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月刊 経団連 巻頭言 今こそオープンイノベーションの加速を

菰田 正信 (こもだ まさのぶ) 経団連副会長/三井不動産社長

新型コロナウイルスによる経済的・社会的打撃は、人口減少・少子高齢化、グローバル化、DX等においてわが国が抱えてきた課題を改めて浮き彫りにした。これらの諸課題を解決するには、民間主導のイノベーション創出が何よりも重要である。他社や異業種との連携、スタートアップ企業との協業等を進め、新たな価値創造の動きを加速させなければならない。

当社では、柏の葉や日比谷等、さまざまなエリアにおいて、オープンイノベーションの取り組みを推進している。特に日本橋エリアを拠点として、ライフサイエンス領域におけるイノベーション・エコシステムの構築を目的に、産学の有志とともに一般社団法人「LINK-J」(ライフサイエンス・イノベーション・ネットワーク・ジャパン)を設立し、運営している。現時点で国内の企業、大学、公的機関、スタートアップ等から海外の大学、企業に至るまで400を超えるさまざまな会員が参画しており、年間500回以上もの多彩なイベント等を通じて、コミュニティーが形成され、新たなアイデアや協業の動きが生まれてきている。また、シーズやアイデアの事業化の支援を行うなど、スタートアップの育成にも力を入れている。

オープンイノベーションの促進には、このような多様な主体を巻き込んだエコシステムの構築が欠かせない。そして、当社の経験から実感したことだが、一見その領域からは遠くにあるようなプレーヤーがオープンイノベーションの仕掛けを担うことが、既存の枠組みに捉われない新たな価値創造の促進とエコシステムの駆動につながることもある。さまざまな主体が既成概念にとらわれず、新たな領域に挑戦することの意義は大変大きいと考えている。

こうした取り組みを多様な分野で展開していくことが重要である。それと同時に、海外を含む幅広いプレーヤーを巻き込むために、国内外に向けて取り組みを広く発信することも必要である。そうすることで、非連続なイノベーションが生まれ、わが国が目指すSociety 5.0の実現につながっていくであろう。

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