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月刊 経団連 巻頭言 創立70周年の回顧と展望 ―次なる30年に向けて

榊原 定征 (さかきばら さだゆき) 経団連会長

経団連(日本経済団体連合会)は創立70周年を迎えました。また、今年は日経連(日本経営者団体連盟)との統合から15年という節目でもあります。

70年の歴史
――日本経済発展の旗振り役として

1945年の終戦直後、戦後の復興・経済発展について、政府の諮問に応えるかたちで、日本経済連盟会が中心となり、経済団体連合委員会が設立されました。経団連は、同委員会を母体として新総合団体を設立するかたちで、1946年8月に発足しました。その設立目的は、「内外の諸問題について経済界の公正なる意見をとりまとめ、その実現に努力し、もって国民経済の自立と健全なる発展を促進する」ことであり、その精神は、現在、経団連が掲げている行動指針「Policy & Action」に連綿と受け継がれています。

経団連は、設立以来70年にわたり、常に時代の変化を先取りし、行動する総合経済団体として、日本経済の発展と国民生活の向上に、一貫して取り組んできました。終戦後、国民一人ひとりの血のにじむような努力により、日本企業・産業は、焦土から力強く立ち上がり、1968年には国民総生産が世界第2位となるなど、東洋の奇跡といわれた高度成長を実現することができました。その後も、オイルショックへの対応、貿易・資本の自由化、行財政改革の推進、貿易摩擦問題への取り組み、プラザ合意による円高への対応、バブル崩壊後の経済再生などが、日本経済の重要課題となりました。これに対し、経団連は、改革の旗振り役として、それぞれの時代に対応して、幅広い政策分野における提言を取りまとめ、その実現に努めてきました。

特に、1980~1990年代に日本経済は先進国へのキャッチアップを果たし、国際経済社会のフロントランナーの一員となりました。そのなかで、経済の面では「官主導から民主導型経済」への転換が、また、政策決定の面では政治の強いリーダーシップが求められることになりました。さらに、改革を進めるうえで、国民世論の幅広い支持が必要不可欠となりました。そこで、政策提言・実行にかかわる総合力を高めるとともに、政治との連携強化を図るため、「経済広報センター」 「企業人政治フォーラム」 「21世紀政策研究所」などを設立しました。

他方、2002年には、日経連と統合し、文字どおり、「真の総合経済団体」となりました。その背景には、政府においても省庁再編を含めた行政改革が進められていたこと、また、社会保障制度改革や労働政策は、日本経済の重要課題であり、両団体が1つになり、これらを強力に推進することにありました。これは今日振り返ってみても慧眼であり、当時の両団体の会長をはじめとする関係者の方々に敬意を表する次第です。

目下、デフレからの完全な脱却と持続的な経済成長により、2020年にGDP 600兆円経済を実現することが、わが国の最重要課題となっています。そのためには、経済と政治とがいわば車の両輪として、同じ方向を向いて、それぞれの役割を果たしていくことが求められます。

「豊かで活力ある日本」を目指して
――次なる30年へ

私が会長に就任した翌年の2015年1月、経団連は新しいビジョン「『豊かで活力ある日本』の再生」を公表しました。このビジョンは、2030年を目途に日本が目指すべき国家の姿を描いたうえで、政府、企業、国民等が取り組むべき課題を具体的に明示したものです。そのなかで、経済活力の源泉として、「グローバリゼーション」と「イノベーション」の2つの柱を掲げています。

20世紀末に冷戦が終了し、経済のグローバリゼーションが本格化してから四半世紀がたった今日、世界の政治・経済情勢は大きく揺れ動いています。途上国や新興国のみならず、先進国においても、保護主義や反グローバリゼーションの動きが顕著になっています。複数の国において、経済的な格差問題などから社会的・政治的な分断が問題となっています。

戦後、日本経済は、自由貿易とイノベーションを原動力にして、高度成長を実現してきました。今や、自由で開かれた国際経済秩序は、世界各国が経済を成長させ、豊かな生活を実現していくために不可欠な、国際公共財といえるものです。20世紀前半に生じた保護主義、経済のブロック化が、世界に悲惨な戦禍をもたらした歴史を忘れてはなりません。

自由で開かれた国際経済秩序の維持・発展は国益確保の観点から極めて重要であり、経団連は政府と連携しつつ取り組みを一層強化していきます。そのためには、同盟国である米国との経済関係をさらに強靭なものにするとともに、欧州、中国や韓国、東南アジア諸国、インド、ロシアなど、世界各国との経済対話を積極的に進めていきます。

同時に、イノベーションなくして、社会の発展はあり得ません。今、世界は、「Society 5.0(超スマート社会)」の入り口に立っています。これは、狩猟社会、農耕社会、工業社会、情報社会の次に来る全く新しい時代です。Society 5.0は、AI、IoT(Internet of Things)、ビッグデータ、ロボットなどの技術によって社会的課題を解決し、経済社会のあり方を一変させる空前の一大イノベーションであるといえます。この実現を通じ、国民一人ひとりに豊かな生活をもたらし、経済的格差の解消にもつなげていくことが求められます。経団連は、このSociety 5.0を、国内のみならず、グローバルに実現・展開するために、取り組んでいきます。

グローバリゼーションとイノベーション。この2つこそは、戦後70年の日本経済の発展の基盤をなすものであり、また、日本経済と経団連の次なる30年を展望するうえでも、欠くことのできない柱であるといえます。

経団連は、これまで諸先輩が築いてこられた多大なる実績をさらに発展させるかたちで、民主導の豊かで活力ある日本を目指して、一層、活動を強化してまいります。会員企業・団体、そして各界の皆様の変わらぬご支援、ご協力をお願いいたします。

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