[ 日本経団連 > 日本経団連の概要 > 業務・財務等に関する資料 > 2005年度事業報告 ]

2005年度事業報告
III.委員会等の活動


1.政策全般

(1)総合政策委員会

(奥田 碩 委員長)

日本経団連の活動の指針となる総会決議「新しい成長の基盤を創る」を取りまとめた(4月の総合政策委員会において審議を行い、5月26日の定時総会において採択)。
同決議では、構造改革の進展により、民主導による持続的な安定成長の基盤が整いつつあるという認識を示した。そのうえで引き続き構造改革に取り組み、海外の経済・産業や為替、原油・天然資源の動向といった情勢変化に対応できる経済の骨組みをつくりあげることが重要であると訴えた。
会員企業に対しては、「企業行動憲章」を踏まえ、経営トップのリーダーシップのもとに風通しの良い組織づくりを進め、企業倫理の確立に努めると同時に、社会的責任への取り組みを積極的に進めることを求めた。
さらに、政策本位の政治に向け、政治と透明な関係を築きつつ、政策評価に基づく政治寄付を企業の社会貢献の一環として促進する旨を確認した。以下は、同決議において取り上げた重要課題である。

1.企業の力を引き出す
(1) 法人税制、企業関連法制の見直し
(2) 税財政、社会保障制度の一体的改革
(3) 行政改革の推進
2.国を支える産業をつくる
(1) 研究開発の充実と新産業の創出
(2) 国際連携の強化
(3) 環境・エネルギー政策の推進
(4) 観光戦略の展開
(5) 住環境の整備
3.人を活かす社会をつくる
(1) 若年者の就労促進など多様な労働力の活用
(2) 教育改革の断行
(3) 少子化対策の推進
(4) 外国人の受け入れ・活用

以上に加え、国の基本的枠組みを再構築し、国際社会から信頼・尊敬され、経済社会の繁栄と精神の豊かさを実現する、公正・公平で安心・安全な国家を目指し、新しい日本を創りあげていくことを訴えた。

(2)国の基本問題検討委員会

(三木繁光 委員長)

1.憲法改正に関する論議への対応

2005年1月にとりまとめた報告書「わが国の基本問題を考える 〜これからの日本を展望して〜」を踏まえ、自由民主党、民主党などの憲法改正に向けた議論の動向の把握、必要に応じた働きかけを行った。特に、自民党の新憲法制定推進本部の下に設けられた諮問会議に三木繁光委員長が委員として参加し、憲法改正草案の策定にあたって、産業界の意見反映に努めた。
11月には、自民党新憲法草案について、事務局長としてとりまとめた舛添要一参議院議員から説明を聞くと共に、今後の憲法改正に向けた取り組みについて意見交換を行った。
さらに、衆議院、参議院の憲法調査会、日本国憲法に関する調査特別委員会などにおける憲法改正のための国民投票法案の検討状況等について、地方経済団体との懇談会等の機会を通じて説明した。

2.外交・安全保障問題に関する検討

わが国の安全保障に関して、日米間で協議が進められている米軍のトランスフォーメーション(再編)問題について、12月に防衛庁の真部朗防衛政策課長から説明を受けると共に、将来の日米同盟のあり方を含め、意見交換を行った。

2.経済・法制関係

(1)経済政策委員会

(5月26日〜 井口武雄 委員長)
(〜5月26日 千速 晃 委員長)
(〜5月26日 井口武雄 共同委員長)

当委員会では、経営戦略のあり方に関する検討、経済情勢の把握、官庁統計における報告者負担の軽減などを中心に、以下の活動を行った。

1.企業価値の最大化に向けた経営戦略の検討

幅広い業種・企業に共通する、企業価値の最大化に向けた経営戦略のあり方を検討した。具体的な検討は、企画部会(部会長:築舘勝利東京電力副社長)を中心に行い、9月以降、いわゆる日本的経営に対する評価や課題、最近のM&Aの状況などについて、有識者より説明を聞いた。また、日本経団連会員企業を対象に「中長期を視野に入れた経営戦略に関するアンケート調査」を実施した。これらの成果を踏まえて、報告書「企業価値の最大化に向けた経営戦略」(2006年3月22日)を公表した。

2.経済情勢などの把握、意見交換

8月に日本銀行の岩田一政副総裁を招いて委員会を開催し、日本経済と金融政策運営について説明を聞くとともに、意見交換を行った。また2006年2月には、内閣府の広瀬哲樹審議官より日本経済の現状と展望について説明を聞いた。
この他、経済情勢専門部会を月1回開催し、内閣府および日本銀行からマクロ経済全般にわたって説明を聞くとともに、意見交換した。また、その時々のトピックについて、会員企業および各界有識者から広く説明を聞いた。

3.経済統計の改善に向けた検討、官庁統計における報告者負担の軽減

(1) 統計調査、統計行政についての意見交換

7月に統計部会(部会長:佐々木常夫東レ経営研究所社長)を開催し、総務省より、2009年より調査実施予定の経済センサス(仮称)について説明を聞くとともに、意見交換した。また2006年2月には、信州大学経済学部の舟岡史雄教授より、統計制度改革の方向性について説明を聞いた。

(2) 統計審議会における対応(指定統計)

政府の統計審議会(総務大臣の諮問機関)に、佐々木常夫統計部会長(2006年2月までは飯島胤・前統計部会長)が委員として参画し、経済界の視点から、適宜意見を表明した。

(3) 総務省意見照会への回答(承認統計)

統計報告調整法に基づき官庁が実施する承認統計のうち、企業・事業所を対象とした調査について、総務省から意見照会を受け、報告者・利用者の観点から個別に審査し、回答を行っている(レポート・コントロール制度)。2005年度は、総務省より約60件の意見照会を受け、関係企業・団体の意見を踏まえて、調査の統合、改善などについて回答を行い、改善を行った。

(2)税制委員会

(森下洋一 委員長)
(丹羽宇一郎 共同委員長)

2005年度においては、経済活力の維持、向上を重視した税制改革の実現に取り組んだ。

1.平成18年度税制改正に際しての取り組み

政府・与党における税制改正の検討作業への意見反映を図るべく、「平成18年度税制改正に関する提言」(2005年9月20日)を公表し、政府・与党への働きかけを強力に行った。
経済界としての主要テーマは、(1)IT投資促進税制及びR&D税制の上乗せ措置の取扱い、(2)会社法制定に伴う法人税制の整備、(3)住宅税制の拡充、(4)環境税等であった。
同提言では、まず、企業の競争力向上に重点を置いた税制改正の必要性を強調し、具体的には、R&D・IT投資促進税制の拡充、償却可能限度額の100%化など減価償却制度の改革、不動産流通課税の特例措置の延長などを提言した。特に、償却資産をめぐる税制については、償却資産税制ワーキング・グループ(座長:前川俊夫日本電信電話第四部門担当部長)を設置し、理論面、実務面からの検討を深めた。
12月の与党税制改正大綱では、研究開発費の増加分に対する税額控除の上乗せが設けられ、新たに「戦略システム・セキュリティ投資促進税制」の創設などが盛り込まれた。減価償却制度については、「税制抜本改革と合わせ総合的に見直しを検討する」とされ、同制度の見直しの端緒が開かれた。また、不動産流通課税の特例については、土地に関するものを中心に維持された。
次に、会社法制定に伴う税制上の取扱いの整備としては、剰余金の配当や各種種類株式の取扱いの規定の整備、役員賞与の損金算入、ストック・オプション費用の損金算入、株式交換・株式移転税制の本則化など、同提言の大半が採り入れられた。
住宅税制の拡充については、住宅政策委員会と連携し、働きかけを行った結果、地方税も含めた耐震改修促進税制が創設されるに至った。
環境税をめぐっても、環境安全委員会と連携し、改めて反対の姿勢を示し、働きかけを行った結果、平成18年度改正での導入は見送られた。

2.歳出入一体改革のあり方の検討

2005年秋より、政府、与党において、歳出・歳入一体改革に関する検討が開始され、2006年6月頃を目途に改革の選択肢と工程表が示される見込みであることから、税制委員会企画部会(部会長:金田新トヨタ自動車専務取締役)において、11月から経済界としての考え方についての検討を開始し、2006年4月頃に提言を取りまとめる予定である。

(3)財政制度委員会

(櫻井孝頴 委員長)

財政制度委員会では、国・地方財政の持続可能性確保に向けて、以下の活動を実施した。

1.歳出・歳入一体改革をめぐる意見交換

2006年1月に、谷垣禎一財務大臣ほか財務省幹部と、奥田会長をはじめとする日本経団連幹部との意見交換会を開催し、歳出・歳入一体改革のあり方などについて意見交換した。
また2006年3月には、自民党の柳沢伯夫税制調査会長を招いて委員会を開催し、一体改革に向けた税制調査会の取組方針や、柳沢伯夫会長が座長となって取りまとめた財政改革研究会報告などについて説明を聞いた。

2.財政政策による経済成長促進策の検討

提言「財政の持続可能性確保に関する提言」 <PDF>(2004年12月)をフォローアップする観点から、企画部会(部会長:大内俊昭みずほ総合研究所社長)において、財政政策による経済成長促進策に焦点をあてた検討を行った。具体的には、女性・高齢者の労働力化の促進や、出生率の引き上げ、研究開発の促進などにおいて財政が果たすべき役割や有効性をめぐり、関係府省や有識者との意見交換を行った。

3.財政制度等審議会への参画

財政制度等審議会(財務大臣の諮問機関)に、日本経団連からの委員が多数参画し、「平成18年度予算編成の基本的考え方について」(6月)ならびに「平成18年度予算の編成等に関する建議」(11月)などの取りまとめにあたり、経済界の立場から意見表明を行った。

(4)社会保障委員会

(西室泰三 委員長)
(〜5月26日 福澤 武 共同委員長)

1.社会保障制度などの一体的改革への取り組み

2004年9月の意見書「社会保障制度等の一体的改革に向けて」に引き続き、医療・年金改革に関して提言を取りまとめ、経済財政諮問会議や社会保障の在り方に関する懇談会などで、意見反映を図った。また、社会保険庁改革に関しても、税・社会保険料負担者の立場で政府の検討の場に参画した。

2.年金制度改革への取り組み

年金改革部会(部会長:岡本康男住友化学顧問・大日本住友製薬会長)では、「公的年金の一元化に関する基本的見解」(2005年10月18日)を取りまとめた。
これに基づき、与党からの被用者年金一元化に関するヒアリング要請に応ずるなど、政府・与党に働きかけた。また、企業年金制度の問題点について同部会の下に企業年金制度検討ワーキンググループ(座長:徳住祥蔵新日本製鐵顧問)で検討を続けている。

3.医療制度改革への取り組み

医療改革部会(部会長:齊藤正憲三菱電機取締役上席常務執行役)では、医療費の適正化、高齢者医療制度の創設などについて検討し、「医療制度のあり方について」(2005年5月17日)、「国民が納得して支える医療制度の実現」(2005年10月14日)をそれぞれ取りまとめ公表した。本意見書に基づき、政府審議会などの審議に臨む一方で、与党のヒアリングでは意見陳述を行うなど、医療制度改革関連法案に意見を反映させた。また、2006年2月に「医療制度改革関連法案の審議にあたっての共同確認」を連合と健保連とで交わし、政府・与党に提出した。
診療報酬の今次改定では、2006年1月に「2006年度診療報酬改定に対する日本経団連の意見」を取りまとめて提出し、意見反映を図った。

4.介護制度、社会福祉制度改革への取り組み

改正法の成立に伴う関係政省令などを注視するとともに、介護報酬の今次改定に向けて、効率化・適正化の観点から、医療改革部会などで検討し、意見反映を行った。また、介護型療養病床を2011年度末までに廃止する旨の「療養病床再編について緊急要請」を取りまとめ、2006年2月に提出した。

(5)金融制度委員会

(勝俣恒久 委員長)
(〜12月31日 西川善文 共同委員長)

1.金融制度委員会の開催

金融制度委員会を開催し、金融庁総務企画局の三國谷勝範局長から、金融商品取引法(仮称)の概要等について説明を受けるとともに意見交換を行った(2006年3月)。

2.金融市場の環境整備に関する検討

金融制度委員会企画部会(部会長:山崎敏邦JFEホールディングス副社長)において、金融庁総務企画局の細溝清史企画課長より、金融市場をめぐる課題について説明を受けるとともに意見交換を行った(5月)。
政府における信託業法の改正作業に対応し、企画部会において、金融庁総務企画局市場課の保井俊之信託法令準備室長より、信託業法見直しの方向性等につき説明を受けるとともに意見交換を行った。
併せて、金融市場や金融政策に関する認識を深めるため、金融政策当局と産業界メンバーとの意見交換を行った(10月、2006年1月)。

3.資本市場をめぐる課題への取り組み

株券電子化制度に関し、発行会社のコスト削減、利便性向上や株主状況の迅速な把握等の観点から、アンケートや説明会の実施等を通じ、関係省庁や各界関係者による関連政省令案の検討や実務設計への協力を行った。また、ライブドア事件を契機に問題点が露呈された資本市場のあり方について、経済界としての考え方を整理するため、資本市場部会(部会長:島崎憲明住友商事副社長)において、専門家の意見聴取を開始した。

4.金融・保険・証券分野の規制改革要望とりまとめ

会員企業を対象としたアンケートに寄せられた意見をもとに、6月に日本経団連としての規制改革要望を取りまとめるとともに、8月および12月に再意見を提出するなど、その実現を働きかけた。

(6)経済法規委員会

(御手洗冨士夫 委員長)
(萩原敏孝 共同委員長)

企業が経営環境の変化に機動的かつ柔軟に対応できるよう、2005年度も事業活動の制度的インフラである経済法制の見直しを求めた。

1.会社法制の現代化への取り組み

企画部会(部会長:西川元啓新日本製鐵常任顧問(〜6月)、八丁地隆日立製作所執行役専務(6月〜))では、株主代表訴訟の却下制度の創設や、委員会等設置会社と監査役設置会社との整合性の確保など、経済界の要望が盛り込まれた会社法の早期成立・施行を与野党に働きかけた。その結果、会社法は2005年6月29日に成立した(2006年5月に施行)。
また、会社法の法務省令に関しては、11月に公表された省令案につき、説明会を開催し、コメントを提出するとともに、経済界の意見が反映されるよう法務省との意見交換を行なった。その結果、2006年2月に公布された法務省令では、社外役員の開示の縮減やウェブ開示等が実現した。

2.企業価値を毀損する買収に対する合理的な防衛策の整備

会社法制の現代化に伴い、企業買収ルールへの関心が高まったことを踏まえ、会社法上の措置のみならず証券取引法上の課題等も併せた総合的なルール整備を進めるため、4月にM&Aに関する懇談会(座長:島崎憲明住友商事副社長)を設置し、企業買収に係わる諸問題について、総合的に検討を進めた。
この検討を踏まえ、経済産業省の企業価値研究会に参画し、経済界の意見の反映に努めた。その結果、5月に公表された経済産業省と法務省の買収防衛指針により、企業価値基準に基づく買収防衛策が明確化された。また、自民党企業統治に関する委員会に出席し、意見陳述を行なうとともに、金融審議会公開買付制度等ワーキング・グループに参画した結果、2006年3月には、公開買付の対象者への買付期間の伸長権の付与、株券大量保有報告特例期間の短縮等を内容とする証券取引法改正法案(金融商品取引法案)が、通常国会に提出された。さらに、東証が11月に公表した「買収防衛策の導入に係る上場制度の整備等について(要綱試案)」へのコメントを提出して、経済界の意見の実現に努めた。

3.コーポレート・ガバナンス

コーポレート・ガバナンス部会(部会長:立石忠雄オムロン副社長)では、我が国におけるコーポレート・ガバナンスのあり方に関する提言の取りまとめに向けて、有識者からの事情説明を受ける(4月:伊藤秀史一橋大学大学院商学研究科教授、5月:加護野忠男神戸大学大学院経営学研究科教授、10月:中川秀宣TMI法律事務所弁護士、11月:吉森賢放送大学教授、11月:神田秀樹東京大学大学院法学政治学研究科教授、2006年1月:大楠泰治クレディスイスファーストボストン証券法人本部長、2006年1月:淡輪敬三ワトソン・ワイアット社長、2006年2月:太田洋西村ときわ法律事務所弁護士、2006年3月:伊藤壽英中央大学法科大学院教授、2006年3月:上村達男早稲田大学法学部教授)とともに、経済法規委員会を対象に、各社の取組み状況等について、アンケートを実施した。

4.消費者問題への対応

消費者法部会(部会長:渡邉光一郎第一生命常務執行役員)では、2006年4月から施行予定の「『公益通報者保護法に関するガイドライン案』に対するコメント」(2005年7月6日)を取りまとめ、内閣府に対し同法の適正な運用と周知を働きかけた。
2006年通常国会への法案提出を目指す「消費者団体訴訟制度の導入」について、国民生活審議会における審議・報告書の取りまとめや、消費者法部会における内閣府との意見交換等を実施するとともに、「『消費者契約法の一部を改正する法律案(仮称)の骨子について』に対するコメント」(2006年1月23日)を取りまとめ、制度の濫用・悪用等を徹底排除し、国民の信頼に足る制度設計を求め、政府・与党等関係方面に働きかけを行った。

5.司法制度改革

司法制度改革の一環である日本法令の外国語訳については、「日本法令の外国語訳化の推進を求める提言」(2004年6月)の実現に向けて、内閣の下に設置された法令外国語訳・実施推進検討会議における審議等を通じて、引き続き経済界の意見の反映に努めた。

6.独占禁止法・競争政策

競争法部会(部会長:諸石光煕住友化学特別顧問(〜6月)、小林利治東芝常務執行役員(6月〜))において、「『独占禁止法改正の施行に伴い整備する公正取引委員会規則の原案』に対する日本経団連コメント」(2005年8月3日)を取りまとめ、特に審査・審判手続きの見直しについて、適正手続きの確保の観点から、経済界の意見の反映に努めた。課徴金制度のあり方、審査・審判手続のあり方等の抜本改正の必要性について、改正独占禁止法の附則を受けて内閣府に設置された独占禁止法基本問題懇談会をはじめ、政府・与党関係各方面に対して、引き続き働きかけを行った。官製談合問題への対応については、発注者側が違反行為をそそのかした場合、直接の刑事処分の対象とする「そそのかし罪」の創設をはじめ、経済界の意見の反映に努め、2006年2月に、議員立法による入札談合等関与行為の排除及び防止に関する法律の改正法案が国会に提出されるに至った。併せて、官製談合の根絶のためには、罰則の強化だけでなく、公共調達制度や予算制度のあり方など制度全体について抜本的な見直しの必要があることについても指摘した。

7.会計制度

財務報告に係る内部統制の評価及び監査の基準に対しては、経済法規委員会よりコメントを提出し、日本企業の実態を踏まえた、効率的かつ有効な基準の整備を求め、その実現に努めた。企業開示の諸課題については、四半期開示の制度整備に伴い、半期報告書の四半期への統合を実現するとともに、東京証券取引所における決算短信の簡素化に向けた見直しが行われることとなった。
日本の会計基準の国際的な同等性を認めるよう、金融庁ら関係者と協力し、欧州委員会並びに欧州証券規制当局委員会(CESR)に対して、積極的な働きかけを行った。
また、企業会計基準委員会に対しては、各専門委員会に産業界委員が積極的に参画し、活発な議論を行うとともに、公開草案へのコメントを提出するなど、経済界の意見の反映に努めた。

3.行革・産業・国土関係

(1)行政改革推進委員会

(出井伸之 委員長)
(大久保尚武 共同委員長)

1.規制改革の推進に関する取組み

民主導による持続的な経済成長を目指し、企業の実需に根ざした規制改革要望の取りまとめを中心として、規制改革の推進に取り組んだ。
具体的には、全会員企業・団体を対象とする調査に基づく15分野247項目にわたる個別要望の実現や、市場化テストの早期本格導入、規制改革・民間開放集中受付月間の改善などを求める「2005年度日本経団連規制改革要望」(2005年6月21日)を取りまとめ、村上誠一郎規制改革担当大臣(当時)や規制改革・民間開放推進会議に建議した。さらに、政府の対応方針を踏まえ、11月に再要望を中心とした要望(13分野96項目)を取りまとめ、中馬弘毅規制改革担当大臣に建議した。
その結果、「規制改革・民間開放推進3か年計画(再改定)」(2006年3月31日閣議決定)に当会要望が多数盛り込まれた。また、市場化テストに関して、全会員を対象に、内閣府市場化テスト推進室幹部を招いた「公共サービス改革法案」に関する説明会を2006年3月に開催するなど、法案の内容の周知徹底を図った。

2.行政改革の推進に関する取組み

国家の競争力を強化するため、抜本的な行政改革に関する提言を取りまとめ、政府・与党に建議して実現を働きかけた。
官民の労働条件の同一化や縦割り行政の弊害排除を実現する観点から、国家公務員制度の抜本的改革を求めた「さらなる行政改革の推進に向けて」 <PDF>(2005年4月19日)を取りまとめ、身分保障の在り方の見直しや、内閣の下での一元的な再就職管理の実現など、7つの具体的な施策を提案した。
また、政府が「行政改革推進法案」の策定を開始したのに併せて、中馬弘毅行政改革担当大臣を招いた委員会をはじめ、行政改革懇談会を集中的に開催して検討を行った。わが国が国際化や、人口減少など大きな転換点を迎え、永久運動として行政改革を行う必要性があることに鑑み、「国家の競争力強化を目指した「攻めの行政改革」の実現を求める」(2006年2月14日)を取りまとめ、上記推進法案に盛り込まれた改革の実施状況を監視する有識者会議の設置や、行政改革に関する基本法の制定などを求めた。

(2)産業問題委員会

(5月26日〜 岡村 正 委員長)
(齋藤 宏 共同委員長)
(〜5月26日 岡村 正 共同委員長)

1.日本経済の将来を支える産業のあり方に関する検討

中長期的な経済社会の活力の維持・強化に向けたわが国の新たな成長基盤の確立、とりわけ経済社会の担い手である産業の国際競争力強化について検討を行い、自民党政務調査会国際競争力調査会(会長:与謝野馨政務調査会長(当時))が7月に取りまとめた「我が国の国際競争力強化に向けた提言」に反映させた。同提言は、9月の総選挙における自民党の選挙公約(マニュフェスト)に項目の多くが反映された。
また、わが国のコンテンツ産業発展のために、権利者の保護を図りつつ技術革新を進め、ソフト、ハード、キャリア等の業界が協力して新たなビジネスモデルを築くことを課題として「エンターテインメント・コンテンツ関係者連携に関する懇談会」(座長:岡村正委員長)を6回にわたり開催し、論点を整理した。

2.エンターテインメント・コンテンツ産業の振興

エンターテインメント・コンテンツ産業部会(部会長:依田巽ギャガ・コミュニケーションズ会長)では、「知的財産推進計画2005の策定に向けて」(2005年3月)で掲げた諸課題について政府に働きかけ、知的財産戦略本部の「知的財産推進計画2005」に反映させた。盛り込まれた施策の実現に向け、10回の部会会合を重ね、政府知的財産戦略推進事務局による「コンテンツビジネス改革のロードマップ2005」(12月)の民間部分の取りまとめ、コンテンツ・ポータルサイトの実現に向けた検討、映像産業振興機構の運営への協力、東京国際映画祭への協力(10月)、模倣品・海賊版対策等に取り組んだ。
また、産業技術委員会とともに、2006年1月20日に「知的財産基本法の施行状況等に関する意見」、「知的財産推進計画2006の策定に向けて」(2006年3月22日)の取りまとめを行い、関係方面にその実現を働きかけた。

3.食に係わる産業の振興

食に係わる業界の振興を図るべく2006年2月に食の産業部会(部会長:西野伊史アサヒビール常務取締役)を設立し、食の安全など各業界の抱える諸課題を探るとともに2006年3月には政府の食育推進基本計画について業界の意見を取りまとめ、内閣府に提出した。

4.外国人受け入れ問題への取り組み

「外国人受け入れ問題に関する提言」(2004年4月)をもとに、自民党外国人労働者等特別委員会、内閣府規制改革・民間開放推進会議等、総務省多文化共生研究会等において当会の考え方を説明し、外国人受け入れに関する施策の一元化など政府横断的な取り組み体制の整備等を要請した。

(3)新産業・新事業委員会

(5月26日〜 高原慶一朗 共同委員長)
(原 良也 共同委員長)
(〜5月26日 高原慶一朗 委員長)

1.米国ベンチャー事情の調査を踏まえた活動

昨年度の訪米調査の理解を深めるべく、ペンシルバニア大学のイアン・マクミラン教授を招き(6月)、米国のITバブル期以降のベンチャー事情を聴取した。
企画部会(部会長:鳴戸道郎富士通顧問)では、日本国内の地域クラスター政策との比較の観点から、仙台(11月17日、18日)および神戸(2006年1月24日、25日)地域のクラスター形成に向けた取り組みを自治体、大学、研究所、地元企業、ベンチャーキャピタルから伺い、その成果を報告書にまとめ発表した。

2.メンター制度に関する検討

訪米調査で得た知見をもとに、企画部会の下に2006年1月「メンター研究会(座長:鳴戸道郎企画部会長)」を設置した。起業家を全人的に支える先達であるメンターをわが国に普及・定着させるために必要な検討を進めている。

3.大企業とベンチャー企業、大学との連携についての検討

大企業とベンチャー企業の連携を推進する「起業フォーラム」を開催し(9月)、広野道子21LADY社長を招いて21世紀のライフスタイル産業像について考えを聞いたほか、運営委員会(委員長:堀井眞一日本ベンチャーキャピタル協会前会長)が選定した食にかかわるベンチャー企業と大企業との連携を仲介した。
企画部会では、文部科学省産学官連携広域コーディネーターの砂田向壱九州大学教授を招き(10月)、産学連携の課題等について意見交換を行った。

4.ヘルスケア産業の振興

21世紀の成長産業として期待されるヘルスケア産業の発展に向けて、9月「ヘルスケア産業部会」を新たに設置した(部会長:赤星慶一郎オムロンヘルスケア社長)。同部会はヘルスケア産業の振興を通じて国民一人ひとりの健康増進や国民医療費の抑制に貢献することを目指しており、国民医療費の4割を占める生活習慣病予防への民間活力活用を当面の課題としている。
毎月1回会合を開催し、政府、学識経験者、民間企業等関係者より事情説明を受け、2006年3月には医療制度改革関連法案への意見を取りまとめ、厚生労働省へ提出した。

(4)情報通信委員会

(5月26日〜 張 富士夫 委員長)
(石原邦夫 共同委員長)
(〜5月26日 吉野浩行 委員長)

1.IT新改革戦略への対応

e−Japan戦略に続く2006年以降のICT国家戦略に、産業界の意見を反映させるため、情報通信委員会の下に設置した「次期IT国家戦略検討プロジェクトチーム」を中心に検討を進め、提言「次期ICT国家戦略の策定に向けて」 <PDF>(2005年10月18日)を取りまとめた。本提言に基づく働き掛けの結果、2006年1月に政府が公表した「IT新改革戦略」において、成果目標型戦略、ITSの実用化、高度ICT人材育成をはじめ、日本経団連の要望内容がほぼ盛り込まれた。

2.高度情報通信人材の育成

提言「産学官連携による高度な情報通信人材の育成強化に向けて」(2005年6月21日)を取りまとめ、産学官連携による、世界レベルの高度なICTの実践教育を行う拠点大学・大学院の設立等を提案した。12月には、日本経団連、内閣官房、情報処理学会の主催により、「高度情報通信人材育成に関する産学官連携会議」を開催し、広く産学官関係者の参加の下、高度ICT人材の育成のあり方について意識共有を図った。さらに、2006年2月、情報通信委員会の下に「高度情報通信人材育成部会」(部会長:山下徹NTTデータ副社長)を新設し、大学との交渉等、2007年度からの拠点設立に向けた活動を開始した。

3.情報セキュリティ対策の推進

わが国の情報セキュリティ対策に関する検討の一環として、4月に米国に調査団を派遣し、取組みの現状を調査するとともに、ホワイトハウス、商務省、国土安全保障省、カーネギーメロン大学など産学官の関係者と意見交換を行なった。また、調査団報告に基づき働き掛けを行った結果、情報セキュリティ政策会議決定の「第一次情報セキュリティ基本計画」において、政府機関がわが国のセキュリティ対策の模範例を示す枠組み等が導入された。

4.インターネットガバナンスのあり方の検討

情報化社会の発展に関する諸課題を扱う「第二回世界情報社会サミット」(11月チュニスにて開催)に向け、日本政府および国際商業会議所などと連携して産業界の意見を取りまとめ、提言「インターネットガバナンスのあり方について」(2005年9月20日)を公表、サミットの会合においても意見表明を行なった。同サミットの合意文書においては、現行の民間主導体制を維持するなど、日本経団連をはじめとする主要国経済界の主張が盛り込まれた。

5.IP時代の通信・放送のあり方

IP化、通信と放送の融合の動きが進むなか、通信・放送政策部会(部会長:前田忠昭東京ガス取締役常務執行役員)において、IP化時代の情報通信ネットワークの姿、政策課題等について事情説明を行った。ユニバーサルサービスのあり方について、8月に、「ユニバーサル基金制度の在り方」答申(案)に関する意見を策定するとともに、9月には、日米英国際シンポジウム「電気通信分野のユニバーサルサービスの現状と新たな制度設計」を開催し、日米英の有識者を招き、各国の制度及び今後の制度設計のあり方について理解を深めた。また、海外の電気通信市場、政策の動向を把握するため、11月には、欧州に調査団を派遣し、欧州の電気通信市場の現状と政策課題についての調査報告を取りまとめるとともに、2006年2月に、BT(British Telecom)グループのサー・クリストファー・ブランド会長との懇談会を開催した。

(5)流通委員会

(平井克彦 委員長)

1.最適なSCM(サプライチェーンマネジメント)構築に向けた検討

産業界の競争力強化を考えるうえで喫緊の課題として流通システムの効率化・合理化を取り上げ、全体最適となるサプライチェーンの構築について検討した。2004年10月以降、企画部会(部会長:西山茂樹伊藤忠商事常務取締役)を開催し、流通委員会の委員企業を中心に幅広い業種から、SCM導入の背景や、システムの特徴、主な成果などを中心に、各社の取り組みについて説明を受けた(全12社)。その成果を踏まえ、流通委員会企画部会として7月に「(中間報告)最適なSCM構築を目指した各社の取組み」を取りまとめた。今年度は以下の企業・団体から取り組み事例などについて説明を受けた。

  1. ニチレイ・菱食(4月)
  2. 西友・ノーリツ(5月)
  3. 繊維産業流通構造改革推進協議会(6月)
  4. 日本NCR(7月)

2.まちづくり三法見直しへの対応

まちづくり三法に関し、政府・与党における見直しの動きに対応すべく、流通委員会と国土・都市政策委員会のもとに「中心市街地再生に関するワーキング・グループ」を設置した(11月)。
同ワーキング・グループでは、まちづくり三法見直しの産業界への影響と対応策を検討し、「「まちづくり三法の見直し」問題に関する考え方」として取りまとめた(12月)。
自民党まちづくり三法見直し検討ワーキングチーム(12月)、公明党まちづくり三法見直し検討プロジェクトチーム(12月)において、産業界の意見を陳述した。

(6)農政問題委員会

(佐藤安弘 共同委員長)
(大橋信夫 共同委員長)

1.農業団体との対話の推進

国内農業改革の推進と対外通商円滑化の観点から、2003年12月よりスタートした農業団体との首脳レベルの少人数・非公式な懇談会を定期的に開催(8月、2006年3月)。WTO交渉への対応や新たな食料・農業・農村基本計画への取り組み等について農業団体から説明を聴き、意見交換を行った。わが国農業の構造改革推進に産業界も協力して取り組んでいくことで認識の一致をみた。

2.新たな食料・農業・農村基本計画実現に向けた働きかけ

新たな食料・農業・農村基本計画に盛り込まれた農業構造改革の着実な実現を推進する立場から、5月に委員会を開催し、農林水産省の須賀田菊仁経営局長より新たな食料・農業・農村基本計画を踏まえた今後の農業経営のあり方につき説明を聴取し、意見交換を行った。また、11月の委員会では、農林水産省の今井敏大臣官房企画評価課長を招き、新たな基本計画において重要施策の一つに位置づけられている品目横断的な経営安定対策の詳細等を盛り込んだ「経営所得安定対策等大綱」につき説明を聴き、意見交換を行なった。
企画部会(部会長:松崎昭雄森永製菓相談役)では、東京大学の荏開津典生名誉教授を招き、わが国のコメ政策の変遷につき説明を聴取した(7月)。また、福島県新農政研究会顧問の武田邦太郎氏を招き、わが国農業の活性化方策につき意見交換を行なった(2006年3月)。
米倉弘昌副会長が農林水産省の食料・農業・農村政策審議会委員に就任し、産業界の意見反映に努めた。

(7)国土・都市政策委員会

(平島 治 共同委員長)
(岩沙弘道 共同委員長)

1.PFI法改正の成果を踏まえた活動

「PFIの推進に関する第三次提言」(2004年1月)の趣旨を反映する形でPFI法が改正されたことに伴い、以下の成果を踏まえた活動を行った。

(1) PFI推進部会の開催(5月)

与党が改正PFI法案を発表したのを受けて、その評価を行うとともに、ガイドラインの改訂等、積み残しの課題について検討した。

(2) 自民党PFI推進調査会における意見陳述(10月)

自民党PFI推進調査会(会長:木村義雄衆議院議員(当時))において、ガイドラインの改定をはじめとするPFI法改正に伴う積み残しの課題について、産業界の意見を陳述した。

2.国土交通省・各地域経済団体との対話の推進

国土形成計画策定の動きに対応して、各地方経済連合会幹部(会長、副会長が出席)、国土交通省幹部(事務次官、技監らが出席)との三者による懇談会を地域ごとに開催し、社会資本整備、広域観光振興などを中心に各地方の実情をふまえた計画の実現に向け政府に働きかけた。なお、日本経団連からは、西岡喬副会長、平島治副議長、千速晃顧問が出席した。

  1. 東北経済連合会との懇談会(10月)
  2. 四国経済連合会との懇談会(10月)
  3. 中国経済連合会との懇談会(12月)
  4. 北陸経済連合会との懇談会(2006年1月)
  5. 北海道経済連合会との懇談会(2006年2月)

3.まちづくり三法への対応(流通委員会事業報告参照)

(8)観光委員会

(江頭邦雄 委員長)

1.「国際観光立国に関する提言」(2005年6月21日)の取りまとめ

魅力ある国づくりならびに訪日外国人観光客の増大を主眼とした標記提言を取りまとめ、関係各方面に建議した。また、提言の実現のための活動を兼ねて、以下の活動を行った。

(1) 欧州における観光立国に関する調査ミッション派遣(10月)

江頭邦雄委員長を団長とする標記ミッションをフランス、ドイツに派遣し、政府首脳、政府観光局、学識経験者等から、両国における観光プロモーション、観光資源の整備、人材育成等に係る取組について調査し、報告書を取りまとめた。

(2) 自民党観光特別委員会における意見陳述(10月)

自民党観光特別委員会(二階俊博委員長:当時)において、江頭邦雄委員長より「国際観光立国に関する提言」ならびに「欧州における観光立国に関する調査ミッション」について説明し、観光立国の推進を働きかけた。

(3) 観光委員会の開催(12月)

観光委員会を開催し、「国際観光立国に関する提言」の実現に向けたアクションプランを採択した。また当日は、須田寛東海旅客鉄道相談役より産業観光の現状ならびに課題について説明を受けた。

2.提言「観光立国基本法の制定に向けて」(2006年3月22日)の取りまとめ

政府・与党が「観光基本法」を改廃し、「観光立国基本法」を制定すべく検討を開始したのに併せて、「観光立国基本法」に盛り込むべき論点に関する提言を取りまとめ、その実現方を働きかけた。

(9)住宅政策委員会

(和田紀夫 委員長)

1.「住宅・街づくり基本法」の実現にむけた取り組み

「住みやすさで世界に誇れる国づくり」(2003年6月)で提案した「住宅・街づくり基本法」の実現を図るため、企画部会ワーキンググループ(座長:竹内和正旭硝子経営企画室主幹)を中心に検討を重ね、「住宅・街づくり基本法の制定に向けて」(2005年6月21日)を取りまとめた。同提言は、自民党住宅土地調査会(7月)や公明党国土交通部会(7月)において立花貞司部会長(トヨタ自動車専務取締役)より説明した。また、国土交通省社会資本整備審議会住宅宅地分科会基本制度部会においても意見陳述し、同審議会答申「新たな住宅政策に対応した制度的枠組みについて」の中にも日本経団連の主張が概ね取り入れられた。
さらに、住生活基本法案が2006年2月6日、閣議決定され国会に提出されたのを受けて、企画部会を開催し、国土交通省より説明を聞くとともに、ワーキンググループにおいて、基本計画策定に向け産業界の意見を取りまとめるべく検討を開始した。

2.住宅・土地税制改正に向けた取り組み

6月発表の「住宅・街づくり基本法の制定に向けて」の趣旨を踏まえ、平成18年度税制改正の重要課題のひとつとして、「平成18年度住宅・土地税制改正への提言」(2005年9月20日)を取りまとめ公表した。また、自民党国土交通部会住宅・土地ワーキングにおける意見発表(10月)や、与党幹部への説明などを通じて、住宅税制の改正実現方につき積極的に働きかけを行った。こうした活動の結果、平成18年度税制改正において、既存住宅の耐震改修をした場合における所得税額の特別控除制度の創設や耐震改修を行った家屋の固定資産税額の軽減などを中心に自己資金を対象に含めた耐震改修促進減税が実現した。

(10)輸送委員会

(岡部正彦 共同委員長)
(井坂 榮 共同委員長)

1.安全かつ効率的な国際物流実現への取り組み

国際競争力強化の観点から、日本経団連では、「輸出入・港湾諸手続の効率化に関する提言」(2004年6月)を踏まえ、ITを活用した物流効率化とセキュリティの確保との両立の実現を政府に働きかけてきた。その結果、関税法、港湾法などFAL関連法令を一部改正し、FAL条約が締結された(9月)。

(1) 「安全かつ効率的な国際物流の実現のための施策パッケージ」推進への協力

「安全かつ効率的な国際物流の実現のための施策パッケージ」(関係7省庁・日本経団連を含む21経済団体、2005年3月)の概要と政府の考え方につき、国土交通省から説明を聞くとともに意見交換した(6月)。 また、8月に設立された施策パッケージの推進主体である「安全かつ効率的な国際物流施策推進協議会」に参画した。

(2) 港湾物流の効率化に関する懇談会開催

自民党の菅義偉衆議院議員、国土交通省の鬼頭平三港湾局長を招き、港湾物流の効率化に向けた与党・政府の対応につき説明を聞くとともに意見交換を行なった(7月)。その後、菅義偉議員と港湾物流効率化の推進に向けた今後の対応に関して懇談会を開催し、掘り下げた意見交換を行った(8月)。

(3) 特定輸出申告制度に関するパブリックコメント提出

「コンプライアンスの優れた者に対する新たな輸出通関制度について(特定輸出申告制度)」関連3業界団体との連名で、財務省関税局業務課に対してパブリックコメントを提出した(9月)。

(4) 輸出入・港湾等諸手続き業務・システムの最適化のフォローアップ

財務省関税局から「輸出入及び港湾・空港手続き関係業務の業務・システムの最適化計画」に関し、検討状況および今後の方向性について説明を聞くとともに意見交換を行った(12月)。

(5) WCO「基準の枠組み」に関する対応

世界税関機構(WCO)総会(6月、於:ブラッセル)で採択された「国際貿易の安全確保と円滑化に関する基準の枠組み」に関する第1回民間協議(2006年3月30日〜31日)への対応方針について意見交換を行った。あわせて財務省関税局から基準の枠組みの概要や今後のスケジュールについて説明を受けた(2006年3月)。

(6) 貨物運送の安全性向上に関する取り組み

理事会において貨物自動車運送事業安全性評価事業につき国土交通省金澤悟自動車交通局長より説明を受けるとともに、安全性確保の徹底を会員企業に要請した(5月)。また、「安全運行パートナーシップ事前検討委員会」、「大型車両の通行に係る法令遵守・安全担保措置に関する検討準備会」、「貨物自動車運送事業安全性評価委員会」、「貨物自動車運送適正化事業対策協議会」に参画した。

2.首都圏三環状道路整備に関する提言の取りまとめ

「高速道路整備および道路関係四公団民営化に関する意見」(2002年11月)の趣旨を踏まえ、「首都圏三環状道路の早期整備を望む」(2005年7月19日)の提言を取りまとめ、政府・与党へ働きかけを行った。

3.原油価格高騰の影響等に関する懇談会の開催

自民党「トラック輸送振興議員連盟総会」において、トラック運送事業者による運賃料金適正化要望への対応につき陳述した(7月)。
北側一雄国土交通大臣から奥田会長が「原油価格高騰による運送事業者の窮状について荷主にも理解してほしい」と要請された(9月27日)ことを受け、輸送委員会が産業問題委員会と協力して運輸業界(トラック・内航海運など)、荷主、国土交通省による「原油価格高騰の影響等に関する懇談会」を開催し、意見交換を行った(10月)。

(11)地域活性化委員会

(辻井昭雄 委員長)

今年度は、委員の所在が全国におよぶ特性を勘案し、地域における政策具現化の観点から行政や地方公共団体との交流を目的とする視察会と併せて、本委員会を7月に開催した。
地域振興に積極的な取り組みを行っている滝川市(北海道)を訪問して、気候・風土の地域特性を踏まえた農業や林業のインキュベーション施設の展開を中心に視察した。
本委員会では、滝川市長、市議会議長、商工会議所会頭などの地域代表も加わり、意見交換を行った。

4.技術・環境・エネルギー関係

(1)産業技術委員会

(庄山悦彦 委員長)
(桜井正光 共同委員長)

1.第3期科学技術基本計画への産業界意見の反映に向けた活動

2006〜2010年度を計画期間とする第3期科学技術基本計画が2005年度末にも策定されることから、科学技術政策部会(部会長 笠見昭信東芝常任顧問)を中心に、産業界意見の反映に向けた活動を展開した。特に、(1)科学技術の戦略的重点化、(2)先端技術融合型COEの育成を含む、イノベーション創出に向けた科学技術システムの改革、(3)政府研究開発投資額の拡充(対GDP比率1%と投入目標額の明示)の3点の実現を関係府省に強く働きかけた。
総合科学技術会議に関しては、第3期基本計画の策定を検討する「基本政策専門調査会」に庄山悦彦委員長(2006年1月以降は、谷口一郎評議員会副議長)が参加し、日本経団連の考え方を述べた。文部科学省との間では、5月には中山成彬文部科学大臣(当時)、11月には小坂憲次文部科学大臣と、科学技術政策をめぐって、懇談会を開催した。経済産業省との間では、科学技術政策部会において、産業技術環境局との懇談会を適宜開催した。
また、第3期基本計画の計画期間中において、科学技術投資の成果が十分に還元される必要があるとの認識の下、「イノベーションの創出に向けた産業界の見解」(2005年12月13日)を取りまとめ、今後の科学技術政策、とくに産学官の役割と連携の在り方について、意見を公表した。
こうした働きかけの結果、第3期基本計画では、「イノベーター日本」など6つの政策目標や、詳細を示した個別政策目標が掲げられるとともに、重点推進4分野、推進4分野毎に成果目標を明示した推進戦略が策定され、重点投資する対象が「戦略重点科学技術」として選定された。また、投資総額規模が約25兆円(計画期間中の対GDP比率1%、名目成長率が3.1%を前提)と明記された。

2.産学官連携の推進

産学官連携推進部会(部会長:山野井昭雄味の素顧問)が中心となって、6月には京都で第4回産学官連携推進会議を、11月には東京で第5回産学官連携サミットを、内閣府、日本学術会議などと共催し、産学官相互の理解を深めた。また、昨年度設立された東京大学産学連携協議会に対し、引き続き協力を行った。さらに、わが国が科学技術創造立国を実現するためには、新領域を切り開くマネジメント能力を兼ね備えたドクタークラスの人材育成が不可欠であるとの認識の下、産学の関係者の率直な意見交換により、経済社会に役立つ創造的な人材の育成が進むことを目的として、大学院博士課程検討会を2006年3月に設置した。

3.知的財産分野における企業活動の円滑化

知的財産部会(部会長:加藤幹之富士通経営執行役)では、2006年1月に、知的財産基本法施行3年の経過を契機に、これまでの知的財産政策について評価を行うとともに、その結果を、知的財産戦略推進事務局に提出した。さらに、政府知的財産戦略本部による知的財産推進計画2006の策定をにらみ、産業問題委員会エンターテインメント・コンテンツ産業部会と共同して提言「知的財産推進計画2006の策定に向けて」(2006年3月22日)を取りまとめ、関係方面に建議した。
政府に対する提言とあわせて、6月には、知的財産権に関する民間の意識をより一層高める観点から、知的財産権のさらなる尊重を目指した「知的財産権に関する行動指針」を策定し、産業界に広く周知を行った。
また、個別の課題については、特許権侵害品の水際取り締まりのあり方を巡り、財務省、経済産業省などとそれぞれ懇談するとともに、経済産業省が決定した「特許審査迅速化・効率化のための行動計画」については、「知的財産推進計画2006の策定に向けて」において、政府としての目標の設定や個別企業の特許率の公表等により、企業に一定の行動を強いることは適切ではないとの意見を表明した。

4.国際標準化の重要性の理解促進

国際標準化戦略部会(部会長:尾形仁士三菱電機上席常務執行役)では、一昨年に公表した「戦略的な国際標準化の推進に関する提言」に基づき、国際標準化の重要性を訴えてきたが、10月には、総務省の田中謙治通信規格課長を招き、情報通信分野における国際標準化活動のあり方などについて懇談した。また、2006年3月には、昨年に引き続き、経済産業省とともに「事業戦略と国際標準化シンポジウム」を共催し、標準化と事業戦略の関係などについて、様々な事例紹介を行った。

(2)海洋開発推進委員会

(武井俊文 委員長)

1.海洋開発利用推進に向けた取組み

海洋には未開発の資源が大量に存在しており、エネルギー需要が増大するなか、世界経済の発展にとって重要な鍵を握っている。また、海洋は自然災害や環境問題とも密接な関連を有しており、人類の安全・安心の確保にも役立つ。さらに、国連海洋法条約に基づき、大陸棚の地形、地殻構造、地質に関する詳細な調査を実施し、調査結果を2009年5月までに国連へ申請し、認定を受けることにより、大陸棚の外側の延伸が認められる。したがって、限られた期間内に精密な調査を完遂させることは、国益確保の観点から極めて重要である。
上記の認識の下、当委員会は提言「海洋開発推進のための重要課題について」(2005年11月15日)を取りまとめ、総合科学技術会議が2006年3月に策定した第3期科学技術基本計画への意見反映を図った。

(3)環境安全委員会

(山本一元 共同委員長)
(新美春之 共同委員長)

1.地球温暖化問題への対応

(1) 意見書の建議

地球環境部会(部会長:〜6月9日桝本晃章東京電力副社長、同日〜服部拓也東京電力副社長)を中心に、産業界の自主的な温暖化対策の推進を表明し、環境税の導入に改めて反対する意見書「民間の活力を活かした地球温暖化防止対策の実現に向けて」(2005年9月20日)を取りまとめ、政府・与党に建議した。関係者への強い働きかけの結果、環境税の導入は見送られることとなった。また、京都議定書以降の国際的な枠組のあり方に関する基本的な考え方を「地球温暖化防止に向けた新たな国際枠組の構築を求める」(2005年10月18日)として取りまとめ建議した。

(2) 地球温暖化防止国民運動への協力

温暖化対策の強化が求められる民生部門への対応として、6月に会員企業・団体に対し、政府が進める国民運動への協力を要請するとともに、日本経団連会合においても夏季の軽装運動などを実施した。8月下旬には、その対応状況に関する調査を実施した。また、10月には、各分野の優れた温暖化対策を共有・活用する観点から「地球温暖化防止対策事例集〜CO2排出削減600のヒント」を取りまとめ公表した。

(3) 環境自主行動計画(温暖化対策編)フォローアップ調査

環境自主行動計画2005年度フォローアップを実施し、11月に結果を公表した。調査には、産業・エネルギー転換部門35業種を含む58業種・企業が参加した。2004年度の産業・エネルギー転換部門からのCO2排出量は5億199万t-CO2で、90年度比0.5%減となり、5年連続で「2010年度のCO2排出量を90年度レベル以下に抑制する」という統一目標を達成した。また、同フォローアップの透明性・信頼性向上のため、第三者評価委員会を、12月〜3月に計5回開催し、前年度指摘事項への改善の評価などにつき評価報告書を取りまとめた。

(4) 海外経済団体等との対話・連携促進

5月に国際環境戦略WG(座長:笹之内雅幸トヨタ自動車環境部担当部長)を中心とする調査団を欧州に派遣し、欧州産業連盟や、米国国際ビジネス協議会等と、各国産業界が直面する温暖化対策の課題と展望等につき意見交換を行った。
6月には、皇太子殿下ご臨席の下、愛・地球博会場において、持続可能な発展のための世界経済人会議(WBCSD)とセミナーを共催し、21世紀の社会における企業の役割について、各国企業トップによる議論を行った。
さらに、11月にモントリオールで開催された、国連気候変動枠組条約第11回締約国会議及び京都議定書第1回締約国会合では、国際商工会議所などのセミナーに参加し、日本の産業界の取り組みなどを紹介し、理解を求めた。

2.廃棄物・リサイクル問題への対応

(1) 容器包装リサイクル法の見直しへの対応

中央環境審議会・産業構造審議会が進める容器包装リサイクル制度の見直しに対応し、廃棄物・リサイクルWG(座長:小倉康嗣JFEホールディングス理事)、廃棄物・リサイクル部会(部会長:庄子幹雄鹿島建設常任顧問)が中心となって、意見書「実効ある容器包装リサイクル制度の構築に向けて」(2005年10月12日)を取りまとめ、建議した。現行制度の役割分担の徹底と関係団体による自主行動計画策定の必要性について、審議会などを通じ強く働きかけた結果、審議会の「最終取りまとめ」では日本経団連の主張が反映されることとなった。2006年2月には、経済産業省の井内摂男リサイクル推進課長を招いて同部会を開催し、審議会「最終取りまとめ」等の説明を聞いた。

(2) 環境自主行動計画(廃棄物対策編)フォローアップ調査

40業種の参加を得て、環境自主行動計画〔廃棄物対策編〕のフォローアップ調査を行い、廃棄物・リサイクル部会等の議論を経て、2006年3月に公表した。2004年度の産業界全体の産業廃棄物最終処分量は1990年度実績より83.8%削減し、「2010年度における産業界全体の産業廃棄物最終処分量を1990年度の75%削減する」との目標を3年連続前倒しで達成した。この調査結果を受け、2006年度に、最終処分量の目標を見直す方向で検討を行うとともに、業種毎に新たな独自目標を策定することとした。

(3) その他

低濃度PCB汚染機器の処理問題について、懇談会を開催して検討を行い、12月には政府「処理方策WG」において意見陳述を行った。2006年3月には廃棄物・リサイクル部会を開催し、経済産業省環境指導室長から処理の課題について説明を聞くとともに意見交換を行った。
また、アスベスト被害の周辺住民や家族への拡大が社会問題化したことから、被害拡大防止とともに全ての関係者が協力する救済制度の早期構築を求め、12月に2回にわたり意見を取りまとめ、産業界の考え方の反映を働きかけた。

3.環境規制の見直しへの対応

2004年4月に設定された閉鎖性海域(東京湾、伊勢湾、瀬戸内海)における第6次水質総量規制のあり方を審議する中央環境審議会の検討状況にあわせ、環境管理WG(座長:奥村彰住友化学レスポンシブルケア室部長)において検討を行った。
また、水生生物の保全に関する全亜鉛の環境基準の見直しに対し、2006年2月に開催された中央環境審議会において、産業界の排水の汚濁負荷削減対策について紹介するとともに、「過剰な規制の導入は避け、費用対効果を十分考慮した対策を検討すべき」との意見陳述を行った。

4.規制改革要望の取りまとめ

規制改革要望を取りまとめ、2005年6月に政府に要望し、実現を働きかけた。
廃棄物・環境保全分野では、廃棄物処理法に係る要望を中心に取りまとめ、内閣府(要望全般)や環境省(木くず問題等)と意見交換を行ったほか、11月に環境省の「欠格要件あり方検討会」において意見陳述を行った。
危険物・防災・保安分野は、「安全」を政策目的とした分野であるが、技術開発の進展等により対応が可能と考えられる課題や、実態を踏まえた対応が必要な点について、民間の経験、実績を踏まえた自主的な対応の推進をはかる観点から要望を取りまとめた。また、保安諸規制の合理化、整合化の観点から、重複規制の抜本的な解消について引続き要望した。

(4)資源・エネルギー対策委員会

(秋元勇巳 委員長)

1.総合的なエネルギー政策の推進

(1) エネルギー安全保障の確立に向けた取り組み

当委員会では、エネルギー基本計画に定められた「安定供給の確保」「環境との適合性」及び「経済性」の同時達成という基本方針に基づいた総合的なエネルギー政策を推進する観点から活動を行った。とりわけ、原油価格の高騰や発展途上国の著しいエネルギー需要の増大を背景として、わが国エネルギー安全保障の確立に向けた産業界意見の取りまとめに向けた活動を進めた。
具体的には、12月に資源エネルギー庁の小平信因長官を委員会に招き、エネルギー安全保障を巡る政策の現状と今後の課題について説明を聞くと共に意見交換を行った。さらに、2006年2月に日本エネルギー経済研究所の内藤正久理事長から「エネルギーセキュリティの構築」について、2006年3月にはエネルギー総合工学研究所の秋山守理事長から「エネルギー分野の技術戦略」について、さらに資源エネルギー庁の立岡恒良総合政策課長から「新・国家エネルギー戦略」について、それぞれ説明を聞くとともに、提言取りまとめに向けた意見交換を行った。
資源エネルギー庁総合資源エネルギー調査会では、2006年2月より、同年秋のエネルギー基本計画の改訂に向けた検討が始まり、柴田昌治副会長が委員として参加し、産業界意見の反映に努めた。

(2) エネルギー教育の推進に向けた取り組み

エネルギー分野の重要性に関する社会一般の理解を促進するため、5月、中央教育審議会の木村孟副会長から、教育課程の基準見直しの検討状況について説明を聞くとともに、原子力を含むエネルギー教育の重要性について意見交換を行った。

2.資源・エネルギー分野における規制改革への取り組み

会員企業・団体からの具体的な規制改革要望を踏まえ、必要不可欠な安全水準の確保を前提に、多様なエネルギー需要に応えることが可能となるよう規制の合理化や見直しを強く求めた。

5.社会関係

(1)広報委員会

(米倉弘昌 委員長)

1.日本経団連の広報戦略に関する検討

日本経団連の重要課題に関する広報戦略について、企画部会(部会長:神尾隆トヨタ自動車相談役)を中心に、総合的な見地から検討した。

2.日本経団連の広報活動への支援

日本経団連の活動に関する国内外への広報活動が、積極的かつタイムリーに行われるよう、支援を行った。

(2)企業行動委員会

(武田國男 委員長)
(大歳卓麻 共同委員長)

1.企業倫理月間の実施

2002年10月に発表した「企業不祥事防止への取り組み強化について」では、企業行動に関する会員の継続的な取り組みを支援するために、毎年10月を「企業倫理月間」とすることとした。本年10月も、会員に企業行動の総点検を要請するとともに、セミナー、研修会等を開催した。

(1) 「企業倫理徹底のお願い」の送付

9月、企業倫理の確立は経営トップの責務であり、企業経営者の確固たる信念と不断の努力こそが不祥事防止の根幹であるとして、奥田会長から全会員代表者あてに、「企業倫理徹底のお願い」を送付した。

(2) 企業倫理トップセミナー

10月、約400名の参加を得て、第4回企業倫理トップセミナーを開催した。國廣正国広総合法律事務所弁護士の問題提起を受けて行なったパネルディスカッションでは、武田國男企業行動委員長、田村滋美東京電力会長、原田明夫前検事総長と國廣正弁護士が、経済社会環境の変化、企業経営者が持つべき心構え、企業の具体的取り組み方、日本経団連の課題などについて意見交換した。

(3) 企業倫理担当者研修会の開催

企業倫理月間に先立ち、9月に、経団連ゲストハウスにおいて第4回企業倫理担当者研修会を実施した。萩原誠経営倫理実践研修センター専任講師、北城武日産自動車人事部部長、中谷常二東北公益文科大学大学院助教授、畑中鐵丸中島・宮本・畑中法律事務所パートナーの4氏を講師として、企業の担当者がコンプライアンスを巡る最新情勢を学ぶとともに幅広い意見交換を行った。

2.会合の開催

  1. 9月、企画部会(部会長:近藤定男三洋電機相談役)を開催し、2006年4月に施行される公益通報者保護法への対応のあり方について、中原健夫あさひ・狛法律事務所弁護士と結城大輔のぞみ総合法律事務所弁護士を招き説明を受け、意見交換した。
  2. 10月、社会貢献推進委員会と合同で委員会を開催し、ISO総会の模様について報告を受けた(本会合および企業の社会的責任に関する活動の詳細は、社会貢献推進委員会の事業報告を参照)。

3.企業倫理・企業行動に関するアンケート調査の実施

8月、企業倫理推進の一環として、会員の取り組みの現状や問題点を把握すべく、会員代表者と企業倫理担当者向けのアンケート調査 <PDF> を実施し、その結果を12月13日に公表した。

4.企業不祥事への対応

日本経団連の会員にかかわる不祥事を調査するとともに、会員からの問い合わせに応じてコンプライアンス体制の構築・改善に向けた助言を行なった。また、企業不祥事に対する日本経団連の対応のあり方について検討した。

(3)社会貢献推進委員会

(池田守男 委員長)

1.企業の社会的責任(CSR)の観点から社会貢献活動のあり方を検討

当委員会では、1992年から毎年、経団連ゲストハウスで社会貢献フォーラムを開催している。今年度は「CSR時代に社会貢献が担うべき役割は何か」をテーマに実施し(2006年2月17日、18日)、企業全体として取り組むCSRの中で、社会貢献が担うべき役割や影響力を発揮できる活動領域について、各社のこの3年の変化を踏まえ、今後の3年を予測しながら討議を行った。また、グローバルな視点とローカルな視点の双方から、社会貢献に何が求められるかをNPOの代表などと探り、より大きな社会的成果を実現するための活動方針、目標設定、戦略、連携などについても検討を行った。

2.社会的課題の解決に寄与する社会貢献活動のあり方の検討

社会貢献担当者懇談会(座長:長谷川公彦味の素社会貢献担当部長、嶋田実名子花王社会貢献部長)では、社会の持続可能性や人権などのヒューマン・セキュリティ、社会貢献活動のグローバルな展開、災害被災地支援のあり方などをテーマに、社会貢献の実務担当者の懇談会を8回開催した。

3.社会貢献活動の基盤整備のための検討

7月に、「新たな非営利法人」に関する課税と寄付金税制の動向について、政府税制調査会基礎問題小委員会・非営利法人課税ワーキンググループ委員の出口正之国立民族学博物館教授から説明を聞き、公益法人制度改革が企業の社会貢献活動に与える影響について意見交換した。2006年1月には、大阪大学大学院人間科学研究科の中村安秀教授から、災害被災地支援の国際的な動向について説明を聞き、緊急救援から復興に至る過程で必要とされる支援や資金などの仕組みについて意見交換した。

4.2004年度社会貢献活動実績調査

2004年度の社会貢献活動の実績について調査し、454社(回答率:32.7%)から回答を得た。社会貢献活動支出額は、総額で1,508億円、1社平均では3億5,100万円であった。今回は、多くの企業が社会貢献活動を推進する上で課題と認識している3つのテーマ((1)災害被災地支援、(2)CSRと社会貢献活動の関係、(3)社会貢献活動のグローバルな推進体制)について、各社の取り組み状況や考え方を把握するための特別調査も併せて実施した。

5.企業の社会的責任(CSR)の一層の推進

企業行動委員会との合同部会である社会的責任経営部会(部会長:廣瀬博住友化学常務執行役員)では、「企業行動憲章」「企業行動憲章実行の手引き」 <PDF> を基に、主要なCSR要素項目を網羅し、CSR推進の参考事例を集めた「CSR推進ツール」 <PDF> を作成し、10月に公表した。同時に、会員企業のCSRの取り組み状況を調査した「CSRに関するアンケート調査」の集計結果 <PDF> も公表した。このほか、部会の下に設置したワーキンググループの各作業チームにおいて、先進的事例の収集、ステークホルダーとの対話の促進、国内外の経済諸団体との連携について検討を進めるとともに、情報紙の発行、ホームページや機関誌を通じてCSRに関する情報を提供した。

6.国際標準化機構(ISO)におけるSRの規格化への対応

企業行動委員会と社会貢献推進委員会の合同委員会、社会的責任経営部会、同ワーキンググループにおいて、ISOが進めている社会的責任(SR)の規格化に対応した。
9月にタイのバンコクで開催されたISOのSRに関するワーキンググループ総会に専門家3名、オブザーバー5名を派遣し、規格の設計仕様書の合意に向けて積極的な提案や働きかけを行った。その結果、これまで各国産業界が求めてきた、第三者認証を目的としないこと、マネジメント・システム規格としないこと、企業だけでなくあらゆる種類の組織を対象とする規格とすることなどの前提条件を、設計仕様書に盛り込むことができた。
バンコク総会後、社会的責任経営部会の作業チームにおいて、設計仕様書に基づく規格案を作成し、2006年3月にワーキンググループに1つの考え方として提案した。ポルトガル・リスボンで開催予定の次回ワーキンググループ総会(2006年5月15日〜19日)に向けて準備を行った。

(4)政治・企業委員会

(宮原賢次 委員長)

1.政党の政策評価に基づく政治寄付の促進

日本経団連では、民主導・自律型社会の実現のために緊急かつ重要と思われる「優先政策事項」に基づき、政党の政策やその実現に向けた取組みと実績について評価を行い、会員企業が政党へ寄付する際の参考に供している。
2005年度は、前年11月の「優先政策事項」に基づき、10月に自民党と民主党の政策評価を発表するとともに、政策評価説明会を開催した。また、会員企業に対しては、企業の社会的責任の一端としての重要な社会貢献として、自発的に政治寄付を行うよう呼びかけた。
11月には、2006年の評価の尺度となる新たな「優先政策事項」を公表した。

2.政党との政策対話

政策本位の政治の実現に向け、政党との間で、幹部レベル、政策テーマごとの実務レベルなど各種会合を開催し、重要政策課題を巡り、意見交換した。主な会合は以下のとおり。

  1. 自由民主党首脳との懇談会(10月、12月)
  2. 参議院自民党幹部との懇談会(全体会は11月、2006年2月。分科会は計8回開催)
  3. 民主党と政策を語る会(4月)

3.政治寄付促進のための法制、税制の見直し

企業や個人の政治寄付を促進するため、諸外国の例を参考に、政治資金規正法や税制の問題点を検討した。

(5)政経行動委員会

(前田又兵衞 委員長)

1.政策評価作業の実施

政治・企業委員会の諮問を受け、10月の政策評価、11月の優先政策事項の改定に向けた作業を行った。また、2006年の評価手法について検討した。

2.政治寄付促進のための法制、税制の見直し

政治・企業委員会と協力して、政治寄付の促進のため、法制面、税制面からの検討作業を行った。

(6)教育問題委員会

(草刈隆郎 委員長)

1.義務教育改革についての検討

学校や教員が、自らの発意と創意工夫によって学校運営や授業を改善する環境整備の観点から、(1)学校選択制の全国的導入、(2)学校評価の充実、(3)教育の受け手の選択を反映した学校への予算配分、の3点を中心に検討した。このうち、学校評価については、年度内に策定予定の学校評価ガイドラインに産業界の意見を反映させるべく、提言の取りまとめを進めた。

2.義務教育改革をめぐる議論への対応

義務教育改革についての中央教育審議会の検討に応じ、同審議会の意見陳述などの機会を捉え、宇佐美聰企画部会長(三菱電機常任顧問)より、「多様性」「競争」「評価」を基本とする改革の実現を求めた。また、パブリックコメントなどに適宜対応した。

3.学校訪問の実施

  1. 学校選択制の導入成果などを調査することを目的に、品川区立立会小学校、東海中学校を訪問した(5月)。
  2. 「百マス計算」で知られる陰山英男氏の教育実践を視察することを目的に、広島県尾道市立土堂小学校を訪問した(10月)。

4.「キャリア形成支援のあり方に関する研究会〜多様な人材育成支援策の提供・活用〜」の開催

社員一人ひとりの能力や適性に焦点を当てたキャリア形成支援策について検討した。

5.懇談会などの開催

  1. 教育基本法改正問題について民主党との懇談(6月)
  2. 樋口修資文部科学省大臣官房審議官との懇談(7月)
  3. 鳥居泰彦中央教育審議会会長(8月)
  4. 小坂憲次文部科学大臣との懇談(2006年1月)
  5. 伯井美徳横浜市教育委員会教育長との懇談(2006年3月)

6.経営労働関係

(1)経営労働政策委員会

(奥田 碩 議長)
(柴田昌治 委員長)

2006年春の春季労使交渉・労使協議に際し、「経営と人」に関する基本的な考え方を総合的に検討し、全国の企業経営者の指針となる報告として「2006年版経営労働政策委員会報告」(2005年12月13日)を取りまとめ、発表した。「経営者よ 正しく 強かれ」と題する本報告は、日本的経営の根幹である「人間尊重」と「長期的視野に立った経営」の理念を基に、職場で大多数を占める「普通の人」を大事にしながら、「正しさ」と「強さ」をもった経営者の姿勢が従業員の共感と信頼を呼び、労使がともにそれぞれの役割を果たし、進歩を続けていくことで、経済社会の明るい未来を拓いていけると述べている。
報告は、以下の3部から構成されている。

第1部 企業を取り巻く環境変化−進展するグローバル化の現状
1.景気の現状
2.経済社会の構造的変化への対応
3.地域経済の活性化と中小企業
4.社会保障問題への対応
5.安心・安全な国づくりに対する企業の貢献
第2部 経営と労働の課題
1.人口減少社会・高齢化社会への対応
2.企業の競争力を強化する人材戦略
3.労働分野における規制改革・民間開放の徹底を
4.春季労使交渉・労使協議に臨む経営側のスタンス
第3部 今後の経営者のあり方
1.企業倫理の徹底のための経営者の自己改革
2.21世紀は環境の世紀
3.地方経営者団体の新たな役割への期待
4.経営者の姿勢

今次労使交渉においては、(1)自社の支払能力による賃金決定を基本とする、(2)総額人件費をもとに判断する、(3)中長期的な見通しに立った経営判断により決定する、(4)短期的な業績は賞与・一時金に反映する、(5)企業内の幅広い課題について労使間で積極的に協議・話し合いを行うという5つの観点が重要であると強調した。賃金決定においては、生産性の裏付けのない、横並びで賃金水準を底上げするベースアップは、わが国の高コスト構造の原因となるだけでなく、企業の競争力を損ねると指摘。個別企業の賃金決定は個別労使がそれぞれの経営事情を踏まえて行うべきであるとした上で、結果的には、激しい国際競争と先行き不透明な経営環境が続くなか、国際的にトップレベルにある賃金水準をこれ以上引き上げることはできないとの判断に至る企業が大多数を占めるとの見方を示した。また、毎年の春季労使交渉・協議は、労使が定期的に情報を共有し、意見交換をはかる場としてその意義は大きいと述べるとともに、今後の労使関係においては、賃金など労働条件一般について議論し、さらに広く経済・経営などについても認識の共有化を図るなど、春季の労使討議の場として「春討」が継続・発展することへの期待感を表明した。

(2)雇用委員会

(大橋洋治 委員長)

下部組織である雇用政策検討部会(部会長:片野坂真哉全日本空輸人事部長)とともに、以下の点について論議を重ねた。

1.障害者雇用対策

2005年6月に成立した改正障害者雇用促進法を受け、厚生労働省労働政策審議会障害者雇用分科会において議論されていた、同法改正に係る政省令の改正、助成金制度の見直し、企業において適切な障害者の把握・確認が行われることを趣旨としたガイドラインの策定について、委員会での意見集約を図った。委員会での意見を踏まえ、企業における障害者雇用の促進をより実効性の高いものとするため、分科会にて所要の主張を行った。具体的成果としては、円滑な障害者の雇用が可能となる職場適用援助者の設置に係る助成金が創設されたほか、障害者の把握・確認ガイドラインの策定にあたっては、企業の立場でいかに分かりやすく、理解されるものとなるかという点を中心に言及した。さらに、障害者雇用に係る諸手続きの改善など、企業にとって利便性を向上させる施策の実施につながった。

2.若年者雇用対策

6月に小島貴子立教大学コープコーディネーターより若年者雇用をめぐる諸課題について講演聴取を行った。また、政府が「若者自立・挑戦プラン」の一環として取り組んでいる「若者の人間力を高める国民運動」に協力し、運動が単にイベントに終わることなく、各省庁が地方レベルまで連携して若年者対策を実施するように求めた。

3.雇用保険制度への対応

2004年9月に取りまとめた「社会保障制度等の一体的改革に向けて」に則り、雇用保険3事業の政策評価において、効果の期待できない事業・助成金の改廃を政府に求めた。12月に閣議決定された「行政改革の重要方針」における特別会計の見直しに対応して、委員会で雇用保険制度のあり方について検討することになった。

4.職業能力開発促進法改正への対応

厚生労働省労働政策審議会能力開発分科会では、職業能力開発促進法の改正についての検討が行われた。分科会での議論を踏まえて、雇用委員会において企業の意見を集約し、基幹的役割を担う従業員や自ら能力向上に励む従業員に対して、重点的に教育投資をしていくべきことなどを主張した。その結果、実習併用職業訓練制度の創設を柱とした改正職業能力開発促進法の策定につながった。

5.高年齢者雇用安定法への対応

11月にトヨタ自動車における改正法に対応した継続雇用制度について事例聴取を行うなど、会員企業の動向把握に努めた。

6.新卒採用問題への対応

雇用政策検討部会の下部組織である採用問題アドバイザリー会議では、「2006年度・新規学卒者の採用選考に関する企業の倫理憲章」(2005年10月18日)を発表した。またその遵守徹底を図る観点から、11月に「倫理憲章の趣旨実現をめざす共同宣言」を発表した。

(3)人事労務管理委員会

(安西邦夫 委員長)

1.男女雇用均等法改正への対応

厚生労働省労働政策審議会雇用均等分科会において審議された男女雇用機会均等法の改正について、委員会と労務管理問題検討部会(部会長:坂田甲一凸版印刷人事労政本部労政部長)において日本経団連の対応を検討し、意見集約を行い、使用者側委員を通じ日本経団連の意見を反映させた。均等法改正に関連して議論された女性技術者の坑内労働の解禁問題について、規制改革要望においても日本経団連が主張していたとおり、解禁する旨の労働基準法の改正法案策定につなげた。

2.ダイバーシティ・マネジメントの研究

ダイバーシティ・ワーク・ルール研究会において、ダイバーシティ意識に関するアンケート結果を取りまとめた。その結果も踏まえながら、ダイバーシティ・マネジメントのあり方に関する提案を取りまとめた。

3.安全衛生・労災保険法令改正、石綿(アスベスト)問題への対応

労働安全衛生部会(部会長:相川貢JFEスチール常務執行役員)とその下部組織である産業保健問題小委員会、じん肺問題小委員会、労働安全衛生管理システム小委員会において、2006年4月1日施行の労働安全衛生法改正問題(労働災害防止措置、過重労働対策の充実など)、および労災保険法令改正問題(労災保険料率の改定(全業種平均で0.4厘、金額にして約573億円の引下げ)、単身赴任者・複数就業者の通勤災害保護制度の拡充など)について検討を行い、厚生労働省労働政策審議会の安全衛生分科会および労働条件分科会労災保険部会での審議に使用者側意見を反映させた。
また、石綿(アスベスト)による健康被害救済問題についても、各業種団体・地方経営者協会・企業などの意見を踏まえて対応した。

(4)労使関係委員会

(加藤丈夫 共同委員長)
(鈴木正一郎 共同委員長)

1.労使コミュニケーションのあり方について検討

「多様化する経営環境や労使間の課題に対応するための労使コミュニケーションのあり方」について検討を行うため、政策部会(部会長:横山敬一郎日本通運常務理事)を設置し、具体的な検討を行っている。
政策部会では、企業事例を聴取するとともに、会員企業へのアンケート調査を行った。これらを踏まえて組織活性化のための労使コミュニケーションのあり方について報告書を取りまとめるべく検討している。

2.労働組合動向などの実態把握

労働組合の動向を把握し、健全な労使関係の維持・発展に資するために、日本労働組合総連合会(連合)の草野忠義事務局長から「2006年度連合の重点課題」について話を聞くとともに、意見交換を行い、労組動向の実態把握に努めた。

3.中央最低賃金審議会への対応

政府・中央最低賃金審議会における、「2005年度地域別最低賃金改定の目安審議の状況」について、同審議会の使用者側代表委員である杉山幸一氏から報告を受け、2005年度の目安答申に向けた使用者側の対応について、これを了承した。

(5)労働法規委員会

(藤田弘道 委員長)

1.労働基準法改正へ向けた取組み

労働法企画部会(部会長:小島浩日本アイ・ビー・エム顧問)において、労働時間制度に関する検討を行い、「ホワイトカラーエグゼンプションに関する提言」(2005年6月21日)を取りまとめ発表した。
提言は、労働時間管理に適さないホワイトカラーについて、一定要件のもと労働時間規制の適用除外とする新制度を提案したもの。本提言に基づき厚生労働省の研究会で意見表明し、研究会報告への反映に努め、また法改正審議に臨んだ。

2.労働契約法制への取組み

厚生労働省の労働契約法制に関する研究会報告の提示を受けて、10月、労働条件の明確化や紛争解決基準のルール化に資するものであれば否定しないという「労働契約法制に対する使用者側の基本的考え方」を表明した。また、厚生労働省労働政策審議会労働条件分科会での議論に向けて、労働法専門部会(部会長:小島浩日本アイ・ビー・エム顧問)で検討し、意・反映に努めた。

3.労働審判制度への取組み

最高裁へ労働審判員候補者を推薦するにあたり、候補者の研修など支援体制の検討を行うなど、制度施行に向けた協力を行った。

(6)中小企業委員会

(指田禎一 委員長)

1.中小企業の人材問題などに関する検討

2005年度は、2004年度に引き続いて、「中小企業の経営革新に向けた人材確保と育成の課題」を主要テーマに、特に中小企業における人材確保や人材育成、雇用面におけるミスマッチなど、人材面における諸問題への検討を行った。報告書案についての意見交換を2回実施し、中小企業における人材面での課題について探った。また、中小企業における派遣労働者活用の実態について、委員でもあるジェー・エム・アールの盛郷重光社長より説明を受けた。

2.中小企業関連施策に関する意見交換

中小企業庁の西村雅夫次長より「平成17年度中小企業白書のポイント」について説明を聞くとともに意見交換を行った(5月)。また、中小企業庁の山本雅史企画課長より「モノ作りの国際競争力を担う中小企業の技術競争力強化について(中小企業政策審議会経営支援部会報告書)」の説明を聞くとともに、意見交換を行った(2006年3月)。
さらに、雇用・能力開発機構の鬼塚郁夫雇用管理部能力開発課専門指導役と板野隆文業務推進部訓練計画課専門指導役から「(厚生労働省が展開する)在職者訓練プログラムと生涯職業能力開発体系について」説明を聞いた。

(7)国民生活委員会

(大塚陸毅 委員長)

少子化などの進行に伴う労働力減少時代の到来を踏まえ、若年労働力の活用策とそのための環境整備などについて、企画部会(部会長:小堀欣平日本通運取締役常務執行役員)において、引き続き検討を行った。特に入社から10年ぐらいまでの層を念頭においた人材育成のあり方などについて検討し、「若手社員の育成に関する提言〜企業は今こそ人材育成の原点に立ち返ろう〜」(2005年5月17日)として取りまとめ、諸会合などで内容の周知を図った。
また、安全・安心な社会づくりは国民生活の不安要素の解消、社会・経済活動の基本であるとの観点から、7月、国民生活委員会企画部会の下部組織として、安全な社会のあり方ワーキンググループを設置し、治安・防犯対策に対する産業界の自主的な関わり方を中心に検討を重ねた。その検討結果を取りまとめ、「安全・安心な地域社会づくりに向けて〜企業の防犯への取組みと課題〜」(2005年5月17日)として公表した。

(8)少子化対策委員会

(茂木賢三郎 委員長)

わが国において急激な少子・高齢化が進行する中、政府などの最近の動向も踏まえつつ、経済界として少子化問題・対策をどのように考えていくべきかについて検討した。具体的には、企画部会(部会長:上坂清日本電信電話取締役第一部門長)において、人口減少の速度をできる限り緩和し、日本経済・社会を大きな衝撃を受けずに安定した状態に緩やかにもっていく少子化対策について、企業の取り組みを中心に検討を行った。また、その上で、政府などに要望すべき事項についても検討した。

(9)国際労働委員会

(立石信雄 委員長)

1.国際労働機関(ILO)への対応

(1) ILO総会への対応

5月31日〜6月16日まで、スイスのジュネーブにおいて第93回ILO総会が開催され、立石委員長を代表とする日本使用者代表団9名を派遣した。
同総会では、漁業分野における包括的国際労働基準となる条約案の採択を目指したが、同案は棄権多数により定足数を満たさず廃案となったほか、労働安全衛生促進のために国家レベルでプログラム・制度を作成することなどを内容とする条約・勧告案についての第一次討議、世界共通の課題である若年者の失業や不完全就労の解消に関する討議が行われた。
立石委員長は代表演説で、日本におけるディーセント・ワーク(働きがいのある人間的な仕事)の課題として、若年雇用問題を取り上げ、若年者に「努力が報われると感じられる希望のある仕事」を創造し、提供していくことが必要であると主張した。
当委員会では、事前に各議題に臨む使用者側の見解について審議を行うとともに(5月)、参加した使用者側代表から報告を聴取した(6月)。

(2) その他

4月、ILOのハンス・ホフマイヤー多国籍企業プログラム長を講師として「労働におけるCSR講演会」を開催した。

2.中国における人材マネジメントについての検討

日本企業の進出著しい中国におけるホワイトカラーの採用や処遇の問題などについて、政策部会(部会長:立石信雄オムロン相談役)において報告書の取りまとめに向けて検討を行っている。

7.国際関係

(1)貿易投資委員会

(秋草直之 共同委員長)
(佐々木幹夫 共同委員長)

1.WTO新ラウンド交渉の推進

(1) 香港閣僚会議成功に向けたミッションの派遣

桑田芳郎企画部会長(日立製作所取締役)を団長とするミッションをジュネーブ・ブラッセル(10月)、ワシントンDC(9月)に派遣し、「WTO新ラウンド交渉・香港閣僚会議の成功を望む―各国は政治的決断を―」(2005年9月20日)に基づくわが国経済界の要望事項について、WTO事務局幹部、各国政府関係者および経済団体と意見交換を行うとともに、その実現を訴えた。

(2) 香港閣僚会議への参加

「WTO香港閣僚会議に向けた緊急提言」(2005年12月5日)を取りまとめ、日本政府代表団の一員に加わった桑田芳郎企画部会長(日立製作所取締役)を団長とする経済界実務家16名の代表団を香港閣僚会議に派遣し、各国経済団体と連携して、閣僚会議の成功と交渉の推進を働きかけた。

(3) 企画部会(部会長:桑田芳郎日立製作所取締役)を中心とした働きかけ
  1. サービス貿易:交渉の節目毎にWTOサービス貿易自由化交渉に関する懇談会(座長:長谷川公敏第一生命経済研究所専務取締役)を開催し、政府関係者と意見交換を行った。また、交渉進捗にあわせ、経済界からのコメントを提出した。
  2. 貿易円滑化:WTO・貿易円滑化に関する協定案作成交渉に併せ、アンケート調査を実施(9〜10月)し、条文化に当たって経済界が特に重視するポイント及び項目・措置をまとめ、財務省に働きかけた。
  3. その他:貿易と投資、農業貿易、非農産品市場アクセス、アンチダンピング協定、電子商取引などについて、定期的に、政府関係者より交渉の進展状況について説明を聞き、意見交換を行った。

2.通商分野の規制改革

わが国企業の円滑な事業活動の確保と国際競争力強化を目的とし、規制改革要望の一環として、在留資格の整備及び要件の見直し、査証発給手続の簡素化・迅速化・透明性確保のための各種規制改革の実現を働きかけた。

(2)国際協力委員会

(西岡 喬 委員長)
(辻 亨 共同委員長)

1.提言「政策金融機能のあり方について」の取りまとめ

政策金融改革の議論が高まり、国際金融機能と海外経済協力機能の両面を持つ国際協力銀行(JBIC)のあり方などが焦点となる中、「政策金融機能のあり方について」(2005年11月11日)と題する提言を取りまとめた。同提言では、海外の大型プロジェクト、とりわけリスクの高い資源・エネルギーの開発や開発途上国のインフラ整備に対する超長期のファイナンス機能などは、その全てを民間金融機関で代替することが困難であることから、わが国政策金融の機能として引き続き維持すべきと主張した。

2.わが国の今後の経済協力のあり方に関する意見交換

7月、経済産業省の中嶋誠貿易経済協力局長より、経済産業省産業構造審議会経済協力小委員会中間取りまとめ「我が国経済協力の成功経験を踏まえた『ジャパン・ODAモデル』の推進」につき説明をきくとともに、わが国の今後の経済協力のあり方につき意見交換した。

3.その他

来日したウォルフォヴィッツ世界銀行新総裁と奥田会長ほか関係副会長・委員長との懇談会を開催した(10月)。

(3)OECD諮問委員会

(5月26日〜 本田敬吉 委員長)
(〜5月26日 鈴木邦雄 委員長)

OECD(経済協力開発機構)は、先進30カ国が参加する国際機関として、1960年の設立以来、マクロ経済政策、貿易・投資、環境、科学技術、規制改革、情報通信、コーポレート・ガバナンスなどの分野を中心に研究・分析を行い、加盟国に対し政策提言を行っている。
BIAC(The Business and Industry Advisory Committee to the OECD)は、OECD加盟国を代表する経済団体で構成される公式の諮問機関として、OECDの活動に産業界の意見を反映させるべく、18の専門委員会((1)経済政策、(2)貿易、(3)国際投資・多国籍企業委員会、(4)非加盟国、(5)海運、(6)バイオテクノロジー、(7)環境、(8)エネルギー、(9)技術、(10)科学物質、(11)原料、(12)ガバナンス、(13)税制・財政、(14)競争、(15)情報・コンピュータ・通信政策、(16)教育政策、(17)雇用・労働・社会問題、(18)農業問題)において、専門的な検討を重ね、OECDへの提言、働きかけを行っている。
わが国経済界は、OECD諮問委員会を通じて上記のBIAC活動に参画している。

1.BIAC総会・企画会議への参加

5月のBIAC総会(於:イスタンブール)、12月のBIAC企画会議(於:パリ)にBIAC Japan事務局次長が参加し、BIACの活動について日本経済界の立場から意見を述べた。

2.BIAC日本代表委員の派遣・OECD政策へのインプット

日本企業の代表を、BIACの各専門委員会やOECDの開催する会合に派遣し、日本の経済界の立場から意見を述べた。また、OECDの進める "Policy Framework for Investment (PFI)" に関し、日本の経済界の意見を反映させるべく働きかけを行った。

3.会合などの開催

委員会の開催や、来日したOECD関係者と率直な意見交換を行うとともに、現在経済界が抱える課題について最新情報の把握に努めた。

  1. 「OECDの最近の活動」(7月)
    来賓:田中伸男OECD科学技術産業局長
  2. 「OECDのあり方―経済界の期待にいかに応えるか―」(8月)
    来賓:竹内佐和子大使・外務省参与
  3. 「OECDから見た中国経済の現状と展望―中国経済審査報告書―」(9月)
    来賓:マルギット・モルナー博士・OECD中国担当エコノミスト
  4. ベルカ元ポーランド首相・OECD事務総長候補と本田敬吉委員長の会談(11月)
  5. 「OECDにおける模倣品・海賊版防止策」(2006年2月)
    来賓:田中伸男科学技術産業局長
  6. 「OECD諸国の税制改革の動向」(2006年3月)
    来賓:ドナルド・ジョンストン事務総長、ヘーウィック・シュローゲル事務次長、ジェフリー・オーウェンス租税政策局長ほか
  7. 「ドナルド・ジョンストン事務総長ほかOECD幹部との昼食懇談会」(2006年3月)
  8. ドナルド・ジョンストン事務総長と奥田会長の会談(2006年3月)
  9. 「最近のOECDの改革に向けた取り組みと課題」(2006年3月)
    来賓:北島信一OECD日本政府代表部特命全権大使
  10. その他

4.広報活動

機関誌「BIAC NEWS」を発行しBIACやOECDの活動を紹介したほか、「BIACの組織と活動」を改定し発行した。

5.その他の活動

竹内佐和子 大使・外務省参与のOECD事務総長選挙を支援した。

以上

日本語のホームページへ