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月刊 経団連 座談会・対談 生産性を高め、経済の好循環を目指す

今野浩一郎
学習院大学経済学部経営学科教授

下村節宏
経団連審議員会副議長
三菱電機相談役

石原邦夫
経団連副会長
東京海上日動火災保険相談役

宮原耕治
経団連副会長・経営労働政策委員長
日本郵船会長

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宮原耕治 (経団連副会長・経営労働政策委員長/日本郵船会長)
政府には、イノベーションを起こすための規制緩和や法人実効税率の引き下げなど、国際競争上のイコールフッティングを実現することを求めたい。生産性の向上については、当社の場合、特に女性と外国人の活躍推進が重要な課題である。今年から、健康経営の推進にも積極的に取り組む。賃金等の労働条件は、総額人件費の適切な管理のもと、自社の支払能力に基づき決定することが原則である。経済の好循環の2巡目を回していくため、収益が拡大している企業にはより積極的な対応を求めたい。

石原邦夫 (経団連副会長/東京海上日動火災保険相談役)
当社の場合、従業員の約半数を占める女性の活躍推進や、海外事業の拡大に欠かせないグローバル人材の育成が大きな課題となる。人事評価の面では、年功ではなく従業員の働きにより公正に応える成果主義、実力主義を2000年ごろから取り入れており、2004年には役割と成果、およびコンピテンシーを重視して評価を行う仕組みを導入するなど、従業員の働きがい、やりがいの向上に向けて、継続的に制度の見直しを図ってきている。日頃から労使のコミュニケーションが重要であり、それがより実りある労使交渉・協議につながる。賃金の引き上げは、ベースアップだけでなく、「年収ベースの引き上げ」ととらえることで、各社が多様な対応が取れるようにすることが重要。

下村節宏 (経団連審議員会副議長/三菱電機相談役)
安倍政権には、より具体的な政策を講じ、日本経済の成長をリードしてほしい。当社は、グループ経営を推進するなかで、特にナショナルスタッフの育成が重要である。労働時間制度改革については、時間ではなく成果に報いるという方向性を支持したい。経済の好循環を実現するために業績好調な企業が貢献するのは当然のことと考えるが、個社の利益の配分に関しては、各社の将来ビジョンや状況に応じて、機械設備や研究開発への投資、配当、従業員の処遇改善などをバランスよく行っていくことが大切である。

今野浩一郎 (学習院大学経済学部経営学科教授)
生産性を向上させるには、従業員一人ひとりの能力を向上させることに加えて、能力を十分に発揮・活用できるプラットフォームづくりが大切である。政府には、そのためのインフラ整備が求められる。働き方の柔軟化を進めるにあたっては、プロセスではなく、仕事や成果を重視して評価する人材戦略への移行が必要である。人口減少、少子・高齢化のなかで経営のイノベーションに取り組む日本企業には、世界に発信できる経営モデルの確立を期待したい。

椋田哲史 (司会:経団連専務理事)

  • ●持続的な成長を実現する経営環境の確立
  • 法人税負担の軽減を含めたイコールフッティングを
  • グローバル化、大規模自然災害などのリスクに対応
  • 労働時間制度改革に期待
  • 人材の能力を発揮・活用できるプラットフォームづくり
  • ●生産性の向上を実現する人材戦略
  • 女性がいきいきと仕事ができる制度
  • 仕事と子育ての両立を支援する仕組みづくり
  • 健康経営の推進に力を入れる
  • 働き方の柔軟化をいかに進めるかが鍵
  • ●今次労使交渉・協議に対する経営側の基本姿勢
  • 「同一労働同一賃金」の問題点
  • ナショナルスタッフの育成が重要な経営課題
  • 子育て世代の40代を中心に賃金水準を引き上げ
  • コンピテンシーを重視した人事評価制度
  • 政労使会議における議論と2015年版経労委報告のポイント
  • 日頃からのコミュニケーションが大切
  • 企業の内部留保に対する誤解
  • 世界に発信できる経営モデルの確立を期待する

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