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月刊 経団連 巻頭言 サーキュラーエコノミーが拓く日本の未来

野田 由美子 (のだ ゆみこ) 経団連審議員会副議長/ヴェオリア・ジャパン会長

21世紀はサーキュラーエコノミー(CE、循環経済)の時代だ。CEを成長戦略と位置付け先行する欧州では、オランダが2050年に廃棄物ゼロの完全なCE実現を目指し、国・企業・市民を巻き込んだ活動を展開する。同国を代表する企業フィリップスは、2025年に売り上げの25%を循環型にすると宣言し、新たな時代の競争優位を築こうとしている。フランスも、今年から消費者の「修理する権利」を強化し、CEへの転換を急ぐ。

経団連環境安全委員会は、2021年1月に小泉進次郎環境大臣とCEの推進に合意し、3月には環境省や経済産業省と共同で循環経済パートナーシップを立ち上げた。

大量生産・大量消費・大量廃棄というリニアエコノミー(直線型経済)の上に、20世紀の経済は成長と繁栄を遂げた。CEは、それを根本から刷新する経済革命だ。僅かな機能追加で買い替えを促す成長モデルは終焉し、サーキュラーでなければモノが売れない時代が到来する。再利用性・修理性・リサイクル性を勘案した設計や原料調達のゼロベースでの見直し、デジタルとデータを駆使した静脈・動脈全体におけるバリューチェーンの再構築、XaaS(ザース)やシェアリングといったビジネスモデルのイノベーション。ものづくりニッポンの挑戦は多岐にわたる。

とりわけ、人口100億の世界に向けて資源争奪戦が現実化する中、資源小国の我が国にとって、CEへの転換は安全保障上も欠くことができない。また、地域での小さな循環を目指すCEは、分散型社会への移行の切り札ともなる。修理やメンテナンス、リサイクル、シェアリングが地域単位で行われ、新たな雇用と地域の自立に繋がるはずだ。実際に欧州では、雇用創出がCE政策の目的として掲げられ、成果も報告されている。

日本には、20年に及ぶ3R(リデュース、リユース、リサイクル)政策の推進により、世界に誇るべき知見の蓄積がある。かつて市政の現場に携わった経験からも、その蓄積があればこそ、3RをCEへと昇華させることで、再び日本が世界を牽引し、地球の未来に貢献できると信じてやまない。

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