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月刊 経団連 巻頭言 スポーツの力でバリアフリー社会の実現を

早川 茂 (はやかわ しげる) 経団連副会長/トヨタ自動車副会長

2018年5月26日、横浜アリーナ。アルバルク東京がB. LEAGUE FINAL 2017-18を制し、同シーズンのB. LEAGUEチャンピオンに輝いた。その前身であるトヨタ自動車アルバルク、トヨタ自動車アルバルク東京の顧問を7年間務めた私にとっても、感慨深い日となった。

顧問に就任したことで、半年もたたずに私の生活は一変した。高校時代はバスケットボール部員だったので、そうなる素養もあったのだろう。スケジュールの許す限り試合に行き、練習を見学し、応援団を激励する。そうした方が体調もいいし、心なしか頭の回転も速くなるような気がした。そして、気が付くとあっという間に7年がたっていた。これがスポーツの力というものかと、身をもって感じる日々だった。

スポーツの力といえば、もう5年前になるが、車いすバスケットボールを題材にしたギネスビールのCMが話題になった(現在でもYouTubeなどで閲覧できる)。車いすバスケの激しい場面が続き、プレーが終わり、「さあ飲みに行こう」という声がかかり、そして1人を除いた全員が一斉に車いすを降りて歩き出す。1人の障がい者のために、健常者の仲間たちも車いすでプレーしていたのだ。有名な映画『インビクタス/負けざる者たち』が描いたように、スポーツには人々の心にあるバリアを取り除く力がある。それを短い時間で強く訴える、誠に心に触れる一篇であり、企業がスポーツの力を通じて社会を良くしていく取り組みの好事例だろう。

健常者が障がい者とともにプレーする「ユニファイドスポーツ」は、真のバリアフリー社会の実現という困難な課題の解決に大きな力になり得るものだと思う。知的障がい者にスポーツの機会を提供している「スペシャルオリンピックス」も、ユニファイドスポーツの拡大に取り組んでいる。「みんな違うけれど、みんな同じ」。2019年から21年にかけて大きなスポーツイベントが続くなかだからこそ、ユニファイドスポーツとスペシャルオリンピックスにも注目してほしいと願っている。

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