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月刊 経団連 自分を磨き他の人に興味を持ち自分にできることから

JOINnovator! ─DE&Iを楽しむイノベーターたち
工藤 禎子
三井住友フィナンシャルグループ取締役執行役専務 グループCRO
三井住友銀行取締役兼専務執行役員
Teiko Kudo
1987年、総合職1期生として住友銀行(現 三井住友銀行)に入行。支店勤務を経て、プロジェクトファイナンス業務に長く携わった後、環境関連ビジネス、新規事業の創出・スタートアップの成長支援に従事。2014年 執行役員 成長産業クラスターユニット長、2017年 常務執行役員、2020年 専務執行役員。2021年から、三井住友フィナンシャルグループの執行役専務 グループCROを務める。
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三井住友フィナンシャルグループでグループCRO、グループ全体のリスク責任者であるチーフリスクオフィサーを務めています。主なキャリアとしては、プロジェクトファイナンスなどのファイナンスプロダクトの提供や、環境関連ビジネス、新規事業の創出支援、スタートアップの成長支援などを経験してきました。

多様なメンバーでチームを作ることの大切さ

私は、男女雇用機会均等法の施行後、総合職1期生として入行しました。大学まで男女の隔てなく過ごし、ただ仕事がしたいと思って銀行に入りましたので、当時は女性活躍や多様性の重要さをあまり意識していませんでした。

多様性の大切さを感じるようになったきっかけは、環境関連のビジネスを所管する部署の室長を務めたことです。銀行にとって新しいビジネスだったため、当時は珍しかったキャリア採用者がメンバーの中に多くいました。経験や知見だけでなく、マインドセットや物事の動かし方など、銀行にずっと勤めていたメンバーにはなかったものが加わったことで、極めて短い時間でいろいろな新しいアイデアを提案することができました。新しいメンバーと一緒にチームを作っていくことが、企業にとっても力になると実感しました。

一方で、今になって思い返すと、キャリア採用のメンバーに対して、銀行側のやり方に合わせてもらおう、という考えで接していた面もありました。必要以上に苦労をさせてしまったのではないかと思います。こちらに合わせてもらうのではなく、一緒に新しいものを作ろうという、もっとインクルーシブな考え方で臨んでいれば、新しいメンバーの力をさらに活かし、よりスムーズに物事を進められたかもしれない、と反省しています。

自分なりのリーダーのスタイル

かつてのリーダー像は、目で語って「おれの背中に付いてこい」という姿で描かれることが多く、自分の性格や話し方などを踏まえると、自分自身がリーダーになるのはとてもハードルが高いように感じていました。しかし、ある時、リーダーのコミュニケーションは必ずしも引っ張っていくタイプのものではなく、自分の経験をベースにしっかり言葉で伝えていくようなスタイルが多い、という話を聞いたことをきっかけに考えが変わりました。私が役員になった時も、「もっと堂々としなきゃ駄目だよ」ではなく、「肩の力を抜いて自然体でやればいいよ」と多くの先輩方から言われました。そのような環境の中で仕事をし、リーダーという役割を担うようになった経緯があるので、インクルーシブになろうとしてきたというよりも、むしろリーダーとしての自分なりのスタイルが、そこに活路を見いだしたのだと思っています。

インクルーシブなチームを作るには、まず相手の個性を認めることが重要だと思っています。心理的安全性が確保されている時に、人は創造性を最も発揮できるものですし、チームのメンバーとして受け入れられていると感じる時に、本当の力を発揮できると思います。そのような環境を作るために必要なのは、相手の話をよく聞くことだと思います。相手は必ずしも自分と同じ考えを持っているとは限りません。相手の行動に期待し過ぎず、思った通りに相手が動いてくれなくても落ち込まないこともポイントです。自分と違う行動をするのは当たり前で、まさにその違いが新たな価値をもたらすこともあるからです。

そして、相手の話を聞くと同時に、自分からも発信していかないと相手に理解してもらえません。お互いに自分のことを発信し、議論しながら、合意点を見つけ、共に働くことで、よりよいゴールに辿り着けると思っています。

自分で変えられるところから

壁にぶつかったり、違う価値観の方々と衝突したりした時は、とりあえず休みます。うまくいかなかった出来事を書き出すこともあります。性急に解決策を見いだそうとすると、選択肢が狭まってしまうので、いったん横に置いて、頭の中をフラットにすることを心掛けています。そのうえで、どんな選択肢があるかを考え、それらを並べてどれが最適か、比べてみます。冷静になってみると、同じ方向性でもこうアレンジすればもっといいんじゃないかとか、逆に、これは任せておいてその方向で進めていこうなど、自ずと解決策が見えてきます。

きつい言い方をされて、傷付いたこともありますが、その人はそういう人で、別に私のことが嫌いで言っているわけではないと考えることで、言われたことに過度に拘らず、物事に取り組んできました。

自分1人で変えられないことを変えようとして、過度にストレスを感じると長続きしません。少し発想を変えて、自分で変えられることに一生懸命に取り組む方が生産的かなと思っています。実際に行動して認めてもらうとか、成果を出して信頼してもらうとか、少しでも良い方向に持って行く方法がないか、いつも考えています。

個を磨き、他を支える

働き方や働く場所にいろいろな選択肢がある時代になりました。このような時代だからこそ、自分自身の力を磨いて自立し、自らの役割をしっかり果たしていかないと、多様性のある組織で力を発揮することはできないと思います。企業にとっては、様々な個性を持った従業員が、それぞれに合った働き方を選択する中で、多様な物差しで評価していくことが求められていると考えています。

一方で、他の人を支えることの重要性も増しています。以前は、同じような価値観を持ったメンバーが集まった組織でしたので、それぞれが決まったことをしっかりやっていれば、企業全体としても強くなっていきました。しかし、メンバーの価値観が多様化し、時に自分の予想と違う動きをする仲間と共に働いていると、抜け漏れや非効率が生じることもあります。かつてのように、決まった仕事をそれぞれがこなすだけではなく、周りのことにも気を配りながら、自分がサポートできるところはサポートすることが重要になっています。強みを磨いた「個」が、柔軟さを持って「他」を支える、こういう組織を作っていくことが多様性を力にするうえで必要なのではないかと思います。

他の人に興味を持ちギャップを超えていく

他の人を支える思いやりを持つためには、その人に興味を持つことが肝心なのかなと思います。相手がどのように感じているか、どのような状況にあって、どのように仕事を進めようとしているかなど、その人に関心を持つことで得られる学びも多く、自分の成長にもつながります。これからも、様々なことに興味を持ち、ミーハーでいたいなと思っています。

いま、日本でDE&Iというと、ジェンダーの問題と捉えられることが多いですが、私は、ジェネレーションギャップのほうが課題として大きいと思っています。例えば、環境問題に対する考え方の違いが代表的なものです。様々な年代の人が、この日本、地球で一緒に過ごしていますので、どの世代も楽しく安心して生きていくには、それぞれの世代の人たちが何に苦しみ、不安に思っているのかといったことを、互いに理解していく必要があります。今の世代の行いは、次以降の世代に影響を与えます。今の人たちが、地球を使い切ってしまうわけにはいきません。私たちの年代は何をやっているんだと、若い人たちに思われないよう、他の年代の方のこともしっかり理解して、ペインポイントを解決していきたいなと思います。

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