フルラインアップの新たな産業構造の実現で前進を
10月1日、安倍総理が17年ぶりの消費税引き上げとともに、大胆な経済対策の実行を決定された。これは、景気回復を確実なものにすることにより、経済再生と財政健全化を両立させていく決意の表れであり、前向きに受け止めたい。
10月1日、安倍総理が17年ぶりの消費税引き上げとともに、大胆な経済対策の実行を決定された。これは、景気回復を確実なものにすることにより、経済再生と財政健全化を両立させていく決意の表れであり、前向きに受け止めたい。
エネルギーは国民生活や企業活動に不可欠の要素であり、それをめぐる政策は、国家戦略の根幹ともいえる。安倍政権では、将来の電力料金の大幅な上昇や供給不安を招き経済・社会に大きな打撃を与えかねない前政権のエネルギー政策を、現在、白紙から見直し、新しいエネルギー基本計画を取りまとめている。こうした状況を踏まえて、今後のエネルギー政策のあり方や課題について議論する。
佐々木則夫 (経団連副会長/東芝副会長)
電力料金の上昇は、産業競争力と設備投資の意欲を削いでいる。アベノミクスの「第三の矢」である経済成長を実現するためにも、安価な電力を安定的に供給することが喫緊の課題である。原発の停止により、年間三・六兆円の国富が海外に流出している。貿易収支の悪化は、財政の悪化、ひいては国債の信用低下を招きかねず、危機意識を持って、エネルギー問題に対処すべきである。原子力は世界標準の安全基準で、火力発電は高効率で環境にやさしいものに更新していくことで、「S+3E」のベストミックスが可能になる。
浅田浄江 (WEN(ウイメンズ・エナジー・ネットワーク)代表・消費生活アドバイザー)
東日本大震災後、国民のなかで原発は不要だという意識が高まり、それは二年半以上経過した現在も変わっていない。連日、汚染水問題が報道されているが、原発事故の収拾、福島の復興なくしては、原子力を電力の選択肢として考えることはできない。一方で、消費者としても、多面的にリスクを考え、冷静に判断すべき時期にきている。「S+3E」に反対する人はほとんどいない。政府には消費者が総合的にエネルギーのベストミックスを判断できるかたちでの情報の提示を、また、産業界にはさらなる技術革新を期待したい。
井手明彦 (経団連審議員会副議長・資源エネルギー対策委員長/三菱マテリアル会長)
東日本大震災から二年半余りが経過したが、電力の供給不安と料金上昇が今も続いている。国民・企業や電気事業者の努力により、大規模停電は回避されているが、楽観できる状況にはない。こうした状況が続けば、企業の投資は萎縮し、国際競争力の低下を招きかねない。「S+3E」を満たすエネルギーミックスを実現するために、新しいエネルギー基本計画には、原子力の利用を盛り込む必要がある。そのためには、事故の経験を踏まえた安全対策の実施が不可欠である。
秋元圭吾 (地球環境産業技術研究機構(RITE)システム研究グループグループリーダー)
福島の復興が信頼回復の出発点になることは間違いない。原子力発電については、安全性のリスクだけに注目するのではなく、電力供給途絶のリスクや長期的なリターンを考慮し、「S+3E」を実現するための選択肢に加えるべきである。再生可能エネルギーを増やしていくことは必要だが、現在の「固定買取制度」による導入は、結局、国民負担のかたちで跳ね返ることになる。早急に見直して、適正な価格で買い取るかたちにすべきである。
鯉沼 晃 (司会:経団連資源エネルギー対策委員会企画部会長/昭和電工取締役常務執行役員)
原発停止により、電気料金が上昇し、国富の流出、国内産業の競争力低下が進めば、厳しい未来が予想される。少なくとも電力多消費型産業の国内での新規設備投資はあり得ない。多くの日本企業がアルミ精錬から撤退した結果、「ジャパン・プレミアム」が発生したことを忘れてはならない。原子力発電所については、事故の教訓を踏まえて、安全性をさらに高める必要がある。
再生可能エネルギー政策に苦悩する欧州とアジアから学ぶこと
山本隆三 (常葉大学経営学部教授)
原子力問題の総合的解決を
澤 昭裕 (21世紀政策研究所研究主幹)
成長戦略としてのエネルギー・環境関連技術の研究開発
久間和生 (総合科学技術会議議員)
成長を支えるエネルギー政策の立案を
~今後のエネルギー政策のあり方に関する提言
http://www.keidanren.or.jp/policy/2013/089.html
加藤泰彦 (経団連資源・エネルギー対策委員会共同委員長/三井造船会長)
日本初の本格的な情報通信戦略として「e-Japan戦略」が策定されてから、10年余りがたった。この間、日本の情報通信インフラは世界最高水準のものとなる一方、公的部門の情報化は諸外国に大きく後れを取るなど、利活用面においては多くの課題を抱えている。こうしたなか、安倍政権は、共通番号法と政府CIO法を成立させるとともに、新しいIT戦略「世界最先端IT国家創造宣言」を閣議決定した。この新戦略の内容を中心に、オープンデータ、ビッグデータの活用推進、IT技術の利活用を支える人材の育成などについて議論する。
内山田竹志 (経団連副会長・情報通信委員長/トヨタ自動車会長)
経団連がかねてから要望してきた番号法と政府CIO法が成立し、新IT戦略を実現するための環境は整った。政府CIOのリーダーシップのもと、共通番号制度を活用して、行政の業務改革を行い、国民が効果や利便性を実感できる電子行政が実現することを期待している。産業界も政府CIOを全面的にバックアップしていきたい。オープンデータ、ビッグデータに関しては、プライバシー保護とデータの利活用を両立させる環境を整備し、国民のコンセンサスを得ることが大切である。
越塚 登 (東京大学大学院情報学環教授)
新IT戦略には産業界が期待する内容が網羅されており、戦略の実行が日本経済の力になることは間違いない。ただし、イノベーション創出のためには、ターゲット型の政策のみならず、チャレンジのためのコストを下げることが必要であり、そこにITの活用が期待される。人材育成に関しては、大学、大学院を卒業するまでに何を教えるかだけでなく、一度社会に出て、具体的な課題を意識した時点で大学に戻り、ITに関する最新の知識・技術を学び直すことも有効だろう。
遠藤紘一 (内閣情報通信政策監(政府CIO))
CIOとして、ITを活用して、日本社会・経済を活性化すること、災害に強い国にすること、少子高齢化のなかで適切な福祉を実現することなどを政府から求められている。大きな課題であるが、いずれの課題もITが何らかのかたちでかかわってくるので、「できない」とは言えない。まずは、小さなことでも一つ一つ実現させていきながら、前例主義の霞が関の意識改革、心のイノベーションを行いたい。行政のデータのオープン化も、積極的に行っていく。今年度中に試行版「データカタログサイト」を公開する予定である。
武山芳夫 (司会:経団連情報通信委員会企画部会長/第一生命保険常務執行役員)
共通番号制導入後の次のステージとして、企業は共通番号の利活用を考えている。例えば、保険会社では、共通番号を新しいインフラ、ツールとして活用することで、顧客に対して効率的なサービスの提供が可能になる。IT人材の育成に関しては、高度な知識・技術を擁する人材の育成についてはこれまでも議論されてきたが、ITを道具として活用して新しいビジネスモデルを創出するような人材の育成はこれからである。ITにもビジネスにも強い人材を育成するためのプログラムを産業界から提言していくことが必要である。
オープンデータによるイノベーションの本質
東 富彦 (国際社会経済研究所主幹研究員)
顧客とつながる
~モバイル・ソーシャルネットワーク・クラウドを基盤とした顧客との信頼関係の構築
ヴィヴェク・クンドラ (米国セールスフォース・ドットコムエグゼクティブ・バイスプレジデント)
米中首脳会談から垣間見えたサイバー攻撃の実態
土屋大洋 (慶應義塾大学教授)
ビッグデータ利活用と国際ルール
~成長と安全を両立するには
横澤 誠 (経団連情報通信委員会企画部会インターネット・エコノミー作業部会副主査
/野村総合研究所情報技術本部上席研究員/京都大学大学院情報学研究科客員教授)
【提言】
社会保障制度改革の推進に向けて
http://www.keidanren.or.jp/policy/2013/085.html
斎藤勝利 (経団連副会長・社会保障委員長/第一生命保険会長)
鈴木茂晴 (経団連社会保障委員会共同委員長/大和証券グループ本社会長)
事業活動との関連を意識して社会貢献活動を実施
~2012年度社会貢献活動実績調査結果
http://www.keidanren.or.jp/policy/2013/084.html
古賀信行 (経団連審議員会副議長・社会貢献推進委員会委員長/野村證券会長)
佐藤正敏 (経団連社会貢献推進委員会共同委員長/1%クラブ会長/損害保険ジャパン会長)
ブラジルとの経済関係の一層の発展に向けて
~第16回日本ブラジル経済合同委員会
飯島彰己 (経団連日本ブラジル経済委員長/三井物産社長)
日・ウクライナ投資協定を速やかに締結し、経済関係の一層の拡大と多様化を目指す
~第5回日本ウクライナ経済合同会議
岡 素之 (経団連日本NIS経済委員会ウクライナ部会長/住友商事相談役)
日・トルコEPA、産業技術協力、主要産業における事業機会について議論
~第21回日本トルコ合同経済委員会
釡 和明 (経団連日本トルコ経済委員長/IHI会長)