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月刊 経団連

月刊 経団連2012年6月号

特集 災害に強い経済社会の構築に向けて

巻頭言

付加価値の連鎖を生む流通サプライチェーンの構築へ

亀井 淳 (経団連審議員会副議長/イトーヨーカ堂社長)

この一年間ほど、東日本大震災、タイの大洪水など、事業継続にとっていかにサプライチェーンが重要であるか、あらためて実感させられる事象が立て続けに起こった。日ごろ流通業は、電気、ガス、水道、通信、輸送に続く「第六のインフラ」という自負を持って事業に取り組み、大震災の折も当社は、震災の翌日以降も被災地域の店舗を含む全店で営業を継続した。

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特集

災害に強い経済社会の構築に向けて

2011年は、多くの災害に見舞われた1年であった。東日本大震災、台風12号、15号による大規模水害、そして海外でも、タイの大洪水がわが国企業の事業活動に多大な影響を及ぼした。こうした災害の経験を厳しい教訓として、企業や行政をはじめ社会全体で、防災・減災の取り組みを強化していくことが求められている。災害に強い経済社会の構築に向けて、経済界や行政には、どのような対応が必要かについて議論した。

座談会:災害に強い経済社会の構築に向けて

  • 橋本孝之 (経団連防災に関する委員会委員長/日本アイ・ビー・エム社長(現会長))
  • 川合正矩 (経団連国民生活委員会共同委員長/日本通運会長)
  • 木村惠司 (経団連国民生活委員会共同委員長/三菱地所会長)
  • 後藤 斎 (内閣府副大臣・衆議院議員)
  • 吉井博明 (東京経済大学教授/内閣府「首都直下地震に係る首都中枢機能確保検討会」座長)
  • 久保田政一 (司会:経団連専務理事)

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吉井博明 (東京経済大学教授/内閣府「首都直下地震に係る首都中枢機能確保検討会」座長)
今後予想される災害として、首都直下地震と三連動地震があるが、首都直下は、国家の中枢機能、企業の本社が直接被害を受ける点で、政府・企業のBCPの真価が問われる。まずは、各省庁、機関ごとのBCPを検証して、改善していかなければならない。さらに、これを機能ごとに統合して、共通BCPをつくる必要がある。今後は、政府と企業が連携して、危機管理体制を構築していく努力が不可欠である。

木村惠司 (経団連国民生活委員会共同委員長/三菱地所会長)
東日本大震災当日、首都圏では大量の帰宅困難者が生じた。三菱地所では、丸ビルをはじめとする大手町・丸の内・有楽町エリアのビルを中心に首都圏で、約3500人の帰宅困難者を迎え入れた。経済中枢である首都・東京を守るという観点から、首都直下地震への備えを万全にしておくべきだ。企業も、BCPの充実や社会との連携を進めていく必要がある。政府には、規制緩和やインセンティブによって企業が協力しやすい環境をつくることが期待される。

後藤 斎 (内閣府副大臣・衆議院議員)
昨年の秋以降、政府は、各省庁別に60近い検討会・委員会を開催してきた。現在、こうした議論の取りまとめに注力している。私たち政治家は「想定外」という言葉を二度と使わない決意のもと、最も悲観的なケースを想定して対策を講じなければならない。規制緩和や法整備については、喫緊のものから対応していく。日本は、災害との共存を覚悟したうえで、世界一優れた減災国であることを、世界に発信していくべきである。

川合正矩 (経団連国民生活委員会共同委員長/日本通運会長)
東日本大震災では、日本通運をはじめ物流各社、鉄道・航空・海運の各輸送機関が、社会インフラとしての物流機能の維持に努め、緊急支援物資などの輸送を行った。その経験から、非常時における、交通規制等の課題、法令の弾力的運用の必要性を痛感した。災害に強い経済社会の構築に向けては、法制・体制の整備に加えて、国民一人ひとりの防災意識を向上させるために、防災教育に力を入れることが大切である。

橋本孝之 (経団連防災に関する委員会委員長/日本アイ・ビー・エム社長(現会長))
東日本大震災では、ICTの有効性が再認識された。日本IBMも、クラウド提供や「Sahana」という被災地情報支援システムによる協力を実施した。経団連会員への調査では、今回の震災でBCPの有効性がある程度実証されたが、今後はサプライチェーンや地域とも連携した広範囲のBCP強化が必要だ。また、データセンターの社会インフラ化による継続運用確保や、オフィスのサテライト化、テレワーク化による機能分散強化も重要だ。首都直下地震や三連動地震を仮定でなく未来の現実ととらえて、真剣に取り組みを強化すべきである。

久保田政一 (司会:経団連専務理事)

  • ●東日本大震災の教訓を踏まえた当面の課題
  • 「災害との共存」を前提とした国づくりを進める
  • 社会インフラとしての物流機能の発揮
  • 帰宅困難者対策のために必要な総合的な取り組み
  • 災害発生時におけるICTの重要性
  • 首都圏直下型・三連動地震を盛り込んだBCP強化が不可欠
  • ●災害に強い経済社会の構築に向けた中長期的な課題
  • 「ゆるぎない日本」の再構築を目指す
  • 省庁別だけでなく、機能ごとにBCPを統合するべき
  • 標準化とICT活用で、世界最先端の災害に強い経済社会モデルを構築
  • 防災への取り組みを通じた都市の国際競争力強化
  • 首都直下地震等を前提とした法制度の整備を
  • ●防災における官・民の連携、災害先進国としての国際貢献
  • 世界一の減災国としてメッセージを発信する

各界の取り組み:ライフラインの継続に向けた備え

石油が今後もエネルギーの「最後の砦」の役割を果すために
 天坊昭彦 (石油連盟会長)

  • 震災の被害状況・対応
  • 災害時対応力の強化
  • サプライチェーンの維持
  • 首都圏直下型地震への備え

自然災害に対応する日頃の訓練と備え
 高橋宏明 (東北電力会長)

  • 東日本大震災への対応はどうしたか
  • 自然災害に対応する訓練と備え
  • 女川原子力発電所が地域の避難者を受け入れた

災害に強い鉄道の構築に向けて
 冨田哲郎 (東日本旅客鉄道社長)

  • 災害への備え
  • 災害時の対応の強化

災害に強いネットワークづくりを通じた安心・安全な社会の実現
 片山泰祥 (日本電信電話常務取締役技術企画部門長)

  • 復旧・復興への取り組み
  • 新たな災害対策

生活者の生命を守る食品流通業界の取り組み
 中野勘治 (三菱食品会長)

  • 震災対応状況と課題
  • 製・配・販連携の動き
  • 当社の取り組み

実効性のあるBCP構築に向けて
 野口和彦 (三菱総合研究所リサーチフェロー)

  • 変わってきたBCPの位置付け
  • 実効性のあるBCPに向けての課題
  • 原因ではなく結果からの対処策の検討が不可欠

災害からの復旧に向けた取り組みの日米比較
 ステイシー・ホワイト (米国戦略国際問題研究所(CSIS)シニアアソシエイト)

  • 現地主導の復興への取り組み
  • ソフト面または行動的側面の重視

東日本大震災に対する一病院長の取り組み
~365日24時間対応できる病院であるために
 幕内雅敏 (日本赤十字社医療センター院長)
 丸山嘉一 (日本赤十字社医療センター国内医療救援部)

  • 支援のコンセプト
  • 首都直下地震を想定した取り組み

東京都の今後の防災対策の方向性と具体的取り組み
 醍醐勇司 (東京都危機管理監)

  • 東京の防災対策の目指すもの
  • 本指針における主な対応策の概要

災害に強い経済社会の構築に向けて
~経済界と行政に求められる取り組み
 松井憲一 (経団連防災に関する委員会・国民生活委員会 危機対応タスクフォース座長/出光興産副社長)

  • 自助による対策の継続・強化
  • 行政に求められる対応
  • 官民の連携による共助の展開
  • 災害に強い経済社会の構築に向けて

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一般記事

【提言】 日ミャンマー経済関係の強化を求める
~ハード・ソフトのインフラ整備を通じてミャンマーの経済発展を促す
 川村 隆 (経団連副会長、アジア・大洋州地域委員長/日立製作所会長)
 江頭敏明 (経団連アジア・大洋州地域委員会共同委員長/三井住友海上火災保険会長)

  • 高まるミャンマーへの期待
  • 首脳会議に先立ち提言を公表
  • 円借款の早期再開でインフラ整備の支援を
  • 必要な経済交流促進のための枠組みづくり

【提言】 「イノベーション立国・日本」構築を目指して
 中鉢良治 (経団連産業技術委員会共同委員長/ソニー副会長)
 小野寺 正 (経団連産業技術委員会共同委員長/KDDI会長)

  • イノベーション戦略の重要性~フロンティアを明確に
  • 未来を切り拓くイノベーション推進策
  • 産業界の主体的な取り組みと産学官“協創”の強化

「リオ+20に向けた国際対話」を開催
~持続可能な発展に向けた産業界のイニシアティブにつき討議
 坂根正弘 (経団連副会長・環境安全委員長/小松製作所会長)

  • 「先進国対途上国」という対立構造を越え相互協力を
  • 低炭素社会の構築と持続可能な開発に向けて

日・トルコ経済連携協定(EPA)の早期締結の推進で一致
~第19回日本トルコ合同経済委員会を開催
 釡 和明 (経団連日本トルコ経済委員長/IHI会長)

  • 発展を遂げるトルコとの経済交流強化へ
  • トルコの広域FTA網の積極的な活用を
  • 日・トルコEPAの重要性を確認
  • 互いの強みを活かした多様な協力関係の構築へ

連載

【ルポ】 農商工連携(シリーズ第9回)
空港護岸の海藻(アカモク)を地元の特産品として商品化
地元の漁業者と連携して地域に貢献 ~ 中部国際空港
  (経団連産業政策本部)
  • アカモク、その魅力
  • 地元の漁師と連携し、アカモクを商品化
  • 品質にこだわった最高級のアカモク
  • 漁業経営の安定化を通じた地域貢献
【ルポ】 オンリーワンで市場を開く(シリーズ第5回)
外部の力も活用しながら技術力を糧に成長
自動車部品から福祉、環境、航空宇宙まで ~ ミクニ
  (経団連産業政策本部)
  • 自動車関連部品から多分野に事業を展開
  • 次代の発展につながるビジネスの展開
  • 外部の力も活用しながら事業を発展

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