アジア開発銀行、国際協力銀行の三機関が2003年９月より開始した東アジアのインフラに関する共同スタディに関し、中間整理、最終報告書案等の節目において日本経団連としての意見を伝えた。

４．世界銀行との関係強化

対世銀タスクフォースでは、６月に世界銀行本部（ワシントンＤＣ）で開催されたスタッフ・エクスチェンジ・プログラム総会に参加し、日本企業の活動に関するプレゼンテーションを行うとともに、世銀関係者と意見交換を行った。

（４）ＯＥＣＤ諮問委員会

（鈴木　邦雄　委員長）

ＯＥＣＤ（経済協力開発機構）は、先進30カ国が参加する国際機関として、1960年の設立以来、マクロ経済政策、貿易・投資、環境、科学技術、規制改革、情報通信、コーポレート・ガバナンスなどの分野を中心に研究・分析を行い、加盟国に対し政策提言を行っている。
ＢＩＡＣ（The Business and Industry Advisory Committee to the OECD）は、ＯＥＣＤ加盟国を代表する経済団体で構成される公式の諮問機関として、ＯＥＣＤの活動に産業界の意見を反映させるべく、18の専門委員会（(1)経済政策、(2)貿易、(3)国際投資・多国籍企業委員会、(4)非加盟国、(5)海運、(6)バイオテクノロジー、(7)環境、(8)エネルギー、(9)産業技術、(10)科学物質、(11)原料、(12)ガバナンス、(13)税制・財政、(14)競争、(15)情報・コンピュータ・通信政策、(16)教育政策、(17)雇用・労働・社会問題、(18)農業問題）において、専門的な検討を重ね、ＯＥＣＤへの提言、働きかけを行っている。
わが国経済界は、ＯＥＣＤ諮問委員会を通じて上記のＢＩＡＣ活動に参画している。

１．ＢＩＡＣ総会・企画会議への参加

５月のＢＩＡＣ総会（於：パリ）、12月のＢＩＡＣ企画会議（於：パリ）に事務局が参加し、ＢＩＡＣの活動について日本経済界の立場から意見を述べた。

２．ＢＩＡＣ本部会合への日本代表委員の派遣

日本企業の代表を、ＢＩＡＣの各専門委員会やＯＥＣＤの開催する会合に派遣した（経済政策、貿易、産業技術、情報通信、税制、海運、バイオテクノロジー、化学物質などの分野を中心に、49会合にのべ13名が出席）。
こうした活動に関する情報を、機関誌「ＢＩＡＣ　ＮＥＷＳ」に随時掲載するとともに、12月には「ＢＩＡＣ産業技術委員会報告会」を開催し、関係企業に広く紹介した。

３．総会などの会合開催

７月に2004年度（第30回）総会を開催し、外務省の佐々江経済局長および加藤元彦経済局国際機関第二課長より、ＯＥＣＤ閣僚理事会の模様ならびにシー・アイランド・サミットの成果などについて説明を聞き、意見交換を行った。
また、７月と2005年３月にドナルド・ジョンストンＯＥＣＤ事務総長と鈴木邦雄委員長はじめＯＥＣＤ諮問委員会幹部が意見交換を行った。

４．広報活動

機関誌「ＢＩＡＣ　ＮＥＷＳ」を発行し（３回）、ＢＩＡＣやＯＥＣＤの活動を紹介したほか、「ＢＩＡＣの組織と活動」を改定し、発行した（７月）。

以上

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2004年度事業報告 III．委員会等の活動