1. トップ
  2. 月刊 経団連
  3. 座談会・対談
  4. 2050年カーボンニュートラルに向けたエネルギー・気候変動政策

月刊 経団連 座談会・対談 2050年カーボンニュートラルに向けたエネルギー・気候変動政策

竹内 純子
司会:21世紀政策研究所研究副主幹

高村 ゆかり
東京大学未来ビジョン研究センター教授

山地 憲治
地球環境産業技術研究機構(RITE)副理事長

飯田 祐二
資源エネルギー庁次長

杉森 務
経団連副会長・環境安全委員長
ENEOSホールディングス会長

PDF形式にて全文公開中

昨今の異常気象の世界的な増加などを背景に、気候変動への対応は待ったなしの課題となっている。主要国・地域は、カーボンニュートラル(CN)の早期実現を旗印に、コロナからの復興も見据え、グリーン成長を国家戦略・産業政策の柱に据えて新たな競争に乗り出している。折しも2020年10月、菅義偉首相が2050年カーボンニュートラルを目指すことを宣言した。さらに、2021年4月の米国主催「気候サミット」に合わせて、日本の新たな2030年度の温室効果ガス削減目標が表明されるなど、我が国のエネルギー・気候変動政策は大きな転換点を迎えることとなった。
本座談会では、気候変動を巡る国際的な動向を展望しつつ、2050年カーボンニュートラルに向けたエネルギー・気候変動政策の方向性について議論する。

杉森 務(経団連副会長・環境安全委員長/ENEOSホールディングス会長)
経済界の気候変動問題に対する認識は既に大きく変わっている。企業は、環境問題を重要な経営課題として位置付けるようになり、経団連でも提言「。新成長戦略」において「グリーン成長」を柱の1つに盛り込んだ。また、民間外交を通じて、気候変動対策に関する提言や自主的取り組みの国際発信にも尽力している。2050年CN実現のためには、イノベーションの創出とエネルギー分野での構造転換が不可欠となる。革新的技術の開発と社会実装に向け、政府と連携して「チャレンジ・ゼロ」を推進している。また、世界で約3000兆円といわれるESG資金を国内に呼び込むためにも、官民一体で取り組む必要がある。

飯田 祐二(資源エネルギー庁次長)
日本が示した2030年目標は世界に誇れるものと考えている。また、4月の日米首脳会談では、「日米気候パートナーシップ」を立ち上げることで一致した。世界における気候変動問題への取り組みは、産業競争の側面もあり、それを踏まえた戦略が必要となる。我が国が策定した「2050年カーボンニュートラルに伴うグリーン成長戦略」では、14の重要分野、2兆円の基金、税制措置など、イノベーション創出を担う企業を長期的に支援する内容を盛り込んだ。また、電力自由化後、初めての見直しとなるエネルギー基本計画は、安定供給を最優先としたうえで、野心的ではあるが具体的道筋が明確な計画にしたいと考えている。

山地 憲治(地球環境産業技術研究機構(RITE)副理事長)
気候変動問題に携わり始めてから30年がたち、大きな進捗があった。我が国の掲げる2050年CNは正しい方向性であるが、多少議論が過熱しすぎている感もある。問題解決のためのイノベーションの必要性が当初から言われていたが、日本では研究開発と社会実装がうまく結び付けられていない。また、イノベーションと併せて、CNへのトランジション(移行)をどう進めていくかも重視すべきである。エネルギー政策においては、個々の消費者が持つEV、太陽電池などのエネルギー機器を、情報通信技術をもって活用していくことも検討すべきである。

高村 ゆかり(東京大学未来ビジョン研究センター教授)
COP21で採択されたパリ協定で努力目標と位置付けられた1.5℃目標が、この1年ほどの間に、国際社会が目指す目標となっている。気候変動問題に対する企業の認識も変化し、欧米をはじめ、感染症でダメージを受けた経済・社会を環境対策・気候変動対策によって復興させようとする動きもある。CO2排出量の少ないエネルギー源を調達できるかどうかが、企業の国際競争力にも影響を与えるようになった今、再生可能エネルギーの大量導入が必要である。低炭素・脱炭素に向けたエネルギーシステムをどう構築できるかが重要であり、それが実現できれば、海外へのエネルギー依存から脱却できる可能性も持っている。

竹内 純子(司会:21世紀政策研究所研究副主幹)

  • ■ エネルギー・気候変動政策を巡る国際動向
  • 国際動向の変化と今後の見通し
  • 気候変動外交の取り組みと方向性
  • 経済界・企業の認識と取り組み
  • 研究機関から見た国際動向
  • ■ グリーン成長に向けたイノベーションの推進
  • 政府の「グリーン成長戦略」のねらい
  • イノベーションに向けた経済界の挑戦
  • 金融が果たす役割
  • イノベーションとトランジションの重要性
  • ■ 我が国の中長期のエネルギー政策
  • エネルギー政策のあるべき方向性
  • 2050年CNに向けた電力政策
  • ■ 官民が果たすべき役割
  • CN実現における政府・企業への期待
  • 官民の連携と今後の方針
  • 政府への期待と経済界の役割

「2021年6月号」一覧はこちら

「座談会・対談」一覧はこちら