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月刊 経団連 巻頭言 “コロナ後”の世界における日本のあるべき姿 「Society 5.0」の実現・実装に向けて

佐藤 康博 (さとう やすひろ) 経団連副会長/みずほフィナンシャルグループ会長

“コロナ後”の世界においては、地政学的パワーバランスやグローバルサプライチェーン、さらには人々の生活習慣や消費行動など広範な分野での構造変化が見込まれる。

わが国としてはパンデミックに対応可能な広域医療体制の構築や、グローバルな連携体制のもと、緊急物資や戦略物資の供給・調達体制を万全なものとしていかなければならない。

一方でコロナを契機として遠隔医療や遠隔学習の活用、テレワークの実装、非接触型ビジネスやキャッシュレス化の一層の進展など日本全体でさらなるデジタル化を加速させる必要が再認識された。

デジタルトランスフォーメーション(DX)の一層の進捗はグローバルな競争に立ち向かううえで喫緊の課題であり、日本経済の競争力を強化していくうえでの最重要課題である。また、その前提となるデータの利活用にかかわる国際的ルールづくりにおいて、日本が強いリーダーシップを発揮していくことが極めて重要である。

また今回のコロナにより、感染症の拡大は社会的弱者に、より大きな被害を与えることがあらためて明確になったが、これにより所得再配分機能の強化による格差是正が社会の持続可能性を維持するうえで不可欠であることが再認識された。

持続可能な社会の構築には企業も重大な責任を負っている。投資家のみならず従業員や社会環境など、より広範なステークホルダーを意識した経営の必要性はますます高まっている。

また、現在コロナ対策として世界各国で大型の財政出動と中央銀行による流動性供給等の対策が実施されているが、緊急対策が終了した後の財政・金融政策のあり方はその後の世界経済の安定にとって極めて重要である。財政拡大、流動性拡大の結果として起こりうる諸問題への対策の検討も必須である。

このような“コロナ後”の世界に想定される構造変化に伴う諸問題への対応の方向性は、経団連が推進してきた「Society 5.0 for SDGs」の理念と軌を一にするものである。今後も日本のあるべき姿、「Society 5.0」の実現・実装に向け全力で取り組んでまいりたい。

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