1. トップ
  2. 月刊 経団連
  3. 巻頭言
  4. 企業の継続性と人間社会の持続性

月刊 経団連 巻頭言 企業の継続性と人間社会の持続性

遠藤 信博 (えんどう のぶひろ) 経団連副会長/日本電気特別顧問

私は、企業にとって最も重要なのは「継続性」であると考えている。これには、「価値創造の継続性」と「価値創造の場の提供の継続性」という2つの意味がある。企業の継続的な価値創造努力と、多様性を有する多くの人々に価値創造の場が継続的に提供されることにより、イノベーティブな価値創出が継続され、人間社会を豊かにし、経済の好循環を促すと考えるからだ。

企業は人間社会のために価値創造をするが、その価値が、人が生きること、そして人間社会の持続性に貢献すると評価されると、企業は存続することができ、結果として、より高い価値創造力育成への投資が可能となるとともに、人間社会への価値創造、価値貢献の場を人々に提供し続けることが可能となる。一方、人間社会は企業からの価値提供なくして持続性は成り立たず、「人間社会の持続性」と「企業の継続性」とは、まさに表裏一体の関係にあると言える。

この観点から企業群は、人間社会のあるべきWell-beingについて業際を超えて主体的に議論し、人間社会の長期ビジョンを策定して、その実現のステップを人間社会に提示するという重い役目を担っていると考える。エネルギー、食糧、環境問題等、今や企業が担う役割は重みを増してきており、こうした社会課題に対する価値創造を目指す企業群がアカデミア等とともにバリューチェーンを構成し、人間および人間社会の本質や本質的欲求を深く理解しつつ、地球環境の持続性をも総合的に理解したうえで、「全体最適型の価値創造」に取り組む必要がある。

経済安全保障の観点からも、グローバルへの「継続的」な高い価値貢献は我が国の国力を保つ要であり、そのための「価値創造力の継続性」は人材育成でのみ支えられる。このため、イノベーティブな価値創造力の源泉である「個」の主体性を尊重した「多様性を育てる教育」が必須であり、企業は官学とともに、この「育てる教育システム」の早期構築に積極的に参画し、確立することが急務である。

「2023年4月号」一覧はこちら

「巻頭言」一覧はこちら