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月刊 経団連 座談会・対談 世界政治経済の展望と日本の針路

佐藤康博
経団連審議員会副議長
みずほフィナンシャルグループ会長

篠原弘道
経団連審議員会副議長
日本電信電話会長

田中明彦
政策研究大学院大学長

中村邦晴
経団連審議員会副議長
住友商事会長

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中村邦晴(経団連審議員会副議長/住友商事会長)
経済界の最大の関心事は米中関係の推移だ。すでに米中摩擦の影響がさまざまなところで出てきており、世界経済が一気に冷え込む懸念もある。欧州では、Brexitに加え、ドイツ、フランスにおける政治の不安定化が気がかりだ。そうしたなか、経団連は今年1月に提言「新たな時代の通商政策の実現を求める」を公表し、WTO改革を進め、国際経済秩序の基盤として機能させることを提唱した。こうした国際経済秩序の構築においても、日本はリーダーシップを発揮しなければならない。

田中明彦(政策研究大学院大学長)
中国が経済大国として台頭する一方、先進国では、国内に格差問題を抱え、反グローバリゼーション、ポピュリズムの動きが出てきている。米中の2大国が「新冷戦」に突入するなか、日本には、今や世界の秩序構築において、そのビジョンを先導していく役割がある。自由主義・民主主義社会の繁栄を維持していくためにも、日本は各界、とりわけ視野の広い経営者の知恵を吸い上げ政策に活かすこと、特に研究開発・イノベーション創出に一層取り組む必要があり、それによって、日本の発言が世界のなかで信頼を得ることになる。

篠原弘道(経団連審議員会副議長/日本電信電話会長)
デジタル分野における覇権争いが始まるなか、日本は、米国のような巨大企業による寡占型でも、中国のような国家統制型でもない、自由で安全なデータ流通モデルを提唱すると同時に、データ利活用に関する具体的な取り組みを進めていかねばならない。また、サイバー攻撃が高度化・巧妙化するなかでは、「連携」が最も重要となる。産業界はもちろんのこと、官民、さらには国際的な連携を通じてセキュリティを確保するとともに、日本がアジア地域におけるサイバーセキュリティ対策をリードしていかなくてはならない。

佐藤康博(経団連審議員会副議長/みずほフィナンシャルグループ会長)
現在、世界で起きている変化は、100年、150年に1度の大きな変化だとみている。変化の背景には「格差問題」がある。資本主義がサステナブルなシステムであり続けるには、格差問題を解決しなければならない。米国で保護主義的なトランプ政権が誕生し、中国が覇権主義をあらわにするなか、日本には国際社会でリーダーシップを発揮していくことが期待されている。これまで日本企業が大切にしてきた価値観を「強み」とし、格差問題をはじめとする諸課題を克服していく姿を、世界に示していくべきだ。

久保田政一(司会:経団連事務総長)

  • ■ わが国を取り巻く国際環境
  • 米中による「新冷戦」の時代に
  • 米中関係の推移が最大の関心事
  • 資本主義は「格差問題」を解決できるか
  • デジタル分野における覇権争いが始まっている
  • ■ 提言「新たな時代の通商政策の実現を求める」
  • WTO改革を進め、国際経済秩序の基盤として機能させる
  • データの活用は「自前主義からの脱却」が鍵
  • テクノロジー系企業の新規参入が進む金融業界
  • 自由と民主主義を守るためのイノベーション創出
  • ■ わが国が取るべき針路
  • 日本が世界の秩序構築を主導していく時代
  • 日本企業の価値観を世界に発信していくべき
  • 「自由で安全なデータ流通」を日本が提唱していくことが重要
  • 分断が進む世界で、高まる日本への期待

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