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月刊 経団連 巻頭言 異なる強みでエンパワーし、イノベーションで切り拓く未来社会

時田 隆仁 (ときた たかひと) 経団連審議員会副議長/富士通社長

企業を取り巻く課題は複雑化し、激動の時代にある。

一方、最先端の技術により、社会課題の解決につながる新たなサービスが生み出されており、テクノロジーの持つ未来を切り拓く力を改めて感じている。政府も新しい資本主義の実現に向け、2022年を「スタートアップ創出元年」と位置付けた。スタートアップの活躍はイノベーションのドライバーになると期待している。

社会課題の解決には、異なる強みを持つ他者とエンパワーし合い、イノベーションを起こすことが不可欠である。この点、既存企業とスタートアップはお互いに補完できる関係にあると考える。

先般、量子コンピューター向けソフトウエアを開発するQunaSysと提携に向けて合意するとともに、当社傘下のCVC(コーポレート・ベンチャー・キャピタル)を通じて出資した。最先端の分野で優れた技術を持つスタートアップに大きな可能性を感じている。

また、ヘルスケアにも注目していて、2021年、医療×AIの分野を扱うスタートアップのプレシジョンと協業を開始した。2000人の著名な医師の知見をデータベース化した同社のAI診療支援サービスと国内トップシェアを有する当社の電子カルテを組み合わせ、医療従事者の負担軽減を実現させたいと考えている。このような活動を通じ、スタートアップと共にイノベーションを生み出す協業のスタイルを確立したい。

人材も重要な要素である。協業や転職による人の往来は、優秀な人材の活躍の場を広げ、スタートアップと既存企業の繋がりを深める。新たな領域に挑戦するスタートアップのマインドやスピードは、既存企業に新たな発想を生み出す企業文化を醸成すると考える。一方、既存企業ならではの課題の捉え方や大規模なビジネスに関わるノウハウ、人脈は、スタートアップのビジネスの実現や拡大に寄与するだろう。

既存企業とスタートアップは、エンパワーし合う関係を築き、豊かな未来社会を切り拓くことができる。当社も一企業として貢献していきたい。

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