[ 日本経団連の概要 | 業務・財務等に関する資料 ]
2002年度事業報告

III.政策委員会


【政策全般】

1.総合政策委員会

(5月28日〜 奥田 碩 委員長)
(〜5月28日 今井 敬 委員長)

1.総会決議の取りまとめ

日本経団連の活動の指針となる総会決議「魅力と活力あふれる豊かな日本を目指して」を取りまとめた(4月に経団連の総合政策委員会と日経連の政策委員会の合同委員会を開催、5月28日の総会で採択)。
同決議では、前文において、「経団連と日経連が過去に培った経験とネットワークの統合により、政策提言能力と実行力を一層高め、経済界が直面する諸課題の迅速かつ着実な解決を目指す」とともに、「魅力と活力あふれる豊かな日本の創造に、全力をあげて取り組む」旨の決意を表明した。
また、「長期にわたる停滞と将来に対する閉塞感を打破するため、真に民主導の経済社会システムを構築することが急務である」旨指摘し、今後取り組むべき具体的重要課題として、以下を掲げた。

  1. 経営改革を進める
  2. 新たな事業、雇用機会を創造する
  3. 国・地方を通じた簡素で効率的な政府を実現する
  4. 地球環境問題の解決に取り組む
  5. 対外経済政策を戦略的に推進する
  6. 政治と経済界の新たな関係を確立する

2.新ビジョン「活力と魅力溢れる日本をめざして」の取りまとめ

2003年1月、「多様な価値観が生むダイナミズムと創造」、そしてそれを支える「共感と信頼」を基本的な理念として、2025年度の日本の姿を念頭に置いた「活力と魅力溢れる日本をめざして」と題する新ビジョンを取りまとめた。国民が新しいかたちの成長や豊かさを実感でき、また、世界の人々からも「行ってみたい、住んでみたい、働いてみたい、投資してみたい」と思われるような日本に再生していくために必要な改革提案と、それを実現するための日本経団連の行動方針を示した。
検討体制としては、6月、企画部会(部会長:神尾隆トヨタ自動車専務取締役)を設置し、有識者からのヒアリングなどを行いながら14回にわたって会合を開催し、原案を作成した。これをもとに、9月以降、毎月、会長・副会長会議ならびに評議員会議長・副議長会議などに諮った。また、11月には、河合隼雄文化庁長官を招いて委員会を開催し、日本の目指すべき姿と国家理念について意見交換を行うとともに、新ビジョンの方向について審議した。その上で、会長・副会長の参加のもと、12月に開催された懇談会において新ビジョンを取りまとめ、公表した。

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【経済・法制関係】

2.経済政策委員会

(5月28日〜 千速 晃 委員長)
(5月28日〜 井口武雄 共同委員長)
(〜5月28日 櫻井孝頴 委員長)

当委員会では、産業競争力強化に関する検討や、経済情勢把握、官庁統計における報告者負担の軽減を中心に、以下の活動を行った。

1.産業力強化に関する提言取りまとめ

2010年を目途とした産業力強化のあり方について検討した。7月には、経済産業省の北村俊昭審議官を招いて委員会を開催し、経済活性化・国際競争力強化について説明を聞くとともに意見交換した。
具体的な検討は、企画部会(部会長:中村正人UFJ銀行常務執行役員)を中心に行った。9月以降、7回の会合を開催し、有識者の意見を聞くとともに意見交換した。その成果を踏まえ、まず10月に、当面の政策に反映させるべき事項をまとめ、日本経団連の緊急提言「産業再生に向けて」に反映させた。また産業力強化の課題と展望に関する提言を取りまとめるべく検討を行った。

2.経済情勢の把握

(1) 経済情勢専門部会の開催
経済情勢専門部会を月1回開催し、内閣府および日本銀行からマクロ経済全般にわたって説明を聞くとともに、意見交換した。また、その時々のトピックについて、会員企業および各界有識者から広く説明を聞いた。

(2) 経済運営と経済情勢に関するアンケート調査の実施
8月と2003年1月に、常任理事および会長・副会長を対象に、経済運営と経済情勢に関するアンケート調査を実施した。調査内容は、経済成長率・株価・為替レートなどの見通し、当面の経済活性化策、中期的な成長促進策などである。調査結果はそれぞれ翌月に公表した。

3.官庁統計における報告者負担の軽減、統計行政および経済統計の改善に向けた取組み

(1) 関係省庁との意見交換
統計部会(部会長:飯島英胤東レ経営研究所会長兼社長)では、10月に、内閣府が実施予定の「民間企業資本ストックアンケート調査」について懇談会を開催し、企業における投資額、減価償却額などの把握状況や、報告者負担について、企業側の意見を内閣府に伝えた。
また2003年1月には、日本銀行が新たに公表を開始した「企業物価指数」(旧卸売物価指数)についての懇談会を開催し、日本銀行から新指数の特性などについて説明を聞いた。
2月から3月にかけては、関連府省などが参加する「統計行政の新たな展開方向に関する検討会議」の事務局を務める総務省との懇談会を2回開催し、会議の検討状況について説明を聞くとともに、意見交換を行った。

(2) 統計審議会における対応(指定統計)
政府の統計審議会(総理大臣の諮問機関)には、飯島統計部会長が委員として参画し、経済界の立場から適宜意見を表明している。2002年度は、経済産業省「工業統計調査」「商工業石油等消費統計調査」、国土交通省「法人土地基本調査」「法人建物調査」などについて意見表明した。

(3) 総務省諮問への答申(承認統計)
当委員会は、統計報告調整法に基づき官庁が実施する承認統計のうち、企業を対象とした調査について総務省から諮問を受け、報告者・利用者の観点から個別に審査し、答申を行っている(レポート・コントロール制度)。2002年度は約50件の諮問を受け、関係企業・団体の意見を踏まえて、調査の統合、改善などについて答申を行い、改善を図った。

3.税制委員会

(森下洋一 委員長)

2002年度においては、政府・与党で年初より進められた「税制抜本改革」の検討に対応し、繰り返し提言を取りまとめ、経済活性化に向けて大規模な減税を実現するよう強力に働きかけた。その結果、平成15年度税制改正において2兆円規模の先行減税が実施されることとなった。
また、産業活力再生特別措置法の抜本改正など、わが国経済の再生に必要な措置の実現に努めた。

1.「税制抜本改革」論議への対応

(1) 第2次緊急提言の公表
小泉政権が打ち出した「税制抜本改革」の検討に対しては、既に2月に、第1次提言として「制抜本改革のあり方について」を公表し、経済界としての基本スタンスを明らかにしていたが、その後、政府税制調査会、経済財政諮問会議における検討が本格化したことから、5月、第2次緊急提言「経済活力再生に向けた税制改革を求める」を取りまとめ、デフレ脱却に不可欠な住宅・土地税制の見直し、研究開発・IT投資促進税制の拡充などを早急に実施するよう主張した。
本提言は、6月に与党三党がデフレ克服に向けて取りまとめた対策「当面の経済活性化策等の推進について」の中に具体的に盛り込まれることとなった。

(2) 第3次提言の取りまとめ
これに続き、6月には、税制第3次提言「税制抜本改革の断行を求める」を公表し、経済の活力強化に向けて、まず、大胆な先行減税を行うよう強く主張した。それまでの政府の検討では、経済財政諮問会議が減税の実施を打ち出す一方、政府税調は課税ベース修復の観点から増税を志向し、考え方の対立が見られたが、経済界の働きかけもあり、8月には小泉総理から、多年度税収中立の枠組みのもとで先行減税を行うとの方針が明確に打ち出され、政府見解の統一が図られた。

2.平成15年度税制改正に際しての取組み

平成15年度税制改正においては、既に実施が確実となった先行減税を経済再生に必要十分な規模とするとともに、これを具体的な税制措置に結びつけることが最大の課題となった。そこで、9月、本年4回目の提言となる「平成15年度税制改正に関する提言−経済社会の活力回復に向けて−」を取りまとめ、2兆円を上回る減税を求めるとともに、研究開発支援税制の抜本的拡充、IT投資促進税制の創設、デフレ脱却に必要な税制措置の実現などを、与党を中心とする年末の税制改正作業において働きかけた。
この結果、平成15年度税制改正では、約2兆円の先行減税枠が確保され、その中で、研究開発・IT投資促進税制が経済界の要望通り実現した。また資産デフレ解消に向けて土地流通課税が軽減されるとともに、金融・証券税制も大胆に簡素化・軽減された。さらに、相続・贈与税も、住宅投資の拡大に配慮しつつ、大掛かりな改革が行われるなど、相当の成果があがった。
しかし、かねてより経済界が反対を続けてきた法人事業税の外形標準課税が2004年4月から資本金1億円超の大企業に限って導入されるとともに、連結付加税の撤廃、法人税率の引下げ、固定資産税の軽減が見送りとなるなど、課題も残された。

3.産業活力再生特別措置法の延長・拡充に向けた取組み

1999年に、経済界の強い要望を受けて制定された産業活力再生特別措置法が2003年3月で期限切れとなることから、7月に、産業活力再生特別措置法ワーキンググループを設置し、同法の延長・拡充について、経済産業省と意見交換するとともに改正法に盛り込むべき事項の検討を行った。この検討の内容を、上記9月の「平成15年度税制改正に関する提言−経済社会の活力回復に向けて−」において提言するとともに、9月以降も、引き続き経産省と密接に意見交換を行い、経済界の意見を反映すべく働きかけを行った。
この結果、日本経団連の主張が概ね反映される形で、改正産業活力再生特別措置法案がまとまった。

4.政府税調「中期答申」への対応

政府税制調査会は、2003年6〜7月を目途に税制改革に関する「中期答申」を取りまとめる予定である。そこで、経済界として、消費税のみならず、所得税、法人税などを含めた税体系全体について「将来のあるべき姿」を提言すべく、2003年3月以降、企画部会における検討を再開した。その一環として、3月下旬、欧州(ドイツ、フランス、ベルギー)の消費税の実態に関する調査を行った。

5.その他

(1) 連結納税制度実務問題への対応
2002年度から連結納税制度が導入されたことに伴い、法人税法通達が改定されることとなったが、営業権の時価評価の取扱いなど、実務上の問題点について、経済界の意見を取りまとめ、国税庁における通達改定作業への意見反映を図った。

(2) 日米租税条約改定問題への取組み
日米租税条約改定に向けて、日米当局において交渉が進められていることから、交渉の進捗状況について財務省より説明を聞き、内容の適否について検討した。

4.財政制度委員会

(櫻井孝頴 委員長)

当委員会では、近年における国債発行額の急増、ならびに国債保有者構造の偏りなどを踏まえ、中期的に財政運営の安定性を確保する観点から、国債管理政策のあり方について検討を行った。また、当面の財政運営について、政府の財政制度等審議会において、経済界の意見を表明した。

1.国債市場改革に関する提言の取りまとめ

これまでの国債市場改革の進展を踏まえつつ、国債残高のさらなる増嵩や、中期的に予想されるデフレ終息や金利水準正常化などの情勢変化にも対応しうる国債市場のあり方について、検討を行った。
10月には、財務省の寺澤辰麿理財局長を招いて委員会を開催し、国債市場改革への取組み状況や今後の課題について説明を聞くとともに、意見交換した。
具体的な検討は、企画部会(斎藤勝利第一生命保険専務取締役)を中心に行った。11月以降、計7回の会合を開催し、関係府省、日本銀行、格付け機関、機関投資家、市場関係者の意見を聞くとともに、意見交換した。
その成果を踏まえて、提言を取りまとめるべく検討を行った。

2.財政制度等審議会への参画

政府の財政制度等審議会(財務大臣の諮問機関)に、日本経団連からの委員が多数参画し、「平成15年度予算編成の基本的考え方について」(6月)ならびに「平成15年度予算の編成等に関する建議」(11月)などの取りまとめにあたり、経済界の立場から意見表明を行った。

5.社会保障委員会

(西室泰三 委員長)
(福澤 武 共同委員長)

当委員会は、(1)公的年金制度のあり方の検討、(2)企業年金制度の改善、(3)医療制度改革に係る基本方針のあり方の検討、(4)介護報酬の見直しなどに取り組んだ。

1.公的年金制度のあり方の検討

年金改革部会(部会長:岡本康男住友製薬副社長)を中心に、公的年金制度の今後のあり方について検討を重ね、10月に、「公的年金制度改革に関する基本的考え方」を取りまとめ、委員会の審議を経た後、政府・与党など関係方面に建議した。
提言では、活力ある経済社会の維持を図りながら、負担と給付の両面から制度を改革し、中長期的に持続可能な制度を構築することを求めた。改革の方向性としては、(1)基礎年金における「真の」国民皆年金の確立、(2)保険料負担を低い上限に固定、(3)既受給者を含む給付水準の引下げなどを提示した。
基礎年金については、老後のセーフティネットとして、消費を賦課対象とした間接税方式へ移行することを基本に、2004年改正で(1)消費税を財源にした国庫負担1/2への引上げ、(2)被用者年金保険料の1階と2階の完全分離を提案した。報酬比例年金については、基礎年金の上乗せとしての性格を明確にし、保険料率として20%を大幅に下回る水準に抑制する一方、給付水準を高齢者世帯の消費支出等を踏まえ大幅に引下げることを求めた。
また、厚生労働省が12月に「年金改革の骨格に関する方向性と論点」を公表したことを受けて、年金改革部会では、2003年3月に、先の提言で示した主張を踏まえながら、「厚生労働省『方向性と論点』について」を取りまとめた。

2.企業年金制度の改善

企業年金2法が施行されたものの、資産運用環境の長期かつ大幅な悪化により、企業年金の存続問題は重要な経営課題となっている。そこで、年金改革部会では、11月に「企業年金制度に関する規制改革要望」を取りまとめ、制度を維持・存続させるとともに、新制度への円滑な移行を促進するために、当面必要な最小限の要望項目を取りまとめ、厚生労働省に対して働きかけを行った。
この結果、2003年4月に関係政省令・通知が見直され、キャッシュバランスプランに係る改善(例えば、キャッシュバランスプラン類似制度の創設、年金換算率の弾力化など)が認められる見通しとなった。
また、平成15年度税制改正で企業年金の積立金に係る特別法人税の撤廃を求めた結果、課税凍結が2年間延長されることになった。

3.医療制度改革への取組み

医療改革部会(部会長:森昭彦ミレアホールディングス副社長)では、2002年7月成立の改正健康保険法・附則にある保険者の再編・統合を含む医療保険制度の体系のあり方、新しい高齢者医療制度の創設、診療報酬体系の見直しに関し、2003年3月末までに政府が策定する基本方針への対応について、9月以降集中的に検討を行い、2003年1月に「医療制度の抜本改革に関する基本的考え方と『厚生労働省試案』に関する見解」を取りまとめた。その中で、保険者機能発揮を阻害する財政調整に反対するとともに、老人保健拠出金の廃止と65歳以上を対象とする新高齢者医療制度の創設、医療費抑制策の明示などを求め、坂口力厚生労働大臣との意見交換、与党各党ヒアリングなどを通じ、意見の反映に努めた。
なお、保険者機能強化の一環として、従来から求めてきたレセプトの自主的管理に関連して、2002年12月、診療報酬の審査・支払について社会保険診療報酬支払基金を通さずに、健保組合が自ら行えることが認められた。

4.介護報酬改定への対応

医療改革部会では、2003年度介護報酬改定について、近年の厳しい経済情勢に鑑み、介護サービスの効率化と介護報酬の適正化による介護費用と保険料上昇の抑制を図る観点から検討を行った。この結果、介護報酬全体でマイナス2.3%の改定(在宅0.1%増、施設マイナス4.0%)が行われた。
また、2002年10月、政府の「構造改革推進特区のためのプログラム」において、特別養護老人ホームの設置主体および経営主体として、公設民営方式またはPFI方式による株式会社の参入が認められた。

6.金融制度委員会

(片田哲也 委員長)
(5月28日〜 西川善文 共同委員長)
(〜5月28日 橋本 徹 共同委員長)

当委員会では、不良債権問題の解決、資本市場の活性化など金融システムの健全な発展に向け、以下のような課題に取り組んだ。

1.金融制度委員会の開催

2003年2月に委員会を開催し、金融庁の藤原隆総務企画局長より「証券市場の改革促進プログラム」および「金融再生プログラム」に沿った行政の取組みなどについて説明を聞くとともに、意見交換を行った。

2.金融システム安定化の取組み

政府の「金融再生プログラム」の取りまとめに向けて、「金融システム安定化とデフレ対応策の早期実施を要望する」(10月)を公表し、不良債権処理の加速とともに、産業再編、資産デフレ対策、雇用や中小企業に係るセーフティネットの整備などを提言した。竹中平蔵金融担当大臣、平沼赳夫経済産業大臣に手交するとともに、関係方面に建議した。

3.資本市場活性化の取組み

資本市場部会で「証券市場の活性化を求めて」(5月)を取りまとめ、市場行政と業者行政の分離と市場の投資家からの信頼回復などを求めた。また全国証券大会(9月)で、日本経団連代表が、意見書の趣旨に沿って、市場活性化を訴えた。
政府の金融審議会では第一部会に日本経団連から委員が参加し、私募制度の合理化、12時間ルールの見直し、発行登録制度の要件拡大などの方向付けをした。また、同審議会公認会計士制度部会に日本経団連から委員が参加し、監査の質と効率性の向上などを柱とする公認会計士法改正の方向付けをした。さらに、東京証券取引所が提案する上場規則による四半期開示義務化について、むしろ法制化を前提とする議論をすべきとの意見を公表した(9月)。
証券決済改革では、発行会社の立場から、日本証券業協会の報告書「証券決済制度改革の推進に向けて」の取りまとめに協力した。また、改革のあり方につき、証券保管振替機構などと意見交換したほか、同機構の業務委員会に参加し、運営の効率化などを求めた。
東京証券取引所の市場運営委員会に経済界の意見を伝えたほか、上場関係料金の見直し案に対して意見を提出した。また上場会社コーポレート・ガバナンス委員会において、日本経団連より、同取引所によるガバナンスモデル提示は時期尚早との意見を述べた。

4.規制改革への取組み

規制改革要望(10月)において、証券化、IT化および証券市場の制度インフラ整備の観点から32項目を要望した。要望項目の多くは、「規制改革推進3か年計画(再改定)」に盛り込まれた。政府の金融審議会信託に関するワーキンググループ、産業構造審議会新たな企業金融機能のあり方に関する検討小委員会に日本経団連が委員として参加し、信託業の事業会社への開放、受託可能財産の拡大などを働きかけた。

5.金融問題打合会の開催

主要企業の財務担当役員による金融問題打合会(座長:片田哲也小松製作所取締役相談役)において、深尾光洋慶應義塾大学教授および岡部直明日経新聞社論説副主幹より、不良債権処理などについて説明を聞いた。

6.私的整理に関するガイドラインの明確化

9月に「私的整理に関するガイドライン実務研究会」が発足し、日本経団連がオブザーバーとして参画した。「私的整理ガイドライン」(2001年9月)の明確化に関し、11月に検討結果が取りまとめられた。

7.「円の国際化推進研究会」への参画

9月に発足した「円の国際化推進研究会(座長:吉野直行慶應義塾大学教授)」に、経済界から多数の委員が参画し、2003年1月公表の「座長取りまとめ」に協力した。

7.経済法規委員会

(5月28日〜 御手洗冨士夫 委員長)
(小林正夫 共同委員長)
(〜5月28日 千速 晃 共同委員長)

国際化、競争の激化ならびにデフレ経済の進行といった環境変化に、企業が機動的かつ柔軟に対応できるよう、2002年度も制度インフラである企業法制の見直しを求めた。

1.商法

5月に、日本経団連要望の反映された会社機関、株式制度、計算に係る多岐にわたった商法改正が実現した。そこで11月に武井一浩弁護士を招き、改正商法の解説セミナーを開催したほか、企画部会(部会長:西川元啓新日本製鐵常務取締役)では、12月に商法施行規則改正案に対するコメントを取りまとめるなど、改正のフォローアップを行った。コーポレート・ガバナンス部会(部会長:村山敦松下電器産業副社長)では、欧米のコーポレート・ガバナンス改革への取組みについて検討するとともに、会社機関のあり方に関するアンケート<PDF>を行い、改正商法への対応につき検討した。
9月、政府の法制審議会会社法(現代化関係)部会では、さらなる商法改正要望を西川企画部会長より説明した。2003年3月には森山眞弓法務大臣との懇談会を開催し、改正商法の残された課題などにつき意見交換した。

2.司法制度改革

内閣に設置された司法制度改革推進本部の顧問会議や各検討会を通じて、法曹人口の拡大、裁判の迅速化など経済界要望の実現を働きかけた。また、2003年通常国会提出の裁判迅速化に向けた民事訴訟法の改正に関し、証拠収集手続の濫用防止措置を求める意見を提出した。

3.会計制度

金融庁企業会計審議会での減損会計と企業結合会計の基準策定や中間監査基準の改訂、金融審議会での公認会計士法改正やディスクロージャー制度の充実といった課題に対して、企業会計部会(部会長:八木良樹日立製作所副社長)で意見を取りまとめ、その実現に努めた。会計基準設定のために2001年に設けられた企業会計基準委員会とその運営母体である(財)財務会計基準機構(理事長:小林共同委員長)の活動を支援した。また、国際会計基準審議会(IASB)に対し、基準諮問会議に八木企業会計部会長などが参画し、過度な時価主義に警鐘をならした。また、トラスティー会合には橋本徹ドイツ証券顧問が参加するとともに、資金面での貢献に積極的に努めた。
また、2002年7月に成立した米国企業改革法に関し、米国上場の日本企業への会社機関の規制強化が懸念されるため、10月、2003年1月に適用除外をSECに求めた。

4.民事基本法

政府の法制審議会での担保・執行法制の見直しについて、企画部会では、2002年5月に滌除や短期賃貸借保護制度の撤廃・改善を求めた。2003年2月の要綱では、要望の多くが反映された。
また、倒産法関連では、2002年12月に会社更生法の改正を実現し、2003年秋の破産法の改正に向けて意見を提出した。
消費者法部会(部会長:宮部義一三菱樹脂相談役)では、国民生活審議会の「21世紀の消費者政策の在り方」の検討において、消費者、事業者行政の責務や公益通報者保護制度などについて、5月2003年1月に基本的考え方を示した。

5.独禁法・競争政策

10月に大規模会社による株式保有規制撤廃に伴うガイドライン改正について、12月に下請法改正に関して、12月、2003年1月に企業結合規制について、それぞれコメントを取りまとめ、経済界の意見をガイドラインなどに反映するよう努めた。

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【行革・産業・国土関係】

8.行政改革推進委員会

(5月28日〜 出井伸之 共同委員長)
(草刈隆郎 共同委員長)
(〜5月28日 大賀典雄 委員長)

1.規制改革への取組み

当委員会では、関係委員会と連携し、民間主導による産業競争力の強化と経済活性化という観点から、規制改革を推進してきた。
5月には、当委員会の規制改革推進部会委員などを対象としたアンケートをもとに「経済活性化に向けた規制改革緊急要望」を取りまとめ、小泉総理大臣、総合規制改革会議など関係先へ建議した(計72項目)。
10月には、全会員企業を対象に実施したアンケート調査をもとに「2002年度規制改革要望」を取りまとめ、総合規制改革会議など関係先へ建議した(全16分野、計319項目)。
こうした建議を実現する観点から、当委員会は、内閣府総合規制改革会議の活動を全面的に支援するとともに、経済財政諮問会議などへの働きかけも適宜行ってきた。例えば、6月に、総合規制改革会議において緊急要望を説明したところ、政府は「規制改革の早期実現、前倒し等に係る措置状況について(石原イニシアティブ)」(2002年9月)をまとめ、日本経団連の緊急要望のうち、合計50項目について、早期に積極的な取組みを講ずることを発表した。また、9月には2002年度要望を説明したところ、総合規制改革会議は、「規制改革の推進に関する第2次答申」(2002年12月)において、日本経団連の要望319項目のうち、約90項目について、何らかの取組みを講ずるよう、総理に答申した。さらに、2003年3月に閣議決定された「規制改革推進3か年計画(再改定)」にも、日本経団連の要望が数多く盛り込まれた。

2.市町村合併等の地方分権改革推進に向けた活動

地方分権改革については、4月に行われた地方分権改革推進会議(議長:西室泰三東芝会長)の有識者ヒアリングにおいて、草刈共同委員長が規制改革の推進による国・地方が一体となった行財政改革の必要性、内政構造改革推進の観点からの地方自治体の再編・効率化などを中心に意見を陳述するとともに、その後の同会議の調査審議についてフォローを行った。
また、基礎的自治体における行財政能力を高める上で不可欠な課題である市町村合併の推進については、21世紀の市町村合併を考える国民協議会(会長:樋口廣太郎アサヒビール相談役名誉会長)と連携を図りつつ、経済団体としての立場から、国民に対する合併機運の醸成や自治体関係者の決断を促すよう広報活動に取り組んだ。

3.郵便事業への民間参入推進

総務省よりパブリックコメント手続きに付された「信書に該当する文書に関する指針(案)」などに対して、11月に、ユニバーサルサービスの対象とすべき「信書」の範囲は、「国民の基本的通信手段」を確保する上での必要最小限に留めるべきとし、(1)基本的には、一般国民の意思疎通に利用される種類の文書(例えば定型の封書、葉書など)に限定すべき、(2)ダイレクト・メールについては、すべて信書に該当しない文書に分類すべき旨、意見を提出した。

9.産業問題委員会

(香西昭夫 委員長)
(5月28日〜 齋藤 宏 共同委員長)
(〜5月28日 瀬谷博道 共同委員長)

当委員会では、経済再生の主役である企業の自助努力を促す諸施策について検討を進め、2002年度は以下の活動を行った。

1.提言「新たな成長基盤の構築に向けた提言」の取りまとめ

当委員会設置以来4年間の活動を総括するとともに、わが国が直面する産業の空洞化、デフレ・スパイラル、少子・高齢化の急速な進行といった課題を克服し、新たな成長基盤を確立するための需要・供給両面からの総合的な政策について、昨年度からの検討を踏まえ、4月に提言「新たな成長基盤の構築に向けた提言」を取りまとめ、政府・与党など関係方面に建議した。

2.構造改革特別区域制度の推進

各地域の特性に応じて規制の特例措置を定め、地域の活性化、規制改革の推進を図る構造改革特別区域制度の創設、推進に努めた。
総合規制改革会議の規制改革特区ワーキンググループにおいて、5月に立花常務理事が特区に対する日本経団連の基本的考え方を説明した。その際示した、(1)民間・自治体からの発意に基づくこと、(2)特例措置のメニューを幅広くすること、(3)特別法の制定と推進組織の設置などの考え方は、政府の構造改革特別区域推進本部の設置、構造改革特別区域法の制定(12月18日)ならびに構造改革特別区域基本方針の閣議決定による93件の特例の創設に結びついた。
11月には、構造改革特区担当の鴻池祥肇大臣を招き懇談会を開催した。また、民間企業からの特例措置に関する提案方につき、各地経済団体や日本経団連のホームページを通じて広報活動を行った。こうした提案を踏まえ、2003年3月18日には、構造改革特別区域法改正法案が国会に提出されるに至った。

10.新産業・新事業委員会

(5月28日〜 高原慶一朗 委員長)
(〜5月28日 出井伸之 共同委員長)
(〜5月28日 高原慶一朗 共同委員長)

2001年度の企画部会(部会長:鳴戸道郎富士通特命顧問)における検討の結果を、4月に「新産業・新事業創出に関する提言」として取りまとめ、ベンチャー・創業支援税制の実現などに向けて、関係委員会と連携しつつ関係方面に働きかけた。その他以下の活動を行った。

1.起業フォーラムの設置

上記提言のフォローアップの一環として、日本経団連会員企業経営者とベンチャー企業経営者との情報・意見交換、人的交流を通じて、起業家精神の涵養と企業間連携の推進を図り、もって新産業・新事業を創出すべく、「起業フォーラム」を設置した(代表世話人:高原委員長)。
7月に第1回を開催し、フォーラムのアドバイザーを務める奥田会長、御手洗副会長、フォーラムの設置に世話人として協力いただくことになったベンチャー企業経営者らが、堀紘一ドリームインキュベータ社長の司会の下、新産業・新事業創出に関して意見交換を行った。
第2回は、11月に開催し、島田晴雄慶應義塾大学教授による「新産業・新事業創出を目指して−生活産業創出のすすめ」と題する基調講演の後、ベンチャー企業側、大企業側それぞれ2名をパネリストに迎えて、企業間連携をテーマに実例を踏まえながら意見交換を行った。
第3回は、2003年2月に開催し、日本経団連会員企業2社から新規事業への取組みについて説明を聞くとともに、分科会に分かれて、ベンチャー企業8社の事業紹介を行った。
なお、この間、運営委員会(委員長:熊谷巧日興アントファクトリー会長)を2回開催した。

2.起業家懇談会の開催

起業家と日本経団連首脳が、新規事業の創出や経済活性化のための方策などを意見交換する場として、2000年度より開催している「起業家懇談会」の第6回を、2003年2月に開催した。
当日は、上記第3回起業フォーラムで事業紹介を行ったベンチャー企業のうち、中冨一郎ナノキャリア社長、宇佐美一弘ユーケーテック社長、中森秀樹ナノテック社長、山崎伸治シニアコミュニケーション社長を招き、日本経団連側出席者(奥田会長、高原委員長、出井伸之評議員会副議長他)らと懇談した。

3.日米起業フォーラムを後援

2003年2月、経済産業省、米国商務省が中心となって開催した「日米起業フォーラム〜ビジネスへのチャレンジによる経済再生に向けて」を日本経団連として後援した。
同フォーラムは、2002年4月の平沼赳夫経済産業大臣とエバンズ商務長官との会談において合意された、日米間のビジネス関係緊密化のための協力イニシアティブの一環として開催されたものである。
当日は、起業教育・トレーニング、イノベーションの役割、キャピタル・フォーメーション、法・規制と起業インフラについて、日米の有識者等によるパネルディスカッションが行われた。

11.情報通信委員会

(岸 曉 委員長)
(2003年3月10日〜 石原邦夫 共同委員長)

1.IT戦略の推進

情報化部会(部会長:〜11月三吉暹トヨタ自動車相談役、11月〜棚橋康郎新日鉄ソリューションズ社長)で取りまとめた、効率的で質の高い電子政府の実現方策、高度道路交通システム(ITS)の利用促進策などを、4月に開催された内閣のIT戦略本部で提案<PDF>するなど、「e-Japan重点計画-2002」に経済界の意見が反映されるよう、働きかけた。
秋以降、IT戦略本部において、新戦略に関する検討が始まったのを受け、まず、「e-Japan戦略のあり方に関するアンケート」を実施するとともに、11月からは、情報化部会において、ITユーザー企業からヒアリングするなど検討を重ね、2003年2月には、中間整理を行うとともに、部会長所感を公表した。さらに、3月には、検討結果を部会報告として整理し、その内容を踏まえ、「新IT戦略に関する提言」を取りまとめ、建議した。
以上と並行して、電子商取引の推進に関するワーキング・グループ(座長:村上輝康野村総合研究所理事長)では、情報セキュリティの問題を中心に検討を行い、2003年3月に報告書「安心・安全で自由なネット社会を目指して」を取りまとめ、上記提言にその内容を反映させた。

2.情報通信法制の再構築

2002年4月、提言「IT分野の競争政策と『新通信法(競争促進法)』の骨子」(2001年12月)をもとに改めて考え方を整理し、政府の情報通信審議会基本法制検討作業部会で意見陳述した。7月には、同審議会最終答申草案について、通信・放送政策部会(部会長:潮田壽彌味の素専務取締役)で検討し意見を提出するなど、事業者規制法ともいうべき電気通信事業法を競争促進法の体系へ転換するよう働きかけた。その結果、一種・二種事業区分の撤廃などを内容とする事業法の改正法案が2003年3月に国会に提出された。
なお、この間、事業法の抜本改正が一部規制強化につながることがないよう、IT戦略本部などを通じて働きかけた。

3.電波の有効利用の推進

通信・放送政策部会では、7月以降、情報通信ワーキング・グループを中心に電波利用者からヒアリングを行うなど、電波の利用効率の向上と新規需要への対応のあり方について検討を重ね、12月に報告書「電波の有効利用に向けて」を取りまとめた。
また、上記部会報告を踏まえ、総務省「電波有効利用政策研究会」の報告書案に関し意見を提出した。

4.規制改革の推進

規制改革に関するアンケート調査に寄せられた回答をもとに40項目の規制改革要望を取りまとめ、「2002年度日本経団連規制改革要望」に盛り込んだ。重点要望項目の一つである電気通信機器の基準認証制度への自己適合宣言方式の導入については、総務省「端末機器及び特定無線設備の基準認証制度に関する研究会」で意見陳述するとともに、2度にわたり意見を提出した。

5.ブロードバンドコンテンツの流通促進

日本経団連の呼びかけで設立されたブロードバンドコンテンツ流通研究会では、著作権処理を迅速・簡易に行えるような環境の整備に向け検討を重ね、2003年3月、中間的な取りまとめを行った。

6.国際的な動向の把握

GBDe( Global Business Dialogue on E-commerce )の関係者、英国のアンドリュー・ピンダーe政策担当特使、米国コロンビア大学のエリ・ノーム教授らと意見交換を行い、国際的な動向の把握に努めた。

12.流通委員会

(平井克彦 委員長)

1.わが国の流通分野に求められる基盤整備についての検討

経済のグローバル化に伴う国際分業構造の変化、IT革命の進展、景気低迷に伴う消費不振、デフレの進行などにより、わが国の流通をめぐる環境は激変しつつある。そこで、9月に永野健二日本経済新聞社日経MJ編集長を招き、わが国流通の現状と課題について意見交換を行った。
このような委員会の問題意識を受けて、当委員会の企画部会(部会長:小林栄三伊藤忠商事常務執行役員)では、流通分野における高コスト構造の是正や物流の効率化に求められる環境整備などについて、関係業界へのヒアリング行うとともに、提言の作成に向けた論点整理を行った。

2.規制改革要望の取りまとめ

大店立地法関連に加え、酒税法、食品衛生法、薬事法などに基づく、参入・設備・価格・必置規制など、流通分野における規制改革要望(計17項目)を取りまとめ、10月に政府・与党に建議するとともに、その実現を関係方面に働きかけた。

13.農政問題委員会

(丹羽宇一郎 共同委員長)
(5月28日〜 佐藤安弘 共同委員長)
(〜5月28日 大國昌彦 共同委員長)

1.企画部会における検討

2003年3月末の農業モダリティ確立を目指したWTO農業交渉の進行や、メキシコ、東アジア諸国などとの自由貿易協定(FTA)締結に向けた交渉の開始など、貿易自由化の潮流に耐え得るわが国農業の構造改革の加速化に向け、経済界の意見を総合的に取りまとめるべく、企画部会(部会長:松崎昭雄森永製菓相談役)を中心に検討を進めた。
同部会では、JA共済総研の松井治明客員研究員(5月)、宮城大学大学院事業構想学研究科の大泉一貫教授(2003年1月)を招き、わが国の食料を巡る問題点や農協のあり方、農業経営の活性化と企業の関わり方について説明を聞いた。また、秋田県十文字町認定農業者会の金沢隆志会長の経営する農園などを訪問し、現地の関係者より同町の農業の現状および今後の課題につき説明を聞き、意見交換を行った(6月)。こうした検討を踏まえ、同部会の下にワーキンググループを設置し、農政改革に向けた考え方の整理を進めた(11月、12月、2003年2月)。

2.政府との関係

農林水産省と首脳レベルの懇談会を開催した(7月)。日本経団連からは奥田会長をはじめ関係副会長、委員長などが、農林水産省側は武部勤農林水産大臣をはじめ同省幹部が参加し、「食」 と 「農」 の再生プランの進捗状況、WTO農業交渉やFTAの状況などを中心に農林水産行政に関する意見交換を行った。また、今後も時宜に応じて、意見交換を行うこととした。食糧庁の「生産調整に関する研究会」に立花常務理事が、また農林水産省の「農協のあり方についての研究会」に松崎企画部会長が参画し、経済界意見の反映に努めた。

14.国土・都市政策委員会

(5月28日〜 平島 治 共同委員長)
(5月28日〜 岩沙弘道 共同委員長)
(〜5月28日 香西昭夫 委員長)
(〜5月28日 今村治輔 共同委員長)
(〜5月28日 田中順一郎 共同委員長)

1.都市再生問題への取組み

日本経団連の働きかけなどを受け、都市再生特別措置法が2002年4月に成立した。本法の一層の活用による都市の活性化を図るため、5月にシンポジウム「東京圏における都市再生を考える」を開催した(東京商工会議所、経済広報センター、日本プロジェクト産業協議会との共催、国土交通省後援)。
9月には、東京都の青山ヤスシ副知事を招き、委員会を開催し、東京都の都市再生について意見交換するとともに、土地・住宅分野の規制改革要望、税制改正要望について審議を行った。また、2003年3月、委員会を開催し、都市再生本部事務局の和泉洋人次長から、都市再生本部の取組みについて説明を聞いた。
さらに、平成15年度税制改正に向け、精力的に関係方面に働きかけた結果、都市再生特別措置法に関連した税の特例措置が講じられるとともに、不動産流通課税の軽減が実現した。

2.提言「PFI事業の推進に関する第二次提言」の取りまとめ

4月および5月、PFI推進部会(部会長:鈴木誠之清水建設顧問)を開催し、「民間PFI事業者からみたPFI事業の問題点と要望等」について説明を聞いた。また5月には、英国パートナーシップUK代表のジェームズ・スチュワート氏と昼食懇談会を開催し、PFIの現状などにつき意見交換を行った。さらに6月のPFI推進部会での審議、6月の委員会(来賓:内閣府民間資金等活用事業推進室有木久和参事官)での審議を経て、提言「PFI事業の推進に関する第二次提言」(6月)を取りまとめ、関係方面に建議を行った。
その一環として、6月、片山虎之助総務大臣の出席を得て、民間事業者および地方自治体関係者を対象に「官民交流PFIシンポジウム」を開催した(地域総合整備財団との共催、総務省後援)。さらにアドバンス・セミナーとして、日本政策投資銀行ならびに日本PFI協会との共催により、「PFI経団連ゲストハウスセミナー」を開催した。
7月には、自民党PFI推進調査会において、提言の実現方を働きかけた。
PFI事業者の選定手続を改善するため、打合会を開催(4月、9月、2003年1月)したほか、財務省などの関係省庁と論点を詰めた結果、2003年3月、日本経団連の要望趣旨が反映されるかたちで方針が示された。

3.観光振興に向けた取組み

「21世紀のわが国観光のあり方に関する提言」(2000年10月)をフォローアップする観点から、農山村地域の活性化や都市と農村の交流の拡大につき、農林水産省と意見交換を行った(2002年10月)。また、政府が取り組む「グローバル観光戦略」につき、国土交通省観光部の本田勝企画課長より説明を聞いた(12月)。さらに、エコツーリズムの多面的活用について、日本エコツーリズム協会の高梨洋一郎理事および岩手県の小原豊明二戸市長より説明を聞く(2003年2月)とともに、都市と農村の交流をいかに図るかについて、都市農産漁村交流活性化機構の加藤清氣常務理事および全国山村振興連盟の黒澤丈夫副会長と懇談した(2月)。

4.その他

2002年4月1日施行の沖縄振興特別措置法に金融特区の制度が盛り込まれたことから、「沖縄金融特区研究会」を設置し、特区制度や金融センター活用例、企業誘致方策などにつき、検討を重ねた。

15.住宅政策委員会

(和田紀夫 委員長)

1.今後の住宅政策のあり方について検討

経済活性化や豊かな国民生活の実現には住環境の整備が重要であるとの認識のもと、従来の国土・住宅政策委員会を改編し、新たに住宅政策委員会を発足させた(5月)。当委員会では、経済社会の変化に対応した住宅政策のあり方について検討することとし、企画部会(部会長:立花貞司トヨタ自動車取締役)を中心にヒアリングなどを行った。具体的には、国土交通省の松野仁住宅局長からわが国の住宅政策の諸課題について(9月)、東京大学の八田達夫教授から都市政策との関連を含めた住宅政策のあり方について(12月)、それぞれ委員会を開催し、説明を聞いた。また、住宅金融公庫より住宅金融公庫の今後の展開について(10月)、国際大学の宮尾尊弘教授から今後の住宅税制のあり方について(11月)、国土交通省から諸外国とわが国の住宅政策について(2003年2月)、都市基盤整備公団から都市計画・建築規制のあり方について(3月)、東京都から東京都における住宅政策の現状と展望について(3月)、それぞれ企画部会を開催し、説明を聞くとともに意見交換を行った。

2.住宅・土地税制改正に向けた取組み

「住宅・土地政策に関する打合せ会」を開催し(6月、9月)、具体的な考え方を取りまとめ、日本経団連税制改正要望(9月)に盛り込んだ。また、自民党国土交通部会住宅(建築)・土地ワーキングチーム(9月)などを通じて、和田委員長から経済活性化やデフレ脱却に資する税制改正の実現につき積極的に働きかけた。こうした活動の結果、平成15年度税制改正において、新しい住宅贈与に係る特例制度が導入されたほか、土地の流通課税が大幅に軽減されるなど、住宅・土地関連税制において大きな成果を得た。

16.輸送委員会

(三浦 昭 共同委員長)
(5月28日〜 岡部正彦 共同委員長)
(〜5月28日 常盤文克 共同委員長)

1.輸出入・港湾諸手続のワンストップサービス実現に向けた取組み

経済界の長年の要望であった輸出入・港湾諸手続のワンストップサービスについては、政府のIT戦略本部において、2003年度のできるだけ早期に、輸出入・港湾関連手続のシングルウィンドウ化を実現することが決定された。しかし、各種申請の見直しや現行の申請書類の徹底した簡素化など、電子化に先立って行うべき輸出入・港湾諸手続全般の業務改革(BPR)は進んでいない。そこで、「輸出入・港湾諸手続のワンストップサービス打合せ会」(実務家レベルの専門家で構成)では、民間事業者の意見を施策に反映させるべく、関係府省(内閣官房、財務省、国土交通省、厚生労働省、農林水産省、法務省、経済産業省)と意見交換を行い、BPR促進を強く働きかけた(2003年1月)。加えて、韓国・釜山港および台湾・高雄港におけるBPRの実態を調査するため、現地視察を行った(3月3〜7日)。
こうした検討の一環として、国土交通省の川島毅港湾局長より、港湾整備の課題と2002年度の施策の展開について説明を聞いた(6月)。また、わが国港湾の国際競争力強化と港湾運送事業の規制緩和をいかに進めるかという観点から、国土交通省海事局港運課の長田太課長より、規制緩和による港湾運送事業の構造改革などについて説明を聞いた(2003年1月)。
さらに、自民党港湾特別委員会において、林産業本部長より「産業構造の変化に対応した港湾地域の活性化」につき説明を行った(2002年10月)。

2.国際拠点空港民営化問題への対応

現行の第7次空港整備七箇年計画が2002年度に最終年度を迎えることから、政府の交通政策審議会航空分科会での審議に経済界の意見を反映させるべく、「空港整備に関する打合せ会」(実務家レベルの民間事業者で構成)において検討を重ねた。併せて、国土交通省航空局の星野茂夫監理部長より、今後の航空行政の展開について(4月)、UBSウォーバーグ証券会社の伊藤友則投資銀行本部長より、投資家から見た日本の空港民営化の可能性などについて(7月)、また、野村総合研究所の宮前直幸主任コンサルタントより、国際拠点空港の民営化に向けた展望について(11月)、それぞれ説明を聞いた。こうした検討を踏まえ、提言「今後の空港整備と国際拠点空港の民営化問題について」(11月)を取りまとめ、関係方面に建議した。提言を受け、政府は、成田、関空、中部3空港の個別民営化を決定した。
一方、羽田空港の再拡張問題については、奥田会長と石原慎太郎東京都知事が会談を行い、首都圏三環状道路整備や都市再生プロジェクトと併せて、連携して取り組んでいくとの共同声明を発表した(12月)。

3.道路関係四公団民営化推進委員会への対応

「特殊法人等整理合理化計画」(2002年12月閣議決定)に基づき設置された「道路関係四公団民営化推進委員会」に対し、物流効率化の観点から経済界の意見を反映させるため、京都大学の青山吉隆教授より、今後の高速道路網整備について(9月)、また、東京大学の岡野行秀名誉教授より、全国高速道路網のあり方について(11月)、それぞれ説明を聞いた。こうした検討を踏まえ、「高速道路整備および道路関係四公団民営化に関する意見」 (11月) を取りまとめ、関係方面に建議した。

4.規制改革への対応

運輸分野の規制改革について、国際競争力の強化ならびに地球環境問題への対応などの観点から、車両諸元に係る規制をはじめ、合計27項目に及ぶ規制改革要望を取りまとめ、政府に建議した。こうした働きかけの結果、トラック事業の営業区域規制撤廃や車高規制緩和に向けた検討開始など、着実な成果が挙がった。

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【技術・環境・エネルギー関係】

17.産業技術委員会

(庄山悦彦 共同委員長)
(北城恪太郎 共同委員長)

1.戦略的総合的科学技術政策の推進支援

戦略的かつ総合的な科学技術政策の推進を支援するため、わが国の科学技術政策の司令塔である総合科学技術会議の活動に積極的に協力した。
6月には、研究開発プロジェクトや産学官の連携をめぐり尾身幸次科学技術政策担当大臣との懇談会を開催するとともに、2003年1月には、内閣府の大熊健司政策統括官(科学技術担当)と、科学技術政策全般をめぐり、意見交換を行った。
また、9月には、経済産業省の岩田悟志審議官、11月には、文部科学省の間宮馨文部科学審議官と、科学技術政策について、懇談するとともに、5月には、IEC(国際電気標準会議)の会長に就任した東芝の高柳誠一技術顧問と、国際標準化問題について意見交換を行った。
また、政策部会を改組した科学技術政策部会(部会長:溝口哲也東芝取締役専務)では、11月に、経済産業省の本部和彦研究開発課長、豊國浩治参事官を招き、最近の科学技術政策をめぐる最近の動向と、経済界も関わりの深い新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)の独立行政法人化について、説明を聞いた。また、研究開発税制やNEDOの契約形態に関し、実務的な面から関連省庁との意見交換を行った。

2.産学官連携の推進

わが国が、科学技術創造立国の実現に向けて、イノベーションを連続的に創出するためには、産学官による一層の連携が重要という認識の下、6月に京都で、産学官のトップ・第1線の研究者、実務者3,700人による、第1回産学官連携推進会議を内閣府、日本学術会議とともに主催し、具体的推進策の検討を行った。11月には、第2回産学官連携サミットを内閣府、日本学術会議と開催し、産学官連携の気運を確実な軌道に乗せた。
また、産学官連携推進部会(部会長:山野井昭雄味の素技術特別顧問)では、創出された知を産業化・事業化に結びつける人材の育成強化が不可欠であるという観点から、2003年3月に提言「産学官連携による産業技術人材の育成促進に向けて」を取りまとめ、関係方面へ建議するとともに、実現に向け、関係省庁と意見交換を行った。

3.科学技術投資の戦略的重点化

科学技術政策投資の戦略的重点化を進める観点から、2002年6月には、今後重点的に取り上げるべき研究分野や課題を取りまとめた提言「次代の産業の基盤づくりに向けた研究開発の推進について」を関係方面に建議した。また、重要分野について、以下のような活動を行った。

(1) ナノテクノロジー
2001年3月に取りまとめた提言「ナノテクが創る未来社会―n-Plan21」を踏まえて、ナノテクノロジーの優れた研究成果の産業化を進める観点から、ナノテクノロジーワーキンググループ(主査:石原直NTT理事・物性科学基礎研究所長)において、2002年9月に、内閣府の鈴木信邦主任科学技術官、経済産業省の谷重男材料技術戦略室長、文部科学省の川上伸昭基礎基盤研究課長から説明を聞くとともに、アンケート調査を実施し、11月に「ナノテクが創る新産業―n-Plan 2002」を取りまとめ、関係方面に建議した。また、政府のナノテクノロジー・材料分野の産業発掘戦略策定に対応し、政府の同戦略策定タスクフォースに報告を行った。さらに12月には、経済産業省の仁坂吉伸製造産業局次長、谷重男材料技術戦略室長から、ナノテクノロジーの産業化への取組みについて説明を聞くとともに懇談した。

(2) バイオテクノロジー
バイオテクノロジー(BT)の目覚ましい成果を実用化・産業化し、国民生活の向上と産業競争力の強化を図るために、総理大臣が開催する「BT戦略会議」に、庄山共同委員長が委員として参加し、「BT戦略大綱」の取りまとめ(2002年12月)に際し、経済界の立場から意見を述べた。その過程で、経済界の意見集約を図るために、バイオテクノロジー部会では、7月より、内閣府、文部科学省、厚生労働省、経済産業省との意見交換や、部会委員を対象としたアンケート調査を行った。
また、12月より、「BT戦略大綱」の着実な実施のために、内閣府、経済産業省、厚生労働省と意見交換を行った。

(3) シミュレーション
2002年9月に発足したバイオ・ナノシミュレーションワーキンググループ(主査:小池秀耀富士総合研究所上席執行役員)では、バイオテクノロジー、ナノテクノロジー分野におけるシミュレーション技術の活用に向けて、9月に理化学研究所の八尾徹コンサルタント、10月に産業技術総合研究所の三上益弘計算科学研究部門副部門長、12月に経済産業省の材料技術戦略室、生物化学産業課、ならびに文部科学省の情報課、ライフサイエンス課、基礎基盤研究課から現状と課題につき説明を聞くとともに、アンケート調査を実施し、2003年2月「産業競争力の強化に向けたバイオ・ナノシミュレーション技術の活用について」を取りまとめ、関係方面に建議した。

4.知的財産政策に関する取組み

政府において、2002年3月に知的財産戦略会議が発足し、7月、知的財産戦略大綱が策定された。また、大綱に基づき、11月には知的財産基本法が成立し、2003年3月に知的財産戦略推進本部が設置された。
こうした動きに対応し、知的財産部会(部会長:丸島儀一キヤノン顧問)では、知的財産に関する諸課題のうち特に企業経営に影響の大きい事項について、提言「知的財産戦略についての考え方」(6月)を取りまとめ、関係方面に建議した。また、9月には、知的財産立国の実現を目指す知的財産基本法について、提言「産業競争力の強化に向け、知的財産基本法(仮称)の早期成立を望む」を取りまとめた。
さらには、出願・審査請求構造の改革が産業構造審議会で検討されていることから、2003年1月には、提言「出願・審査請求制度の改革の方向性について」を取りまとめ、関係方面に建議した。
その他、知的財産部会では、不正競争防止法への刑事罰の導入、知的財産侵害訴訟の東京高裁への専属管轄化、裁判例の統一、知的財産紛争の一回的解決、知的財産権侵害品の水際措置の強化などについて、関係省庁を含む関係者と意見交換を行うとともに、審議会などの場で、経済界の意見を積極的に述べ、その一部については実現の運びとなった。

18.海洋開発推進委員会

(武井俊文 委員長)

文部科学省の科学技術・学術審議会海洋開発分科会は、今後のわが国の中長期的な海洋開発戦略として、2002年8月に、答申「長期的展望に立つ海洋開発の基本的構想及び推進方策について」を取りまとめた。
本分科会には、橋口寛信総合部会長(当時)が委員として参加し、答申の検討段階において、2001年12月に橋口部会長名で取りまとめた提言「わが国の今後の海洋利用のあり方に関する意見」などをもとに、経済界側の意見表明を行った。
2002年10月には、委員会を開催し、文部科学省の吉田大輔海洋地球課長より、答申および2003年度海洋開発関連予算概算要求について、説明を聞くとともに、意見交換を行った。
なお、9月に、総合部会長の交替が行われ、新たに、日本水産の鈴木賢一専務取締役が就任した。
また、わが国の海洋科学技術開発の中心的機関である海洋科学技術センターの運営にも協力を行った。

19.環境安全委員会

(秋草直之 共同委員長)
(山本一元 共同委員長)

1.環境問題全般

(1) WSSDへの参加
持続可能な開発に関する世界首脳会議(WSSD;8月26日〜9月4日、於:ヨハネスブルグ)に政府代表団顧問として参加を招請された桝本晃章地球環境部会長(東京電力副社長)をはじめ経済界関係者が参加し、再生可能エネルギーや京都議定書をめぐる問題などに関し、政府の交渉担当者に経済界の意見を具申した。

(2) WBCSDとのパートナーシップ締結
持続可能な開発に関する国際ビジネス評議会(WBCSD)との間にパートナーシップを締結し、緊密な連携を図ることとした。その一環として日本国内のWBCSD加盟企業の連絡を密にするため、WBCSDタスクフォース(座長:笹之内雅幸トヨタ自動車環境部担当部長)を設置した。

(3) 環境大臣との懇談会の開催
2月に鈴木俊一環境大臣との懇談会を開催し、奥田会長以下、関係副会長、委員長などから、廃棄物・リサイクル問題、温暖化問題、自然保護などに関する経済界の取組み状況と、これらの分野における政策のあり方についての経済界の意見を述べるとともに懇談した。

2.地球温暖化問題への対応

(1) 環境自主行動計画フォローアップ
環境自主行動計画第5回フォローアップを実施し、10月に結果を発表した。第5回フォローアップには、合計34業種が参加した。2001年度の産業・エネルギー転換部門からのCO2排出量は約4億8,370万t-CO2で、90年度比3.2%減であったことが明らかとなった。過去5年間の平均値でも同0.3%減となっており、「2010年度のCO2排出量を90年度レベル以下に抑制する」という統一目標を着実に達成しつつある。
また同フォローアップの透明性・信頼性向上のため、7月に環境自主行動計画第三者評価委員会(委員長:山口光恒慶應義塾大学経済学部教授)を設置した。同委員会は10〜2003年3月の間に計4回会合を開催し、同フォローアップの手続きの透明性・信頼性を評価した上で2002年度評価報告書を取りまとめ、3月に公表した。

(2) COP8への参加
国連気候変動枠組条約第8回締約国会議(COP8:10月24日〜11月2日、於:ニューデリー)期間中、国際商業会議所(ICC)および米国経済界と共催でワークショップを開催し、海外の関係者に日本の産業界の取組みを説明するとともに、2013年以降の国際的な温暖化対策枠組みについて早期に議論を開始する必要があることを訴えた。

(3) その他国際会議等への対応
12月にベルリンで開催された温暖化対策に関するOECDセミナーに参加し、環境自主行動計画への取組みとその成果について、各国政府・産業界関係者に説明した。
また、地球温暖化問題をめぐる今後の国際動向に迅速かつ的確に対応するため、2月に国際環境戦略ワーキンググループ(座長:笹之内雅幸トヨタ自動車環境部担当部長)を設置した。

(4) 国内温暖化対策のあり方についての検討
京都議定書の目標達成の手段として、環境税、国内排出量取引などの国内温暖化対策の検討が政府部内で進められていることに対応して、日本経団連は、政府関係者との緊密な意見交換を通じ、環境と経済の両立を図るためには、こうした規制的措置ではなく、自主的取組みを中心とすべきであるという経済界の主張を繰り返し表明した。

3.廃棄物・リサイクル対策

  1. 政府の中央環境審議会廃棄物・リサイクル部会において行われた、廃棄物処理法の改正を中心とする廃棄物・リサイクル制度の基本問題に関する検討に関し、廃棄物・リサイクル部会(部会長:庄子幹雄鹿島建設副社長)を中心に日本経団連の考え方を取りまとめ、中央環境審議会委員を務める庄子部会長から、当該審議会部会で発言した。
  2. 5月、廃棄物・リサイクルワーキンググループ(座長:小倉康嗣JFEホールディングス環境ソリューションセンター企画部長)を設置し、不法投棄の未然防止とリサイクルの促進を両立させる観点からの廃棄物処理法の見直しに関する具体的検討を行った。7月、政府の中央環境審議会に向け、ワーキンググループでの検討を踏まえた提言「循環型社会の着実な進展に向けて」を取りまとめ公表した。
  3. 環境自主行動計画第5回フォローアップを実施し、41業種の協力を得て、業種毎の廃棄物対策ならびに産業廃棄物最終処分量の削減目標の達成状況を調査し、2003年3月に取りまとめ結果を公表した。

4.土壌汚染対策法への対応

土壌汚染対策法が2002年5月22日に成立、2003年2月15日に施行された。2002年度はこの関連政省令の整備が進められたことに対応し、環境リスク対策部会(部会長:河内哲住友化学工業常務取締役)および土壌汚染対策ワーキンググループ(座長:古賀剛志富士通環境本部長)を中心に経済界の意見の反映に努めた。2002年7月から政府の中央環境審議会土壌農薬部会土壌汚染技術基準等専門委員会が、汚染状況の調査の方法、リスク低減措置の方法など、土壌汚染対策法の技術的側面について検討を行ったが、これについては7月の第2回会合において意見陳述を行うなど対応した。同専門委員会および中央環境審議会廃棄物・リサイクル部会で検討課題となった、汚染土壌の法制度上の位置付けについては、廃棄物処理法を適用せず土壌汚染対策法を適用すべきとする経済界の意見を同制度に反映させた。土壌汚染対策法に盛り込まれた対策の推進を図るために造成する基金については、マニフェスト方式による拠出や各社からの任意の拠出を中心とするスキームが採用された。

5.化学物質審査規制法への対応

2002年にOECD環境保全成果レビューなどにおいてわが国の化学物質管理政策に関し指摘があったことを踏まえ、環境生物への有害性把握、審査・管理制度全体の見直しなど、化学物質審査規制法のあり方に関し、政府の産業構造審議会、中央環境審議会、厚生科学審議会において検討が行われた。これらの検討状況に関し経済産業省から説明を聞くとともに、経済界の意見を取りまとめ、パブリックコメントとして政府に申し入れた。

6.温暖化対策技術への取り組み

8月、政府の総合科学技術会議において、地球温暖化対策推進大綱に記載されている技術開発課題の具体的実現に向けて取りまとめるため、「温暖化対策技術プロジェクトチーム」が設置された。自主行動計画ワーキンググループは、内閣府の幹部から検討状況を聞くとともに、会員企業の温暖化対策技術の取組みについてアンケート調査を行い、10月、アンケートの結果と併せ、温暖化対策技術プロジェクトチームの会合において日本経団連の考えを述べた。

7.規制改革要望の取りまとめ

廃棄物・環境保全分野、危険物・防災・保安分野について経済界の規制改革要望を取りまとめ、10月に政府に要望し、その実現を働きかけた。
廃棄物・環境保全分野については、循環型社会の形成推進に向け、(1)リサイクル促進、ならびに処理合理化、(2)申請手続等の事務簡素化、(3)環境規制、(4)関連法令間の調整、の4テーマの下に、具体的な要望を取りまとめた。
危険物・防災・保安分野については、政府規制に係る要望を中心に取り上げた。当該分野は「安全」を政策目的とした分野であることから担当省庁の対応が慎重である上、縦割りの調整が進みにくい状況であることから、行政側の取組み状況が明確になっている要望に絞り込み、保安規制の一元化、保安法令の重複適用の排除、ボイラー等の性能規定化の促進、危険物保安技術協会の民間検査機関への門戸開放、の4項目を要望した。

20.資源・エネルギー対策委員会

(秋元勇巳 委員長)

1.エネルギー政策に関する検討と提言

2002年度は、エネルギー基本法の成立、特別会計の見直しなど、エネルギー政策の大幅な見直しがなされるとともに、中東情勢、原子力をめぐる諸問題、地球温暖化対策など、エネルギーをめぐる社会的な関心が大いに高まった。
当委員会では、エネルギー政策に関する検討のため、有識者を招き、積極的に意見交換を行った。企画部会(部会長:石井保三菱マテリアル常務執行役員)では横山明彦東京大学教授(4月)、十市勉日本エネルギー経済研究所常務理事(6月)、鈴木篤之東京大学教授(8月)、肥塚雅博資源エネルギー庁次長(10月)を、委員会では柏木孝夫東京農工大学教授(11月)、岡本巖資源エネルギー庁長官(2003年2月)を招いた。
このような中、2002年6月には、福島県において核燃料税条例の更新にあたり、事業者との十分な話し合いが行われないまま増税案が提出されたことに関し、提言「福島県における核燃料税増税案について」(7月)を公表し、片山虎之助総務大臣ほかに申し入れた。
8月、2003年度からの石炭税の導入に向け政府が構想を具体化させたことに関しては、提言「石炭への課税に対する見解」(11月)を公表し、内容の修正を求めた。その結果、例外措置、段階的実施など、内容は概ね経済界の意見を反映したものとなった。
2003年1月以降、中東情勢、原子力発電所の停止など、エネルギーに関する状況が急変した。そこで、国としての確固たるエネルギー総合戦略の確立と推進を求めることを趣旨とする提言「エネルギー政策の着実な推進を求める」(3月)を急遽取りまとめ、公表した。

2.規制改革への取組み

エネルギー分野の規制改革要望については、41項目を取りまとめ、10月、政府に建議した。要望のうち、原子力技術基準における維持基準の早期導入、ガスパイプラインに係る公益特権付与、電気工作物の一部使用開始に係る官庁立会検査の自主検査化などについては、政府において対応の方針が示された。

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【社会関係】

21.広報委員会

(5月28日〜 樋口公啓 委員長)
(〜5月28日 荒木 浩 委員長)

当委員会では、経済広報センターと連携し、経済界および日本経団連が取り組むべき重要課題を戦略的かつ効率的に広報する方策や広報体制について検討している。
2002年度は、経済広報センターと連携を密に取りながら、日本経団連発足を内外にアピールする広報手法について事務レベルで検討し、日本経団連の活動内容に関する国内外に向けた広報を積極的かつタイムリーに実施するよう、下記を中心に側面支援を行った。

1.記者会見・講演・コメントの発表

会長関連では、月2回の記者会見(会長・副会長会議後と第4月曜日)に加え、定時総会、各地経済団体との懇談会、夏季フォーラム、経済3団体共催新年パーティーなどの機会をとらえ、適宜会見を開催した(計29回)。また、日本記者クラブをはじめとする報道機関が主催する講演会などで、経済問題や日本経団連の重要課題などをテーマとするスピーチを行った(計7回)。
加えて、提言・報告書の発表、海外要人の来訪、政官界首脳との懇談時などに、副会長、委員長、部会長による記者会見、ブリーフィングを適宜開催した。
さらに、重要テーマに関する会長、副会長のコメントを適宜発表した。

2.在日外国報道機関関係者への情報発信

海外への情報発信重視の観点から、奥田会長がFCCJ(外国特派員協会)で日本経団連の課題などについて講演を行った(9月)。また、外国報道機関への情報提供の強化の一環として、諸会見・会合の開催情報、日本経団連提言、会長コメントなどを電子メールで在京海外メディアに通知した。

3.会員広報の強化等

会員広報強化の観点から、経済Trend(月刊)経済くりっぷ(月2回刊)経営タイムス(週刊)などの出版物の改善・拡販に引き続き取り組んだ。
日本経団連ホームページの改善にも取り組み、提言・報告書に加え、会長、副会長、委員長などの記者会見記録、会長講演録、会長、副会長、委員長のコメントなどを、原則として日英両文で迅速に掲載し、幅広く、きめこまかい情報提供を行った。また、外国特派員を中心に、諸会見・会合の開催情報、会長コメントなどを幅広く電子メールで通知するなど情報提供に努めた。

4.各界との対話の促進

上記の活動に加え、各界各層との意見交換を推進した。奥田会長はじめ、坂口力厚生労働大臣、笹森清連合会長ほかの参加を得て、政労使雇用対策会議(2002年12月4日)と政労使ワークシェアリング検討会議(12月26日)を開催したほか、連合首脳と2回にわたり(9月と12月)、日本が直面する重要課題などを中心に意見交換を行った。

22.企業行動委員会

(9月9日〜 奥田 碩 委員長)
(〜9月9日 荒木 浩 委員長)

1.企業不祥事防止強化策の公表

企業不祥事の続発により、企業ならびに経済界に対する社会の「共感と信頼」が深刻な影響を受けていることに鑑み、8月に委員会を開催し、企画部会(部会長:池田守男資生堂社長)の設置と不祥事防止策の検討を決定した。9月には奥田会長名で「企業倫理の徹底を求める」旨を全会員企業代表者に送付するとともに、10月の理事会で「企業不祥事防止への取り組み強化について」を決定し、公表した。
同不祥事防止強化策においては、「企業行動憲章」「同憲章実行の手引き」<PDF>を7年ぶりに改定するとともに、会員企業に対して、行動指針の整備・充実、経営トップの基本姿勢の社内外への表明と具体的な取組みの情報開示など企業倫理・企業行動強化のための社内体制の整備・運用に関する7項目の実施を要請している。また、日本経団連として各社の取組みを促進・支援するために経営トップ向けなどのセミナー開催、毎年10月を企業倫理月間とするなどの具体的支援策を示した。そして、10月に不祥事防止強化策、改定企業行動憲章、実行の手引きを全会員約1,500社・団体の会員代表者に送付した。
また、12月には、実際の取組み状況についてのアンケート調査を全会員企業に対して実施し、分析を行った。
さらに、企業倫理の周知・徹底のためには経営トップのイニシアチブ強化が重要であることから、2003年1月に「第1回企業倫理トップセミナー」を開催した。会員企業の社長・会長75名を含む企業倫理担当役員など440名が参加し、奥田会長、池田企画部会長が企業倫理の徹底に向けて経営トップのリーダーシップを訴えた。また、中島茂中島法律事務所代表がコンプライアンス経営確立に向けたトップの役割について講演するとともに、各社の取組み状況などにつき、意見交換した。

2.国家公務員倫理法・倫理規定に関する説明会を開催

企業人等の利害関係者に対する国家公務員の行動ルールを定めた国家公務員倫理法が2000年4月より施行されて以来、同法の運用に関しては、適宜改善などの措置が取られてきた。そこで、7月に人事院国家公務員倫理審査会の川村卓雄首席参事官より同法ならびに関連規定に関する説明会を開催し、300名以上が参加した。また、同説明会の概要や出された疑問に対しての回答をホームページに掲載した。

23.社会貢献推進委員会

(武田國男 委員長)

当委員会は、企業の社会貢献活動の推進と環境整備のために以下の活動を行った。

1.社会貢献推進委員会の開催

7月には福嶋浩彦千葉県我孫子市長、12月には加藤哲夫せんだい・みやぎNPOセンター代表理事を来賓に委員会を開催し、地域社会における行政・市民・企業の協働のあり方について懇談した。

2.新しい企業の経営課題に対応した社会貢献活動のあり方の検討

社会貢献フォーラム(2003年2月)を開催し、「いま、あらためて社会貢献を問う」を全体テーマに、NPOと株式会社を車の両輪とする「大地を守る会」の藤田和芳会長の基調講演などを踏まえ、社会から信頼と共感を得て企業活動を行っていく上で社会貢献部署が果たすべき役割について討議した。
「変化する企業と社会貢献」懇談会(座長:島田京子日産自動車コミュニティ・リレーションズ担当部長)では、海外のNPOとの関係構築、多文化共生や環境配慮など社会的責任とも関連するテーマの社会貢献活動の展開などについて検討した。
「社会基盤整備」懇談会(座長:瀬尾隆史損害保険ジャパン環境・社会貢献部長)では、社会貢献活動の有力なパートナーであるNPOの信頼性確保のための情報公開の仕組みや人的、資金的基盤強化の方策とともに、企業と企業財団の連携強化について検討した。

3.2001年度社会貢献活動実績調査

2001年度の社会貢献活動の実績について調査し、382社から回答を得た(回答率:30.3%)。社会貢献活動支出額は、総額で1,170億円、1社あたり平均額は対前年度比17.8%減の3億4,200万円であった。12月に調査結果要約版<PDF>を公表するとともに、2003年2月にはCD−ROMとして出版した。

24.政治・企業委員会

(前田又兵衞 共同委員長)
(5月28日〜9月9日 荒木 浩 委員長)
(〜5月28日 古川昌彦 委員長)

「新ビジョン」策定に向けた総合政策委員会の活動に協力し、経済界と政治との新たな関係の確立について検討した。加えて、「新ビジョン」の具体化に向けて、「企業・団体寄付のガイドライン」を含む、政策を軸とした政党支援のあり方を検討した。
また、企業人と政治家とのコミュニケーションを深め、企業人の政治参加を促進する「企業人政治フォーラム」の活動強化に協力した。さらに、「小泉改革を支援する1000人の集い」(10月)を開催した。

25.教育問題委員会

(樋口公啓 共同委員長)
(浜田 広 共同委員長)

1.教育基本法改正に対する意見陳述

教育基本法の改正を検討している政府の中央教育審議会基本問題部会において、(1)実効ある教育改革につなげる教育基本法改正とすること、(2)義務教育のあり方や学校の設置主体などについて多様性・柔軟性を持たせること、(3)教育を受ける側の義務も規定すること、などの意見を述べた(12月)。

2.インターナショナルスクール問題に関する提言の公表と実現方の働きかけ

経済社会のグローバル化の進展に対応するため、インターナショナルスクール卒業生に対する上級学校への入学資格の付与、特定公益増進法人としての認定などを求める「インターナショナルスクール問題に関する提言」(6月)を取りまとめ、政府・与党に働きかけた。この結果、特定公益増進法人に認定され税制上の優遇措置を受けられることとなった。また、大学入学資格についても、近く、結論が出る見込みである。

3.学校教育への協力

  1. 学校教育への協力の実態について会員企業全社を対象にアンケート調査を実施する(7月〜8月)とともに、学校へ講師派遣を行っている企業から、事業の現状と今後の課題について意見を聞いた(11月)。また、杉並区教育委員会や墨田区立中学校校長から学校側のニーズについて聞いた(10月、12月)。さらに、東京都教育庁に対して、学校教育に対する企業の協力の可能性について説明するとともに、2社の模擬授業を行った(2003年3月)。
  2. 日本経団連のホームページにキッズコーナーを設け、企業人講師を派遣している企業や団体に関する情報や各社キッズコーナーのリンク集を掲載し、総合的な学習の時間を企画するために役立つ情報の提供に努めた。

4.職業観・就労意識の形成・向上策について検討

近年、短期離職者やいわゆる「フリーター」が増加傾向にあり、若者の職業観・就労意識の希薄化、多様化が問われている。若年労働力が著しく減少する方向にある現在、職業観・就労意識の醸成を図り、次代を担う有為の人材育成を進めることがわが国にとって喫緊の課題であることから、新たに職業観・就労意識の形成・向上に関する研究会(座長:桐村晋次古河電気工業顧問)を設けた(10月)。同研究会では、若者の現状と意識、現代高校生気質の実態と職業意識、行政の立場からみた職業観教育の現状と課題などにつき関係者から説明を聞き、課題の整理と検討結果の取りまとめを進めた。

5.文部科学省などとの懇談会

  1. 文部科学省近藤信司生涯学習政策局長「今後の教育改革について」(5月)
  2. 文教大学高島秀之教授「情報通信技術は教育をどう変えるか」(6月)
  3. 中央教育審議会鳥居泰彦会長「教育の現状と教育改革」(9月)
  4. 文部科学省御手洗康文部科学審議官「新しい時代にふさわしい教育基本法と教育振興基本計画の在り方について」(12月)

6.規制改革要望の取りまとめ

教育分野における規制改革要望を取りまとめ、日本経団連の規制改革要望(10月)の一環として、政府・与党、総合規制改革会議などに建議し、その実現を働きかけた。

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【労働関係】

26.経営労働政策委員会

(奥田 碩 議長)
(柴田昌治 委員長)

毎春の春季労使交渉に際し、「経営と人」に関する基本的な考え方を総合的に検討し、全国の企業経営者の指針となる報告書として取りまとめたものとして「経営労働政策委員会報告」を12月に発表した。「多様な価値観が生むダイナミズムと創造をめざして」と題した本報告書は、活力と魅力のある国を築くためには、経営者をはじめとする各界各層の「高い志」によるリーダーシップが必要であると主張している。

報告書は、以下の5章から構成される。
第1章 わが国経済・経営の課題と対応
第2章 雇用・賃金問題への対応
第3章 人材の育成・確保と教育問題
第4章 社会的安心の確保と負担の適正化
第5章 今次労使交渉への対応と今後の経営者のあり方

今次春季労使交渉への対応としては、引き続き雇用の確保を最重点に、企業の生き残りを可能にする人件費の効率化、生産効率の向上を労使で徹底的に議論することであると主張した。さらに春季労使交渉は、闘う「春闘」から話し合いの「春討」へと転換したことを明言した。

27.雇用委員会

(大國昌彦 委員長)

当委員会は、8月以降、(1)雇用保険法の改正、(2)政労使による雇用対策の取組み、ワークシェアリング、(3)労働者派遣法・職業安定法改正、(4)行政情報公開法による障害者雇用状況開示、(5)新卒採用問題等への対応、について論議を重ねた。また、下部組織として雇用政策検討部会(部会長:安堂誠王子製紙執行役員人事本部長)を設置した。委員会および部会で検討した主な内容は次の通り。

1.雇用保険法の改正についての対応

雇用保険財政の悪化から厚生労働省労働政策審議会職業安定分科会雇用保険部会(部会長:諏訪康雄法政大学教授)において、2002年4月より雇用保険制度の見直しについて審議が開始された。そこで5月には当委員会委員会社、地方・業種団体などを対象にアンケート調査を実施し、日本経団連としては、(1)再就職を促進する観点からの給付の見直し、(2)雇用保険料率のさらなる引上げには反対し、一般財源からの措置を講ずること、などを主張し、同制度の今次見直しに反映させた。

2.政労使による雇用問題、ワークシェアリングへの対応

雇用問題について、政府に必要な施策を求める活動を行った。
具体的には、10月に「緊急雇用対策プログラム」を発表し、2002年度補正予算に、提言内容を反映させた。また、政労使の話し合いを進め、「雇用問題に関する政労使合意」(12月4日)や、「多様な働き方とワークシェアリングに関する政労使合意」(12月26日)を結び、それぞれ雇用政策の発動を促した。

3.労働者派遣法・職業安定法改正についての対応

厚生労働省労働政策審議会職業安定分科会民間労働力需給制度部会(部会長:樋口美雄慶應義塾大学教授)において、2002年2月に職業安定法、労働者派遣法の政省令を改正した。その後、9月より法改正の審議が行われた。日本経団連としては、事業規制を原則撤廃することをはじめ、(1)派遣期間の延長、(2)派遣禁止業務のうち、製造業務と医療における一部業務の解禁、(3)事業所開設の際の許可制から届出制への移行、などを主張し、法改正に反映させた。

4.情報公開法による障害者雇用状況開示への対応

障害者雇用率未達成企業名・雇用率の開示請求問題に対し、日本経団連としては、(1)障害者雇用促進法の趣旨および行政指導の効果を失わせる、(2)企業が障害者を雇用しようとしても適切な障害者を見つけるのは困難な場合もある、(3)企業の努力を無視した企業名の公表によって企業に社会的制裁を与えるおそれもあるなどの理由により、政府の情報公開審査会にて開示に対し反対する旨の意見を述べた。同審査会ならびに厚生労働省は開示の決定を行ったが、その後多くの企業から反対意見・不服申立が提出され、情報公開審査会で再度検討されることになった。

5.新卒採用問題への対応

雇用政策検討部会の下部組織として設置した「採用問題アドバイザリー会議」において企業の新卒採用のあり方を検討し、10月に「平成15年度新規学卒者の採用・選考に関する企業の倫理憲章」を発表した。

28.人事労務管理委員会

(安西邦夫 委員長)

1.パートタイム労働対策への対応

厚生労働省パートタイム労働研究会最終報告「パート労働の課題と対応の可能性」(2002年7月19日)に対し、企業の雇用管理については、各企業の労使自治で行っていくべきものであるとの立場から、安西委員長と労働法規委員会の藤田委員長の連名でコメントを発表した。
9月から、今後のパートタイム労働対策について、厚生労働省の労働政策審議会雇用均等分科会において検討が始まったことを受け、10月に、労務管理問題検討部会(部会長:子原正明日本アイ・ビー・エム人事・組織部長)の委員、業種団体などに、今後のパートタイム労働対策について、アンケート調査を実施し、その結果を踏まえて審議に臨んだ。また、2003年1月、今後のパートタイム労働対策についての日本経団連の見解を取りまとめ、発表した。さらに2月には、日本経団連推薦の使用者側委員名で雇用均等分科会会長に意見書を提出し、雇用均等分科会の報告書に日本経団連の意見を反映させた。

2.安全衛生・労災関係への対応

労働安全衛生部会(部会長:久保國興NKK専務執行役員)およびその下部組織である産業保健問題小委員会、じん肺問題小委員会、労働安全衛生管理システム小委員会において以下の諸課題について検討を行い、労働政策審議会の使用者側委員と連携しながら対応した。

(1) 労災保険率の引下げ
労働災害の大幅な減少および事業主負担感の増大を理由に、労災保険率が1年前倒しの2003年4月から、全業種平均で1/1000、保険料額にして約1,500億円引下げとなった。

(2) 法令改正問題への対応
労働政策審議会の審議において、第10次労働災害防止計画の策定、じん肺有所見者に対する肺がん健康診断の実施などの労働安全衛生関係法令改正問題に対応した。
また、企業の自主的取組みを原則とする労働安全衛生マネジメントシステム(OSHMS)の普及促進策について検討した。

3.福利厚生のあり方の検討

今後の企業の福利厚生について、福利厚生検討小委員会(座長:小澤敏三井化学労制課長)を設置して検討を行った。具体的には、福利厚生の総合アウトソーシングについて事業者と意見交換を行うとともに、財形制度の改正問題についても検討した。

4.ダイバーシティ・マネジメントの研究

5月に第1次ダイバーシティ・ワーク・ルール研究会報告「原点回帰−ダイバーシティ・マネジメントの方向性−」を取りまとめ、発表した。
10月には、第2次ダイバーシティ・ワーク・ルール研究会を立ち上げ、ダイバーシティ・マネジメントの具体的な取組みについての研究を開始した。

5.男女共同参画の推進に向けた取組み

企業における男女共同参画の推進については、関係委員会と連携し、日本経団連としての基本的な考え方の整理に着手した。

29.労使関係委員会

(濱中昭一郎 共同委員長)
(普勝清治 共同委員長)

1.時代に即した賃金システムについての報告書の取りまとめ

当委員会は、今後の賃金システムのあり方について、先進的な企業事例を聴取し、研究を重ねた結果、「成果主義時代の賃金システムのあり方―多立型賃金体系に向けて―」と題する報告書を取りまとめ発表した(5月)。
同報告書では、今後の賃金システム改革の方向として、業績即応型の人件費管理、適正賃金水準への是正、成果・貢献度反映型の人事賃金システムへの切り替え、全社一律型から多立型賃金体系への転換などを提起するとともに、賞与制度や退職金制度のあり方についても見直しの方向を示した。また、9社の企業事例も掲載した(2002年4月1日〜5月28日までの間は日経連労使関係特別委員会(濱中昭一郎委員長)として活動)。

2.非正規従業員の人事・賃金管理のあり方の研究

当委員会は、7月の会合において、具体的な検討を行う下部組織としての政策部会の設置と同部会での当面の検討テーマを「非正規従業員の人事・賃金管理のあり方」とすることを決定した。
これに伴い、政策部会(部会長:川合正矩日本通運取締役執行役員)は9月に初会合を開催して以来、非正規従業員の人事・賃金管理と活性化策について、企業事例を6社からヒアリングするとともに、非正規従業員の活用における法律上の留意点について弁護士から講演を聞いた。また、同部会としての取りまとめに向けた枠組みや今後のスケジュールについての検討を行った。

3.法定最低賃金問題への対応

政府の中央最低賃金審議会産業別最低賃金制度全員協議会では、2001年4月に中央最低賃金審議会から付託を受け、産業別最低賃金制度の改善についての審議を行った。
当委員会では、2002年11月に同全員協議会の審議状況ならびに使用者側委員の対応について、中央最低賃金審議会委員の浅澤誠夫石川島播磨重工業顧問から報告を受け、これを了承した。

4.春季労使交渉等の実態把握

主要企業における春季労使交渉の交渉経緯、妥結結果、特徴点などを把握するため、5月に新日本製鐵の平山喜三人事・労政部長、トヨタ自動車の木下光男常務取締役、日立製作所の御手洗尚樹労政部長から報告を聞いた。

5.労組動向の把握と労組幹部との意見交換

健全な労使関係の維持・発展に向けて、労働組合の動向把握と同幹部との意見交換を目的に、連合の草野忠義事務局長を7月と11月に招き、「連合の政策制度要求の概要と春闘中間まとめ」や「連合の2003年春季生活闘争方針」についての講演を聞くとともに懇談した。

30.労働法規委員会

(藤田弘道 委員長)

1.労働基準法改正への取組み

有期労働契約の上限の見直し、解雇法制、裁量労働制の手続・要件の緩和などについて、経営側の意見をまとめるべく、9月に会員企業にアンケート調査を実施した。また、解雇法制のあり方については、経営側の弁護士の団体である経営法曹会議(代表幹事:倉地康孝弁護士)に検討を依頼し、その意見(「解雇ルールの法制化に関する意見」)を参考に経営側意見の検討を行った。
さらに、労基法改正問題ワーキンググループ(座長:子原正明 日本アイ・ビー・エム人事・組織部長)において、経営側意見の最終的な取りまとめを行い、労働基準法改正法案に反映させた。

2.司法制度改革への取組み

司法制度労働検討部会(部会長:小島浩 日本アイ・ビー・エム顧問)において、労働調停のあり方、労働参審制・参与制導入の当否などについて検討し、政府の司法制度改革推進本部労働検討会に経営側意見を表明した。なお、労働参審制・参与制導入の当否については、2002年12月に経営法曹会議(代表幹事:倉地康孝弁護士)に意見を依頼し、「労働事件に参審制、参与制を導入すべきではない」とする意見書(「労働訴訟に専門家が関与する裁判制度の導入に関する意見」)を、経営側意見として2003年2月、労働検討会に提出した。

31.地域活性化委員会

(辻井昭雄 委員長)

当委員会は、「地域経済の総和がわが国の経済である」との認識に基づき、地域産業振興を推進する活動を展開した。
2002年度は地域産業振興策の具現化をより促進する意味で、委員編成を地方経営者協会推薦の委員に加えて、業種団体からも委員推薦を依頼した。さらに、会員企業の参画についても積極的に進め、実効性を高めることに努めた。
統合元年ということもあり、2002年度を助走期間と位置付け、上述のとおり、委員編成に努めたほか、第1回の委員会において課題の検討を行うとともに、委員会の機動性向上のために、地域政策に関する専門部会の設置を決定した。
年度内の活動としては、2003年2月に産業クラスターの視察を札幌と神戸の2ヵ所で行った。この視察は、経済産業省地域経済産業グループと連携し、同省の北海道経済産業局、近畿経済産業局の全面的な協力の下で行われ、IT、バイオおよび医療産業などのベンチャー企業を訪問するとともに、それらのインキュベーション施設を視察した。それぞれ20名弱が参加し、地域振興に繋がる起業のあり方や産学官連携の手法などについて意見交換を行った。なお、視察には、当委員会委員のほか、地方経営者協会や青年会議所の役員、関連団体の職員もオブザーバーとして参加した。

32.中小企業委員会

(草刈隆郎 委員長)

「中小企業の経営戦略の新展開」を主なテーマとして、今後のわが国経済の発展の鍵となる「自立する中小企業」の確立のため、中小企業における経営上の課題を検討し、その克服に向けた方策を探った。
2002年度においては、特殊法人改革の議論が進む中、中小企業向け金融機関も論議の対象となっている状況において、中小企業への支援、特に金融に対する支援はどうあるべきかについて、ワーキンググループを編成して集中的に議論を重ねた。具体的には、中小企業のわが国経済における今日的・将来的な意義を明らかにした上で、中小企業政策金融の評価および今後のあるべき姿、中小企業金融における民間金融機関と政府系金融機関の役割分担、中小企業および経営者に対するセーフティネットのあり方、などについて検討を行った。

33.国民生活委員会

(奥井 功 委員長)
(大塚陸毅 共同委員長)

当委員会は、労働力需給構造が中長期に変化する中、企業経営の健全化と国民生活の質的向上を図るため、国民・勤労者の多様な働き方・生き方を実現する方策を検討するために設置された。
10月に初会合を開き、働く意欲と能力のある人たちの雇用・就業機会を拡大する観点から、経済界ででき得る少子化への対応や企業における男女共同参画の推進などについて検討を始めた。

1.少子化への対応

少子化の進行は、わが国の最重要課題の一つという認識から、経済界においてどのような対応ができ得るのかについて、議論を行なった。
また、2002年9月に総理大臣の指示により厚生労働省がまとめた「少子化対策プラスワン」と、その方策の実現に向けた「次世代育成支援対策推進法案(仮称)」に関し、当委員会の下部組織である少子化問題検討部会(部会長:小堀欣平日本通運常務理事)を中心にして意見を取りまとめ、12月に、「少子化対策プラスワンにおける法的整備に関する日本経団連の意見」を発表した。さらに、厚生労働省と自民党に同提言を提出した結果、日本経団連の主張も反映された方向で法案の修正が行われた。

2.子育て環境整備の研究

良質の労働力確保にも資する仕事と家庭生活の両立支援の一つとして、企業の行う子育て環境の整備について検討を始めた。
具体的には、保育・託児施設の現状と問題点、企業が企業内託児施設を設置する場合の問題点などを整理し、次年度に保育サービスに関する具体的な施策の提案を行うべく検討を行った。

3.男女共同参画の推進に向けた取組み

企業における男女共同参画の推進について、関係委員会とも連携し、日本経団連としての基本的な考え方の整理に着手した。
なお、企業内の男女共同参画推進には、職場や社会の意識改革が必須であることから、日本経団連の見解を整理した上で、その考え方を冊子などにまとめ、会員企業に周知・啓発していく必要性が確認された。

34.国際労働委員会

(立石信雄 委員長)

1.国際労働機関(ILO)への対応

(1) ILO総会への対応
2002年6月3日から20日まで、スイスのジュネーブにおいて第90回ILO総会が開催され、奥田会長を代表とする日本使用者代表団(代表代理として鈴木俊男ILO使用者側理事、矢野弘典専務理事、その他代表顧問を含め総勢6名)を派遣した。
同総会では、協同組合に関する勧告(第127号勧告)を、仕事の創出や経済への貢献の視点を盛り込んで改訂した(第193号)。また、業務災害・職業病の記録および届出について、労働安全衛生条約(第155号)の議定書とともに、職業病一覧表に関する勧告(第194号)を採択した。この他、インフォーマル・エコノミーの支援、児童労働の廃止に向けてのグローバルレポートなどの審議を行った。
奥田会長は代表演説で、新団体としてILOの活動に引続き積極的に参加すること、さらに、ILOに対し普遍的な最低労働基準の普及に加え、多様性を前提とした各地のニーズに密着した支援を行うことを求めた。
当委員会では、事前に各種議題に臨む使用者側の見解について審議を行うとともに(5月に日経連ILO委員会(立石信雄委員長)として)、参加した使用者側代表団から報告を聞いた(8月)。

(2) その他のILO会合への対応
6月に行われたILO理事会の改選では、鈴木俊男(財)日経連国際協力センター専務理事が使用者側理事として再選(任期3年)された。また2002年3月には各国の政治家、学者、使用者、労働組合、NGO代表26名からなる「グローバル化の社会的側面に関する世界委員会」が発足し、日本からは西室副会長がメンバーとして参加している。この委員会では、グローバル化を持続可能なものとし、その利益を万人が享受できるようにするための方策について検討している。
この他、産業別、テーマ別に開催される各種の専門家会議やアジア地域の会議・セミナーなど8件に日本使用者側参加者を派遣した。

2.アジアにおける労使関係研究

産業構造の変化や通貨危機、グローバル化の影響から、近年アジアにおける労使関係に大きな変化がみられる中で、いくつかの国では日系企業でも労使紛争が発生している。当委員会では、労使関係の変化の実態を見極め、日系企業における労使紛争を未然に防ぐための方策を検討すべく、政策部会(部会長:立石信雄オムロン会長)を設け、調査・研究を行った。最初に東南アジア・東アジアに焦点をあて、5月に「アジア地域における労使関係中間取りまとめ−東南アジア、東アジアを中心に−」を発表した(日経連国際特別委員会(委員長:立石信雄オムロン会長)として)。
当該報告書以降は南アジアに焦点をあて、識者や企業の実務担当者から講演を聞くとともに、(財)日経連国際協力センターとの協力のもと、インドのデリー、バンガロール、ムンバイの3都市に現地視察団(団長:横山敬一郎日本通運総務・労働部労働専任部長)を派遣し(2003年1月)、研究を進めた。

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【国際関係】

35.貿易投資委員会

(槙原 稔 委員長)

1.WTO新ラウンド交渉の推進

  1. 総合政策部会(部会長:團野廣一三菱総合研究所顧問)を中心として、2001年11月に交渉を開始したWTO新ラウンドの交渉対象のうち、わが国経済界が重視している項目について交渉の推進を働きかけた。
    1. サービス貿易交渉:
      「WTOサービス貿易自由化交渉 人の移動に関する提言」(6月)を取りまとめたほか、定期的にサービス貿易懇談会を開催し、政府関係者と意見交換を行った。
    2. 貿易と投資:
      「国際投資ルールの構築と国内投資環境の整備を求める」(7月)を取りまとめたほか、定期的に投資ルール策定交渉の模様について政府関係者と意見交換を行った。
    3. 貿易と環境:
      「貿易と環境に関する懇談会」を2003年1月に設置し、「貿易と環境ラベリング」について意見を取りまとめた。
    4. その他:
      農業交渉、非農産品市場アクセス交渉、アンチダンピング協定の見直し、紛争処理手続き見直しなどについて、定期的に、政府関係者より交渉の進展状況について説明を聞いたほか、有識者との懇談会を開催した。
  2. 團野総合政策部会長を団長とするミッションをジュネーブ、ブラッセル、パリ、ロンドンに派遣(9月23日〜10月1日)し、「日本経団連WTOミッションポジション・ペーパー」(9月)に基づくわが国経済界の要望事項を提示し、スパチャイ事務局長をはじめとするWTO幹部、各国政府代表部、欧州産業連盟(UNICE)などと意見交換を行うとともに、その実現を訴えた。
  3. 来日したWTO幹部、キャパシティ・ビルディング・プログラムで来日した中国、ASEAN諸国の政府関係者、各国産業界代表などとの懇談会を開催するなど、意見交換を行った。

2.通商分野の規制改革

わが国企業による円滑な通商活動を確保し、国際競争力の強化を図る目的で、政府に対する規制改革要望の一環として、企業内転勤の条件緩和、安全保障輸出管理制度の規制緩和および透明化・簡素化などの実現を働きかけた。

3.その他

  1. 11月に、外務省の佐々江賢一郎経済局長、経済産業省の日下一正通商政策局長、財務省の田村義雄関税局長、農林水産省の西藤久三局長を招き、今後のわが国通商政策に関するわが国経済界の意見を述べるとともに、懇談した。また、自由貿易協定の推進をめぐっては、外務省、経済産業省などの幹部と定期的に懇談し、意見交換を行った。
  2. 中国が2001年12月にWTO加盟したのを受けて、中国委員会と共同で、定期的に、中国のWTO加盟について、政府関係者や有識者と懇談した。
  3. 「社会保障協定の早期締結を求める」(9月)を取りまとめるなど、日米をはじめとする二国間社会保障協定の早期締結を政府に働きかけた。

36.国際協力委員会

(5月28日〜 西岡 喬 共同委員長)
(〜9月9日 上島重二 委員長)
(〜5月28日 日枝 久 共同委員長)

1.ODA改革への取り組み

6月に外務省に設置された「ODA総合戦略会議」など、ODA改革に関する政府の動向をフォローアップするとともに、わが国ODAのあり方について議論した。
当委員会では、ODAの現状、改革の方向性などについて、学識経験者や外務省より説明を聞くとともに意見交換した。特に政策部会(部会長:青柳一博小松製作所専務取締役)では、ODA総合戦略会議で取り上げられた「ODA大綱」の見直しに関する経済界のスタンスについて議論を深めた。

2.JBIC新環境ガイドライン係る異議申立手続の策定に関する働きかけ

「環境社会配慮確認のための国際協力銀行ガイドライン」(4月1日公表、略称:JBIC新環境ガイドライン)に関する異議申立手続の策定にあたり、9月に、政策部会としての考えを国際協力銀行に申し入れるとともに、同行主催の意見交換会などの場を通じて関係方面に働きかけた。

3.世界銀行グループとの交流

(1) ウォルフェンソン総裁
2003年1月にウォルフェンソン世銀総裁と奥田会長ならびに委員会関係者との間で、日本経団連と世銀とのパートナーシップの強化について意見交換した。

(2) ピーター・ヴォイケIFC長官
3月に委員会を開催し、ピーター・ヴォイケ国際金融公社(IFC)長官より、世銀グループの民間インフラ支援に関し、特にアジアとの関係を中心に説明を聞き、意見交換を行った。

(3) 人事交流プログラム会議
対世銀タスクフォース(座長:吉田進住友化学技術・経営企画室国際関係参与)は、6月19〜21日にワシントンD.C.で開催された世銀主催のスタッフ・エクスチェンジ・プログラム総会に参加し、日本企業の社会貢献活動などについてプレゼンテーションを行うとともに、世銀関係者と今後の交流のあり方について意見交換を行った。

4.国際貢献・人材派遣の推進

国際貢献・人材派遣部会(部会長:篠原厳日本電気常任顧問)では、国際協力事業団(JICA)の民間セクターアドバイザー専門家派遣スキームを通じて日本経団連会員企業の人材(短期5名、長期1名)を途上国に派遣し、わが国民間企業の知識、経験、ノウハウの技術移転を行った。
また、JICAの独立行政法人化(2003年10月)をにらみ、外務省、JICA関係者を同部会に招き、独立行政法人化後のJICAの方向性と今後の民間活用制度の動向について意見交換を行った。

5.国際文化交流の促進

91年より行っているマレーシア戦略国際問題研究所(ISIS)日本研究センター支援事業(参加企業懇談会座長:日枝久フジテレビジョン会長)の第3期(99年〜2002年)最終年の支援を実施した。本支援事業は本年度をもって終了した。

6.その他

委員会を開催し、独立行政法人化後1年余を経過した日本貿易保険(NEXI)の活動状況について説明を聞くとともに懇談した。

37.OECD諮問委員会

(2003年1月14日〜 鈴木邦雄 委員長)
(〜2003年1月14日 生田正治 委員長)

1.概要

  1. OECD(経済協力開発機構)は、先進30カ国が参加する国際機関として、1960年の設立以来、マクロ経済政策、貿易・投資、環境、科学技術、規制改革、情報通信などの分野を中心として研究・分析し、加盟国政府に対して政策提言を行っている。
  2. BIAC(The Business and Industry Advisory Committee to the OECD)は、OECD各加盟国を代表する経済団体で構成される公式の諮問機関である。OECDの活動に経済界の意見を反映させるべく、17の専門委員会((1)化学物質、(2)競争、(3)経済政策、(4)教育政策、(5)雇用・労働・社会問題、(6)環境、(7)ガバナンス、(8)情報・コンピュータ・通信政策、(9)国際投資・多国籍企業、(10)海運、(11)非加盟国、(12)原料、(13)税制・財政、(14)産業技術、(15)貿易、(16)バイオテクノロジー、(17)エネルギー)において、専門的な検討を行い、様々な提言をしている。
  3. わが国は、OECD諮問委員会を通じて上記のBIACの活動に参加している。

2.主な活動

(1) BIAC総会・企画会議への参加
2002年4月のBIAC総会(於:ソウル)ならびに11月のBIAC企画会議(於:パリ)に生田委員長他が参加し、BIACの今後の活動について日本の経済界の立場から意見を述べた。
なお、生田委員長は、11月の企画会議まで、BIAC副会長を務めた。

(2) BIAC本部会合への委員の派遣
日本企業の代表を、BIACの各委員会やOECDの開催する会合に派遣した(2002年度は、産業技術、情報通信、経済政策、海運、バイオテクノロジー、税制などの分野を中心に、20会合に延べ21名が出席した)。
こうした活動に関する記事を、機関誌「BIAC NEWS」に随時掲載するとともに、12月には「BIAC産業技術委員会報告会」を開催し、関係企業に広く紹介した。

(3) 総会などの会合開催
7月に、2002年度総会を開催し、外務省の小田部陽一総合外交政策局審議官および川村泰久経済局国際機関第二課長より、OECD閣僚理事会の模様およびカナナスキス・サミットの成果などについて説明を聞いた。
ドナルド・ジョンストンOECD事務総長が来日した機会をとらえて、4月、12月の2回にわたり懇談会を開催した。
また、2003年3月にヘイドンOECD貿易局次長との懇談会を開催し、OECDやBIACの活動をめぐり意見交換した。
以上の他、パリや東京において、松尾科学技術産業局長、メツゲル貿易局長、コティス経済総局長などのOECD事務局幹部と懇談した。

(4) 広報活動
4月に、経団連、OECD、日本経済新聞社の共催により、「日本の経済構造改革を考える」と題するシンポジウムを開催した。
また、機関誌「BIAC NEWS」を定期的に(年6回) 発行し、BIACやOECDの活動を紹介したほか、「BIACの組織と活動」を改訂し、発行した(7月)。

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