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月刊 経団連 巻頭言 世界から期待され、安心して暮らせる国づくりの実現へ

下村節宏 (しもむら せつひろ) 経団連審議員会副議長/三菱電機会長

これまでわが国では、決められない政治にデフレの継続が相まって、国際競争力の低下、人口の減少と高齢化等の諸課題が一層深刻な状況を招いている。消費税増税、法人税減税、規制緩和、エネルギー政策等、おのおのの利害が衝突して、解決、前進の見通しが立たない状態が続いていると思う。そのなかで、参議院選挙が終わり、久しぶりの安定政権が発足し、期待感はいやが上にも高まっている。

昨年末に電子情報技術産業協会が発表した「電子情報産業の世界生産見通し」によると、2013年度見通しでは日本の電子工業の生産高32.9兆円のうち、実に63%を海外生産が占めており、海外マーケットの拡大に加え、いわゆる六重苦を背景に、日本企業のグローバル生産体制が進展していると考えられる。日本経済に対する製造業の貢献度という観点では2000年から2011年にかけて、名目GDPが7.5%減少したうちの4.3%ポイントが製造業の減少に起因している。一方で、同じ期間の実質GDPが5.5%増加したうちの2.0%ポイントを製造業が押し上げており、日本経済に対する製造業の貢献度はいまだ健在である。

国内生産の付加価値を高めていくため、生産年齢人口の減少に対しては、ものづくり力の徹底追求により一人あたりの生産高を増加させることが必要であり、若年層の早期戦力化、女性・高齢者の活用を実行に移していくことが求められる。また、日本のブランド創出力を強化するため、マザー工場の維持・強化、世界マーケットに通用するブランドづくりに貢献する人材育成、産学連携の推進が必要である。

建設的に利害を調整し前進できるようにするためには、国民全体でビジョンを共有し、この国をどのような国にするのかをデザインしなければならない。現実と目標のギャップを定量化し、実行可能な計画をつくり、PDCAをしっかりと回していくことが求められる。衆参のねじれが解消し政治が安定した今こそ、わが国を取り巻く課題への対処が進み、世界から期待される国、そして国民が安心して暮らせる国となるよう期待したい。経済界も実現のための自立的な努力をすべき時だ。

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