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月刊 経団連 巻頭言 民主導の経済成長の実現を

米倉弘昌 (よねくら ひろまさ) 経団連会長

わが国経済はここにきて、ようやく、好転の兆しを見せ始めている。この足元の変化を、持続的で力強い経済成長につなげていくためには、何よりも民間企業がけん引車となって、世界に誇る技術力と人材の力を梃子に、新たな成長の機会をつくり出していかなければならない。

経団連としては、民主導の経済成長の実現を目指し、この一年間、次の三つの重要課題について最優先に取り組んでまいりたい。

第一の重要課題は、国内における投資を活性化し、実需を喚起するための大胆な規制・制度改革の推進である。今後、高い成長が期待できるICT、医療、介護、環境・エネルギーの各分野において、新しい技術の活用を促進する規制・制度改革の実行を求めるとともに、農業の成長産業化や、就業機会の多様化、労働移動の円滑化を後押しする改革を実現するよう、政府への働き掛けを強めていく。

第二の重要課題は、諸外国との経済連携の推進と経済外交の強化である。今年に入り、日中韓FTA(自由貿易協定)、RCEP(東アジア地域包括的経済連携)、そして日EU EPA(経済連携協定)の三つの経済連携協定の交渉が相次いでスタートした。長く国論を二分していたTPP(環太平洋経済連携協定)についても、交渉参加が実現した。今まさに、FTAAP(アジア太平洋自由貿易圏)実現への道筋づくりと21世紀にふさわしい通商ルールづくりの両面において、わが国が主導的な役割を担い、グローバルな自由貿易体制の確立に向けた流れを一気に加速する絶好の機会が訪れている。経団連としては、EUとのEPA、ならびにTPPをはじめとするアジア太平洋地域における経済連携協定の早期実現を目指し、関係国・地域の政府および産業界との対話をさらに深め、わが国政府の協定交渉を積極的に支援してまいりたい。

第三の重要課題は、イノベーションによる新たな成長の機会の創出である。イノベーションは、日本企業の競争力の源泉であり、わが国の経済成長の原動力である。これまでも日本企業は、社会が直面しているさまざまな課題の解決に果敢に取り組み、創意・工夫を重ねて、革新的な製品や技術、サービスを次々に生み出すことで成長を続けてきた。経団連では、イノベーションの加速と、わが国の産業競争力の強化に向けた民主導の取り組みとして、2011年以来、全国11の都市で、「未来都市モデルプロジェクト」を推進している。このプロジェクトでは、環境・エネルギー、交通、物流、医療、農業などの分野における諸課題を解決するために、民間企業が自治体、大学などと協力して、都市を舞台に実証実験を行い、革新的な技術やシステムの開発を進めている。今後、この「未来都市モデルプロジェクト」を通じて得られた成果や知見を積極的に国内外に展開し、わが国産業の活性化と新たな成長の機会の創出につなげていきたいと考えている。

最後に、あらためて強調したいのは、経済成長を実現していくのは、経済のけん引車であるわれわれ経済界の責務であるということである。経営者は、国民一人ひとりに豊かさと安心をもたらす力強い経済成長を先導するのは、ほかならぬ民間企業である、そうした気概を持って果敢に挑戦を続けていかなければならない。

経団連としても、わが国経済に明るい光が差し始めた今年こそ、豊かで活力に満ちた、新しい日本の未来を切り拓くべく、「行動する経済団体」として、会員企業・団体と一丸となって民主導の経済成長の実現に向けた取り組みを強力に推進してまいりたい。

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